【第51回】Born to Be Wild / Steppenwolf (1968)
映画と関連する洋楽をこれまで何度か紹介してきましたが、テレビで見る吹替の外国映画が青春の友であった洋画好きの僕としては、本コーナーが50回を迎えた記念も兼ねて、予てより考えていた「映画音楽特集」として映画と共にヒットした洋楽を一気に紹介することにしました(勝手な特集でスミマセン・汗)。その初っ端を飾るべく選んだのは、デニス・ホッパーとピーター・フォンダが主演したアメリカ映画「Easy Rider(イージー・ライダー)」のオープニング場面に流れるSteppenwolf のBorn to Be Wild です。Steppenwolf は1967年にアメリカのロサンゼルスで結成された5人組のバンドですが、ボーカルのJohn Kay は、第2次世界大戦でドイツが敗戦間際の1944年に東プロイセンで生まれたドイツ人(軍人だった父親は戦死、ベルリンを目指すソ連軍が攻めてくる中、難民となった母親は彼を連れてドイツ本国へ避難し、その後、アメリカへ移住)。ドラム担当のJerry Edmonton(Born to Be Wild を作詞作曲したMars Bonfire ことDennis Edmonton はこの人の弟です)とキーボード担当のGoldy McJohn はカナダ生まれのカナダ育ちで、1967年にアメリカへ移住しました。Steppenwolf という変わったバンド名も、ドイツ系スイス人作家ヘルマン・ヘッセの小説「Steppenwolf(ドイツ語で「草原の狼」の意味)」に由来しています(因みに、このバンド名を提案したのはJohn Kay ではなく、音楽プロデューサーのGabriel Mekler(イスラエル建国前の英領パレスチナで生まれたユダヤ人、後にアメリカへ移住)で、提案の理由は単にこの小説をちょうど読み終えたところだったからだそう・笑)映画のあらすじの方はと言うと、アメリカ社会の現状に不満を抱く二人の若者が麻薬の密売で得た大金を手に理想のアメリカを求めてバイクで北米大陸横断の旅に出るものの、そんな二人を逆に敵視するアメリカ社会によって最後は殺されてしまうというもので、Born to Be Wild を聴けば、この曲はこの映画の為に作られたのだろうとしか思えないくらいにい映画の内容とマッチしているのですが、実はこの曲、映画とは何の関係もない人物が、映画のことなど何も知らずに、映画撮影が始まるずっと以前に作詞作曲していたものなのです。と、こんなことを書いても、イージー・ライダーを見たことがない方にはまったくピンと来ないと思いますので、映画を見たことがない人がおられましたら、先ずは映画の本編を鑑賞してから解説欄へ進むことをお薦めします。Get your motor runnin’
Head out on the highway
Looking for adventure
In whatever comes our way
エンジンふかして
ハイウェイを走り出すんだ
冒険気分でな
どんなことがあろうともだ
Yeah, darlin’, go and make it happen
Take the world in a love embrace
Fire all of your guns at once
And explode into space
そうさ、やってやれ
みんなを抱きしめて世界制覇さ
みんなで一斉に銃をぶっ放しゃぁさ
新たな宇宙の誕生さ
I like smoke and lightnin’
Heavy metal thunder
Racing with the wind
And the feeling that I’m under
俺は好きなんだ、煙と閃光
そして、重い金属の轟きがな
風を切って突っ走るだけで
酔いしれちまうな
Yeah, darlin’, go and make it happen
Take the world in a love embrace
Fire all of your guns at once
And explode into space
そうさ、やってやれ
みんなを抱きしめて世界制覇さ
みんなで銃を一斉にぶっ放しゃぁさ
新たな宇宙の誕生さ
Like a true nature’s child
We were born, born to be wild
We can climb so high
I never wanna die
Born to be wild
Born to be wild
本物の野生児みたいにな
俺たちは生まれてきたんだ、イカした男になる為にな
だから、高見だって目指せるのさ
決して死にたくはねえけどさ
俺たちは生まれてきたんだ
イカした男になる為にな
*このあとギターソロが入り、Get your motor runnin’の節とYeah, darlin’, go and make it happen の節が再度続いてから、アウトロでLike a true nature’s child の節が歌われて曲は終了します。
Born to Be Wild Lyrics as written by Mars Bonfire
Lyrics © Universal Music Publishing Group
【解説】
イージーライダーを見たことがある方なら、この曲のイントロのギターリフを聴いただけでデニス・ホッパーとピーター・フォンダがハンドルをチョッパーに改造したハーレー・ダビッドソン社製の大型バイクにまたがってアメリカのだだっ広い道を爆走している光景が頭に浮かびますね。そんな風に、イージー・ライダー=Born to Be Wild=バイクというイメージが定着しているこの曲ですが、実は意外な事実が隠れていることを知る方は少ないと思います。それがどういうことなのか、順番に歌詞を見て行きましょう。先ず、出だしのGet your motor runnin’とHead out on the highway ですが、映画を見た方なら当然、バイクのエンジンをかけてハイウェイを走り出すという具合に理解する訳ですが、この曲を作詞したMars Bonfire は以前、次のように語っています。
「When I got that car I was able to drive out to the ocean and up into the mountains, and I realized how incredibly diverse the city really was. The feeling that came with being out on the road in my car was total freedom. That’s why the song starts with, ‘Get your motor running. Head out on the highway.’ Those lyrics just flowed right out of me」
この曲が作詞された1968年当時、ロサンゼルスへ移住したばかりのBonfire はまだ車を持っていなかった為、アパートの自室にこもりがちだったそうなのですが、ようやく車を手に入れた彼は車で海や山へと繰り出し、ロサンゼルスの町が多様であることに気付くのと同時に、車を運転して外を走ることに自由の喜びを感じたみたいで、その時のウキウキ気分をGet your motor runnin’とHead out on the highway という言葉で表現したそうです。因みに彼が手に入れたthat car というのはフォード社製のファルコン(日本で言えばカローラみたいな大衆車です)で、どちらかと言えばダサい車ですね(笑)。つまり、Get your motor runnin’ のmotor はバイクのエンジンではなく、車のエンジンなのです。ちょっとびっくりですよね。彼のこの発言からLooking for adventure のadventure は「まだ見知らぬ世界」の言い換えだと僕は理解しました。
第2節は、Bonfire がそれを意図していたか意図していなかったかは分かりませんが、僕には60年代のアメリカ社会の若者たちの理想を描写しているとしか思えませんでした。当時のアメリカは、既成の社会体制や価値観を否定し、社会に背を向ける若者たち(所謂ヒッピーですね)が多く出てきて一大ムーブメントとなっていた時代でして、この節の歌詞は「Love & Peaceで新たな世界を作れ」と言っているように僕には聞こえました。Fire all of your guns at once and explode into spaceは、銃の一斉発射はビッグバンとかcosmic explosionのようなもの、宇宙は新たな世界の比喩ではないかと考えます。explode into はinto に続くモノ、状態になるということなので、become に入れ替えれば分かり易いでしょう。3節目も映画を見た方なら、smoke and lightnin’はバイクのマフラーから吹き出す煙とバックファイアーの閃光。Heavy metal thunder は轟くエンジンの音と理解してしまうのは無理もないことなのですが、ここの部分に関してもBonfire はこのように語っています。
「One afternoon, I had encountered a thunderstorm so ferocious I had to pull over as the road turned into a river. The sky was ominous, the colour of lead. I was struggling to describe it in words until I remembered the periodic table of elements I’d studied during chemistry class at school. The term “heavy metals” came into my head, which gave me the line, “I like smoke and lightning, heavy metal thunder!” This was before heavy metal became a music genre」
つまり、smoke and lightnin’やHeavy metal thunder というのはすべて悪天候に関連した描写であった訳です(これまたびっくりですね・笑)。また、彼のこの発言からは、歌詞の中のHeavy metal という言葉が後に音楽用語になるとは彼自身も思いもしていなかったことが窺えます。3行目のRacing with the windは直訳すれば「風とレースをする」ですが、風とレースはできませんので、風を切って走ることの比喩と考えるのが自然。4行目のI’m under は、その言葉を聞けば普通は「寝てる」か「酔ってる」の状態を想像しますので、このように訳しました。
4節目は2節目の繰り返し。5節目には曲のタイトルとなったborn to be wild が出てきますが、このwildをどう訳すのかがちょっと難しいですね。日本人がwild という言葉に持つイメージはスギちゃんの「ワイルドだろぉ~」みたいな「ちょいワル」的なものだと思いますが、英語のネイティブ話者がwild という言葉を使う場合、勿論、乱暴者という意味で使う場合もありますが、多くはcrazy(いい意味での)、extreme but cool といった感じの意味で使っているように思います。なので今回は「イカした男」という言葉をあてはめてみました(イカした人間でもいいんですが、響きがイマイチだし作詞者のBonfire が男性なのでイカした男にしました。この歌詞のwild をsomeone who is free-spirited or adventurous と考える人もいますが、それは映画を見ての後付けですね)。3行目のWe can climb so high と4行目のI never wanna die はこのフレーズをなぜここに入れているのかいまいち良く分かりませんけど「イカした男になる(高見を目指す)為には無茶もするが、命を賭けるような真似まではしたくない」という風に理解しました(映画の中では結局、主人公は死んでしまいますけど・汗)。
Bonfire 自身がこの曲の歌詞について「I think it captures the essence of that transition between youth and adulthood, of leaving your parents and getting out on your own」とずばり語っているとおり、born to be wildの歌詞は若者が親元を離れて独り立ちしていく様を描写したものであったのですが(つまり、wild は一人前の男という意味で使われているということですね。しかも、主人公が乗っているのはバイクではなく車です)、映画「イージー・ライダー」の劇中歌として使われ、歌詞が映画のストーリーに奇蹟的にぴったりとはまってしまったが故に別の意味を持つようになった。それが、born to be wild という曲の真実なのです。それではみなさん、またお会いしましょう。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ(←若い人には分かりません よね・笑)。
【第52 回】Everybody’s Talkin’ / Harry Nilsson (1968)
今回ご紹介する曲は、ダスティン・ホフマンとジョン・ボイト(トゥームレイダーのララ役でお馴染みで、ブラット・ピットの元妻でもあるアンジェリーナ・ジョリーのお父さん)主演のアメリカ映画Midnight Cowboy (邦題:真夜中のカーボーイ)の劇中歌として採用されたことで大ヒットしたHarry Nilsson のEverybody’s Talkin’です。僕がこの映画を初めて見たのは、高校生だった時のこと。テレビの深夜の時間帯に放送されていた「名作洋画ノーカット10週」という番組ででした。字幕ではなく吹替であったものの、その名のとおり、映画をノーカットで10週連続放映するという画期的な番組で、それまでテレビで放映される映画と言えば、子供から老人まで楽しめる娯楽要素の強い映画ばかり(しかもカットされまくり)でしたから、この映画を見た時は、アメリカ映画にも芸術的な感性でもって製作される作品があるんだと妙に感動した記憶があります(やはりと言うか、この映画の監督John Schlesinger はヨーロッパ出身(英国人)でアメリカ人ではなかったのですが)。Midnight Cowboy で描かれているのは、テキサスの田舎町からジゴロになろうとニューヨークへやって来た都会に憧れる若者と都会のどん底で生きる病に犯された詐欺師という二人の孤独な男の出会いと奇妙な友情なのですが、Born to Be Wild 同様、映画の為に作られた曲ではないのに歌詞の内容と映画のストーリーとがなぜだか抜群にうまく重なり合っていますので、Midnight Cowboy をご覧になってない方は一度鑑賞してみることをお薦めします。特にジョン・ボイトが演じるJoe とダスティン・ホフマン演じるRatso の二人が通りの交差点を渡っている時にタクシーが突っ込んできて、危うく轢かれそうになったRatso がI’m walking here!と怒鳴りながらタクシーのボンネットを激しく叩くシーンは注目の価値あり。映画「フォレストガンプ」の劇中にも同様のシーンがあることを知っている方はかなりの映画通ですね。車椅子生活になったダン中尉がニューヨークの通りでタクシーに轢かれそうになってI’m walking here!(車椅子なのにこう言うところがミソ)と怒鳴るシーンがそれで、背後でEverybody’s Talkin’が流れるフォレストガンプのそのシーンがMidnight Cowboy へのオマージュであることは一目瞭然です。Everybody’s talkin’ at me
I don’t hear a word they’re sayin’
Only the echoes of my mind
People stoppin’, starin’
I can’t see their faces
Only the shadows of their eyes
みんなが僕に話しかけてくるけど
僕にはあの人たちが話してることが一言も聞こえない
聞こえるのは自分の心のこだまだけ
みんなが立ち止まって僕を見つめるんだけど
僕はあの人たちの顔を見られない
見えるのはあの人たちの目の影だけなんだ
I’m going where the sun keeps shinin’
Through the pourin’ rain
Going where the weather suits my clothes
Bankin’ off of the northeast winds
Sailin’ on a summer breeze
And skippin’ over the ocean like a stone
僕は太陽が輝き続ける所へ向かってる
土砂降りの雨の中ね
僕の着てる服に合う天気の所へ向かってるんだ
北東の風をかわして船を傾け
夏のそよ風に向かって航海してるのさ
石ころのように水面の波をかすめながらね
I’m going where the sun keeps shinin’
Through the pourin’ rain
Going where the weather suits my clothes
Bankin’ off of the northeast winds
Sailin’ on a summer breeze
And skippin’ over the ocean like a stone
僕は太陽が輝き続ける所へ向かってる
土砂降りの雨の中ね
僕の着てる服に合う天気の所へ向かってるんだ
北東の風をかわして船を傾け
夏のそよ風に向かって航海してるのさ
石ころのように水面の波をかすめながらね
Everybody’s talkin’ at me
Can’t hear a word they’re sayin’
Only the echoes of my mind
みんなが僕に話しかけてくるけど
あの人たちが話してることを一言たりとも聞けないんだ
聞けるのは自分の心のこだまだけさ
I won’t let you leave my love behind
No I won’t let you leave
Wah-wah, ah
I won’t let you leave my love behind
I won’t let you leave…
だから、僕の愛を見捨てさせることなんてしないよ
駄目さ、そんなことさせはしない
あぁー
僕の愛を見捨てさせることなんてしないよ
させはしないさ
Everybody’s Talkin’ Lyrics as written by Fred Neil
Lyrics © BMG Platinum Songs, Third Palm Music
【解説】
ギターの軽快な響きで始まり、歌は上手なんだけども癖のあるHarry Nilssonの声が続くEverybody’s Talkin’というこの曲、実はHarry Nilsson の持ち歌ではなくFred Neil というアーティストが作詞作曲してリリースしていた曲のカバーなんです(Fred Neil のオリジナル版と歌詞やメロディーラインはほぼ同一ですが、オリジナル版はテンポがもっとスロー)。1967年にリリースされたFred Neil のオリジナル版と翌年にリリースされたHarry Nilsson のカバー版、どちらも鳴かず飛ばずの売れ行きだったのに、カバー版が映画の挿入歌として採用され、映画が公開されるやレコードが売れに売れて大ヒット曲になったのですから、運というのはまったくもって不思議なものですね(因みに、Harry Nilsson は後にWithout You という曲も大ヒットさせますが、こちらも英国のロックバンドBadfingerの曲のカバーでした)。このEverybody’s Talkin’の歌詞、中学校で習う英単語レベルの言葉しか使われていませんが、その意味を理解するのはなかなか困難な作業。それだけでなく、歌詞の意味もかなり奥が深いので(またですか・汗)いつものように詳しく歌詞を見ていきましょう。
先ず第1節。英語として難しい部分はありません。3行目のOnly the echoes of my mind はI hear、6行目のOnly the shadows of their eyes はI see を文頭に補えば分かり易いでしょう。ですが、その意味となると難解ですよね。僕にはEverybody’s talkin’ at me. I don’t hear a word they’re sayin’, only the echoes of my mind の部分が「世間の人はあれこれ言うけど、僕は聞く耳を持たない。だって、自分の心の声(the echoes of my mind)に従って生きてるから」と聞こえ、People stoppin’, starin’. I can’t see their faces, only the shadows of their eyes は「世間の人は話くらい聞けって近づいてくるけど、会いたくもない。だって、連中の態度はうわべだけだから」というふうに聞こえました(the shadows of their eyes は、相手のことを真剣には考えてはいない偽善的な視線(態度)と理解)。この僕の理解が正しいかどうかは分かりませんが、この節が描写しているのは、自分のことを分かってくれる者なんてこの世界にはいないんだという人間の孤独であることは間違いないかと思います。ですが、ですが、実のところ、この曲の歌詞が誕生した経緯には以下のような驚愕の事実があるんです!(汗)。
「In the fall of 1966 Fred Neil was recording a folk-blues album in Los Angeles. But he hadn’t written enough songs to complete it, and he was getting anxious to return home to Miami. His manager at the time, Herb Cohen, quickly made a deal "Write one more tune and record it immediately, then you can go". With that, Mr.Neil retreated to a bathroom at the studio and, five minutes later, emerged with the new composition, a lanky,concise ballad, just two verses and a chorus, with one verse and the chorus repeated, that expressed his desire to go home, “where the sun keeps shining in the pouring rain.”」
この経緯が事実なのかどうかは確認のしようがありませんが、このことを知ってしまうと、第1節がHerb Cohen というマネージャーに対するぼやきのようにも聞こえてくるんですよね(笑)。
Everybody’s talkin’ at me
I don’t hear a word they’re sayin’
Only the echoes of my mind
People stoppin’, starin’
I can’t see their faces
Only the shadows of their eyes
あんたは「できたか、できたか」ってばかり言うけど
俺はあんたの言うことなんて耳に入ってこないよ
俺は俺のやり方でやってるからな
あんたは「できたか、できたか」って覗き込んでくるけど
僕はあんたの顔なんて見たくないね
だって、あんたの考えてるのは金のことばかりだから
まあ、こんなふうに考えてしまうと興ざめなので、この曲の歌詞は人間の孤独を歌ったものだということを前提にして話を進めることにしましょう(笑)。
第2節も英語として難しい部分はほとんど見当たりません。分かりにくいのは4行目のbank くらいでしょうか。ここでのbank は動詞として使われていますので、後に続いている文から考えても、乗り物を傾けて転回させるという意味でのbank ですね。僕の頭に浮かんだイメージは、帆を傾けて転回しているヨットのようなものです。ここのthe northeast winds は、アメリカや日本など北半球で北東の風と言った場合、貿易風(年中吹いている比較的強い風)のことを指しますから「世間からの強い風当り」の言い換えと理解しました。the pourin’ rain も「辛く厳しい日々」の言い換えでしょう。skippin’ over the ocean like a stoneからは、水切り遊びで小石が水面を飛び跳ねていく情景が頭に浮かびます。なので、第2節の歌詞は、主人公が辛く厳しい日々の中、孤独な世界から自分に合った新たな心地良い世界(summer breeze)へ、世間の荒波を避けながら軽快な気分で向かおうとしている姿の描写であると理解しました。この第2節は、Joe とRatso の二人が孤独の渦巻くニューヨークを離れて、太陽がさんさんと輝くフロリダ州へと向かう映画のラストとばっちり重なっていますね(まったくの偶然なのですが)。3節目は2節目と同じフレーズの繰り返し。4節目の2行目は、第1節のI don’t hear a word they’re sayin’からCan’t hear a word they’re sayin’というフレーズに変化しています。I don’t hear が物理的に聞こえないということも含むのに対し、Can’t hear になると自分自身によるより強い拒絶の意思が感じられます。つまり、主人公の強い決意を現しているのでしょう。良く分からないのは5節目で、ここに突然出てくるyouは恋人などの特定人物ではなく総称としてのyou なのでしょうが、僕にはこのyou が主人公が探し求めている理想の人、つまり「たった一人でいいからこの世界で分かり合える人」ではないのかという気がしました。そんな人に巡り合えば、人から裏切られるようなことは起こらないし自分も裏切ったりは決してしない。つまり、I won’t let you leave my love behind はこの歌詞の主人公の願望なのであり、そう考えると、第2節で主人公が探し求めているのは場所ではなく人なのではないかとも思えてきます。とまあ、僕なりにこの曲の歌詞を解釈しましたが、先に紹介したエピソードのとおり、早く家に帰りたかったFred Neil がバスルームの中で5分で仕上げたというこの曲は、他の迷曲同様(名曲ではなく迷曲です・笑)、作者の意図から離れて歌詞の意味が一人歩きしてしまっている曲のひとつなのかもしれません。
それでは最後にFred Neil のトリビアをひとつ。Fred Neil はボブ・ディランもその才能を認めるアメリカ音楽界の逸材でしたが、この曲の大ヒットで大金を得ても自ら表舞台に出てくることもなく、その後は音楽活動もやめて世捨て人のような人生を送ったという変わった人で(真の芸術家というのはそういう人のことですね)、2001年にフロリダ州の自宅で病死しているのが発見された際に彼の財布の中に入っていた現金は13ドルだったそうです。
【第53 回】The Sound of Silence / Simon & Garfunkel (1965)
別にダスティン・ホフマンが好きだという訳ではないですけども、前回に続き今回も彼の出演した映画で使われた名曲を紹介しましょう。1967年公開の映画「The Graduate」の挿入歌、Simon & GarfunkelのThe Sound of Silence です(Graduate の意味は卒業生。なので「卒業」というこの映画に付けられた邦題は多くのそれと同じくヘンテコですね・汗)。この曲も映画の為に作詞作曲されたものではないのですが(1966年のビルボード社年間チャートで25位と映画で使われる前から既にヒットしていました)、Born to Be Wild やEverybody’s Talkin’ 同様、映画のストーリーというか、映画の主人公のキャラクターと曲の歌詞がシンクロしていると思ってしまうような曲なので、ネタバレとはなりますが、先にThe Graduateのあらすじをどうぞ。名門大学を卒業したばかりで輝く未来が待ち受けているはずなのに、虚無感に囚われて何をしていいのか分からなくなっているダスティン・ホフマン演じる主人公ベンジャミン。その虚無感を振り払おうとするかのように父親の友人の妻であるロビンソン夫人(アン・バンクロフト)と情事を重ねる彼でしたが、ある日、ひょんなことから夫人の娘でベンジャミンの出身大学に通う女子大生エレーンとデートをすることになります(エレーン役はキャサリン・ロス←この作品での彼女はさすがに初々しくてかわいいです。そんな彼女も2年後、Butch Cassidy and the Sundance Kid に出演して大スターの仲間入りを果たしました)。自分が嫌われるように振る舞うベンジャミンでしたが、エレーンの純真さに魅かれて彼女とも付き合い始めてしまい(←そんなことありえますかね?←まあまあ、落ち着きましょう。映画ですから・笑)、そのことを知ったロビンソン夫人から、娘と別れないと情事のことを彼女にばらすと脅迫される羽目に陥って針のむしろ状態に(←自業自得です・笑)。悩み抜いたベンジャミンは夫人との情事を自らエレーンに告白するものの、当然、彼女は傷つき、ベンジャミンのもとを去るだけでなく大学も退学し、同じ大学の医学部卒の男と結婚することを決意するのですが、本当に愛しているのはエレーンであることに気付いたベンジャミンは、彼女の結婚式の当日、式場である教会に向かってエレーンの手を取り、二人で逃げるように教会を後にして、通りにやって来たバスに乗り込む(結婚式の最中に花嫁を花婿から奪うという伝説のシーンです←そんなことありえますかね←またかよ、とひとりつっこみ・笑)。というのが映画のあらすじでして、そんなちょっとクサいエンディングでバスの座席に腰掛けた二人の表情が喜びの笑みから不安のようなものに変わっていく様がスクリーンに映し出された時、この曲The Sound of Silence がバックで静かに流れ始め、観客に強い余韻を残します。
Hello darkness, my old friend
I’ve come to talk with you again
Because a vision softly creeping
Left its seeds while I was sleeping
And the vision that was planted in my brain
Still remains within the sound of silence
僕の古い友、暗闇よ、こんにちは
また君に会いにきちゃったよ
だって、幻影が優しく忍び寄ってきて
僕が眠っている間にその種をまいていったんだもの
だから、幻影が僕の頭の中に植え付けられて
残ったままなんだ、静寂の音の中にね
In restless dreams, I walked alone
Narrow streets of cobblestone
‘Neath the halo of a street lamp
I turned my collar to the cold and damp
When my eyes were stabbed by the flash of a neon light
That split the night, and touched the sound of silence
心休まらない夢の中で、僕はひとり歩いてた
丸石の敷かれた細い通りの上をね
街灯の光の輪の下で
じめじめとした寒さに僕は襟を立てたよ
そして、僕の目がネオンサインの煌きに突き刺された時
夜が裂かれ、静寂の音に触れたんだ
And in the naked light I saw
Ten thousand people, maybe more
People talking without speaking
People hearing without listening
People writing songs that voices never shared
And no one dared disturb the sound of silence
裸火の中に僕は見たんだ
一万人、いや、多分それ以上の人々が
話すことなく喋り
聴くことなく聞き
決して分かち合うことのない歌を書いていることを
誰もがあえて静寂の音を妨げようとしないんだ
"Fools," said I, "You do not know
Silence like a cancer grows
Hear my words that I might teach you
Take my arms that I might reach you"
But my words, like silent raindrops, fell
And echoed in the wells of silence
だから「愚か者」って僕は言ったよ「君は分かってない
癌のように浸潤する静寂のことが
僕の言葉を聞いてくれ、君に教えられるかも知れない言葉を
僕の手を取ってくれ、君に届くかも知れない手を」ってね
だけどさ、僕の言葉は空から降ってきた無音の雨粒のようなもの
静寂の井戸の中でこだまするだけなんだ
And the people bowed and prayed
To the neon god they made
And the sign flashed out its warning
In the words that it was forming
And the sign said, "The words of the prophets are written on the subway walls and tenement halls
And whispered in the sound of silence"
ところが人々は頭を垂れて祈ったね
自分たちが創ったネオンサインの神にね
すると、サインが戒めの光を放ったのさ
でき始めてた言葉を使ってさ
サインは告げてたんだ「預言者の言葉は地下鉄の壁やぼろアパートの廊下に書かれてあるぞ
預言者の言葉は静寂の音の中で囁かれるものなんだ」って
The Sound of Silence Lyrics as written by Paul Simon
Lyrics © Sony/ATV Songs LLC
【解説】
物悲しげなアコースティックギターのイントロで始まり、その後に続くPaul Simon とArthur Garfunkelの優しく透明感のある歌声が印象的なこの曲、歌詞は6行5連(スタンザ)という本格的な詩の形式で書かれていて、そこに綴られているフレーズは詩的と言うよりもむしろ文学的ですね。「ということは、この曲の歌詞も難解なんですか?」と質問したくなった方、Bingo ですよ!この曲もまた、本コーナーでこれまで何度も紹介してきた「迷曲」のお仲間なんです(汗)。今回はいつものように歌詞を紐解いていく前に、この曲のタイトルの一部となっているsilence の意味を皆さんに先ず理解しておいていただきたいので、幾つかの辞書の中からsilence の定義を紹介しておきます。
* a period without any sound; complete quiet
* a state of refusing to talk about something or answer questions, or a state of not communicating
* a state of not speaking or writing or making a noise
つまり、silence とは日本語に置き換えれば静寂(場合によっては沈黙)ということになりますね。これらのsilence の定義を頭に入れた上で、歌詞を見ていくことにしましょう。1節目、Hello darkness, my old friend というフレーズで始まるこの曲の歌詞。迷曲はやはりセオリーどおり最初からぶちかましてきますね(笑)。darkness っていったい何なのでしょう?ここで参考になるのが、このdarkness についてPaul Simon が21歳の時に語っている言葉です。
「The main thing about playing the guitar, though, was that I was able to sit by myself and play and dream. And I was always happy doing that. I used to go off in the bathroom, because the bathroom had tiles, so it was a slight echo chamber. I’d turn on the faucet so that water would run and I’d play. In the dark」
この事から考えると、この歌詞における古い友人であるdarkness というのは、人と言うよりも、外界を遮断して一人くつろげる場所のように僕は感じました。I’ve come to talk with you againですから、何度もその場所にやって来ている訳です。3行目はなぜそうするかの理由であり、a visionは夢で見た夢の内容であると理解。その見た夢に何か不穏なものを感じた主人公はdarknessに再び会いにやって来てしまったのでしょう。そして6行目に出てくるのが、この曲のタイトルであるのと同時に最大の謎でもあるthe sound of silence という言葉。前述のとおりsilence というのはa period without any sound ですから、音は存在しない世界です。となると、sound of silence は音のない世界にある音ということになって矛盾します。が、僕はこの矛盾の中にsound of silence の意味が存在していると理解しました。「矛盾」という言葉は異なる状況を論理的に描写した際に使いますが、それを心理的に描写した場合は「葛藤」という言葉に変わります。つまり、sound of silence は葛藤する自分の心であるというのが僕の結論であり、その心の葛藤から何が生まれているのかというと、それは「孤独」なのです。ここで言う孤独とは寂しさといったものではなく他人との距離感であり、だからこそwithin という言葉が使われているのではないでしょうか。
第2節も、ものすごく難解です。In restless dreams で始まっているからには、夢で見た内容を語っているのでしょう。細い石畳の通りの上を一人歩く主人公の前に街灯が現れ、その街灯の下にhalo が浮かび上がっているといった感じですかね。Halo というのは聞き慣れない単語ですが、これは後光のような光の輪のことで5節目のthe flash of a neon light につながっていくものだと僕は考えました(neon light は日本で言うところのネオンサインと同じ意味で使われていると考えた方が分かり易いです)。4行目のI turned my collar to the cold and damp を聞いて僕の頭に浮かんだのは、主人公が寝床で夢の中に出てきたhalo にうなされている様子で、そのhalo が突然、the flash of a neon light に変わってmy eyes were stabbed by the flash of a neon light that split the nigh(主人公に衝撃を与える)ことになったのではないかと推察します。なぜ衝撃を受けたのかというと、それを目にしたことで強烈な孤独を感じた(touched the sound of silence)からで、その衝撃を与えたthe flash of a neon light がいったい何であったのかが語られているのが第3節ですね。第3節1行目のthe naked light は、halo とthe flash of a neon light の延長線上にあるもの、つまり同じ根を持つ光であり、主人公が目にしたのは、多くの人々(Ten thousand people, maybe more は勿論、実際の数ではなくその比喩です)が、talking without speaking、hearing without listening、writing songs that voices never shared(話をしても誰も話を聞いてくれないし、そもそも分かり合えることもない)という光景であり、no one dared disturb the sound of silence(孤独があちこちで広がっているのに誰もそれを止めようともしない)ことに主人公は衝撃を受けたのです。第4節の最初に主人公がそんな人たちに向かってFoolsと嘆いているのはそれが理由です。第4節では、1行目You do not know から4行目のI might reach you までがひとつのフレーズであることに注意してください。You do not know silence like a cancer grows は、気付かぬうちにどんどんと広がる孤独ってもののことが君は分かっちゃいない。Hear my words that I might teach you とTake my arms that I might reach you は、それを分からせようとする主人公の努力ですね。ですが、結局、その努力が報われることはないようです。But my words, like silent raindrops, fell. And echoed in the wells of silence はそのことの描写でしょう。自分の声は誰の耳にも届かないってことの暗喩ですね。
そして最後の第5節。ここも滅茶苦茶難解です(汗)。1行目のthe people は、第3節に出てくるpeopleと同じ人たちのことなんでしょうが、なぜ彼らが跪いて祈ったのかの理由がまったく分かりません。しかも、the neon god に対してですよ。なんですか?ネオンの神って?(笑)。あくまでも僕の感覚でですが、ここまでの歌詞の中でneon light が何であるのかを考えてみた場合、それが意味しているのは主人公が夢の中で見た恐ろしい世界(現実)ということなのであろうというのが僕の結論で、the people bowed and prayed to the neon god they madeを何度も聴いているうちに僕の頭に浮かんできた情景は「人間が自ら作り出した恐ろしい現実の前で、人々が自分たちは間違っていましたと許しを請うている」みたいなものでした。4行目のIn the words that it was formingは、スイッチを入れたネオンサインに光が灯って徐々に言葉が浮かび上がってくるような様子でしょうか。そして、その現実は同時に彼らを戒めます。どう戒めたのかというと「The words of the prophets are written on the subway walls and tenement halls. And whispered in the sound of silence」とです(tenementなんて言葉を使う人は見たことないですが、これは昔、apartment と同じ意味で使われていた単語で、後にスラム街を意味するようにもなりました。hallはアメリカではcorridor と同じ意味で使われます)。僕はThe words of the prophet を神の啓示、即ち人が進むべき正しき道へのヒント(神の啓示=正しい道なんて僕はこれっぽっちも思っていませんので誤解なきようお願いします(笑)。あくまでも西洋人の目線で考えた場合のたとえですので)、the subway walls and tenement halls を身近な場所と考え、この戒めの言葉をこう理解しました。「人が進むべき道へのヒントは身近なところにある。孤独(自分)と向き合えば聞こえてくるだろう」と。
まあ、迷曲たるこの曲には当然、様々な解釈が存在してますので、僕の解釈も迷解釈のひとつとご理解ください。それでは最後に、1966年にテレビの生放送でこの曲を演奏する際、演奏に入る前に曲の紹介としてPaul Simon が聴衆に向かって語った言葉を紹介してこの回を締め括りたいと思います。
「One of the biggest hang-ups we have today is the inability of people to communicate, not only on an intellectual level, but on an emotional level as well. So you have people unable to touch other people, unable to love other people. This is a song about the inability to communicate. It’s called, “The Sound of Silence”・ 僕たちが今日抱えている大きな悩みの種のひとつは、人々のコミニケーション能力のなさです。知的な会 話のレベルでだけでなく、感情表現のレベルででもそうですから、人々は他の人に触れることもできないし、 他の人を愛することもできなくなってきてる。この歌はそんなコミニケーション能力のなさについてのもの で、タイトルはThe Sound of Silenceと言います」
【第54回】Rock Around the Clock / Bill Haley & His Comets (1954)
日本の音楽界で「オールディーズ」と言えば、大抵の場合、1950年代から60年代にかけての古き良きアメリカでヒットしたロックンロールのことを指しますが、今回お届けするのはそのオールディーズの代表曲のひとつで、映画「American Graffiti(アメリカン・グラフィティ)」のオープニングシーンに使われたBill Haley & His Comets のRock Around the Clock。その新しく生み出されたメロディーラインによって全米に衝撃を与えた大ヒット曲です。「Rock Around the Clock と言えば、映画「Blackboard Jungle」でしょうよ」と仰る方、それも正解です!でも、僕の中では断然、Rock Around the Clock=American Graffiti なんですよねー。と言うのは、American Graffiti も先に紹介したMidnight Cowboy と同じく、テレビの「名作洋画ノーカット10週」で初めて見たんですけど、その時に僕が受けた衝撃が相当なものだったからなんです(←そんな個人的理由かよ・笑)。いったい何に衝撃を受けたのかというと、大型のど派手なアメ車を乗り回し、ダンスパーティーでロックンロールに興じ、ローラースケートを履いたウエイトレスのいる洒落たダイナーで深夜にハンバーガーやドーナッツをぱくつく映画の登場人物たちがみんな高校生で、しかも映画の舞台設定が1962年(僕がテレビでこの映画を見たのは1984年)ということにでした。雨の日も風の日もママチャリを毎日30分こいで高校に通っていた当時の僕は「自分が生まれる前の時代から既にアメリカはこんな国だったのか…。こんな場所で青春を過ごせたらなぁ…」と純粋に憧れた訳です。いわゆる「古き良きアメリカ」というやつがこの映画に描かれていたのですが、それが白人による白人の為の白人の社会であることを、当時はまだ世間知らずだった僕が気付くことは残念ながらありませんでしたので、この映画を見てとても感動したんですね(汗)。あれから年月を経た今だから分かりますが、American Graffiti の監督であるジョージ・ルーカスがasshole の極みであるドナルド・トランプを支持するような人間と同じ思想の持ち主であるなどとは思えないものの、トランプを熱狂的に支持している白人たちの求める社会とこの映画の根にあるものは同じのような気がします。実際、American Graffiti はエキストラも含め、出てくるのはほとんど白人。この映画に白人の役者しか使わなかったという訳ではなく、当時のアメリカ社会を白人の視線から描けば必然的にそうなったということで、映画「Back to the Future」なんかも同じパターンですね。「古き良きアメリカ」にとって、アジア人や黒人はお呼びでない存在であることを覚えておいて損はないと言えるでしょう。最初にRock Around the Clock を聴いた時、歌っているのも演奏してるのもChuck Berry みたいな黒人たちだと僕は勝手に思い込んでしまったんですが、Bill Haley は白人で、そのバックバンドのComets のメンバーも全員白人であることをあとになって知って驚いた記憶があります(この曲を作詞作曲したMaxFreedman とJames Myers も白人)。「黒人音楽に憧れてその真似を始めた白人ミュージシャンたちのレベルがついに黒人に追いついたばかりか、リズム&ブルースよりさらに進化してしまった」って感じのこの曲、世界中で大ヒットし、売れたシングル・レコードは2千5百万枚とも言われていて一時期はギネスブックにも登録されていたらしいです。
One, two, three o’clock, four o’clock rock
Five, six, seven o’clock, eight o’clock rock
Nine, ten, eleven o’clock, twelve o’clock rock
We’re gonna rock around the clock tonight
1、2、3時、4時もロック
5、6、7時、8時もロック
9、10、11時、12時もロック
そうさ、俺たちは今晩、夜通しロックするんだ
Put your glad rags on, join me hon’
We’ll have some fun when the clock strikes one
なあ、彼女、洒落た服着て、俺と一緒に行こうぜ
1時になったらお楽しみの始まりさ
We’re gonna rock around the clock tonight
We’re gonna rock, rock, rock ‘til broad daylight
We’re gonna rock, gonna rock around the clock tonight
そうさ、俺たちは今晩、夜通しロックするんだ
真っ昼間までロック、ロック、ロックするんだ
俺たちはロックするんだ、今晩は一晩中ロックだぜ
When the clock strikes two, three and four
If the band slows down we’ll yell for more
2、3、4時になって
バンドの連中の勢いが落ちたら、俺たちが喝を入れてやる
We’re gonna rock around the clock tonight
We’re gonna rock, rock, rock ‘til broad daylight
We’re gonna rock, gonna rock around the clock tonight
だって、俺たちは今晩、夜通しロックするんだから
真っ昼間までロック、ロック、ロックするんだ
俺たちはロックするんだ、今晩は一晩中ロックだぜ
When the chimes ring five, six and seven
We’ll be right in seventh heaven
5、6、7時の鐘が鳴りゃあ
俺たちはもう最高の気分になってるさ
We’re gonna rock around the clock tonight
We’re gonna rock, rock, rock ‘til broad daylight
We’re gonna rock, gonna rock around the clock tonight
だって、俺たちは今晩、夜通しロックするんだから
真っ昼間までロック、ロック、ロックするんだ
俺たちはロックするんだ、今晩は一晩中ロックだぜ
When it’s eight, nine, ten, eleven, too
I’ll be goin’ strong and so will you
9、10、11時になりゃあ
俺はもう怖いものなしだろうな。おまえだってそうなるさ
We’re gonna rock around the clock tonight
We’re gonna rock, rock, rock ‘til broad daylight
We’re gonna rock, gonna rock around the clock tonight
だって、俺たちは今晩、夜通しロックするんだから
真っ昼間までロック、ロック、ロックするんだ
俺たちはロックするんだ、今晩は一晩中ロックだぜ
When the clock strikes twelve we’ll cool off then
Start rockin’ around the clock again
12時になりゃあ、俺たちもようやくクールダウンだ
だって、ロックな一日がまた始まるからな
We’re gonna rock around the clock tonight
We’re gonna rock, rock, rock ‘til broad daylight
We’re gonna rock, gonna rock around the clock tonight
そうさ、俺たちは今晩、夜通しロックするんだ
真っ昼間までロック、ロック、ロックするんだ
俺たちはロックするんだ、今晩は一晩中ロックだぜ
Rock Around the Clock Lyrics as written by Max Freedman, James Myers
Lyrics ©Myers Music Inc, Capano Music
【解説】
1954年にアメリカでリリースされた当初、Rock Around the Clock は世間の注目をまったく浴びることのない曲だったのですが、映画「Blackboard Jungle」のオープニングシーンの挿入歌として採用され、翌年に全米で映画が公開されるや瞬く間に爆発的ヒットを記録。ラジオのチューニングをどの局に合わせても、流れているのはこの曲ばかりという状態にさえなったそうです。今では常識となったエレキギターとサックスの音色が織り成すアップビートなこの曲のメロディーラインは、まさしく元祖ロックンロールという言葉がぴったり。ですが、歌詞の方はと言うと、なんか早口言葉みたいなフレーズが並んでいるユニークなもので、クールではなくファニーなんですよね(笑)。その面白い歌詞、とても簡単な英語で書かれているので、ほとんど解説不要。なので、ぱぱっと見ていきましょう。
第1節は解説の必要なし(笑)。曲のタイトルにもなっている4行目のaround the clock は、時計の時針がぐるりと一周(つまり、12時間の時間経過)する様から転じて「休みなく」とか「絶え間なく」とか、なぜだか「24時間ぶっ通しで(24時間だと時針は2周なんですが)」の意味で使われるようになった形容詞です。第2節1行目のglad rags はお洒落な服という意味で使われる古いスラング。hon’はhoney の略。2行目のthe clock strikes one のone は昼の午後1時ではなく深夜の1時です。第3節から9節までのフレーズも解説不要。10節目のWhen the clock strikes twelve we’ll cool off then. Start rockin’ around the clock againは、思わず吹き出してしまいますね。こんな生活を毎日繰り返していたら間違いなく死にますよ!(笑)。と、これにて歌詞の解説は終了。このコーナーでの最短記録達成です!
こうやってRock Around the Clock の歌詞をあらためて眺めてみると、この曲の歌詞の内容も映画のストーリーにばっちりはまっていて、American Graffiti のオープニングで使われたのも納得ですね。因みにAmerican Graffiti のサントラは、彦摩呂風に言うと「オールディーズの名曲が詰め込まれた宝石箱やぁ~」みたいなレコードですので(LP2枚組、ジャケットもお洒落)、オールディーズに興味を持ったという方がいらしたら一度聴いてみてください。余談ですが、American Graffiti、映画の方は低予算で作られたこともあって興行的には大成功という結果に終り、American Graffiti に出演したリチャード・ドレイファスやロニー・ハワード、チャールズ・マーティン・スミスといった当時無名同然だった若い俳優たちがこの映画から羽ばたき、後に実力派俳優となるまでに育っていきました。劇中、無名時代のハリソン・フォードもちょい役で出演してますので、映画を見る機会があれば探してみてください。
【第55回】Night Fever / Bee Gees (1977)
1970年代にABBAやEarth, Wind & Fire といったグループのダンサブルな曲と共に巻き起こったアメリカでのディスコブーム。そんな最中に公開されたジョン・トラボルタ主演の映画「Saturday Night Fever(サタデー・ナイト・フィーバー)」は世界中で人気を博し、映画の挿入歌として使われたBee Gees のNight Fever も大ヒット。日本でもダンスブームという社会現象を引き起こしました。曲のタイトルからして当然、このNight Fever という曲は映画の製作に合わせて作れたものだとずっと思っていたのですが、今回、この曲の解説を書くためにいろいろと調べていたところ、出くわしたのが2007年にテレビ番組のインタビューに答えるBee Gees の映像。その番組の中でBee Gees のメンバーが語っていたのは、Saturday Night Fever のサウンドトラックに関する意外な事実でした。Saturday Night Fever の撮影が始まっていた1975年、フランスのパリ近郊の古城内に設えられた音楽スタジオで新しいアルバムの製作に励んでいたBee Gees のもとにロサンゼルスからかかってきた1本の国際電話。受話器から響いたのは「今、Tribal rites of saturday night っていうダンス映画を撮ってるんだけど、この映画に使う曲を作って欲しい」という彼らのマネージメントを担当していたRobert Stigwood の声だったそう。ですが、Bee Gees のメンバーのRobin Gibb は、その電話がかかってきた時、後に映画の挿入歌となるNight Fever やStayin’ Alive、More Than a Woman といった曲は既にスタジオで完成していて、映画用の新しい曲を作る時間もなかったので、映画の内容も良く知らないままにそれらの曲をStigwood のもとへ送ったと番組の中で証言していました。つまり、Saturday Night Fever のサントラに収録されている名曲の多くは、映画の為に作られたものではなかったということなんですよね。映画のタイトルも「Tribal rites of saturday night なんてダメだ。映画に使ってもらいたい曲の中にNight Fever って曲があるから、それに合わせたらどうだ?」というBee Gees のアドバイスによってSaturday Night Fever に変更されたとのこと。つまり、映画の方が当初のタイトルを捨てて曲のタイトルに合わせた訳です。なかなか興味深い話ですよね(まあ、誰が見てもTribal rites of saturday night ってなタイトルはイケてなさ過ぎですが・笑)。日本でもこの曲は1978年の映画の公開と共に大ヒットし、映画のストーリーからフィーバーを「ディスコで踊って熱狂する」という風にとらえた日本人は、そこから転じて「興奮する、はじける、はっちゃける」という意味で「フィーバー」という言葉を使い始め、マスゴミがそれを煽ると瞬く間に日本語の中に定着することになりました。ですが、今の若い人はフィーバーなんてダサい言葉、使いませんよね(ダサいも使いませんか?汗)。この映画が公開された頃は僕もまだ中学生。フィーバーをフェーバー、ディスコをデスコとしか発音できなかった世のおじさんたちを見て面白がっていたことが懐かしく思い出されます(笑)。Listen to the ground
There is movement all around
There is something goin’ down
And I can feel it
On the waves of the air
There is dancin’ out there
If it’s somethin’ we can share
We can steal it
フロアーに耳を傾けてみな
そこら中で動いてるよな
何かが起こってる
俺はそれを感じるんだ
漂う空気が波のように揺れる中さ
そこにあるのはダンスなのさ
それがみんなの求める何かなのならさ
真似しちゃえばいいんだ
And that sweet city woman, she moves through the light
Controlling my mind and my soul
When you reach out for me, yeah, and the feelin’ is right
あのイカした都会の女、彼女はスポットライトを浴びて踊りまくりだ
俺の心と魂を支配しながらね
彼女が俺を求めるなら、そう、その思いは間違っちゃいないんだ
Gimme that night fever, night fever
We know how to do it
Gimme that night fever, night fever
We know how to show it
俺に夜の熱気を吹き込んでくれ、夜の熱気をな
どうやるかは分かってるから
俺に夜の熱気を吹き込んでくれ、夜の熱気をな
どう魅せるかは分かってるから
Here I am
Prayin’ for this moment to last
Livin’ on the music so fine
Borne on the wind, makin’ it mine
俺はここにいるぜ
この瞬間が続くことを願いつつ
イケてる音楽と共に生きてる俺がさ
神々しい香りを放つ君を、俺はものにするのさ
Night fever, night fever
We know how to do it
Gimme that night fever, night fever
We know how to show it
夜の熱気さ、夜の熱気なんだ
どうやるかは分かってるから
俺に夜の熱気を吹き込んでくれ、夜の熱気をな
どう魅せるかは分かってるから
In the heat of our love, don’t need no help for us to make it
Gimme just enough to take us to the mornin’
I got fire in my mind, I get higher in my walkin’
And I’m glowin’ in the dark, I give you warnin’
愛の熱気の中じゃ、二人がひとつになるのに助けなんて要らない
一緒に朝まで過ごす熱気を吹き込んでくれればいいんだよ
心に魂の焔が宿り、歩みの中で俺の気分は高揚するんだよ
だから、暗闇で輝く俺には気をつけなよ
*このあとは同じフレーズの節が続くだけなので省略。最後にGimme that night fever, night fever. We know how to do it とGimme that night fever, night fever. We know how to show it を連呼して曲は終わります。
Night Fever Lyrics as written by Maurice Ernest Gibb, Robin Hugh Gibb, Barry Alan Gibb
Lyrics © Warner-Tamerlane Pub Corp, Crompton Songs LLC, Universal Music-Careers, Universal Music Publ. Mgb Ltd
【解説】
この曲を作詞作曲して歌ったBee Gees は、Barry Gibb、Robin Gibb、Maurice Gibb の3兄弟が1958年にオーストラリアで結成したポップソングのグループで、その後、活動の場をアメリカに移しました。世界中で売れた彼らのレコードの枚数は少なく見積もっても1億枚、実際には2億枚に達したとも言われています。こんな数字になってくると、もう訳が分からないというか、いったい印税がどれくらいの額になるのか気になって仕様がないですね(←そこかよ・笑)。実はこの3人、オーストラリア出身ではなく英国のマン島生まれで、少年期に両親と共にオーストラリアへ移住しました。因みにこのマン島、英国本土とアイルランドの間に浮かぶ日本の淡路島とほぼ同じ大きさの島なんですが、英国の島でもなくアイルランドの島でもないという特殊な島。じゃあ、どこの島なのかというと「Crown dependency」と言って、英国王室の直属領なんです。21世紀の今になっても尚、江戸幕府の天領(幕府直轄領)みたいなものが存続しているのですから、驚きというか、時代錯誤も甚だしいですよね(笑)。そのような地なので、マン島は主権国家ではありませんが自治権を持ち(但し、マン島生まれの住民は全員、英国の市民権を持ってます)、マンクス・ポンドという独自の通貨(イギリス・ポンドと対価)やマンクス・パスポートという独自の旅券を発行しています。なぜそんなことになったのかというのは話が長くなりますので、興味を持った方は各自で英国史を読んでみてください。ではでは、雑談はこれくらいにしておいて歌詞を見ていきましょう。
冒頭で述べたとおり、この曲の歌詞は映画の為に作詞されたものではなかったとは言え、ディスコブームの中で作られたものであり、歌詞を一読してみると、歌詞のテーマが夜のダンスシーンにあることに変わりはなかったので、第1節1行目のground は、ディスコのダンスフロアー、2行目のmovement は、フロアーの上で踊る若者たちのステップであると理解しました。If it’s somethin’ we can share. We can steal it は、フロアーの上で踊られているダンスの中に何かビビっとくるようなダンスを見つけたら、同じように真似て踊ればいい(パクってしまえ)ということでしょう。2節目を聴いて目に浮かぶのは、ディスコのフロアーの上でスポットライトを浴びてキレキレのダンスを披露する女性とその姿に魅了されて彼女にぞっこんになっている主人公の男性の姿。彼女に夢中になるのは勝手ですが、When you reach out for me, yeah, and the feelin’ is right は自信過剰の極みですね(笑)。第3節に出てくるGimme はgive me の口語表記で、Gimme that night fever, night fever は「彼女にアタックしたいから俺の背中を押してくれ」という風に僕には聞こえました。勿論、彼女へのアタックは言葉による口説きではなく、彼女と二人で踊り、自分のダンスを彼女の目の前で披露することが主人公にとってのアタックです。だから、そうなった時にはWe know how to do itやWe know how to show it、つまり「お互いどう踊ればいいのかは分かってるだろ」と言っているのでしょう。
第4節はちょっと難解。1行目から3行目まではいいとして、問題は4行目のBorne on the wind, makin’ it mine ですね。Borne はbear の過去分子で、bear には様々な用法がありますが、ここでは何かが風に吹かれて運ばれてくるという感じでしょうか。何が風に吹かれているのかが分からず悩みましたが、その答えはRoy Orbison の同名の曲の中にあるのではないかと思って調べてみたところ、歌詞の中にBorne on the wind is the fragrant scent of God というフレーズを見つけました。つまり、風に吹かれているのは神のかぐわしい香りであり、それがフロアーの上で踊る彼女の魅力(=彼女そのもの)の暗喩であると考えれば、その後のmakin’ it mine にばっちりつながりますね。さらに深読みして、makin’ it mine も、モノにするというよりも、同じくRoy OrbisonのBorne on the Windの歌詞の中に出てくるYou don’t love, but you love for me to be,will be love with you に近い感情なのではないのかなとも思ったりもしていますが、あくまでもいつものとおり、個人の見解です(汗)。5節目は第3節と同じフレーズの繰り返し。6節目を聴くと、どうやら主人公のアタックは成功しそうな雰囲気ですね。ただ、4行目のAnd I’m glowin’ in the dark, I give you warnin’は、またまた自信過剰。この主人公の男は自分が相当イケてる男だと思っているようで、ディスコのフロアーの上で踊りまくってドヤ顔で決めポーズを取る劇中のジョン・トラボルタの姿と奇しくも重なります(笑)。以上、Bee Gees のNight Feverでした!
「あれっ?今回は映画の本編についての話は無いんですか?」とか言わないでください。この解説を書く為 に久し振りにSaturday Night Fever を見てみましたが、映画についてはノーコメント。「トラボルタ、わけ ぇ~」という感想くらいしかありません(笑)。
【第56回】My Generation / The Who (1965)
アメリカ映画で使われた曲がずっと続いてきましたので、ここらで1曲イギリス映画で使われた曲も紹介しておきましょう。1979年に公開された映画「Quadrophenia」の挿入歌であるThe WhoのMy Generation です。Quadrophenia だなんて、なんだか学術用語風の小難しそうな映画のタイトルですが、これは「四重人格」という意味で、ビートルズやローリング・ストーンズと並ぶイギリスの偉大なバンドThe Who が1973年にリリースしたロック・オペラとでも呼ぶべき大作のアルバムQuadrophenia(60年代のロンドンで暮らすジミーという多重人格に苦しむmod の青年の心の葛藤が歌詞の中に物語風に散りばめられているアルバムです)をベースにこの映画が製作されたことから同じ名のタイトルになっています(邦題は相変わらず「さらば青春の光」なんていう意味不明なものに変えられていますね・汗)。mod(日本で言うところのモッズです)はmodernist の略で、60年代に英国の若者の間で一世風靡したサブカルチャー。カスタムを施したベスパやランブレッタの大型スクーターを乗り回し、米軍払い下げのパーカー(M1951 Parka)を着ていることが見た目の特徴でした。実はこのMy Generation という曲もまた、ここまでの映画音楽特集で紹介してきた曲と同様、映画の為に作られたものではない曲で、Quadrophenia の撮影が始まるよりずっと以前の1965年にリリースされていた曲なんですが、時代背景が同じなので、曲の歌詞がQuadrophenia という映画の中に違和感なく溶け込んでいます(と言っても、劇中、mod が集うパーティーのシーンでちらっと流れるだけなんですが)。映画自体は1960年代半ばにロンドンで時を過ごしたmod の若者たちの無軌道な青春(mods と対立するカフェレーサー風のバイクと黒の革ジャンが特徴のrockers との連日の乱闘騒ぎや麻薬の乱用、道徳観念の低下など)がリアルに描かれていてなかなか味のあるもので、ポリスのスティングもmod のリーダー役で出演しています(演技はダイコンですが・笑)。最初から最後まで全編を通してThe Who の曲が次々と流れるこの映画、音楽ビデオとしても楽しめますので「そんな映画知らない」という方は、一度ご覧になってみてください。People try to put us d-down
(Talkin’ ‘bout my generation)
Just because we get around
(Talkin’ ‘bout my generation)
Things they do look awful c-c-cold
(Talkin’ ‘bout my generation)
I hope I die before I get old
(Talkin’ ‘bout my generation)
世の連中は俺たちを、こ、こきおろす
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
だって、俺たちはあちこち動き回るからな
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
連中がやることは、つ、つ、冷たい仕打ちに思えるよな
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
歳取る前に死んじまえたらいいんだけどな
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
This is my generation
This is my generation, baby
これが俺の世代なのさ
そう、俺の世代なんだよ
Why don’t you all f-f-fade away
(Talkin’ ‘bout my generation)
And don’t try to dig what we all s-s-say
(Talkin’ ‘bout my generation)
I’m not tryin’ to cause a big s-s-sensation
(Talkin’ ‘bout my generation)
I’m just talkin’ ‘bout my g-g-g-generation
(Talkin’ ‘bout my generation)
どうしてあんたらみんな、き、き、消え失せてくれねえんだ
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
俺たち皆が、い、い、言ってることを理解しようとなんてするなってんだ
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
俺は、お、お、大騒ぎを起こそうとしてるんじゃねえさ
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
俺はただ、俺の、せ、せ、せ、世代のことについて話してるだけさ
(俺の世代のことを言ってるんだ)
My generation
This is my generation, baby
My, my, my, my, my ge—
俺の世代
そう、これが俺の世代なんだよ
俺、俺、俺、俺、俺の、せ…
Why don’t you all f-fade away
(Talkin’ ‘bout my generation)
And don’t try to d-dig what we all s-s-s-s-s-say
(Talkin’ ‘bout my generation)
I’m not tryin’ to cause a big sensation
(Talkin’ ‘bout my generation)
I’m just talkin’ ‘bout my g-generation
(Talkin’ ‘bout my generation)
どうしてあんたらみんな、き、き、消え失せてくれねえんだ
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
俺たち皆が、い、い、い、い、い、言ってることを、り、理解しようとなんてするなってんだ
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
俺は大騒ぎを起こそうとしてるんじゃねえさ
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
俺はただ、俺の、せ、世代のことについて話してるだけさ
(俺の世代のことを言ってんだぜ)
This is my generation
This is my generation, baby
これが俺の世代なのさ
そう、俺の世代なんだよ
*このあと第1節の歌詞を繰り返し、アウトロでTalkin’ ‘bout my generation とThis is my generation を連呼して曲は終了。
My Generation Lyrics as written by Peter Townshend
Lyrics © Devon Music
【解説】
硬質なギターの音色とbloody lunatic なドラマーKeith Moonのドラムの乱れ打ちで始まるMy Generation、そのあともギターとベースが交互にバトルをするかのような演奏が続きますが、ギターを演奏しているのはこの曲を作詞作曲した天才肌のPeter Townshend(タウンゼントと発音します。アクセントはタにあり、トはドに近いトです)。この人のギター演奏はとても上手いですね。John Entwistle のベースの音色もギターに負けないパンチ力があり、ロックの曲でベースのソロ演奏のパートが登場したのはこの曲が最初のようです。My Generation を元祖パンク・ロックと位置づける向きもあるようですけども、ギターのコードを3つくらいしか使わない、と言うか3つくらいのコードしか弾けない技量の無いパンク・バンドの粗末な演奏と 比べれば、演奏技術に天と地の差がありますので、両者は全くの別モノです(怒)。それと、この曲を聴いて誰もが気付くのはボーカルのRoger Daltrey のstuttering(吃音)を交えた歌い方ですね。なぜそのような歌い方をしたのかについては様々な説があるようですが、最初のレコーディング時にRoger Daltrey が緊張のあまりstuttering 気味で歌ってしまい、このstuttering 部分は残しておいた方が面白いということになって、最終的にはstutteringを敢えて強調して収録したというのが真相のようです。なぜ残しておいた方がいいということになったのかと言うと、stutteringに若者の怒りや苛立ちが強調されるように響く効果があることに気付いたからで、実際そのとおりの効果を生みました。因みにイギリスの国営放送であるBBCは当初、stutterer (吃音者)に配慮してこの曲を放送禁止にしていましたが、曲のstuttering 部分がstutterer に対する侮辱ではないことを理解して後に解除しています。さて、そんな曲の歌詞ですが、使われているのは中学校レベルの単語だけ。しかも、内容的に難解な部分も皆無。楽勝の解説になりそうですよ!(嬉)。
1節目、英語の用法についての解説が必要な部分はありませんね。強いて言えば ‘bout くらいで、これはabout のこと。2行目のwe get aroundからは、mod やrocker の連中がスクーターやバイクにまたがって、街中をあてもなく意味もなく走り回っているいるような光景が目に浮かびます。3行目のThings they do look awful cold は、Townshend が子供の頃、彼の家の前には1935年製パッカードの霊柩車が置いてあって、いつもその傍を通って行く英国の王室関係者が霊柩車を見て気分を害し、警備担当者に命じて車を移動させたことにインスパイアーされたらしいです。なので、ここの歌詞は「大人は勝手なことしかしない冷たい連中だ」ということなのだと僕は受け止めました。4行目のI hope I die before I get old は、青春真っ只中の多感な若者が一度は思うフレーズですね。もう少し文を補足して言うと「あんな糞みたいな大人どもになるくらいなら、大人になる前に死にたい」ということです。第2節も解説不要。第3節1行目のWhy don’t you all fade away は、その糞みたいな大人たちへ向かって言っているのでしょう。皆さんの中にも、思春期の頃「おまえたち大人はみんな消えてくれ」なんて思ったことが一度や二度ある方は多いのではないでしょうか。2行目のdon’t try to dig what we all say も「どうせあんたたち(大人たち)に話しても理解できる訳がないんだから、最初から理解しようとなんてするな」と言っているのだと受け止めました。このあとの第3節から5節までも解説の必要なし。
以上、これにて本日の解説は終了。マンモスうれピー!(笑)
【第57回】Flashdance… What a Feeling / Irene Cara (1983)
1983年に公開された映画「Flashdance」は、テレビのMTV人気に乗じてミュージック・ビデオ・スタイルという映画の新しいジャンルを生み出しましたが(Footloose やPurple Rain, Top Gun といった作品が後に続きました)、今回紹介するのはその挿入歌として作られ、映画の公開と共に日米で大ヒットしたIrene Cara の「Flashdance… What a Feeling」です。単にFlashdance と呼ばれることが多いこの曲、長ったらしい方が正式なタイトルで、米国ビルボード社の同年の年間ヒットチャートで3位にランクインしました。出だしで「挿入歌として作られ」と書いたとおり、この曲の歌詞はFlashdance の音楽担当を任されたGiorgio Moroder から曲の作詞依頼を受けたKeith Forsey とIrene Cara(この曲を歌ったヒスパニック系の歌手)が、完成した映画に目を通して書き上げたものなので、歌詞の内容は映画のストーリーに沿ったものになっています。じゃあ、本コーナーの第1回で取り上げた「Call Me」みたいに、映画の本編を見ないと歌詞の内容を理解するのが難しいのかというと、そうでもありません。見なくても大丈夫ですし、お薦めもしません(ノーコメント級の映画ということですね・笑)。前々回に紹介した映画Saturday Night Fever では、劇中でトラボルタが踊り狂うシーンのダンスの振り付けをする際、まだNight Fever やStayin’ Alive の曲が届いていなかったことからBoz Scaggs の曲なんかを使って振りを付けていたらしいんですが、この映画Flashdanceも曲は撮影終了後に作られたものですから、撮影時はいったいどんな曲を使って振りを付けていたのかが気になるところ。でも、この映画のダンスシーンの映像と後から作られたFlashdance… What a Feeling の音は見事にマッチしていますので、やはりプロの編集技術というのは大したものです。映画Flashdance がヒットした際、日本ではジャズダンスのブームが起こり、主人公のアレックス役を演じたJennifer Beals を真似てレオタードとレッグウォーマーに身を包み、ダンス・スタジオで踊りの練習に励むにわかダンサーがあちこちで急増したんですが、残念ながら、レオタードとレッグウォーマーは日本女性の体型には全く似合ってませんでしたね(汗)。もうひとつ付け加えておくならば、ブレークダンスと聞いてそれがどのようなダンスであるのか分からないという日本人は、今では老人たちくらしかいないと思いますが、多くの日本人がブレークダンスなるものを初めて目にしたのがこの映画でした。First, when there’s nothing, but a slow glowing dream
That your fear seems to hide deep inside your mind
All alone, I have cried, silent tears full of pride
In a world made of steel, made of stone
最初、何もない時、夢ってのはゆっくりと煌こうとしてるんだよ
怖くて心の奥底に閉じ込めてるように思える夢がね
ひとりぼっちのあたしは泣いたわ、誇りに塗れた涙を静かに流して
鋼鉄で出来た世界、鉱石で出来た世界でね
Well, I hear the music, close my eyes, feel the rhythm
Wrap around, take a hold of my heart
でもさ、音楽を聴き、目を閉じ、リズムを感じれば
リズムが身体にまとわりついて、やる気が出てくるの
What a feelin’, being’s believin’
I can have it all, now I’m dancing for my life
Take your passion, and make it happen
Pictures come alive, you can dance right through your life
あー、最高よ、生きるって信じることなのね
すべてが望みどおりよ、だって、あたしは今、自分の為に踊ってるんだもの
情熱で生きて、実現させるの
夢は現実のものになるの、これからもずっと踊れるんだもの
*このあとは同じ歌詞の繰り返しが続くだけなので省略します。
Flashdance…What a Feeling Lyrics as written by Giorgio Moroder, Keith Forsey, Irene Cara
Lyrics © WB Music Corp, Sony/ATV Harmony
【解説】
Flashdance…What a Feeling のシングルカットの演奏時間は約4分ありますが、間奏やコーラスが多く、歌詞も同じフレーズの繰り返しなので、実質的な歌詞は驚くほど短いです。歌詞の英語も特に難しい単語や構文は使われておらず比較的分かり易いものになっていますので、今回もちゃちゃちゃっと見ていきましょう。
第1節2行目のthat は1行目のdream を受けていますので「不安や怖れが心の奥底に隠そうとしていたように思える夢」ということです。4行目のIn a world made of steel, made of stone。ここの部分だけは映画を見ていないと「何のことを言ってるのかさっぱり分からない」ということになってしまいますね。実はこの映画の主人公、昼はペンシルベニア州ピッツバーグ(かつてはアメリカの鉄鋼の半分を生産していた街)の製鉄所で溶接工として働き、夜は近所のナイトクラブでダンサーをしながらプロのダンサー養成所のオーディション突破を目指しているという設定なんです。なので、In a world made of steel, made of stone は彼女の昼の職場の比喩と考えて間違いないでしょう。stone はiron ore 鉄鉱石の言い換えだと思います。第1節を聴いて目に浮かぶのは、夢を追って努力はしてるんだけども、なかなか芽が出ないことを仕事中に悲観している主人公の姿ですね。2節目、I hear the music 以下の文はすべて主語のI が省略されていますので、I を補足すれば簡単に理解できます。2行目のWrap around は何をwrap したのかというと、それはthe rhythm であり、続くI take ahold of my heart は直訳すれば「自分で自分の心を掴む」ですから、このように訳しました。どうやら、主人公は成功する為の何かを掴んだようで、その感情を爆発させるのが続く第3節。最初に出てくるWhat a feelin’は、曲のタイトルにもなっていますが、僕の感覚では「あー、最高!」とか「あー、気分がいい!」という感じの表現。そのあとのbeing’s believin’はto be is to believe ということです。2行目のhave it allは「欲しい物を全て手に入れる」とか「望みを全てかなえる」という意味で使われる慣用句で、3行目のTake your passion は「情熱を持て」と言うよりも「情熱で生きろ」という感じですかね。4行目のPictures come alive は、このあとに流れるコーラス部分を聴くとPictures come alive when I call と歌ってますので、ここではwhen you call が省略されていると考えていいでしょう。直訳すれば「自分が強く求めれば絵も生き生きしてくる」ですから「望めば夢は現実のものになる」ということです。through your life も直訳すると「生涯を通して」なので、ここでは「これからもずっと」という言葉をはめてみました。この第3節は、前半2行で自らの成功を語った主人公が、後半の2行であとに続く者(自分と同じように夢を追っている者)に対して自分を信じて突き進めと励ましているという理解で良いのではないかと思います。
と、あっと言う間に解説が終わってしまいましたので、今日は最後に映画Flashdance の小ネタを少し紹介して終りにすることとしましょう。この映画で主役のダンサーを演じたJennifer Beals は、オーディションで4千人の中から選ばれたシンデレラなんだそうですが、映画の主人公とは違ってダンスはあまり得意ではなかったようで、劇中の彼女のほとんどのダンスシーンで実際に踊っているのは替え玉のプロのダンサーなんです(ナイトクラブの天井から落ちてきた大量の水を浴びて踊るあの有名なシーンも、踊っているのは替え玉ダンサー・汗)。この映画を撮影した時のJennifer Beals は、名門イェール大学に入学したばかりの文学を専攻する女子大生でした(その後、ちゃんと卒業もしており相当の才女です)。彼女は武道やトライアスロンをやる人なので運動神経がにぶいということではなかったようなんですが、いくら運動神経が良くても、直ぐにプロのダンサーみたいに踊れるようになる人はいませんね。イェール大学と言えばスタンフォードやプリンストン、ハーバードと並ぶ超難関大学。興味深いことにDavid Duchovny(テレビドラマ「X-ファイル」のモルダー捜査官と言った方が早いでしょうか)は大学のクラスメイトだったそうで、名女優のJodie Foster も同じ時期にイェール大学で学んでいました(今でも二人は親友らしいです)。そんなエピソードを聞いていたら、ちょっと映画を見てみたくなってきたという方もおられるかもしれませんけど、お薦めはしませんよー(笑)。
【第58回】Footloose / Kenny Loggins (1984)
さて、今日ご紹介するのは、映画「Flashdance」とストーリーは全く異なるものの、Flashdance の二番煎じのような感がある映画「Footloose」のtitle song(主題歌)です。主題歌なので曲のタイトルは映画と同一。作詞作曲を担当したのは、当時既にベテラン歌手であっただけでなく作曲家としても名を高めつつあったKenny Loggins で、自らこの曲を歌いました(映画「トップガン」の挿入歌Danger Zone を歌ったのもこの人です)。この曲自体は1984年のビルボード社年間ヒットチャートで4位に食い込むほどの大ヒット曲となりましたが、映画の方は米国内の興行収入が8千万ドルとFlashdance の興行収入の3分の1という結果に終わっています(映画の製作にかかった費用が8百万ドルとされていますから、まあ、充分な収益なんですが)。映画のストーリーは、地元の有力者である教会の牧師、ムーアの方針でダンスとロックの曲が禁止されている田舎町のハイスクールに転校してきた高校生のレン(レンの役はKevin Bacon が演じました。レンが踊るダンスシーンはFlashdance 同様、多くのシーンでプロのダンサーが代役というか、替え玉double を務めています)が同じ高校に通うムーア牧師の娘、アリエルを巻き込んでダンスとロック禁止の状況に対して立ち上がり、最後に自由を勝ち取るというもので、僕の中ではノーコメント級の映画です(笑)。歌の方のFootloose は、主題歌の制作依頼を受けたというのにKenny Loggins は映画のストーリーも知らないまま作詞作曲に入ったそうで、映画の内容を把握していた共作者のDean Pitchford からいろいろとアドバイスを受けたとKenny 本人が語っています。そうして完成したその歌詞、言葉の省略が多くて「なんだかなー」って感じで、決して上手い詩だとは思えないのですが、ノリノリのメロディーラインと完璧というぐらいにマッチしてますので、まあ良しとしておきましょう(←また上から目線かよ。笑)。Been workin’ so hard
I’m punchin’ my card
Eight hours, for what?
Oh, tell me what I got
俺、メチャクチャ働いたんだよね
で、タイムカードを押したらね
8時間だって、それって何の為に働いたんだい?
教えてくれよ、そこから俺は何を得たってんだい
Well, I got this feeling
That time’s just holdin’ me down
I’ll hit the ceiling
Or else I’ll tear up this town
それで、俺は感じたんだ
俺は時間に支配されてるってさ
もう我慢は限界なんだ
我慢できなくなりゃあ、この町をズタズタにしてやるさ
Tonight, I gotta cut loose, footloose
Kick off your Sunday shoes
Please, Louise
Pull me off of my knees
Jack, get back
Come on before we crack
Lose your blues
Everybody cut footloose
今夜は、ハジけてやるんだ、自由気ままにさ
気楽に行こうじゃねえか
ルイーズ、お願いだ
手を差し伸べてくれよな
ジャック、戻って来るんだ
俺たちがハジけきっちまう前に来るんだ
悩みなんて忘れてさ
みんなでハジけるのさ
You’re playin’ so cool
Obeyin’ every rule
But dig way down in your heart
You’re burnin’, yearnin’ for songs
クールに立ち回ってても
どんなルールに従ってても
心の中では求めてる
誰もが熱く燃えてるんだよ、歌を熱望してるのさ
Somebody to tell you
Life ain’t passin’ you by
I’m tryin’ to tell you
It will if you don’t even try
誰かはこう言うね
人生ってのはただ通り過ぎて行くもんじゃねえって
でも、俺はこう言うね
人生に立ち向かわなきゃ、ただ通り過ぎて行っちまうって
You can fly if you’d only cut loose, footloose
Kick off your Sunday shoes
Ooh-ee, Marie
Shake it, shake it for me
Whoa, Milo
Come on, come on, let’s go
Lose your blues
Everybody cut footloose
ハジけちまえば空だって飛べるぜ、自由気ままにさ
気楽に行こうじゃねえか
オーイェーイ、マリー
急げ、急げ、俺の為に
ワォー、マイロ
そう、その調子だ、みんなでキメてやろうぜ
悩みなんて忘れてさ
みんなでハジけるのさ
You’ve got to turn me around
And put your feet on the ground
Now take the hold of your soul
I’m turning it loose
先ずは俺を振り向かせてくれなきゃダメだ
そして、次は地に足をつけるんだ
そうなりゃ、魂を掴んでるも同然だね
そうさ、俺は解き放たれてるんだ
*このあとは同じ歌詞の繰り返しが続くだけなので省略。アウトロで最後にEverybody cut footloose と叫んで曲は終わります。
Footloose Lyrics as written by Dean Pitchford, Kenny Loggins
Lyrics © Sony/ATV Melody, Sony/ATV Harmony
【解説】
この曲のイントロ、よく耳を澄ますと、なんかアフリカの部族民の叫び声(←あくまでも僕の勝手なイメージです)みたいなヘンな声が聞こえてきますね。何か意図があってこの声を入れたと言うよりも、レコーディング中にバックコーラスの誰かが思わず出してしまった声をマイクが拾っていて、編集時にそれを聴いた関係者が「面白いじゃないか。このままで行こうぜ」ってな感じで残したのかも知れません(←これも僕の勝手な想像です・笑)。では、早速歌詞を見ていきましょう。第1節1行目のBeen workin’ so hard は、文頭のI have が省略されています。3行目のfor what?は勿論、1行目の事実に対してです。タイムカードを押すことに対してではないですからね(笑)。2行目のmy cardはそのタイムカードのこと(タイムカードを押すは、punch a time card とかpunch a clock といった表現を使います)。第1節を聴くと「俺は毎日8時間懸命に働いて、毎日同じ時間にタイムカードを押して、いったい何の為にそんなことをしてるんだろう?意味なんてあるんだろうか?」と主人公が自問しながら悶々としている様子が目に浮かびますね。第2節2行目のholdin’ me down は、押さえつけられている、ねじ伏せられているような状態。3行目のhit the ceiling は「予算などが上限に達する」といった意味で使われることが多いですが、ここでの意味は「怒りが限界に達する(天井が怒りの頂点というイメージで考えてみてください)」です。4行目のOr else はhit the ceiling できなければ、or else 以下の状況になるということです。どういう状況になるのかというと、主人公はI’ll tear up this town と言ってる訳ですが、時間に支配されている毎日に対して悩み、我慢していることは理解できますが、我慢できなくなったら町をズタズタにしてやるだなんて、どこからそういう発想が出てくるんでしょうか。そんなことを言い出す人がいたら、単なるヤバい人ですよね(笑)。ですが、ですが、この映画の筋から考えれば、暴れまくって町をズタズタにすると言ってるのではなく、ダンスと音楽で町をズタズタにするという意味でそう言っていると考えるのが自然でしょう(←最初からそう言えよ!・汗)。
3節目、最初の行のcut loose は「cut 縄を切ってloose 解き放つ」から転じて「羽目を外す、羽を伸ばす」といった意味で使われるようになった自動詞。映画と曲のタイトルになっているfootloose も同じように「足foot をloose 解き放つ」から転じて「足のおもむくままの、自由気ままな」という意味になった形容詞です(この作品の中でのfootloose はもはや名詞化してますが)。2行目のKick off your Sunday shoes はかなり難解。直訳すれば「日曜日の靴なんて脱いでしまえ」になりますが、これだと意味不明ですよね(汗)。実はこのSunday shoes という言葉、昔、アメリカで教会の日曜礼拝に参加する人々がその日の為に履いていたよそ行きの靴のことを指していたもので(貧乏人でも身形をきちんと整えて教会を訪れる訳です)、この歌詞におけるSunday shoes は、堅苦しい生活やルール、建前といったものの比喩であり、Kick off your Sunday shoes はとどのつまりTake it easy と同じような意味だなと僕は理解しました。劇中では、Lori Singer が演じるアリエルの父親の職業が牧師という設定なので、Sunday shoes などという表現をわざわざ使ったのではないかと思います。4行目のPull me off of my knees も簡単なようで難しいです。こちらも直訳すると「膝から引き離す」という感じでワケワカメですけど、実際のイメージとしては、立っていた人が膝をついて倒れ、その人に対し、手を差し伸べて立ち上がらせるといった動きです。つまり元の姿に戻すということですから「本来あった姿に戻す、立ち直らせる、自分を取り戻させる」ということですね。6行目のcrack はガラスなどがパリーンと割れるイメージ。7行目のblues は、最近は日本語でも使うようになったブルーという言葉と同じで「今日はなんかブルーだ」のブルーです。この第3節ではLouise とJack という人物が(第6節でもMarie とMilo という人物が)唐突に登場してくるので、映画の登場人物たちなのかなと思って調べてみましたが、どの人物も登場人物の名前に重なっていませんでした。この人たちはいったい誰なんだと悩んでいたところ、見つけたのが雑誌のインタビューでKenny Loggins が語っていた言葉です。
「The part that lists all those names in rhymes – “Please, Louise” “Jack, get back” “Oowhee, Marie” “Whoa, Milo” – was inspired by Paul Simon’s “50 Ways to Leave Your Lover”」
因みにポール・サイモンのその曲の歌詞がどんなものなのかと言いますと、
You just slip out the back, Jack
Make a new plan, Stan
You don’t need to be coy, Roy
Just get yourself free
こんな感じ。つまり、名前には何の意味も込められていなくって、Tom であろうがJudy であろうが、Kennyとっては誰の名前でも良かったのでしょう(ポール・サイモンは韻が踏めるよう文末の単語と語尾の音の響きが同じ名前を選んでいますが)。どうせなら、劇中の登場人物の名前を使えば良かったのにと思いますね。まあ、インスパイアーされたと言えば聞こえはいいですけども、要するにパクったっていうことです(笑)。4節目も何を言いたいのかイマイチ良く分かりません。ここのyou に当てはまる人物は映画のストーリーから考えればアリエルしかいませんが、恐らくこの節のyou は彼女に対する直接の言葉ではなく、アリエルの姿を重ね合わせつつ、総称人称のyou として表現しているのでしょう。アリエルのように牧師の娘として社会の常識、ルールに従って生きる堅い娘であってもそうであるように、人というのは、心の奥底ではダンスや音楽を求める血潮がたぎらせているものなのだということですね。5節目は和訳のとおりで特に解説不要。第6節4行目のShake it は、ネイティブ話者がShake it と命令形で言った場合、普通は「急げ!」の意味で使っています。
第7節もなんだか良く分からないフレーズが連なっていますが、ここで語られているのは「音楽やダンスは人を自我から解き放ち、ありのままの自分を取り戻させるのだ」というこの曲全体が持つメッセージのまとめであると理解しました。1行目のYou’ve got to turn me around は直訳すれば「僕を振り向かせないといけない」ですが「それ(振り向かせること)ができるようになる為には、先ずは自分が変わることだ」ということを示唆しているのではないかと思います。2行目のput your feet on the ground は、この映画の冒頭がダンスを踊る若者たちが踏む足のステップのアップ映像ばかりで構成されていることから考えると「踊り始めようぜ」の言い換えでしょう。3行目のフレーズはNow take the hold of all とNow take the hold of your soul のどちらが正しい歌詞なのか意見が別れていまして、all 派が多勢なんですけども、all だとそのall が何を指しているのかが良く分からないので僕はyour soul の方を選びました。何度もこの部分を聴いてみましたが、確かにall と言っているようにしか聞こえません。ですが、耳を研ぎ澄ますとof とall の間に微かな異音が聞こえるような気もします。なので、your soul のy とs の音が超弱音になってur oul となり、ur はof の後ろにある為にほぼ無音化してall と聞こえるのかも知れないというのが僕の結論です。
では最後に、この映画で主役を張ったKevin Bacon ネタをひとつ紹介して今回も終りにしましょう。彼が出演した映画やドラマのリストを見ると、ただ単に仕事を選ばない人だからなのか、それとも器用な役者だからなのか、その作品は実に多岐にわたっていますが、リストの中にベトナム戦争モノの映画「Platoon」が入っていなかったので「あれっ?この映画に悪役で出てなかったっけ?」と思って調べてみたところ、出演していたのはKevin Dillon という別の俳優でした(Kevin Dillon は同じく俳優であるMatt Dillon の弟)。Kevin Bacon とKevin Dillon、名前が同じKevin というだけでなく、実に顔立ちもよく似てるんですよね。Matt Dillon の弟と言うよりも、Kevin Baconの弟という感じなんです(←なんだよ、そのつまんないネタ・笑)。
【第59回】Sweet Home Chicago / The Blues Brothers (1980)
第51回から続けてきた映画音楽特集もいよいよ今日で最終回!(←いつものように勝手に最終回・汗)。特集の最後を飾る曲として僕が選んだのは、ご機嫌な音楽が全編に溢れる1980年公開のコメディー映画「The Blues Brothers(ブルース・ブラザース)」の挿入歌として使われたSweet Home Chicagoです。この曲のオリジナルはRobert Johnsonという27歳で早逝した伝説のブルース歌手が1937年にリリースした古い曲なのですが、映画の中では主役を演じたジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが自ら熱唱しました(この曲の源流をさらにたどれば、同じく黒人歌手であるKokomo Arnoldが歌ったOld Original Kokomo Bluesという曲に行き着きます)。この映画を見れば分かりますが、ジョン・ベルーシって実に歌が上手いんですよね。ジョンはアルバニア系アメリカ人でこの映画の舞台となったシカゴ出身。俳優業に進出する前は、アメリカのテレビ局で深夜に放映されていたお笑い番組「Saturday Night Live(SNL)」で自らの人気を不動のものにしたコメディアンでした(ビデオでしか見たことがないですが、彼がやってたジョー・コッカーとかマーロン・ブランドのモノマネを交えたコント劇、面白かったです。サムライのコント、あれはダメですね。刀を腰に差した相撲取りにしか見えません・笑)。森山周一郎さん風の声がシブいダン・エイクロイドもSNL出身(ダンはアメリカ人ではなくカナダ人)、映画「ビバリーヒルズ・コップ」で大ブレイクしたエディー・マーフィーもSNLから飛躍したコメディアンの一人なのですが、その事実は日本ではあまり知られていないようです。映画「ブルース・ブラザース」のストーリーはと言うと、イリノイ州の大都市シカゴ近郊にある孤児院の出身であるジェイク(ベルーシ)とエルウッド(エイクロイド)のブルース兄弟(義兄弟)が、税金の未納で閉鎖寸前になっている孤児院の為に金策に走り回るというたわいもないものでコメントに値しませんが(笑)、ベルーシとエイクロイドの二人が劇中で披露する数々の歌とダンスは一級品。黒のスーツの上下にソフト帽という主人公のファッションといい(Robert Johnson のアルバムのジャケットを見てみてください)、次々に流れるリズム&ブルースといい、映画のタイトルといい、すべてが黒人音楽へのオマージュであることは明白で、映画ではなくミュージック・ビデオとして評価するならば最高の仕上がりです(当時、アメリカ西部で映画館の大規模チェーンを運営していたTed Mann は、The Blues Brothers の試写を見て「こんな映画、白人は見に来ない」と言ったそう)。この映画にはジェームズ・ブラウンやレイ・チャールズ、アレサ・フランクリン、キャブ・キャロウェイ、ジョン・リー・フッカー、チャカ・カーンといった有名黒人ミュージシャンが多数出演している他、映画「スターウォーズ」でレイア姫役を演じたキャリー・フィッシャーやイーグルスのギター奏者ジョー・ウォルシュ、映画監督のスピルバーグまでもがちょい役で出演している点も面白いですね(有名人をたくさん使ったせいではないのでしょうが、この映画、この種の作品の当時の制作費としては破格の3千万ドルに近い大金が注ぎ込まれることになりました)。
Come on
Oh, baby don’t you wanna go?
Come on
Oh, baby don’t you wanna go?
Back to that same old place
Sweet home Chicago
Come on
Baby, don’t you wanna go?
Hi-de-hey
Baby, don’t you wanna go?
Back to that same old place
Oh, sweet home Chicago
なあ
あんた、帰りたくないかい?
なあ
あんた、帰りたくないかい?
あの変わらぬ場所
愛しい我が家のシカゴへ
なあ
あんた、帰りたくないかい?
ヒャッホー
あんた、帰りたくないかい?
あの変わらぬ場所
そう、愛しい我が家のシカゴへ
Well, one and one is two
Six and two is eight
Come on baby, don’t ya
Make me late
1足す1は2だ
6足す2は8さ
なあ、あんた、やめてくれよ
俺を待たせるなんてことはな
Hi-de-hey
Baby, don’t you wanna go?
Back to that same old place
Sweet home Chicago
Come on
Baby, don’t you wanna go?
Well, come on
Baby, don’t you wanna go?
Back to that same old place
Sweet home Chicago
ヒャッホー
あんた、帰りたくないかい?
あの変わらぬ場所
愛しい我が家のシカゴへ
なあ
あんた、帰りたくないかい?
なあ、なあ
あんた、帰りたくないかい?
あの変わらぬ場所
愛しい我が家のシカゴへ
Six and three is nine
Nine and nine is eighteen
Look there brother baby
And see what I’ve seen
6足す3は9だ
9足す9は18さ
なあ兄弟、見てみろよ
俺が見てきたことをな
Hi-de-hey
Baby, don’t you wanna go?
Back to that same old place
Sweet home Chicago
Oh, come on
Baby, don’t you wanna go?
Come on
Baby, don’t you wanna go?
Back to that same old place
My sweet home Chicago
ヒャッホー
あんた、帰りたくないかい?
あの変わらぬ場所
愛しい我が家のシカゴへ
なあ、なあ
あんた、帰りたくないかい?
なあ
あんた、帰りたくないかい?
あの変わらぬ場所
俺の愛しい我が家、シカゴへ
Sweet Home Chicago Lyrics as written by Robert Johnson
Lyrics © Handle Bar Music, Standing Ovation Music
【解説】
Sweet Home Chicago の歌詞、如何でしたか?英語としてはごくごく簡単で、しかも同じフレーズの繰り返しばかりですから英語を習い始めた中学1年生でも和訳できそうですが、実はなかなか奥が深い曲なんです。それがどういうことなのか、詳しく歌詞を見ていきましょう。
第1節、ちょっと拍子抜けするくらい簡単な単語しか並んでいませんね。2行目と4行目のbaby don’tyou wanna go?は、この文だけなら「行きたくないか?」ですが、5行目にBack とあるので「帰りたくないか?」ということですね。その5行目と11行目のBack to that same old place, Sweet home Chicago の部分はRobert Johnson のオリジナル版の歌詞ですとBack to the land of California, to my sweet home Chicago となっていて、戻る場所としてCalifornia とChicago という東西まったく逆方向にある地名が同時に挙げられているということになります。なので、その矛盾に関しては不毛な論争が今も続いていて、そのせいかどうかは分かりませんが、この映画で歌われた歌詞は矛盾のない別のフレーズに変更されています(Same old は「相変わらずの、これまでどおりの、いつもと変わらぬ」といった意味)。でも、オリジナル版の歌詞を何度も聴いてみると、どうも「カリフォルニアに戻るか、シカゴへ行くかどっちがいい?」と言ってるのではないかという気もするんですよね。本当はオリジナル版の歌詞もここで紹介すれば、もっと分かり易く説明できると思うのですが、なにせオリジナル版の歌詞はとても長いのでやめときますね(←スミマセン・汗)。因みにKokomo Arnold のOld Original Kokomo Blues では「Oh, baby don’t you want to go back to the Eleven Light City, to sweet old Kokomo」という歌詞になっていて矛盾はありません(Kokomoはインディアナ州インディアナポリスの郊外にある小さな町(映画の中にも登場してます)。Kokomo がthe Eleven Light City と呼ばれていたのは、1920年代にこの町にあった信号機が11基だったからという説や11軒のspeakeasy(禁酒法時代の違法酒場)があったからという説がありますが、真偽のほどは分かりません)。
では、この曲の主人公はなぜ「シカゴへ帰りたくないか」と問いかけているのでしょうか?僕が思うに、オリジナルの歌詞では、恐らく主人公が何かの事情で故郷である南部の町に一時帰郷していて(主人公はアメリカ南部で生まれ、その後、自由を求めてシカゴへ移住し、さらに仕事を求めてカリフォルニアで暮らし始めたという流れがあったのではと僕は推測しました)。仕事が多くあって金はとりあえず稼ぐことはできるが、南部ほど酷くはないものの差別が日常茶飯のカリフォルニアに戻るか(今でこそリベラルなイメージのカリフォルニア州ですが、Robert Johnson がこの曲を歌った1930年台頃には強い黒人差別がまだ行われていたと思われます。日系人や中国系移民も糞同然の扱いでした)、仕事はないが(当時は世界恐慌の最中で大都市は失業者だらけ)黒人が多く暮らしていて気楽に過ごせる(黒人がまとまって住んでいるので居住地域内では差別を受けることがない)シカゴへ戻るのかどちらにしようと思案しているのではないかというのが結論(主人公が故郷の南部に留まる気が無いのは、黒人が人間扱いされていないので論外だと考えているからでしょう)。そう考えれば、主人公がシカゴへ帰りたい理由ともつながります(←あくまでも個人の意見です)。9行目のHi-de-hey はHi-de-hi と同じで、昔、黒人が使っていた明るい調子の挨拶の言葉だそう(今でも使うのかも知れませんが、こんな挨拶をしている黒人を見たことはないです・笑)。日本の辞書には訳語として「ヤッホー」といった言葉が記載されているようですが、どちらかと言えば、俳優だった高島忠夫さんが笑顔で良く言っていた「イェーイ!」といった感じの言葉に近いような気が僕はします(←あくまでも個人の感覚です・笑)。
第2節、1行目と2行目は「なんじゃこれ?」ですよね。でも、ここのフレーズに意味は何もありません。リズム&ブルースの曲でしばしば行われるロジカルな音遊び、言葉遊びの類です。3行目のya はyou のこと。4行目のMake me late はMake me wait と同意です。Don’t の後にya を入れて口語のまま文にしていますが、要するにDon’t make me wait ということ。「帰りたいなら早く決めろ」とせかしているような印象を受けますね。3節目は1節目の歌詞の繰り返し。第4節の後ろ半分、Look there brother baby and see what I’ve seen は、オリジナル版の歌詞には無いフレーズ。「現実を見てみろ、俺が見てきたな」といった感じでしょうか。
このように、Sweet Home Chicago の本来の歌詞には黒人のシビアな心情が含まれているのですが、白人のジョン・ベルーシがそれをどこまで理解して歌っていたのかは分かりません。この映画の撮影時、彼は既に強度の麻薬依存者になってましたし、彼はシカゴ出身ですから、何も考えることなくノリだけで熱唱してたのかも知れませんね。因みにジョン・ベルーシはThe Blues Brothers が公開された2年後の1982年(あれからもう40年以上ですか…)、その麻薬のやり過ぎであの世行きとなりました。享年33歳(正確に言うならば、アップ系のコカインとダウン系のヘロインという相反する作用の薬物を混ぜて作るリスキーなドラッグである「スピードボール」の調合を自ら行い、その混合の配分を誤ったというのが定説。ほんの少しの調合ミスが死を招くとされています)。それでは最後に、あの世にいるジョン・ベルーシに追悼の言葉を捧げ、映画音楽特集の終わりとすることにしましょう。
「Hey, John! You’re such an asshole!・ジョン!おまえはどアホだ!」
【第60回】A Whiter Shade of Pale / Procol Harum (1967)
今回紹介させていただくのは、全世界で1千万枚以上ものシングル・レコードが売れたというProcol Harum の名曲、A Whiter Shade of Pale です。と言っても60年近くも前のヒット曲なので、若い方の多くはご存知ないかもですね(汗)。Procol Harum というなんだか奇妙な名前のこのバンド、Gary Brooker というロンドン出身のミュージシャンが1967年に英国のエセックス州サウスエンドで結成したグループで、A Whiter Shade of Pale の曲の歌詞を書いたKeith Reid はバンドの正式メンバーであるものの、歌も歌わないし楽器も演奏しないという風変わりなバンドでもありました。因みに、Procol Harum というバンド名はこのKeith Reid の友人が飼っていた猫の名前で、ラテン語でaway やat distance を意味するprocul の綴りが間違って伝わったもののようです(Harum はラテン語ではなく、意味は分かりませんけど響きはどこかアラビア語風ですね)。A Whiter Shade of Pale は、メンバーの一人Matthew Fisher(この曲の著作権は自分にもあると後に裁判を起こし、認められた人です)の演奏によるハモンド・オルガン(電子オルガンの一種)の音色のイントロを一度でも耳にすれば二度と忘れることはないという曲ですが、その哀愁を帯びた分かり易いメロディーラインに対して歌詞が非常に難解であることは有名で(難解と言うよりもほぼ理解不能です・汗)、それ故にイーグルスのホテル・カリフォルニアやツェッぺリンの天国への階段と同様、古今東西の先人たちによってこの曲の歌詞に対する様々な解釈が為されてきました。タイタニック号の沈没を暗示しているとか、酒やドラッグによって得られた幻想の世界だとか、男が処女を口説いてモノにする話だとか、パーティーでドラッグをやり過ぎて死んだ少女の話だとか、この曲を聴いた人の歌詞の解釈はまさしく十人十色。ある意味、滅茶苦茶な解釈だらけとも言えますが、A Whiter Shade of Pale の歌詞を書いたKeith Reid(2023年に死去されました)はこの歌詞の意味を直接的に言及したことは無いものの、歌詞を理解するのに役立つ数多くのヒントを残しているので、今回はそれらのヒントを参考にしながら和訳に挑戦してみました。Keith が生前に語っていた主なヒントには以下のようなものがあります。① I feel with songs that you’re given a piece of the puzzle, the inspiration or whatever. In this case, I had that title, ‘Whiter Shade of Pale,’ and I thought, There’s a song here. And it’s making up the puzzle that fits the piece you’ve got. You fill out the picture, you find the rest of the picture that that piece fits into. つまり、この曲は「Whiter Shade of Pale」というタイトルが先ずありきで、そのタイトルに合わせてパズルを組み合わせるように歌詞を作ったということですね。僕も小説を書く時、先ず最初にタイトルが決まり、それに合わせてストーリーが頭に浮かんでくるということはしばしばあることなので、彼の言わんとしていることは良く分かります。
② では、そのA whiter shade of pale というタイトルがどこから来たのかというと、Keith はI overheard someone at the party saying to a woman, "You’ve turned a whiter shade of pale", and the phrase stuck in my mind. パーティーで誰かが女性に向かって「You’ve turned a whiter shade of pale 君、蒼い顔がさらに白くなってるよ」と言っているのを聞いて、その言葉が頭から離れなくなったと語っています。普通は単にOh,You’ve turned pale. Are you alright?と言うくらいでしょうから、確かに面白い表現ではありますね。
③ I might have been smoking when I conceived it, but not when I wrote it. It was influenced by books, not drugs. この歌詞を書いた時はタバコは吸ってたかもしれないけど、歌詞はドラッグの影響を受けたものではなく、本に影響されたものだとKeith が自ら語っているように、酒やドラッグにこの歌詞の解釈を求めるというのは誤ったアプローチのようです。
④ I wrote this song to describe a very simple story of a boy who falls too hard for a girl he barely knows and is then rejected by that girl. Nothing more and nothing less. これはもう答えそのものですね。少年がまだ良く分かり合えていない少女にフラれたというストーリーがこの曲の歌詞の軸になっていることは間違いないでしょう。Nothing more and nothing less の言葉どおり、それがこの歌詞の真実なのだと思います。
以上のことを参考にしながら日本語に置き換えたのが以下の歌詞です。先ずはご一読ください。各節の詳細に関しては解説欄にて。
We skipped the light fandango
Turned cartwheels ‘cross the floor
I was feeling kinda seasick
But the crowd called out for more
The room was humming harder
As the ceiling flew away
When we called out for another drink
The waiter brought a tray
僕らはさ、スローなダンスはすっ飛ばして
ダンスフロアで激しく踊ってたんだ
船酔いみたいに僕の頭はクラクラしたけど
周りの連中はもっと踊れって声を張り上げてたよ
部屋の中はますます騒めき立ってさ
天井が吹っ飛ぶ勢いだった
そんな中、僕たちが酒のお代わりを頼むと
給仕がトレイで運んできたんだよな
And so it was that later
As the miller told his tale
That her face, at first just ghostly
Turned a whiter shade of pale
そう、それはそのあとのことさ
食わせ者が耳打ちしたら
最初は幽霊みたいだった彼女の顔が
もっと蒼白くなったんだ
She said, there is no reason
And the truth is plain to see
But I wandered through my playing cards
And would not let her be
One of sixteen vestal virgins
Who were leaving for the coast
And although my eyes were open
They might have just as well’ve been closed
彼女は言ったよ、理由なんてないし
言うまでもないでしょって
だけど、僕はどうすべきか悩んだね
だって、彼女にはなって欲しくなかったんだ
浜辺へと向かう
16歳のウェスターの巫女の一人なんかにさ
僕は目を見開いてたんだけど
閉じてたのと同じだったのかもしれないな
And so it was that later
As the miller told his tale
That her face at first just ghostly
Turned a whiter shade of pale
そう、それはそのあとのことさ
食わせ者が耳打ちしたら
最初は幽霊みたいだった彼女の顔が
もっと蒼白くなったんだ
A Whiter Shade of Pale Lyrics as written by Keith Reid, Gary Brooker, Matthew Fisher
Lyrics © Onward Music Limited
【解説】
さてさて、A Whiter Shade of Pale の歌詞、如何でしたか?最初の節ではまだなんとなく場所やそこにいる人たちの雰囲気が伝わって来ますが、コーラスのあとの次の節、特にその後半部分は何を言いたいのか良く分からないというのが正直なところです。実はこの曲の歌詞、当初書かれたオリジナルの歌詞は4節で構成されており、さらに意味不明な二つの節がこの後に続いてまして(コンサートではこれらの節を含めたロング・バージョンが歌われることもあったようです)特に第3節はAnd so it was that later で始まるコーラス部分の歌詞を解読する上で重要という気がしましたので、先に残りの歌詞を読んでいただき、それから解説に入りたいと思います。
She said, ‘I’m home on shore leave,’
Though in truth we were at sea
So I took her by the looking glass
And forced her to agree
Saying, ‘You must be the mermaid
Who took Neptune for a ride.’
But she smiled at me so sadly
That my anger straightway died
彼女は言ったよ「休暇でうちに戻った」ってね
ほんとは僕も彼女も海にいたんだけどさ
だから僕は彼女を鏡の傍へと連れて行って
認めさせようとしたんだ
こんな風に言ってね「君は人魚に違いないんだ
海の神を欺いたね」って
でも、彼女は悲しそうに微笑んだだけで
僕の怒りは直ぐに消えちまったよ
If music be the food of love
Then laughter is its queen
And likewise if behind is in front
Then dirt in truth is clean
My mouth by then like cardboard
Seemed to slip straight through my head
So we crash-dived straightway quickly
And attacked the ocean bed
もし音楽が愛の糧なら
笑いはその女王さ
同じように後ろが前なら
ほんとの汚れもきれいなものだよね
名ばかりの僕の口は
頭の中を通り抜けて行くみたいだった
だから僕たちは直ぐに海に潜って
海底を襲ったんだ
それでは、各節の歌詞を紐解いていきましょう。歌詞が難解とされる曲でしばしば見受けられることですが、この曲も出だしからいきなりぶちかましてきます(笑)。第1節1行目のthe light fandango がそれですね。この聞き慣れない単語、ネイティブ話者であっても、それがいったい何であるのか分かる人はほぼ皆無ではないでしょうか。スペインのフラメンコの知識がある人であれば「それってフラメンコの踊りのひとつですよ」と言うかもしれませんが、僕の頭に浮かんだのはポルトガルのフォークダンスであるfandangoでした。ポルトガルでfandango と呼ばれているダンスは、男女のペアが向き合ってステップを踏みながら踊るもので、そのことから僕はこの歌詞のfandango は親密な男女が踊るチークダンスのようなものの言い換えだと考えました(現代フラメンコのfandango は通常、男女がペアになって踊るようなことはありませんし、正式名称はfandangos de Huelva ウエルバ(スペインの地名)のファンダンゴと言って、民俗舞踊のfandango とは異なります)。ここでのlight はslow の意味で使われているような気がしましたので、the light fandango はslow dance cheek to cheek のようなものであり、第1節の舞台となっている場所はダンス・パーティーの会場か街のディスコというのが僕の結論です。Keith Reid がfandango という言葉をどこでどのように知ったのかは分かりませんが、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚(舞台設定はスペイン南部)」を彼が観ていたとすれば、第3幕のフィナーレで、フィガロとスザンナが着飾った村人たちの前でfandangoを踊る姿のようなものを意識してたのかもしれませんね。
2行目のturn cartwheels ‘cross the floor もこれまた良く分からない表現です。turn cartwheels という言葉を聞いて思い浮かぶのは、曲芸師がする横転のようなアクロバティックな動きですが、パーティー会場やディスコで横転しまくる男女なんてのはまずいませんので(いたら迷惑ですよね・笑)「まるで横転でもするかのような激しいダンス」と僕は受け止めました。酒の入った身体で余りにも激しく踊ったのでI was feeling kinda seasick になったと考えれば話の辻褄も合います。4行目のBut the crowd called out for moreから6行目のAs the ceiling flew away までのフレーズは、パーティー会場が非常に盛り上がっていることを想像させ、As the ceiling flew away は勿論、実際に天井が吹っ飛んだ訳ではなく、それくらい盛り上がっていたということの比喩でしょう。7行目のWhen we called out for another drink は、ますます場が盛り上がってきたので、ダンスを踊っていた男女のカップルはもっと盛り上がろうと酒のお代わりを頼んだってな感じでしょうか。最後のThe waiter brought a tray は、トレイを運んできたのではなくa tray with drinks かdrinks on tray と考えるのが自然です。
次にコーラス部分である第2節の2行目、この曲の歌詞の中でも最大の謎のひとつになっているAs the miller told his tale は、多くの先人たちがチョーサーの小説「カンタベリー物語The Canterbury Tales」の中の「粉屋の話The Miller’s Tale」と結びつけて解釈しようとしてきましたが、Keith Reid は音楽雑誌のインタビューに対してI’d never read The Miller’s Tale in my life. Maybe that’s something that I knew subconsciously, but it certainly wasn’t a conscious idea for me to quote from Chaucer, no way と語っています。彼は生前、これと同じようなことを何度も繰り返し言ってましたので、ここは彼の言葉を信じることにしましょう。では、このthe miller というのは一体何者なのか?miller をmirror と解釈する人も多いようで、そんな一人がインタビューでKeith にI always heard the line "the Miller told his tale" as "the mirror told his tale." I was thinking she was looking in the mirror, something was happening と自説をぶつけていましたが、Keith はYes. That might have been a good idea と答えて笑い飛ばしていました。なので、この線もなさそうです。この他にも、作家のHenry Miller と結びつけて解釈しようとする人たちもいたりしますが、僕は冒頭に記したKeith のヒント①から、As the miller told his tale というフレーズからこの節の解釈をするのではなく、なぜ彼女はさらに蒼白くなったのかの理由を考察すればこの節の答えは見つかると考えました。そもそも、the miller ってのは何を指しているのでしょう?mill が「臼などで粉にする、製粉する」という動詞であるとおり、miller は水車や風車の動力を使って石臼でそれをする人、つまりは製粉職人、粉挽き職人のことです。現代では機械が自動的に製粉をするのでほとんど見かけることはありませんが、中世のヨーロッパでは各地にmiller がいました。農民やパン屋が穀物をmiller の所へ持って行って粉にしてもらう訳です。その際、miller は定められた量の穀物を水車や風車の使用料として徴収し、それがmiller の稼ぎとなっていましたが、定められた以上の量の穀物を徴収する(要はくすねるということ)miller も多かったようで、millerに穀物をくすねられたと訴える記録がヨーロッパ各地に大量に残っています。なぜ僕がここでそんなことについて書いたかというと、miller という言葉の響きを聞いた時、ヨーロッパの人はどのような人物を想像するのだろうかと考えたからで、文献を調べてみると、中世の農民や市民たちはmiller は前述のように穀物の量をちょろまかしていると考える人が多く、そのイメージは「嘘つき、不誠実、穀物泥棒、嫌われ者」といったものであったことが分かりました。次に考えたのは、人の顔が蒼ざめるのはどういう時かという点で、普通、人の顔が蒼ざめる、即ち、顔から血の気が引くのは、何かの強いショックやストレスを受けた時ですから、この歌詞に登場する女性の顔が蒼ざめたのは、the miller がtold his tale したから、つまりthe millerが彼女に何かを話したからだと僕は推測しました。そして、その瞬間、僕の脳裏を過ったのは、彼女の浮気相手(主人公の男性にとっては不誠実な嫌な存在)が彼女に「あいつ、俺たちの関係に気付いてるぞ」みたいなことを耳打ちしているような情景でした(因みに、前述のフィガロの結婚には、スザンナがそっと伯爵に手紙を渡し、その手紙のことを知ったフィガロが「どこかの色女が伯爵に恋文を渡したらしいぞ」と歌う場面が第3幕にあります)。浮気がばれたことを知って彼女の顔が蒼ざめた。それがこの第2節の僕なりの解釈です。そう考えると、次の節のthere is no reason and the truth is plain to see というのが「浮気に理由なんてないわ。見てのとおりよ」という彼女の開き直りの言葉に聞こえてきませんか?
分からないのはBut I wandered through my playing cards 以降の部分です。But I wandered through my playing cards は、開き直る彼女に対してどうすべきか悩んだと考えれば理解できますが、そのあとに続くAnd would not let her be one of sixteen vestal virgins who were leaving for the coast は意味不明としか言いようがありません。「vestal virgins?何ですかそれ?」状態でしたので、調べてみたところ、vestal virginsは古代ローマの火の神ウェスタに仕えていた巫女のことであることが分かりました。複数形になっているのは、ウェスタに仕える巫女の定員が6名だったからで、幼少期に巫女に選ばれた少女たちは、その後30年間、俗世から離れて処女でいることを誓わされていたようです。ここのone of sixteen vestal virgins を多くの方々は16人のウェスタの巫女の一人と和訳されているようですが、前述のとおり巫女の数は6人なので、僕はここのsixteen は年齢だと考えます。恐らく、この歌詞に出てくる彼女はそれくらいの年頃だったのでしょう。ウェスタの巫女になること=30年間も処女でいることを誓わされる、つまり、それは人生を棒に振るような行為の暗喩であり、不誠実な男のもとに走って人生を棒に振るような16歳の少女にはなって欲しくないというのが僕の解釈です。そのように理解すれば、それに続くAnd although my eyes were open. They might have just as well’ve been closed も、その思いはあくまでも彼の目から見た独善的なものであって、まだ若かった彼には現実が見えていなかったと解釈できるのではないでしょうか。最後の行のThey might have just as well’ve been closed は、なぜhave が重なっているのか良く分かりません。They might just as well have been closed でいいような気もしますし、実際、曲を聴いてみてもそう歌っているようにしか僕には聞こえませんでした。
シングルカットでは、このあとAnd so it was that later で始まるコーラス部分が2回繰り返されて曲はフェードアウトしますが、先に紹介した第3節は上記の僕の解釈を裏打ちしているようにも思えますので解説を続けたいと思います。She said, ‘I’m home on shore leave,’ Though in truth we were at sea. So I took her by the looking glass and forced her to agree というフレーズを聴いて僕の頭に浮かんだのは、彼女が浮気の言い訳をしている情景です。「昨日の夜、どこにいたんだよ?」「うちにいたわ」というやりとりのあと「嘘つくなよ。男と映画館にいたじゃないか。僕もあそこにいたんだぞ」と彼女に事実を認めさせようとしているみたいな感じですね(想像が飛躍し過ぎでしょうか・汗)。Saying, ‘You must be the mermaid who took Neptune for a ride.’はtake someone for a ride が人を欺くという意味ですから、mermaid は浮気した少女、Neptune は歌詞の主人公の少年であると理解しました。僕が思うに、mermaid は恐らくアンデルセンのThe Little Mermaid が念頭に置かれていて、アンデルセンの人魚姫は悲劇の主人公ですから、少年は「僕(Neptuneは海の神であり、少年自身は自らを彼女を守る存在と考えている)を裏切るなんて君は悲劇の娘(愚かな娘)だ」と浮気している少女を非難したのでしょう。ところが彼女の反応はshe smiled at me so sadly だったので、単なる浮気ではなく彼女が自分のもとを離れようとしていることに気付いてmy anger straightway diedとなったと考えればこの節の全てがきれいにまとまります。シングル版で削除された歌詞部分に関してKeith は「Our producer said, "Look, if you want to get airplay, if you want this record to be viable, you probably should think about taking out a verse." And we did. I didn’t feel badly about it because it seemed to work fine. It didn’t really bother me」と発言していて、It didn’t really bother me という言葉から、削除された歌詞部分を彼はそれほど重要視していなかったことが窺えます。実際、最後の節に並ぶ言葉も意味不明なものばかりであまり重要ではなさそうですが、簡単に触れておきましょう。
1行目のIf music be the food of love は、シェイクスピアの戯曲からの引用であることは確定です。Twelfth Night, or What You Will の第1幕の冒頭でオシーノ公爵が口にする有名な台詞ですね。ここでシェイクスピアが引用されているが故にAs the miller told his tale もチョーサーの作品からの引用と考えてしまう人が多いのかもしれません。最初の2行と3、4行目では相反する事象が羅列され、そのあとMy mouth by then like cardboard seemed to slip straight through my head という言葉が続いています。僕が思ったのは、ここでのcardboard は段ボール紙と言うよりも実質のないものという意味であろうということであり、My mouth by then like cardboard を聴いて頭に浮かんだのは、陸にいる王子と会う為、言葉を話せなくなることと引き換えに両脚を得た(これもある意味、相反)人魚姫の姿でした。そのことがなぜにslip straight through my head したのかというと、何かを犠牲にして何かを得るということはないと主人公が気付いたからなのではないでしょうか。7行目のcrash-dive は、ずっと海に関係する話が続いていることから急いで海に潜るという意味であることに疑いの余地はありません(crash-dive だけでも潜水艦が急速潜航するという意味であるのにstraightway quickly と言葉が続いているのはtoo redundunt ですね。因みに海の話ばかり出てくるのは、Keithが海好きだったという単純な理由からのようです)。なので、So we crash-dived straightway quickly and attacked the ocean bed から僕が受けた印象は、今ならまだ間に合うとばかりに何か失ったものを過去(海底)に取返しに戻ろうとする姿でした。ただ、主語がI ならその理解でうまく辻褄が合うのですが、we(つまり、少年のもとを離れる決意をしている少女も含まれる)になっているので良く分かりません。ギブアップです!(笑)
ふーぅ。難解な歌詞の曲はやはり解説が長くなってしまいますね。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。Keith Reid が亡くなった今、この曲の歌詞の謎が解き明かされることはもう永遠に無いでしょうけど、最後にProcol Harum のリーダーであったGary Brooker(この方も2022年に死去)の言葉を記しておきます。
「I don’t give a damn what lyrics mean. You know, they sound great, that’s all they have to do.・ 歌詞の意味なんてどうでもいいのさ。音としてうまく響く、それが歌詞の役目なんだ」
【第61回】When a Man Loves a Woman / Percy Sledge (1966)
今回も前回に引き続き、リリースから半世紀以上も経っているのにまったく古さを感じさせないという素敵な曲を紹介することにしましょう。米国南部アラバマ州出身の黒人歌手Percy SledgeがヒットさせたWhen a Man Loves a Womanという名曲です。この曲を聴いて「電子オルガンの響きと言い旋律と言い、なんかA Whiter Shade of Pale と似てるな」と感じた方はおられますか?正解です!この2曲のメロディーラインには「カノン」というクラッシックの旋律がベースになっているという共通点があるので、似たように聞こえて当然なのです。カノンというのは、ひとつの旋律を複数のパートで追う演奏形式のことで、その誕生の経緯は良く分かっていないのですが、現在では3つのパートに分かれたバイオリン奏者が二小節ずつ遅れて同じ旋律を演奏し、その背後で通奏低音がひとつの進行を繰り返すという17世紀のドイツの作曲家ヨハン・パッフェルベルが作ったカノンがその代名詞となっています(C-G-Am-Em-F-C-F-G の和音を繰り返す所謂カノン進行です)。バッハの「管弦楽組曲第三番第二楽章」もカノンがベースになっていて、この曲を同じくドイツ人のアウグ スト・ウィルヘルミというバイオリン奏者がピアノ伴奏付きのバイオリン独奏曲に編曲したものが「G線上 のアリア」と呼ばれている曲であり、A Whiter Shade of Pale は「G線上のアリア」、When a Man Loves a Woman は「パッフェルベルのカノン」が下敷きになっていることに疑問の余地はありません。さらに言う ならば、A Whiter Shade of Pale は、前年に英国シングルチャートで4位にまで上昇したWhen a Man Loves a Woman を聴いてカノンの旋律が現代音楽にも適応することに気付いたGary Brooker がそのことにインスパイアーされて生まれた曲である可能性が高いです(←あくまでも個人の勝手な見解です・汗)。その後、ビートルズのHello, GoodbyeやLet It Be、ジャクソン・ファイブのI’ll Be There、カーペンターズのYesterday Once More、ブームタウン・ラッツのI Don’t Like Mondays、ビリー・ジョエルのPianoman、ホール&オーツのRich Girl などカノン進行を取り入れたヒット曲が続々と登場しましたが(日本でもBORO の「大阪で生まれた女」や荒井由実の「ひこうき雲」なんかもそうですね)、これらの曲に関して互いにパクリ論争が出て来ないのは「あんた、○○の曲をパクくっただろ?」と問われたところで「いいえ、僕の曲はカノンの旋律にインスパイアーされたものです」と答えればそれですべて片付いてしまうからではないかと思います。
因みにウィルヘルミが編曲した管弦楽組曲第三番第二楽章がなぜ「G線上のアリア」という名で呼ばれているのかというと、バイオリンは4弦の楽器で高い音の弦から順番にE、A、D、Gとそれぞれの弦にアルファベットで名前が付けられていて(ギターでは弦を細い方から順番に1弦、2弦というふうに弦で呼びますがバイオリンではE線、A線と線の名で呼ぶそうです)ウィルヘルミの編曲はバイオリンのG線のみを使って演奏ができるようになっていたことから「G線上のアリア」と名付けられました。ウィルヘルミが最初からそうしたかったのか、結果としてそうなったのかは分からないですが、G線上のアリアはその名のとおり、バイオリンのパートをG線だけで演奏します。このようにメロディーラインにおいては類似点のあるWhen a Man Loves a Woman とA Whiter Shade of Pale。ですが、この2曲には決定的な違いがあります。さて、なんでしょう?その答えは下記の歌詞をご覧いただけば一目瞭然です!
When a man loves a woman
Can’t keep his mind on nothin’ else
He’d change the world for the good thing he’s found
If she is bad, he can’t see it
She can do no wrong
Turn his back on his best friend if he put her down
男が女を愛する時
男は彼女以外のことなんて何も考えられない
男は人生を変えちゃうんだ。見つけた喜びの為に
相手が悪い女であったとしても、男はそれに気付けない
彼女は完璧なんだってね
だから彼女が悪く言われれば、友人にだって背を向けちまう
When a man loves a woman
He’ll spend his very last dime
Tryin’ to hold on to what he needs
He’d give up all his comforts
And sleep out in the rain
If she said that’s the way
It ought to be
男が女を愛する時
男は最後の10セントまで使っちゃうだよな
彼女との愛を手離すまいとしてね
男は快適な生活だって捨て去るだろうし
雨降る外で眠ることさえするだろうよ
彼女がそうしろと言ったらね
だって、そうあるべきはずだもの
Well, this man loves you, woman
I gave you everything I had
Tryin’ to hold on to your heartless love
Baby, please don’t treat me bad
そんな男が君という女を愛し
持つものすべてを差し出した
君の無慈悲な愛を手離すまいとしてね
だから、どうか冷たくあしらわないでくれ
When a man loves a woman
Down deep in his soul
She can bring him such misery
If she is playin’ him for a fool
He’s the last one to know
Lovin’ eyes can never see
男が女を愛する時
魂の奥深くまで
女は男を惨めにできる
女が男をからかっているとしても
男は気付きそうにもない
愛に駆られた男は盲目なんだ
When a man loves a woman
He can do her no wrong
He can never want
Some other girl
男が女を愛する時
男は女に間違ったことなんてしない
彼が求めるはずなんてないんだ
他の女なんて
Yes when a man loves a woman
I know exactly how he feels
Cause baby, baby, you’re my world
When a man loves a woman…
そう、男が女を愛する時
僕にはその気持ちが良く分かるんだ
だってさ、君は僕の人生そのものなんだから
男が女を愛する時…
When a Man Loves a Woman Lyrics as written by Andrew James Wright, Calvin Houston Lewis
Lyrics © Sony/ATV Music Publishing LLC, Warner Chappell Music Inc, Word Collections
【解説】
このコーナーをずっと愛読してくださっている方ならもうお分かりですね!そうなんです、訳の分からぬ意味不明な言葉が連なっているA Whiter Shade of Pale とは違い、こちらのWhen a Man Loves a Womanの歌詞はシンプル&ストレートでとても分かり易いのです!なので、歌詞はほとんど解説不要ですが、少しだけ簡単に捕捉しておきましょう。第1節5行目のShe can do no wrong は、この歌詞の主人公である男の目には「彼女が間違いなんて犯すはずがない」つまり「彼女はパーフェクトである」と映っているということですね。次の節の2行目のdimeは10セント硬貨のことで、very last という言葉が入っているので最後の1枚まで使ってしまうという雰囲気が漂っています。3行目のwhat he needs は勿論、彼が必要としているのは彼女との愛。4行目のcomfortsはcomforts of living と考えれば分かり易いです。最後のthat’s the way it ought to be はthat’s the way love isということでしょう。愛の為ならそれくらいのことはできるでしょうよといった感じで、恋人にぞっこんなあまり、言いなりになってしまっている男の姿が目に浮かびます(男性に限った話ではなく、男女の恋愛では良くあるパターンですね・汗)。因みにthat’s the way だけで使うと「いいぞ」とか「その調子だ」ってな感じの意味になりますので機会があれば使ってみてください。
第3節目はちょっと面白いです。「おやっ?」と思った方はもう英語歌詞和訳の上級者。Well, this man loves you, woman. I gave you everything I had とa Man のことをthis man と呼んだあと、主語がI に変わりましたね!つまり、第1節と2節で歌っていたa Man は自分のことだったという訳なんです(笑)。4節目に難解な部分は無く、和訳のとおり。the last one to は可能性として事実に対する強い否定が存在する場合によく使われる言い回しです。5節目は主語がHe に戻っていますが、ここの部分も「男とはそういうものだ」と男性全般に言及しているのではなく、歌詞の主人公が自分のことを言っていると考えてよいでしょう。最後の節の歌詞を読めばそのことは明白ですね。最後の節のYes when a man loves a woman. I know exactly how he feels cause baby, baby, you’re my world の部分を聴いて、主人公は恋の終りを潜在的に予感していて「こんな一途な僕を捨てないでくれDon’t do me wrong」と叫んでいるように聞こえたという人は芸術を理解できるセンスありです。なぜなら、この曲が最初に出来た際のタイトルは「When a man loves a woman」ではなく「Why Did You Leave Me Baby」であり、歌手デビュー前の1965年に働いていた建設会社をPercy Sledge が解雇された際、彼の当時の恋人Lizz King がロサンゼルスでモデルの仕事をする為に彼のもとを去って行ったことで傷心のあまり何も手がつかなくなったという経験がベースになっているとPercy が自ら語っているからで、この曲の歌詞がラブソングではなく失恋ソングとして書かれたものであることに疑いの余地はありません。そして、曲は最後にWhen a man loves a woman…と歌ってフェードアウトしますが、そのあと、何か言葉が続いているのが聞こえませんか?ここの最後の歌詞が「woman…」となっているのはそれが故であると思うのですけど、ただ、何度聴いても何を言っているのか僕には聞き取れませんでした(汗)。
【第62回】Smooth Operator / Sade (1984)
前回はとても分かり易い歌詞の曲でしたので、今回は再び難解な曲に挑戦してみましょう(←おっ、酷暑のせいで気でも狂ったか)。今日ご紹介するのはSade(セイドではなくシャーデイと読みます)のSmooth Operator というシブい名曲です。1982年にロンドンでボーカルのSade Adu ことHelen Folasade Aduが中心となって結成した4人組のバンドで、Sade は個人の歌手名ではなくあくまでもバンド名。メンバーは入れ替わってはいますが、解散することなく現在も活躍中なので息の長いバンドですね。Sade Adu のエキゾティックな顔立ちを見ても分かるとおり、彼女の父親はナイジェリア人で母親が英国人。Sade Adu 自身はナイジェリア生まれ(当時のナイジェリアは独立前だったのでイギリス領ナイジェリア)ですが、母親が離婚して彼女が4歳の時に英国へ連れ帰りました。このSmooth Operator という曲の歌詞は単語の羅列で、決して上手いものだとは思えない詩なのですけども、ギターではなく「サックスを使ったボサノバ」という感のあるメロディーラインとどこか物事を一歩離れた場所から見つめているようなSade Adu のクールな歌声にぴったりはまっているから不思議なもの。描写不足でその分、聴く者が想像力で補う必要がある単語の羅列のようなこの曲の歌詞は、ハードボイルド小説が簡潔な文章で書かれているからと言って決して分かり易いものではないのと同様に、とても分かりにくいものとなっていて、まさしくSmooth Operator は「洋楽のハードボイルドだどぉ~!」なのです(←若い方は内藤陳さんとかご存知ないでしょうね・笑)。Diamond life lover boy
He moves in space with minimum waste and maximum joy
City lights and business nights
When you require streetcar desire for higher heights
煌びやかに生きる伊達男
彼は手間暇かけずご機嫌に移ろうの
街灯りに彩られた夜の社交場で
高みを目指す為の欲望という名の電車を女が欲しがる時にね
No place for beginners or sensitive hearts
The sentiment is left to chance
No place to be ending but somewhere to start
初心な者や傷つきやすい者の居場所なんてないの
感情は成り行きに任せられ
終りがないまま、どこかで始まってる
No need to ask, he’s a smooth operator
Smooth operator
Smooth operator
Smooth operator
訊かなくったって分かるでしょ、彼はやり手なの
そう、やり手なのよ
ほんと、やり手なの
やり手なのよ
Coast-to-coast, L.A. to Chicago, western male
Across the North and South, to Key Largo, love for sale
海岸から海岸へ、ロサンゼルスからシカゴへ、西部の男は
北から南へと縦断し、キー・ラーゴまで、恋を売り回るの
Face-to-face, each classic case
We shadowbox and double-cross
Yet need the chase
会いたい、そんな常套手段であってもね
女たちは伊達男の影と向き合って翻弄されてしまう
だけど、それでも追いかけてしまうのよね
A license to love, insurance to hold
Melts all your memories and change into gold
His eyes are like angels, his heart is cold
愛する為の許可証はベッドで抱かれる保険になるの
女の思いは何もかも溶かされ、黄金へと変わるの
だけど、伊達男の眼差しは天使みたいではあっても心は冷めてるの
No need to ask, he’s a smooth operator
Smooth operator
Smooth operator
Smooth operator
訊かなくったって分かるでしょ、彼はやり手なの
そう、やり手なのよ
ほんと、やり手なの
やり手なのよ
Coast-to-coast, L.A. to Chicago, western male
Across the North and South, to Key Largo, love for sale
海岸から海岸へ、ロサンゼルスからシカゴへ、西部の男は
北から南へと縦断し、キー・ラーゴまで、恋を売り回るの
*最後はアウトロでSmooth operator を連呼し、曲は終わります。
Smooth operator Lyrics as written by Helen Folasade Adu, Ray St. John
Lyrics © Peermusic Publishing, Sony/ATV Music Publishing LLC, TuneCore Inc.
【解説】
テナーサックスの柔らかい音色が響く印象的なイントロに続いてDiamond life と歌うSade Adu の歌声。いいですねぇー。素晴らしいです。実はこのイントロの前に、彼女のコンサートなどでは詩の朗読が入るので、その詩を先に紹介しておきましょう。
He’s laughing with another girl
And playing with another heart
Placing high stakes, making hearts ache
He’s loved in seven languages
Diamond nights and ruby lights
High in the sky
Heaven help him when he falls
別の娘と談笑してる彼
またひとつ別の心をもてあそんでる
伸るか反るかに賭け、女たちの心をときめかせながら
彼って世界中で女たちを愛してきたの
ダイヤのように輝く夜にルビー色の灯り
はるか空の上にいる彼だけど
落ちる時には大変な目に遭うわ
3行目のplace high stakes は一か八かに賭けるという意味で、making hearts ache はmaking her hearts ache と考えれば分かり易いです。つまり、彼女の胸をキュンキュンさせるという意味ですね。4行目のseven languages は世界の7大陸の言い換えと理解しました(南極大陸に人は住んでませんが・汗)。5行目のDiamond nights and ruby lights は、ダイアモンドもルビーも高価な宝石ですから、僕が連想したのは、夜な夜な行われる金持ちたちのパーティーのようなものです。そんな世界(High in the sky)にいる彼ですが、そのあとHeaven help him when he falls と、いつかは罰が下るであろうことが仄めかされています(Heaven help の構文は「天が助ける」ではなく「酷い目に遭う、大変な目に遭う」という意味で使われます)。どうやらこのHe は悪い奴のようですよ。
では、本文の解説に入りましょう。第1節の1行目、Diamond life はダイアモンドのように輝く人生ということだと思います(因みにこのSmooth operator という曲は、Diamond life というタイトルのアルバムに収録されています)。lover boy は色男や伊達男という意味ですね。このlover boy はイントロ前の朗読で出てくるHe のことで、このあとに続くHeも勿論、同じ男のことを指しています。2行目のHe moves in space with minimum waste and maximum joy は、その男がいつもご機嫌にうまく立ちまわっているという意味だと僕は理解しました。どこでうまく立ちまわっているのかというのがCity lights and business nights(街灯りと夜の仕事場)つまり、華やかな都会の夜の社交場ということでしょう。そしてその社交場には、テネシー・ウイリアムズの戯曲「欲望という名の電車」に出てくるブランチのような放蕩な女性が高見を目指して集ってくるようです。2節目のNo place for beginners or sensitive hearts が、そんな夜の社交場に初心な者や傷つきやすい者の居場所はないという意味だと考えれば話の辻褄も合います。2節目のThe sentiment is left to chance とNo place to be ending but somewhere to start は何を言いたいのかいまいち良く分かりませんが、ここのフレーズを聴いて僕の頭に浮かんだのは、夜の社交場では男と女の様々な駆け引きが行われ、ひとつの駆け引きが終わらぬままにまたどこかで別の駆け引きが始まっているというような情景でした。そして、そんな駆け引きに加わっている女の一人は囁きます。No need to ask, he’s a smooth operator と。それが第3節ですね。さて、曲のタイトルともなっているこのsmooth operator、皆さんはどんな人物を想像されましたか?直訳すればスムーズに運営をする人、つまり、うまく立ちまわる人、要領のいい人ということです。ここの部分のSade Adu の歌い方を聴いていると、カーリー・サイモンのYou’re So Vain のように男に対する恨みつらみを言ってるのではなく、逆になんだか男の技量を褒めているようにも聞こえますね(←そんな風に聞こえているのは僕だけでしょうか・汗)。
次の第4節から窺えるのは、色男が全米をまたにかけて活動していることで、何の活動をしているのかというとlove for sale です(love for sale と韻を踏む為に1行目の最後にwestern male という言葉を入れたのでしょうけど、ちょっと無理矢理感がありますね)。ですが、このlove for sale は第1回のCall Me で紹介した自らの身体を売って対価を得るジゴロのような仕事ではなく、恋愛感情をちらつかせて女性から金品を騙し取る、つまり恋愛詐欺のような行為だと思われます。2行目に出てくるKey Largo はフロリダ州の南端にある島の名前で、マクスウェル・アンダーソンの同名の戯曲の中では、悪人たちが集うホテルのある島として描かれていますしね(笑)。英国のバンドがわざわざ舞台をアメリカにしたのは、アメリカのマーケットでのレコードの売れ行きを考えての事だったのかも知れませんが(←あくまでも個人の憶測です)この曲はアメリカでは大ヒットとまではいかず、1985年のビルボード社の年間チャートでは62位止まりでした。5節目もなかなか意味不明なフレーズが並んでいます。Face-to-face, each classic case. We shadowbox and double-cross ですが、Face-to-face は「顔と顔を突き合わせる」ですから男女の逢引、each classic caseはいつものやり口、double-cross は裏切りと理解。shadowbox というのは、ボクサーが目の前に対戦相手がいることを想像して、相手の動きを考えながら攻撃、防御の練習をする行為なので、ここのフレーズを聴いて僕の頭に浮かんだのは、本当の顔が見えない(本性を現さない)男に翻弄されつつも男(の影)を追い続けるという女性の姿でした。
第6節も何が言いたいのか良く分かりません。A license to love, insurance to hold は、ひとたび男のОKを取りつければ、それはベッドの上で抱かれることが保証されたも同然というような意味だと理解しました。結局、女性側の目的は色男に抱かれるということでしょうか。Melts all your memories and change into gold は、そうなった時、女性は何もかも忘れてエクスタシーに達するみたいな性的な暗喩ではないかと推測します。His eyes are like angels, his heart is cold は文字どおりで、女性の側はそうなっても、色男の側は詐欺のステップとして寝ているだけだから心はこもっていないということでしょう。第7節、8節は第3節、4節の繰り返しで、アウトロでSmooth operator を連呼して曲は終了します。この最後のSmooth operator を連呼するSade Adu の歌声もこれまたいいです。シビれますね。
冒頭でも話しましたとおり、この曲はハードボイルド・ソングであり、しかもSade Adu はマスコミのインタビューに応じることが少なく歌詞について語ることもない為、歌詞の本意を知る手掛かりが皆無状態でした。なので、歌詞の理解はすべて想像力で補うしかなく、上記の和訳は僕がこの曲を聴いて感じたままに日本語に置き換えただけのものですので悪しからず(汗)。
【第63回】Let’s Hear It for the Boy / Deniece Williams (1984)
しばらくシブい曲が続きましたのでここらで1曲、気分転換に「頭の中お花畑&底抜け明るい」系の曲をお届けしましょう。第58回で紹介した映画「Footloose」で挿入歌として使われ、ビルボード社の1984年の年間ヒットチャートで13位(週間チャートでは一時的に1位)に食い込んだDeniece Williams のLet’s Hear It for the Boy です。Deniece Williams の名を知る日本人はあまり多くはないと思いますが、彼女はグラミー賞のゴスペル部門で4回も受賞経験がある実力派歌手。この曲を聴いただけでは分かりにくいかもですが、4オクターブの声域とその高音域での澄み切った声を存分に生かした歌唱力はWhitney HoustonやMariah Carey に負けず劣らずのものなんです。Deniece がゴスペルを得意にしているのは、生まれ故郷であるインディアナ州のGary(ゲリィー)にある教会の聖歌隊Gospel Choir に所属していた経験の賜物。実はWhitney Houston も聖歌隊出身で、黒人が集う教会の聖歌隊というのはゴスペルのエリート部隊みたいなもんですから、Deniece もWhitney もそこで歌唱力を鍛えられたのかも知れませんね。因みにゲリィーはイリノイ州のシカゴとは約50キロしか離れていない製鉄の街だそうで、「あれっ?その地名ってどこかで聞いたことがあるような…」と思って調べてみたら、マイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンなどジャクソン・ファイブの全員がこの町の生まれでした。ゲリィーは昔から黒人居住者の割合が高い町として知られていて(1972年にアメリカで初の黒人市長が生まれたのもこの町)、低所得者が多く犯罪が多発していたことから、かつては「アメリカで一番危険な町」と呼ばれていた時代もあったようです。Let’s Hear It for the Boy と元気いっぱいに歌っているDeniece Williams の姿を見る限り、彼女がそんな街で生まれ育ったとはちょっと想像がつきませんが…(汗)。My baby, he don’t talk sweet
He ain’t got much to say
But he loves me, loves me, loves me
I know that he loves me anyway
And maybe he don’t dress fine
But I don’t really mind
あたしの彼って、甘い言葉なんて囁かないし
口数も少ないんだけど
あたしのこと、愛してくれてるの、そう、あたしよ、あたしをね
とにかく分かるの、あたしのことを愛してくれてるってね
多分、彼ってめかし込むことなんてしないんだけど
あたしは気にしないわ
‘Cause every time he pulls me near
I just wanna cheer
だって、彼の傍に引き寄せられるといつも
元気付けたくなっちゃうんだもの
Let’s hear it for the boy
Let’s give the boy a hand
Let’s hear it for my baby
You know you gotta understand
Maybe he’s no Romeo
But he’s my loving one-man show
Wooah, wooah, wooah-oh
Let’s hear it for the boy
好きな人に声援を送ろうよ
好きな人の為に一肌脱ごうよ
あたしの彼に声援を送ろうよ
分かってるよね
彼って情熱的な人なんかじゃないかもって
でも、あたしを愛してくれてる人なの
さあ、さあ、さあ
好きな人に声援を送ろうよ
My baby may not be rich
He’s watching every dime
But he loves me, loves me, loves me
We always have a real good time
And maybe he sings off-key
But that’s all right by me, yeah
‘Cause what he does, he does so well
Makes me wanna yell
あたしの彼ってお金持ちじゃないし
ケチケチしてるんだけど
あたしのこと、愛してくれてるの、そう、あたしよ、あたしをね
だって、あたしたちっていつもイイ感じだもの
彼って頓珍漢な人かも知れないけど
あたしは構わないわ、ええ構わない
だって、彼ってなんでもうまくやっちゃうから
エールを送りたくなっちゃうんだもの
*このあと第1節から3節までのフレーズを再度繰り返し、最後にアウトロでLet’s hear it for the boy, Let’s hear it for my man, Let’s hear it for my baby を狂ったように連呼して曲は終了します。
Let’s Hear It for the Boy Lyrics as written by Dean Pitchford, Tom Snow
Lyrics © Sony/ATV Melody
【解説】
シンセ・ポップと呼ばれるシンセサイザーが作り出す軽快なメロディーラインに乗って歌われるこの曲の歌詞、「なんだかクドい歌詞だなぁー」と思って作詞者のクレジットを見てみたらDean Pitchford, Tom Snowとあったのでなるほどと納得しました。だってこの二人、第33回でクドい歌詞の曲として紹介したYou Should Hear How She Talks About You の作詞者なんですから(笑)。では早速、そのクドい歌詞を今回も見ていくことにしましょう。
1節目は中学校で習うレベルの単語ばかりなので解説不要。強いて言うならば、2行目のHe ain’t got much to say の聞き取りが難しいということでしょうか。ain’t got が「宴会」にしか聞こえないんですよ(笑)。歌詞の中でHe don’t とかHe ain’t を多用しているところから想像すると、主人公の女性はちょっと気の強い(不良っぽい)ティーンエイジャー女性という設定なのでしょう(←僕の勝手な想像です・汗)。3、4行目にBut he loves me, loves me, loves me. I know that he loves me anyway とあるとおり、その彼女、よほどの自信家のようですね(でなきゃ、極度の妄想狂・笑)。2節目のpull me near は、人を近くに引き寄せるイメージ。pull me close(closer)と言っても同じです。第3節1行目のLet’s hear it for は、パーティーや表彰式などで良く耳にするフレーズで、for のあとに続く人に対して「拍手を送りましょう、拍手をお願いします」という意味で使われる慣用句。パーティーや表彰式といった場以外の日常会話の中でこの表現が出てきた場合は、大抵「応援する」とか「元気ずける」の意味で使われています。なので、この歌詞の中のLet’s hear it for も第1節に出てくるcheer や最後の節に出てくるyell と同じ意味で使われていると考えるのが自然。第3節で良く分からないのは、1行目と2行目の元気ずける相手がthe boy(好きな相手という意味での総称でしょう)となっているのに3行目ではmy babyとその相手を自分の彼氏にしている点で(your baby なら分かるのですが)、仮にthe boy を彼氏のことだとしても、他人に自分の彼氏を元気ずけろとか助けろとか要求してるみたいでなんかヘンな感じです。そんなことを唐突に言われたら、普通は「For what?」と訊き返しますよね。なので、僕には3行目がなぜmy babyになっているのか未だに分からないです(汗)。5行目のRomeo はシェークスピアの戯曲「Romeo and Juliet」のRomeo のことで、劇中のRomeo の姿から転じて「恋する男性」や「情熱的な男性」という意味で使われるようになったようです。6行目のhe’s my loving one-man show はちょっと難解。one-man showは一人で演じる舞台のことですから、5行目のRomeo にひっかけているのでしょう(Romeo and Julietは舞台劇です)。彼氏はRomeo じゃないけど舞台でひとりRomeo を演じてくれているのであり、自分はJuliet なのだと言ってるように僕には聞こえました。第4節2行目のwatch every dime は「10セント硬貨を毎度見つめる→ほんの僅かな金に注意を払う」から転じて「けちけちする」という意味で使われるようになったフレーズです。6行目のsing off-key は「音程を外して歌う、音痴である」という意味ですが、ここでは「ちぐはぐ」や「間のぬけた」という彼氏の性格の暗喩であると僕は理解しました。
以上のように、この曲の歌詞の内容は、主人公の女性が、ルックスや態度はあまりイケてないけど自分のことを愛してくれている彼氏のことを自慢している、と言うか、のろけているものであるということは誰にでも分かりますが、細かな部分を見て行くと、首を傾げざるを得ない部分も幾つかあります。この曲を作詞したDean Pitchford は名門イェール大学で文学を専攻していたはずなので、もう少し気の利いた歌詞を書けなかったのかと思ってしまいます。曲のタイトルも「Let’s Hear It for the Boy」だなんて、長過ぎるし安直なんですよね(←また上から目線かよ・汗)。
【第64回】Private Eyes / Daryl Hall & John Oates (1981)
1970年代中旬から80年代中旬にかけて全米週間ヒットチャートのトップ10に16曲を送り込み、アメリカの音楽業界におけるヒットメーカーとなった二人組のミュージシャン、その名はDaryl Hall & John Oates。今回ご紹介するのは、そんな彼らが1981年にリリースし、11月に週間ヒットチャートで2週連続1位となった他、翌年の年間ヒットチャートでも44位に食い込んだPrivate Eyes という曲です。Daryl Hall & John Oates は(Hall & Oates と短縮形で呼ばれることが多いです)その名のとおり、大学の先輩後輩の関係であったDaryl Hall とJohn Oates が1970年にペンシルベニア州のフィラデルフィアで結成したデュオ(当時の持ち歌の多くはホワイト・ソウル)で、二人とも本名をそのまま芸名として使っていますが、Daryl のファミリーネームの本当の綴りはHohl です。20世紀最後のヒットメーカーとして君臨したHall & Oates。全世界で売れたレコードは4千万枚とも言われていますが、デビューから順調に売れていた訳ではなく、Sara Smile という曲で初ヒットを出すまでに5年の歳月がかかりました。そのSara Smile が収録されたアルバムのジャケットが世間に衝撃的を与えたのは、二人が化粧をした顔の写真が表紙に使われていたからで、その後、ゲイ疑惑がずっと二人につきまとうことになります(John Oates はどうもゲイっぽいですが、本人がそのことについて語ったことはありません)。Private Eyes がヒットした当時、金髪碧眼でハンサムなDaryl Hall に比べると、John Oates は口髭以外の印象が薄く、洋楽ファンの間では名前ではなく「ヒゲの方」と呼ばれていた記憶があるんですけども、任天堂からマリオブラザースがもう3年早く発売されていれば、印象も随分変わっていたでしょうね(笑)。Private Eyes というこの曲のタイトル、曲を作詞したメンバーの一人であるWarren Pash は(この曲の作詞者としてクレジットには4人の名前が連記されています)、彼が車を運転中、たまたま見かけた映画の看板を見てインスパイアーされたものだと証言していて、その映画というのが、1980年に公開された「The Private Eyes」というコメディー仕立てのミステリー映画だったそうです(因みに、Pash は自分がPrivate Eyes の歌詞を書いたという感じで話をしているのですけど、Daryl Hall はこの曲の歌詞はほとんどJanna Allen(長年Daryl の恋人であったSara Allen の妹)が書いたものだと雑誌のインタビューに対して答えています)。アメリカでPrivate Eye と言えば、普通は「私立探偵」のことを意味しますが、これはミステリー作家のダシール・ハメットも勤務していたピンカートン探偵社(かつてアメリカでは大手の探偵社でした)で使われていたロゴマークが大きな目をデザインしたもので、そのマークの意味が「誰もピンカートンの目からは逃れられない」ということであった為、そこから転じて私立探偵を意味するようになりました。さてさて、この曲はそんな私立探偵のことを歌ったものなのでしょうか?先ずは歌詞をご覧ください。
I see you and you see me
Watch you blowing the lines when you’re making a scene
Oh, girl, you’ve got to know
What my head overlooks the senses will show to my heart
When it’s watching for lies, you can’t escape my
僕は君を見てて、君は僕を見てる
感情的になって言葉を失ってる君を見てるんだ
あー、君は分からなくちゃいけないよ
僕の頭が気付かないことでも、心が気付くってことを
心が嘘を警戒してる時はね、だから君は逃れられないさ、僕の
Private eyes
They’re watching you
They see your every move
Private eyes
They’re watching you
Private eyes
They’re watching you, watchin’ you, watchin’ you, watching you
真実を見抜く目から
その目は君を見てる
君の動きを逐一ね
真実を見抜く目は
君を見てる
真実を見抜く目は
君を見てるんだ、君を見てる、見てる、君を見てるのさ
You play with words, you play with love
You can twist it around, baby, that ain’t enough
‘Cause, girl, I’m gonna know
If you’re letting me in or letting me go, don’t lie
When you’re hurting inside ‘cause you can’t escape my
君は言葉でじゃらし、愛を弄んでる
君は詭弁を弄することができるけど、それじゃあダメなんだ
だってさ、僕は分かるんだもの
君が僕を受け容れようが受け容れまいが、嘘はダメさ
心を傷つけるような時はね、だって、君は逃れられないんだから、僕の
Private eyes
They’re watching you
They see your every move, baby
Private eyes
They’re watching you
Private eyes
They’re watching you, watching you, watching you, watching you
真実を見抜く目から
その目は君を見てる
君の動きを逐一ね
真実を見抜く目は
君を見てる
真実を見抜く目は
君を見てるんだ、君を見てる、見てる、君を見てるのさ
Ooh, why you try to put up a front for me?
I’m a spy but on your side, you see?
Slip on into any disguise
I’ll still know you, look into my
あー、どうして君は僕に言い繕おうとするんだい?
僕は君のことをこっそり探ってはいても、君の味方なんだ、分かるよね?
さっと変装なんかしたって
僕には君だって分かるさ、だって覗き込むから、僕の
Private eyes
They’re watching you
And they see your every move (Oh, babe)
Private eyes (Yeah)
They’re watching you
Private eyes
They’re watching you
Private eyes
They’re watching you (Yeah)
They see your every move (They see it)
Private eyes (Oh)
They’re watching you
Private eyes
They’re watching you
真実を見抜く目で
その目は君を見てる
君の動きを逐一ね(あー、君をね)
真実を見抜く目は(そうさ)
君を見てる
真実を見抜く目は
君を見てる
真実を見抜く目は
君を見てる(そうさ)
君の動きを逐一ね(見てるのさ)
真実を見抜く目は(あー)
君を見てる
真実を見抜く目は
君を見てるんだ
*このあとのコーラスとアウトロは同じフレーズの繰り返しなので省略します。
Private Eyes Lyrics as written by Janna Allen, Sara Allen, Daryl Hall, Warren Pash
Lyrics © Hot Cha Music Co, Almo Music Corp, BMG Gold Songs
【解説】
あれあれぇー、私立探偵の歌ではなかったですね(笑)。この曲を最初から最後まで聴いて僕の頭に浮かんだのは、浮気をして言い訳ばかりする恋人を戒めている男の姿。恐らく、男は恋人の浮気を疑って、彼女がほんとに浮気をしているかどうかこっそり調べようとしているのでしょう。つまり、この曲は世間によくある男女の綾を歌ったものなんです。そして、このこっそり真実を突き止めようとする様をPrivate Eyesという言葉を使って暗喩しているところがこの曲の歌詞のミソ。僕がPrivate Eyes という言葉を「真実を見抜く目」という日本語に置き換えたのは、まさしくそれが理由です。因みにPrivate Eyes のプロモーション・ビデオは、ハードボイルド小説に出てくるようなトレンチコートとソフト帽に身を包んだ私立探偵風のDaryl とJohn がカメラに向かって指差しポーズをし、探偵の目は見ているぞみたいな仕上がりになってますが、あれはこの曲の歌詞の真意からずれてますね(←ほんとかよ・汗)。Daryl はPrivate Eyes の歌詞について雑誌記者に尋ねられた際「If you want to understand what we’re talking about, read between the lines」と答えていて「じゃあ、あんたはちゃんと行間を読んであのプロモーション・ビデオを撮影したんだろうな?」と言いたいところですけど、今回は彼のありきたりなアドバイスに従い、行間を読みながら歌詞を紐解いていくことにしましょう(←まだ言うか・笑)。
第1節2行目のblow the lines は言葉が吹き飛ぶというイメージ。つまり「台詞を忘れる、言おうとしていたことを忘れる」ということですね。make a scene は「声を上げて騒ぐ、悪態をつく、感情的になって見苦しいところを見せる」といったイメージです。3行目ではgirl と呼びかけているので、歌詞の主人公が男性であることが分かります。3行目から5行目のYou’ve got to know what my head overlooks the senses will show to my heart when it’s watching for lies は難しいと言うより、長過ぎてややこしいと言った方がいいでしょうか。4行目は直訳すれば「頭が見逃してしまう感覚が心に示す」であり、要は「頭で分からなくとも心では分かる」ということだと理解しました。頭と心、両者を司るのは脳の働きであり、結局は同じものなのですが、東洋風に分けて考えているところが面白いです。そして、それがどういう時にそうなるのかについて言及しているのが5行目のWhen it’s watching for lies の部分。see はただ単に視界が捉えたものを見ている状態ですが、watch は何らかの意図、目的を持って見ている状態ですね。日本語ではその区別がないので、この歌詞の和訳ではsee に「見る」の字を当てはめ、watch には「観る」の字を使いました。但し、この5行目のwatch は「観る」というより「注意深く見守る、監視する」という意味で使われています。2節目、Private eyes を「真実を見抜く目」という言葉に置き換えた理由は前述のとおり。それにしても、you can’t escape とかwatching you なんてことをこれだけ繰り返し言われると、ちょっとコワいですよね(汗)。今の時代、こんなことを恋人に対して直接口にすればストーカー認定間違いなし。下手すりゃあ、接近禁止命令さえ受けかねません(笑)。第3節2行目のtwist around は「言葉を捻じ曲げる」とか「曲解する」の意味。ain’t enough は「充分じゃない」と言うよりも「それじゃあダメだ」という感じですね。4節目は2節目の繰り返しなので解説不要。第4節の1行目、put up a front は「体裁を繕う、平静を装う」といった意味の慣用句。2行目のspy はその言葉どおりスパイのこと。スパイの仕事はずばり、密かに敵情を偵察することですから、このように訳しました。3行目のslip on は何かの動作を素早く行うイメージ。disguise は変装のことですが、ここでは実際の変装について語っているのではなく、1行目のput up a front と同じ意味で使っていると理解しました。つまり、Slip on into any disguise. I’ll still know you は「言い繕ったところで、僕にはすぐ分かる」ということですね。第5節では、再び狂ったかのようにPrivate eyes. They’re watching you のフレーズの繰り返し。ほんと、コワいです(笑)。
しばらくと言うか、長らくの間、Daryl Hall & John Oates の名を耳にすることはありませんでしたが、2023年11月、二人が持つ楽曲の著作権を第三者に勝手に売り渡そうとしているとかなんとかでDaryl Hall がJohn Oates を訴え(裁判所はJohn に対してDaryl に近づかないよう接近禁止命令まで出しました)、John はJohn でDaryl の訴えは「扇動的、突飛、不正確」と裁判所に反論し、二人が喧嘩別れのような状態になっているというニュースが突然、日本にも舞い込んできました。二人の間で何があったかは知りませんが、二人のどちらかが嘘をついているのだとすれば、彼らは今こそこの曲を聞き直し、嘘をついても真実の目からは逃れられないことを知るべきですね(←その後、Daryl Hall & John Oates は事実上、解散ということになったみたいです・汗)。
【第65回】Jesus He Knows Me / Genesis (1991)
前回に紹介したDaryl Hall & John Oates が80年代のアメリカのヒットメーカーだとすれば、イギリスにも同じ時期、出す曲、出す曲を国内のヒットチャートに送り込んでいたジェネシスGenesis というロックバンドがいたのをご存知でしょうか?ジェネシス自体は1967年にPeter Gabriel(ボーカル担当)が中心となって結成した歴史あるバンドで、1975年にGabriel がグループから脱退してPhil Collins がボーカル担当に変わると、バンドの音楽性もそれまでのプログレ系からよりポップなものへと変わっていき、80年代に多数のヒット曲を生み出す原動力となったのがPhil でした(ジェネシスの音楽をポップ化させた張本人だとして、彼が一部のアホな音楽批評家やマスゴミによって悪者扱いにされていたのは意味不明としか言いようがありません)。このようにボーカル役としての印象が強いPhil Collins なのですが、実は彼、元々は1970年にドラマーとしてジェネシスに加入した人で、当然のことながらドラムを叩くのがメチャクチャ上手いんです。ドラム以外にも、この人が出ているミュージック・ビデオなんかを見ると、小芝居もなかなか上手いと感じさせますが、それもそのはず、彼は子供の頃から子役として舞台や映画で演技を修練しており、ミュージシャンになる前は俳優を目指していたのだそう。ただのハゲ茶瓶ではなかったみたいですね(笑)。まあ、そんなことはさておき、今回はジェネシスの絶頂期の最後を飾ったアルバムWe Can’t Dance に収録されていたJesus He Knows Me という曲を紹介しましょう。そのタイトルからしても、Phil Collins が歌った数多くの曲の中では、かなり毛色の変わった内容の歌詞になっていまして、この曲がリリースされた当時、テレビ伝道師(英語ではtelevangelist と言います)の拝金主義やセックス・スキャンダル、脱税、金銭の横領といった犯罪行為が社会問題化していた状況があったことを頭に入れた上で、以下の歌詞をご覧ください。補足しておくと、テレビ伝道師というのは、主としてアメリカに多くいるテレビでキリスト教系新興宗教の教えを説くペテン師たちのことで、日曜日の午前にテレビをつけると、こういった連中の顔がテレビの画面に大映しになっている番組がよく放映されていました。D’you see the face on the TV screen
Coming at you every Sunday?
See the face on the billboard?
Well, that man is me
On the cover of a magazine
There’s no question why I’m smiling
You buy a piece of paradise, you buy a piece of me
テレビ画面に映るあの顔が見えるかい?
毎週日曜日に出てくるさ
外の看板のあの顔が見えるかい?
あれってさ、僕なんだよね
雑誌の表紙でさ
僕が微笑んでることに理由なんてないよ
だって、君が買ってるのは天国の欠片、僕の一部だからさ
I’ll get you everything you wanted
I’ll get you everything you need
You don’t need to believe in hereafter
Just believe in me
僕は君の望むすべてのものをあげる
君が必要なすべてのものをあげるよ
未来のことなんて信じなくていい
僕を信じるだけでいいのさ
‘Cause Jesus, he knows me and he knows I’m right
I’ve been talking to Jesus all my life
Oh yes, he knows me and he knows I’m right
Well, he’s been telling me everything is alright
だってさ、イエス様は僕のことも僕が正しいことも分かってるし
僕は人生でずっとイエス様と話をしてきたからね
そうさ、イエス様は僕のことも僕が正しいことも分かってる
イエス様はずっと僕に言ってきたもの、何もかもうまくいくってね
I believe in the family
With my ever-loving wife beside me
But she don’t know about my girlfriend
Or the man I met last night
Do you believe in God?
‘Cause that is what I’m selling
And if you wanna get to heaven
Well, I’ll see you right
僕は家族のことを信じてる
僕と共にある永遠に愛しい妻のいるね
でもさ、彼女、僕の愛人のことは知らないんだよな
昨夜に会った男のこととかもね
君は神を信じるかい?
それって僕の売り物なんだけどさ
君が天国へ行きたいってのなら
今すぐ会おうよ
You won’t even have to leave your house
Or get out of your chair
You don’t even have to touch that dial
‘Cause I’m everywhere
君は家から出なくていいし
椅子から立ち上がらなくてもいい
テレビのチャンネルを変える必要さえもない
だってさ、僕はいつも君の傍にいるんだから
Jesus, he knows me and he knows I’m right
I’ve been talking to Jesus all my life
Oh yes, he knows me and he knows I’m right
Well, he’s been telling me everything’s gonna be alright
イエス様は僕のことも僕が正しいことも分かってる
僕は人生でずっとイエス様と話をしてきたからね
そうさ、イエス様は僕のことも僕が正しいことも分かってる
イエス様はずっと僕に言ってきたもの、何もかもうまくいくだろうってね
Won’t find me practicing what I’m preaching
Won’t find me making no sacrifice
But I can get you a pocketful of miracles
If you promise to be good, try to be nice
God will take good care of you
Well, just do as I say, don’t do as I do
僕が説教の練習をしてることも
何の犠牲を払わないことも君が知ることはないけど
ポケット一杯の奇蹟を君にあげるよ
善良でいい人でいることを君が約束するなら
神は君のことを大切にしてくれる
僕のすることを真似るのではなく、僕の言葉どおりにやるんだよ
Well, I’m counting my blessings
As I’ve found true happiness
‘Cause I’m a-getting richer day by day
You can find me in the phone book
Just call my toll-free number
You can do it anyway you want
Just do it right away
僕は如何に自分が恵まれているかが分かってる
ほんとの幸せを見つけたからね
だってさ、日に日に金持ちになっていくんだもの
電話帳で僕の電話番号を見つけられるから
フリーダイアルの番号に電話してよ
君は好きにやっていいんだ
今すぐやればいいのさ
And there’ll be no doubt in your mind
You’ll believe everything I’m saying
If you wanna get closer to Him
Get on your knees and start paying
君は何の疑問も持たず
僕の言うことをすべて信じるだろうね
だからさ、君、神に近づきたいのなら
跪いてお金を払いなさい
‘Cause Jesus, he knows me and he knows I’m right
I’ve been talking to Jesus all my life
Oh yes, he knows me and he knows I’m right
Well, he’s been telling me everything’s gonna be alright
‘Cause Jesus, he knows me and he knows I’m right
(Jesus, he knows, he knows)
Ooh, yes, he knows me and he knows I’m right
(Jesus, he knows, he knows)
I’ve been talking to Jesus all my life
Well, he’s been telling me everything’s gonna be alright
だってさ、イエス様は僕のことも僕が正しいことも分かってるし
僕は人生でずっとイエス様と話をしてきたからね
そうさ、イエス様は僕のことも僕が正しいことも分かってる
イエス様はずっと僕に言ってきたもの、何もかもうなくいくだろうってね
だってさ、イエス様は僕のことも僕が正しいことも分かってる
(イエス様は分かってる、分かってるんだ)
そうさ、イエス様は僕のことも僕が正しいことも分かってる
(イエス様は分かってる、分かってるんだ)
僕は人生でずっとイエス様と話をしてきたし
イエス様はずっと僕に言ってきたもの、何もかもうまくいくだろうってね
Jesus He Knows Me Lyrics as written by Phil Collins, Michael Rutherford, Anthony Banks
Lyrics © Concord Music Group Inc
【解説】
Jesus He Knows Me の歌詞、如何でしたか?ちょっと長過ぎって感じですが、明らかにテレビ伝道師をこけにしているというか、こき下ろしていて面白いと僕は思いますね。独自性がありますし、鋭いです。Phil Collins は、前回に紹介した歌詞の主人公のように真実を見抜く目private eyes を持つ人なのでしょう。そんなこの曲の歌詞、英語としては特に難しい部分はなくユーモアのセンスも随所に見受けられるので、今回は楽しみながら歌詞を見ていくことにしましょう。
先ずは第1節目、最初の2行は冒頭で述べたとおり、テレビ伝道師のことであり、4行目でthat man is me と言ってますから、この歌詞の主人公はテレビ伝道師だということです。そして、3行目から6行目を聴いて分かるように、テレビ伝道師はそのウザい笑顔をテレビだけではなく、そこら中でふりまいているようですよ(笑)。最後のYou buy a piece of paradise, you buy a piece of me は、テレビ伝道師の番組を見て彼に金を注ぎ込んでいるような愚かな連中に対する皮肉であり、テレビ伝道師の笑顔は、そういった連中から金を巻き上げる為の道具だということでしょう。第2節は和訳のとおり。特に解説が必要な部分はありません。テレビ伝道師はキリストの教えを説いているように見せかけているだけで、テレビの画面の中から言っていることは第2節の歌詞のような利己的な内容でしかないということですね。第3節も同じく解説の必要なし。神と話せるとか、神の代理であるとか、神の生まれ変わりであるとか、その種の戯言は古今東西、ペテン師の常套句です。4節目はユーモア炸裂。1節目から4節目はテレビ伝道師の節操のなさを皮肉っていて、3行目は売春婦を愛人にしていたテレビ伝道師Jimmy Swaggert、4行目は自身がゲイで彼氏漁りに明け暮れていた同じくテレビ伝道師のJim Bakker のことを指しているというのが定説。後半のDo you believe in God?やDo you wanna get to heaven?もまたペテン師の常套句で、これらの言葉を餌にテレビ伝道師は愛人を囲っていくって訳ですね。生臭坊主ならぬ生臭伝道師です(笑)。
第5節3行目のtouch that dial は「Don’t touch that dial!」といって、昔テレビ番組で良く使われていたフレーズ。「テレビのチャンネルに触らないで」即ち「チャンネルは変えないで、チャンネルはそのまま」という意味です。5節目が描写しているのは、テレビの前でテレビ伝道師の言葉に耳を傾けているような連中の姿でしょう。第6節は第3節の繰り返し。但し、第3節ではeverything is alright と断定調であったものがeverything’s gonna be alright とやや心が揺らいでいます。第7節の最初の2行は、テレビ伝道師の偽善者たる姿の描写。3行目以降は偽善者の戯言。最後のjust do as I say, don’t do as I do は「Do as I say, not as I do」という英語の諺の言い換え。そもそも人間は自分が言ったとおりの行動をそのとおりにできる訳でもないから、私のするとおりにするのではなく、私の言うとおりりにしなさいという意味で、自分で実行していないことでも、人にはそうしろと言いたい場合に使われます(日本人の感覚では、ちょっと首を傾げたくなる表現ですが)。第8節と9節も皮肉が効いてます。8節目は君も僕のところに電話してきてくれたら、またまたカモが増えて、ますます儲かると言ってるも同然です。9節目の最後の行は「Get on your knees and start praying 跪いて祈りなさい」と言うべきところを、pray にpay をひっかけて「Get on your knees and start paying 跪いて金を払いなさい」としているところがとても面白いです。まさしく、テレビ伝道師の拝金主義に対する批判ですね。
さて、Phil Collins が風刺したテレビ伝道師という存在、その後どうなったのでしょうか?残念ながら、21世紀になった今でも消滅していないばかりか、キリスト教系新興宗教に留まらずイスラム教のテレビ伝道師まで出てきている始末です。但し、テレビなんてつまらないものは老人以外もう誰も見ない時代になってきていますから、活動の場はテレビからネットの世界に移りつつあり、特定の伝道師がいる訳ではないものの、ネットで若者を盛んに勧誘している「イスラム国」などはその最たるものと言えます。日本でも宗教団体の悪行が後を絶ちませんが、宗教を利用して権力や利益を得ようとする人間と宗教にすがる人間(と言うか、自分で考えることをせずに他人にすがる人)がいなくならない限り、この種の問題は今後も世界中で続いていくことでしょうね。恐ろしい話です。
【第66回】Crazy Little Thing Called Love / Queen (1979)
これまでイギリスの曲もかなり紹介してきたつもりでしたが、まだまだ紹介できていない英国出身のミュージシャンが数多くいることに気付いたので(←今更かよ・汗)、急遽「UK特集」を組むことにしました!ということで、暫くはイギリスの名曲を連続で紹介していきたいと思います。黒人音楽のリズム&ブルースをロックンロールに昇華させたのはアメリカの白人ですが、実のところ、そのロックンロールをさらにロック(特にハードロック)へと昇華させた功績の半分はイギリス人にあると言っても過言ではないくらい、英国には有能なミュージシャンが数多くいるんですよね。今回紹介するミュージシャンは、全世界で3億枚のレコードが売れたとされ、2024年にその楽曲の権利がエンターテイメント系企業に約2千億円で買い取られた「クイーンQueen」です。そのバンド名からしても、なんだかイギリスの女王陛下(今はチャールズ国王に変わってますけども)をイメージさせて「ザ・英国」といった感のあるQueen ですが、ボーカル担当でバンドの顔であったFreddie Mercury(フレディー・マーキュリー)は、アフリカ東部のタンザニア沖に浮かぶザンジバルという島で生まれたインド人でした(当時のザンジバルはイギリスの植民地であったので英国領)。彼は17歳の時に両親と共に英国へ移住し(移住の目的はザンジバルで起こった政変から逃れる為)、Queen のメンバーに加わったのは24歳の時(と言っても、当時のバンド名は「Smile」というダサいもので、フレディーの提案で「Queen」に変えたそうです。また、その際に彼は本名のFarrokh Bulsara(ファルーク・バルサラ)から英国風のFreddie Mercury に改名しています)。Queen のフロントマンがインド人であったというのは意外ですが、フレディーもそのことにはあまり触れられたくなかったみたいで、彼が自ら出自を語ることはありませんでした。若かりし頃、僕がQueen の曲を聴くことはほとんどなかったんですけど、唯一例外であったのが今日お届けするCrazy Little Thing Called Love という曲。と言うのも、中学生の時、僕はラジオから流れてきたオールディー風のこの曲のメロディーラインを聴いてとても気に入ったんですが、Queen の曲だとは知らなかったと言うか、あまりにも作風が違っていて分からなかったからなんですよね。この曲がQueen のものだと知ったのはずっと後になってからのことです(勿論、歌詞の意味もですが・汗)。This thing called love
I just can’t handle it
This thing called love
I must get ‘round to it, I ain’t ready
Crazy little thing called love
こういった恋ってものはさ
僕にはうまくやれないんだよね
こういった恋ってものはさ
やってみなきゃいけないんだけど、僕には準備ができてないんだ
恋っていうイカれたちっぽけなものに対してね
A-this thing (This thing)
Called love (Called love)
It cries (Like a baby)
In a cradle all night
It swings
It jives
It shakes all over like a jellyfish
I kinda like it
Crazy little thing called love
こういった(こういった)
恋ってものは(恋ってものは)
泣くことなんだ(赤子みたいに)
揺り籠の中で一晩中ね
揺れて
揺られて
あちこちで揺れてるんだ、クラゲみたいに
でも僕さ、なんか好きかもね
恋っていうイカれたちっぽけなものが
There goes my baby
She knows how to rock ‘n’ roll
She drives me crazy
She gives me hot and cold fever
Then she leaves me in a cool, cool sweat
彼女、行っちゃったよ
ロックンロールのやり方が分かってた彼女
僕を虜にした彼女
僕の熱を上げたり下げたりした彼女
そんな彼女が冷たく僕を振るなんて、冷や汗ものさ
I gotta be cool, relax, get hip
And get on my tracks
Take a back seat, hitch-hike
And take a long ride
On my motorbike until I’m ready
Crazy little thing called love
僕は冷静になって、心を落ち着けて、状況を理解して
前に進まなきゃね
車の後ろに乗って、ヒッチハイクして
長距離をドライブするんだ
バイクに乗って、準備ができるまでね
恋っていうイカれたちっぽけなものの準備がさ
Yeah
I gotta be cool, relax, get hip
And get on my tracks
Take a back seat
Hitch-hike
And take a long ride on my motorbike
Until I’m ready
Crazy little thing called love
そうさ
僕は冷静になって、心を落ち着けて、状況を理解して
前に進まなきゃね
車の後ろに乗って
ヒッチハイクして
長距離をドライブするんだ、バイクに乗って
準備ができるまで
恋っていうイカれたちっぽけなものの準備がさ
This thing called love
I just can’t handle it
This thing called love
I must get ‘round to it
I ain’t ready
こういった恋ってものはさ
僕にはうまくやれないんだよね
こういった恋ってものはさ
やってみなきゃいけないんだけど
僕には準備ができてないんだ
*このあと、アウトロでCrazy little thing called love, yeah, yeah を連呼して曲は終了します。
Crazy Little Thing Called Love Lyrics as written by Freddie Mercury
Lyrics © EMI Beechwood Music
【解説】
フレディー・マーキュリーはエイズに罹患し、1991年に45歳で早逝していますが、生前、この曲についてエルビス・プレスリーに捧げる為に作ったものだと語っていたそうです。その言葉どおり、コントラバスが似合いそうなこの曲のメロディーラインは確かにロカビリー風ですね(歌い方もなんかプレスリーを真似てっぽいです)。フレディーは「’Crazy Little Thing Called Love’ took me five or ten minutes」とも語っていて(誇張のような気がしないでもないですけども)、そんな短時間で作ったせいなのか、その歌詞は練り上げたというよりも、頭に浮かんだ短い言葉を次々になぐり書きしたような感が無きにしもあらずで、歌詞に使われているのは簡単な単語ばかり。ですが、注意深く聴いてみるとなかなか奥の深い構成になっています。英語のlove は日本語に置き換える際、「愛」なのか「恋」なのかを区別することが重要であると以前にお話ししたことがあると思いますが、この曲に出てくるlove は日本語で言うところの「恋」の方です。
第1節4行目のget around to~は、ずっと時間がなかったけどようやく取りかかれる、手がまわるといったイメージ。この第1節だけ聴くと、歌詞の主人公は恋愛に初心な人物で、初めての恋愛にまだ踏み出せていないって印象を受けますが、果たしてそうなんでしょうか?そのヒントが出てくるのが次の節です。第2節の初っ端にA-this thing という文が出てきます。普通は軽く聞き流してしまうと思いますが、わざわざA-this という言葉を使っているからには何か意味があるはずです。文法上、a とthis が結びつくことはありませんから、この部分はa thing と言おうとした主人公が、思い直してthis thing にしたという心の動きだと僕は理解しました。それがどういうことかと言うと、例えば、ネイティブ話者が「Is this a thing?」と尋ねてきた場合、それは「それって普通のこと?」と訊いているのであり、a thing には「普通の」というイメージが重なります。つまり、主人公は「普通の恋」と言おうとしたんですが「いやいや、やっぱり普通ではないな」と思いthis thing に言い換えたのです。それ故に、主人公は最後の行でCrazy little thing とさらに言い換えているのではないでしょうか(←僕の考え過ぎかもですので悪しからず・汗)。第2節に出てくるswing、jive、shake の3つの動詞に共通するイメージは「揺れる」という動きであり、7行目にlike a jellyfishという言葉を使っているのも唐突ではなく、ネイティブ話者がfeel like jelly とかturn to jelly と言った場合、それは足や膝がゼリーみたいにふにゃふにゃになっているという感覚を表していて、怖れや不安で震え始めているような状態を意味するからです。jelly にjellyfish をひっかけているという訳ですね。つまり、3行目から7行目までの文が暗喩しているのは主人公の揺れ動く心であるというのが僕の結論です。
その揺れ動く心がの正体が何であるのかが明らかになるのが第3節。この節を聴いてもらえば分かるとおり、主人公の心が揺れていた原因が失恋であることは明白。この歌詞の主人公は自らの破れた恋をCrazy little thing called love と呼んでいますが、第2節の落ち込みぶりから見ると、little thing ではなかったようですね。だからこそ、crazy という言葉を自虐的に冠しているのだと思います(笑)。第3節1行目のThere goes~は、goes のあとに物が来れば、その物がどこか違う場所へ行ってしまうというイメージ、人が来るならば、去って行ってしまうというイメージです。5行目のin a cool はin a cool way と言葉を補って訳しました。この節に出てくる主人公を振る人物がshe なので、この歌詞の主人公が男性であることがここではっきりしますが、この歌を熱唱しているフレディー自身はゲイであったというのが定説ですから、彼はHeと歌いたかったのだろうかと考えるとちょっと面白いです。4節目で語られているのは失恋後の主人公の心情。日本でも傷心して一人旅に出たりする人がいますが、そんな感じですかね。この節で注目していただきたいのは4行目からのtake a long ride on my motorbike until I’m ready というフレーズ。ここで主人公が言っているuntil I’m ready は、失恋の傷心を癒して次の恋の準備ができるまでということであり、つまり、第1節に出てきたI ain’t ready は、初心な男がまだ恋愛の準備ができていないということではなく、女性に振られた男がまだ次の恋への準備ができていないということだったのです(汗)。1行目のget hip はこれだけだと「流行りに乗る」という意味ですが、ここはget hip to the situation として、2行目のtracks は未来に続く道、進むべき道として理解しました。
と、このように、僕にはCrazy Little Thing Called Love は「失恋はしたけど、まあ、次の恋にまたチャレ ンジしてみるか。まだその気にはなれないけど、恋っていいもんだしな」という風にしか聞こえませんでし たが、日本では「愛という名の欲望」なんていう意味不明な邦題が付けられてるせいなのか、違った解釈を している方々も多いようです(汗)。
【第67回】Highway Star / Deep Purple (1972)
ハードロックの先駆者は誰かと問われれば、レッド・ツェぺリンやディープ・パープルといったイギリス勢の名前を真っ先に挙げる人は多いことでしょう。なにせ、70年代初頭のアメリカでハードロックらしきものをやっているのはAlice Cooper くらいしかいてませんでしたからね。今日ご紹介する曲は、そのディープ・パープルが半世紀以上も前にヒットさせたHighway Star。21世紀になった今聴いてもまったく古さを感じさせない名曲中の名曲です。ディープ・パープルは1968年、天才ギターリストの一人であるRitchie Blackmore を中心にロンドンで結成されたロックバンド(バンド名はRitchie の祖母のお気に入りがNino Tempo & April Stevens のDeep Purple だったことに由来するそう)。このバンドもまた、メンバーを入れ替えながら現在も存続しているのですが(80に近い爺さんの集団とか、ちょっと見るに耐えないんですけども・汗)、Highway Star のヒット時のメンバーは、フロントマンでボーカル担当のIan Gillan、前述のRitchie Blackmore、ハモンド・オルガンで華麗な演奏を披露したJon Lord、ソフト帽を被って飄々とベースを演奏する姿がいい味を出していたベース担当のRoger Glover、そしてドラム担当のIan Paice という以上の5人でした。この時のメンバーが揃っていないと、僕の中ではディープ・パープルという気がしないですね。Highway Star という曲は、曲中のギター演奏部分にドイツの作曲家バッハの「トッカータとフーガ・ニ短調」からインスパイアーされた「バッハ進行」と呼ばれる進行コードが用いられていることでも有名で(と言っても、A Whiter Shade of Pale は「G線上のアリア」、When a Man Loves a Woman は「パッフェルベルのカノン」がそれぞれの曲のメロディーラインの下敷きになっていることは素人が聴いても分かりますが、この曲のバッハ進行を聞き取るのは素人には難しいです。当然、僕もどこがそうなのか良く分かりません・汗)、僕はこのバッハ進行を取り入れたのはキーボード担当のJon Lord だとずっと思っていたんですけど(バッハの「未完成のフーガ」を下敷きにした曲が収録されたWindows というアルバムを彼が個人的にリリースしていたからです)、今回、この解説の為にいろいろ下調べをした際にRitchie Blackmore が昔、雑誌のインタビューに答えている記事を見つけ、いつものように僕の勘違いであったことに気付きました(汗)。その記事によると、Ritchie Blackmore はこう発言しています。「I wanted a very definite Bach sound which is why I wrote it out, and why I played those very rigid arpeggios across that very familiar Bach progression—Dm, Gm, Cmaj, Amaj. I believe that I was the first person to do that so obviously on the guitar」
なので、この発言に嘘がないとすれば、バッハ進行を取り入れたのはRitchie Blackmore だったということですね。バッハ進行が取り入れられていることから、この曲や同じくディープ・パープルのBurn という曲は「ロックとクラッシックの融合」と表現されることが多いようです。でも、ロックとクラッシックの融合というよりも「ロックとジャズの即興演奏の融合」といった感じがしないでもないんですよね。Ritchieはこの曲の歌詞について「I wanted it to sound like someone driving in a fast car, for it to be one of those songs you would listen to while speeding」とも語っていて、スピードが出る車でスピードを出して運転している最中の人に聴かせることを彼がイメージしながらこの曲を作ったことが分かっています(歌詞はRitchie からその趣旨を聞かされたIan Gillan が即興で書いたそう)。では、そんなHighway Star がどんな曲でどんな歌詞なのか?難しい英語は使われてませんし、Ian Gillanの発音は聞き取り易いので、先ずは歌詞を見ないでこの曲をがんばって聴いてみてください。
Nobody gonna take my car
I’m gonna race it to the ground
Nobody gonna beat my car
It’s gonna break the speed of sound
Ooh, it’s a killing machine
It’s got everything
Like a driving power
Big fat tires and everything
誰も俺の車に追いつけはしねえさ
エンジンがぶっ壊れるくらい走らせてやるんだ
誰も俺の車を打ち負かしたりはできねえさ
俺の車は音速だって打ち破るんだ
へへっ、俺の車はぶっ飛んでんだぜ
必要なものはすべて揃ってる
エンジンのパワーとか
ぶっといタイヤだとか、すべてが揃ってる
I love it
And I need it
I bleed it
俺は車が好きなのさ
なくっちゃならねえのさ
だから血眼で走らせるのさ
Yeah, it’s a wild hurricane
Alright, hold tight
I’m a highway star
そうなんだ、俺の車は荒れ狂うハリケーンみたいなもの
さあ、しっかりとつかまりな
俺はハイウェイの帝王なんだぜ
Nobody gonna take my girl
I’m gonna keep her to the end
Nobody gonna have my girl
She stays close on every bend
Ooh, she’s a killing machine
She’s got everything
Like a moving mouth
Body control and everything
誰も俺の女に手出しはできねえ
彼女は最後まで俺の女さ
誰も俺の女と寝たりはできねえ
彼女はいつも俺の傍にいるからさ
へへっ、彼女はぶっ飛んでんだぜ
彼女には必要なものがすべて揃ってる
唇の動きとか
身のこなしだとか、すべてが揃ってる
I love her
I need her
I see her
俺は彼女が好きなのさ
いてくれなくっちゃならねえのさ
だから彼女と付き合うのさ
Yeah, she turns me on
Alright, hold tight
I’m a highway star
そうなんだ、彼女は俺をその気にさせるんだ
さあ、しっかりとつかまりな
俺はハイウェイの帝王なんだぜ
Nobody gonna take my head
I got speed inside my brain
Nobody gonna steal my head
Now that I’m on the road again
Ooh, I’m in heaven again
I’ve got everything
Like a moving ground
An open road and everything
誰も俺の考えには追いつけねえさ
俺は頭の中でも速えんだ
誰も俺の信念を奪うことなんてできねえさ
俺は今、路上に戻ってきたんだ
ああ、そうさ俺は再び天国にいるんだ
俺には必要なものがすべて揃ってる
躍動する大地とか
自由に走れる道だとか、すべてが揃ってる
I love it
And I need it
I seed it
俺は俺自身の生き方が好きなのさ
なくっちゃならねえのさ
だから信念を育むのさ
Eight cylinders, all mine
Alright, hold tight
I’m a highway star
8つのシリンダーは俺のもの
さあ、しっかりとつかまりな
俺はハイウェイの帝王なんだぜ
Nobody gonna take my car
I’m gonna race it to the ground
Nobody gonna beat my car
It’s gonna break the speed of sound
Ooh, it’s a killing machine
It’s got everything
Like a driving power
Big fat tires and everything
誰も俺の車に追いつけはしねえさ
エンジンがぶっ壊れるくらい走らせてやるんだ
誰も俺の車を打ち負かしたりはできねえさ
俺の車は音速だって打ち破るんだ
へへっ、俺の車はぶっ飛んでんだぜ
必要なものはすべて揃ってる
エンジンのパワーとか
ぶっといタイヤだとか、すべてが揃ってる
I love it
And I need it
I bleed it
俺は車が好きなのさ
なくっちゃならねえのさ
だから血眼で走らせるのさ
Yeah, it’s a mad hurricane
Alright, hold tight
I’m a highway star
I’m a highway star
I’m a highway star
そうなんだ、俺の車は荒れ狂うハリケーンみたいなもの
さあ、しっかりとつかまりな
俺はハイウェイの帝王
俺はハイウェイの帝王なんだ
そう、俺はハイウェイの帝王なのさ
Highway Star Lyrics as written by Richard Blackmore, Ian Gillan, Roger Glover, Jon Lord, Ian Paice
Lyrics © EMI Blackwood Music Inc.
【解説】
いいですねー、シビれますねぇー(歌詞はクサいですが・笑)。歌詞を見ずにがんばって聴いてみてみた皆さん、この曲のテーマがロックンロールの王道である「車」と「女」であることが聞き取れましたか?「何を言ってるのかさっぱり聞き取れませんでした!」という英語初心者の方々「大丈夫ですよ!履いてますから!」じゃなくて「大丈夫ですよ、最初はみんなそう!」ですからね。今後もめげることなく何百、何千回と聴き続けてください。そのうち聞き取れるようになってきます。そして「なんとなく言ってることは分かった」という英語中級者の方々、今後はできるだけ歌詞を見ないようにして、聞き取りの訓練を積んでください(←エラそうなことを言ってスミマセン・汗)。では、解説に進みましょう。
第1節2行目のI’m gonna race it to the ground のit が指しているのはmy car。raze something to the ground やrun something into the ground といった同じようなフレーズの響きから、僕の中では車が壊れるまでレースをさせる(走らせる)というイメージが湧いたので(勿論、このレースはレース場でするレースではなく、公道でやる違法なレースだと思われます)このように訳しました。4行目のthe speed of soundは音速のこと、つまりマッハですね。「俺の車はメチャクチャ速いんだぜ」と言いたいのでしょうが、ジェット戦闘機でもあるまいし、はったりをかますにも程があります(笑)。5行目のkilling machine も直訳すれば殺人マシーンですが、第4節のことを考えるとそのままではどうもしっくりこないので、このように言葉を置き換えました。要するに第1節は愛車自慢であり、それほど速い車に乗っているからには、歌詞の主人公は公道レースのチャンプかそれに準ずるような人物なのでしょう。では、この人物はどんな車に乗っているのでしょうか?それは後ほど。
第2節はレコードを聴けば分かりますが(今の時代、レコードなんて聴きませんか・汗)歌ってるというよりもシャウトですね。3行目のI bleed it のit もmy car のことを指していますが、直訳だと「私の車に血を流させる」で、日本語としてはヘン。I bleed it を聴いて僕の頭に浮かんだのは「血を流すほどに(必死に)走らせる」というイメージであったので、このように訳しています。第3節も特に解説は必要ないですね。highway star は直訳すれば「ハイウェイの星」ですが、歌詞の主人公は公道レースの頂点に立っているチャンプであるというイメージを強調すべく「帝王」にしました。第4節では、車自慢から一転して彼女自慢に変わります。4行目のShe stays close on every bend はちょっと分かり辛いですが、bend をcorner に置き換えれば直ぐに理解できます。わざわざbend なんて言葉を使っているのは勿論、2行目のend と韻を踏む為ですね。4行目で主人公が言わんとしているのは「彼女は俺にゾッコンだ」ということの暗喩であると理解しました(この主人公が得意のはったりである可能性ありですが・笑)。5行目をこのように訳した理由は前述のとおり。彼女が殺人マシーンだなんていう和訳だと、殺人鬼みたいでコワいですよね(笑)。7行目と8行目は僕の単なるエロ妄想ではなく、性的な意味合いを含んでいるのは間違いないと思います(第6節でshe turns me on と出てきますので)。まあ、要するに主人公の彼女は世間で言うところの「イイ女」なのだということでしょう(笑)。第5節の3行目は「彼女を見つめる」でもいいかなとも思いましたが、see は現在進行形で使われる場合、付き合うという意味にもなったりしますので、このように訳しました。6節目のturn someone on は前後の文脈によって様々な意味に変わりますが、ここでは前述のとおり「性的に興奮させる、その気にさせる」の意味で使われているとしか思えません。
6節目のあとに入るのは、オルガンソロと呼ばれるハモンド・オルガンを使ったJon Lord の演奏で、歌はしばらく休憩。今や伝説の域に入ったこの有名なオルガンソロはHighway Star という曲を特徴づけるもののひとつとなっていますが、この曲を解説する為の資料を探していた際、このオルガンソロをなんとギターでコピーして演奏している方の映像を偶々インターネットで見つけました。Mayto さんという日本のお嬢さんが演奏している映像だったんですが、このお嬢さん、7弦ギターを手に笑顔を振りまきながらいとも簡単に早弾きをこなしているんですよね。オルガンソロの部分は、Ritchie Blackmore が16和音が入っていてこの曲のギターソロよりも演奏が難しいと語っているのですけど、そんな超絶難しいパートをギターで早弾きしてしまうなんて、もう驚きとか感動を通り越して笑ってしまいました(失礼な表現でスミマセン・汗)。その卓越した演奏技術からしてMayto さんはプロのギター弾きなのでしょうが、日本でもこのようなお嬢さんが出てくる時代になったのかと思うと感無量です。
さて、オルガンソロを聴き終えると、次は7節目。第1節では自慢の車、第4節では自慢の彼女のことが語られていましたが、第7節で語られているのは歌詞の主人公自身についてです。流れからして当然「自分自慢」であると考えるのが自然でしょう(笑)。1行目から3行目は、何が言いたいのか良く分かりませんが(汗)、head やbrain はheart と同義語であり「heart=この主人公の思い=信念=主人公が自ら信じている生き様、生き方」と僕は理解しました。ネイティブ話者の中には、例によってここの節をドラッグと結びつけて考えようとする人が多いみたいなんですけど(恐らくI got speed inside my brain やI’m in heaven again というフレーズから短絡的にそう考えるのでしょう)、僕には歌詞の主人公が自分が公道レースに命を懸けて生きていることの(彼にとっては天国で暮らしているも同然の)喜びを爆発させているようにしか思えないです。第8節のI seed it も意味不明な表現ですが、ここのit はmy head を指しており、seed は種を蒔いて育てるというイメージからdevelopment という言葉が僕の頭に浮かびましたのでこのように訳しました。そして第9節。大変お待たせしました!ようやくここで主人公の車が判明です。Eight cylinders は、1970年前後に次々と登場した高出力、大排気量のV型8気筒エンジンを積んだ後輪駆動(FR)のアメリカ製クーペの言い換えでしょう。ガソリン垂れ流しみたいな所謂muscle car のこと。車種で言えばプリマス・ロードランナーとかダッジ・チャージャー、ポンティアックGTOあたりですかね。そんな車でハイウェイをぶっ飛ばしている主人公の姿が目に浮かびます。因みに8気筒を英語で言うとeight-cylinder。わざわざハイフンが入れられているのは、この言葉のうしろに通常はengine が来て形容詞のようにして使われることから形容詞であることを明確にする為で、単体だと名詞ではありますが形容詞扱い。なのでcylinder は単数形となります(I have a ten-year-old son とか言うのと同じ理論)。
さてさて、ハードロックの基本がすべて備わっているかのようなHighway Star、如何でしたか?車の運転中にこの曲を聴くと、確かにアクセルを踏み込んでしまうかもですが、くれぐれも安全運転でお願いしますね(←スピード違反は犯罪です・汗)。それと、Ritchie Blackmore のようにギターの演奏中にギターを破壊するような真似もしてはなりません(普通はいませんよね、そんな阿呆は)。道具を大切にしない奴は屑です(怒)。その道具を作った人たちに対するrespect がありませんから。と、ヘンなまとめ方で本日はお終い!(笑)
【第68回】Da Ya Think I’m Sexy? / Rod Stewart (1978)
その昔、染めた髪ではない本物の金髪とアイドルのような甘いマスク、そして、一度聞けば誰もの耳に残るハスキーボイスで多くの女性を魅了したRod Stewart。税金の高い祖国から逃れるようとアメリカへ移住し、ハリウッドの豪邸で長らく暮らしていたこの人もイギリス人なんですが、今日はそんな彼が1979年にヒットさせてビルボード社年間ヒットチャートで4位に輝いたDa Ya Think I’m Sexy?という曲を紹介しましょう。別にRod Stewart に興味はないですし、彼の曲が好きな訳ではないですけども、この曲には有名なおもしろエピソードがあるので取り上げることにしました。どんなエピソードなのかと言いますと、ズバリ、盗作事件です!所謂パクリというやつですね(←どこがおもしろエピソードなんだ・汗)。ブラジルのJorge Ben Jor という歌手が、Da Ya Think I’m Sexy?は自分が1972年に発表したTaj Mahal という曲の盗作だと裁判所に訴え、裁判所が著作権侵害に当たるとして彼の主張を認めたのです。Taj Mahal はそのタイトルどおり、インドのタージ・マハルを建造した皇帝ジャハーンとその妃マハルが育んだ愛についてポルトガル語で歌ったもので、歌詞はDa Ya Think I’m Sexy?と似ても似つかないものですが、この2曲を聴き比べればメロディーラインが完全にパクリであることは誰の耳にでも分かりますから、当然の結果だったと言えるでしょう(笑)。後になってRod Stewart は自身でも盗用を認めましたが、無意識のうちに真似ただけだし、曲のメロディーラインの核となる部分を真似ていなければ、盗用には当らないみたいなことを言ってたようです。「無意識って、いやいや、Da Ya Think I’m Sexy?のメロディーラインの基本線はTaj Mahal そのものですよ。あんた、最初から計画的にパクったでしょ」って感じなんですがね(笑)。結局、Rod はJorge に金を握らせたのか、Jorge は訴えを取り下げ、以降のこの曲の印税収入をすべて国際連合児童基金(UNICEF)に寄付するというなんだか訳の分からない和解でもって事件は解決しています。She sits alone waitin’ for suggestions
He’s so nervous, avoidin’ all the questions
His lips are dry, her heart is gently poundin’
Don’t you just know exactly what they’re thinkin’?
女が一人腰掛け誘われるのを待ってる
なのに男は固くなって話しかけるのを避けてる
彼の唇は乾き、彼女の胸は高鳴ってる、静かにね
二人が何を考えてるかなんてこと、分かるよね?
If you want my body and you think I’m sexy
Come on, sugar, let me know
If you really need me, just reach out and touch me
Come on, honey, tell me so (Tell me so, baby)
君が僕の体を求めるなら、僕のことをセクシーだって思うなら
いいんだよ、そう言ってくれてさ
君がほんとに僕を必要としてるなら、手を差し伸べて僕に触れてくれ
さあ、彼女、そうするって言ってくれ
He’s actin’ shy, lookin’ for an answer
Come on, honey, let’s spend the night together
Now, hold on a minute before we go much further
Give me a dime so I can phone my mother
They catch a cab to his high-rise apartment
At last, he can tell exactly what his heart meant
男はシャイを演じ、返事の言葉を探してる
さあ、彼女、今夜は一緒に過ごそうよ
でも、ちょっと待って、僕たちが先に進む前にね
10セントもらえないかな、母さんに電話できるようにね
そして二人はタクシーで男のタワーマンションへ向かったのさ
彼には分かってるんだ、何をしたいのかってことがさ
If you want my body and you think I’m sexy
Come on, honey, tell me so
If you really need me, just reach out and touch me
Come on, sugar, let me know, ow
君が僕の体を求めるなら、僕のことをセクシーだって思うなら
いいんだよ、そう言ってくれてさ
君がほんとに僕を必要としてるなら、手を差し伸べて僕に触れてくれ
さあ、彼女、そうするって言ってくれ
His heart’s beating like a drum
‘Cause, at last, he’s got this girl home
Relax, baby, now, we are all alone, ow
男の胸はドラムを叩くかのように高鳴ってる
だってさ、終に彼女を部屋へ連れ帰ったんだもの
さあ、彼女、リラックスしてよ、僕たち二人っきりなんだから
They wake at dawn ‘cause all the birds are singing
Two total strangers but that ain’t what they’re thinking
Outside, it’s cold, misty and it’s raining
They got each other, neither one’s complaining
He says, "I’m sorry but I’m out of milk and coffee
Never mind, sugar, we can watch the early movie"
小鳥のさえずりで目覚めた二人
全く見知らぬ同士の二人だけど、そうは考えてない二人
外は寒くて霧がかってて、雨も降ってる
二人は不満もなく、互いに分かり合ってる
そして男はこう言うのさ「ごめん、ミルクとコーヒーを切らしてんだけどさ
気にしないでよね、朝から映画を観るのも悪くない」ってね
If you want my body and you think I’m sexy
Come on, sugar, let me know
If you really need me, just reach out and touch me
Come on, honey, tell me so
君が僕の体を求めるなら、僕のことをセクシーだって思うなら
いいんだよ、そう言ってくれてさ
君がほんとに僕を必要としてるなら、手を差し伸べて僕に触れてくれ
さあ、彼女、そうするって言ってくれ
If you really need me, just reach out and touch me
Come on, sugar, let me know
If you really, really, really, really need me
Just let me know
Just reach out and touch me
If you really want me
Just reach out and touch me
Come on, sugar, let me know
If you really need me, just reach out and touch me
Come on, sugar, let me know
If you, if you, if you really need me
Just come on and tell me so
君がほんとに僕を必要としてるなら、手を差し伸べて僕に触れてくれ
さあ、彼女、そう言ってくれ
君がほんとに、ほんとに、ほんとに、ほんとに僕を必要としてるなら
そう言ってくれ
手を差し伸べて僕に触れてくれ
君がほんとに僕を必要としてるなら
手を差し伸べて僕に触れてくれ
さあ、彼女、そうするって言ってくれ
君がほんとに僕を必要としてるなら、手を差し伸べて僕に触れてくれ
さあ、彼女、そう言ってくれ
もしも、もしも、君がほんとに僕を必要としてるなら
こっちへ来てそう言ってくれればいいのさ
Da Ya Think I’m Sexy? Lyrics as written by Rod Stewart, Carmine Appice, Duane Hitchings
Lyrics © EMI April Music Inc, Full Keel Music, WB Music Corp.
【解説】
曲のアレンジといい、歌詞の内容といい、70年代アメリカのディスコブームに乗っかろうとしたことが見え見えの曲ですね(笑)。Rod Stewart という人は商魂たくましいというか、音楽ではなく商売の才能がある人のようです(そのおかげなのか、彼の個人資産は約300億円だそう・汗)。この曲のタイトルのDa Ya はDo You のことでして、Da Ya なんて文字を当てている時点でもうクサいです(笑)。ではでは、そのクサい歌詞を見ていくとしますか(←なんで嫌々?←興味のない曲だからです←じゃあ、紹介するなよ←UK特集なので、まあいいかと思いまして・汗)。
先ずイントロにsugar, sugar と連呼するRod の声が入っているのに気付かれましたか?これは「砂糖をくれ、砂糖をくれ」と言っているのではないですね(笑)。sugar はhoney やsweetheart 等と同様の女性に対する呼びかけの言葉です。第1節は簡単な英語しか使われていませんが、少し頭を働かせないとうまく理解できません。1行目のsuggestions は直訳すれば「提案」ですが、ここでの意味は男からの提案、つまり、男からの誘いの言葉。2行目のquestionsも直訳すれば「質問」ですが、ここでの意味は女への質問なので、女に対する誘いの言葉であると僕は理解しました。4行目のDon’t you just know exactly what they’re thinkin’? の答えは勿論sex 以外に他はないでしょう(笑)。第1節を聴いて僕の目に浮かんだのは、ディスコの店内でソファーに腰掛け男の誘いを待っている女とその女を見つめる男。そんな男女の姿でした。第1節に登場した男は、緊張してなかなか女に声をかけられないでいるような男といった感じでしたが、第2節を聴くと、心の中では全く違ったことを考えている男であることが分かってきます(笑)。第2節で男が主張しているのは「俺はイイ男なんだから、女の方から声をかけてこい」というとんでもないことなんですよね。なんとも上から目線な嫌味野郎じゃないですか(笑)。因みに、この曲の歌詞に関してRod は、自分のことを歌っているものではないと明言しています。
第3節は、3行目まではまあいいとして、4行目があまりにも唐突かつ意味不明です。例によってこの時代は携帯電話なんてない時代ですから、公衆電話で電話をする為に10セントをくれと男は言っているのですが、自称イイ男がこんなセコいことを言うなんて…。しかも、母親に電話したいだなんて意味不明です。ひょっとして、男は母親と同居かなんかをしていて(母親の面倒をみていて)「今から女を連れて帰るから、部屋を開けてくれ」とでも言うつもりなんでしょうかね。良く分かりません(汗)。6行目のtell は「語る」ではなく「分かる、想像をつける」の意味で使われているtell です。he can tell exactly what his heart meantってまた同じことを言ってますね。何をtell できるのかと言うと、勿論sex 以外に他はないでしょう(笑)。第4節は2節目と同じフレーズの繰り返し。5節目は訳語のとおり。6節目は事を終えた二人が迎えた朝の描写なのでしょうが、ここも唐突感が拭えませんし5行目以降はワケワカメです。ミルクとコーヒーを切らしてるから映画を見に行くって、いったいどういう発想なんでしょうか。この男が知っている映画館の売店のコーヒーが美味いのか、そんな風にしか僕には考えられませんでした。7節目は再び同じフレーズの繰り返しが入り、8節目も同じようなフレーズの連呼。ただ、最後がJust come on and tell me so で終わっていて、これを聴いた瞬間、僕の口から「おいおい、待ってくれよぉー」という言葉が漏れました。この言葉によってシーンが第1節に戻ったとすれば、2節目から7節目までに語られていたことは、まだ実行に移されていない男の頭の中での妄想であったということになるのではないかと思ったんですよね。第3節に出てきたhigh-rise apartment も貧乏暮らしな男の単なる願望だったのかも知れません。そうだとすれば、10セントを恵んでくれというセコさも辻褄が合います(←あくまでも個人の見解・汗)。
おっと、歌詞がクサいせいなのか中身のない歌詞だからなのか、意外に早く解説が終わってしまいました。そんなDa Ya Think I’m Sexy?というこの曲、Rod Stewart の目論見どおり全米で大ヒットすることになったものの、かつてはThe Jeff Beck Group にも属していたことのある彼が金のなる木に群がるかのように変節したことは、同業のミュージシャンたちから大いに馬鹿にされたようです(笑)。
【第69回】Anarchy In The UK / Sex Pistols (1977)
1970年代中旬、闇夜に突然鳴り響く雷鳴のごとくロンドンに出現したパンク・ムーブメント(以降、パンクと記します)。英国に強く残る階級社会や経済的な停滞の続く希望なき社会への反発から生まれたように思われることの多いこのパンクですが、実は歴史や伝統、階級社会とは無縁の米国のニューヨークで生まれたもの。元はと言えば、既存の社会や政治に対する反抗から生まれたヒッピー・ムーブメントの軸足をファッションや音楽といった芸術の世界に移し変えたような活動でした。その新たなムーブメントをニューヨーク滞在中に経験し、ロンドンに持ち帰ったのが英国人のデザイナーMalcolm McLaren という人物で、その彼こそがSex Pistols の生みの親であり、ロンドンでパンクを広めた張本人であることはあまり知られていません。裕福な家庭で育ち実業家でもあったMcLaren はロンドンで衣料品販売の「SEX」という店を経営していて(←すごい店名ですが・笑)、そこに出入りしていた音楽好きの不良少年、Steve Jones とPaul Cookに声をかけ、ボーカル担当としてJohnny Rotten、そして、当時SEX の店員であったGlen Matlock をベース担当に加えて1975年にバンドを結成させました。そして、その翌年にAnarchy In The UK でレコードデビューさせたそのバンドこそが、後にロンドンのパンクシーンを引っ張っていくことになるSex Pistolsだったのです。しかも面白いことに、デビュー直後、英国の民放局の娯楽番組「Today」に出演したSex Pistolsは、生放送でfuck, shit, cunt といった放送禁止用語をバンバン使って局に出入り禁止になっただけでなく、レコード会社からも即座に契約を打ち切られました(当時の映像がネット上にあったので見てみましたが、確かにそれらの言葉を使ってはいるものの、生意気盛りで礼儀を知らない若造が粋がって話しているという感じがするくらいで、現在の若者感覚からすれば、それほど汚い言葉遣いでもないんじゃないかと僕は思いました。そもそも司会者が先にSex Pistols のメンバーを挑発していますし、それよりも彼らと同席していた女性ダンサーの一人がナチの鉤十字の腕章を巻いていることの方が気になりましたね)。ですが、その一方ではバンドの知名度が急激に高まり、一方的に契約を破棄したレコード会社からは違約金として大金をせしめることができています(←なんか確信犯ぽいですけど・笑)。そんな彼らのデビュー曲の歌詞がこれです!I am an Antichrist
I am an anarchist
Don’t know what I want, but I know how to get it
I wanna destroy passersby
俺はキリストに背く輩さ
そう、俺はアナーキストなのさ
何を望んでるのかは分からねえけど、どうやるのかは分かってる
俺は通りすがりの連中をぶちのめしたいんだよ
‘Cause I wanna be anarchy
No dog’s body
だってな、俺は無秩序でいてえのさ
こき使われる下っ端なんてごめんなのさ
Anarchy for the U.K., it’s coming sometime and maybe
I give a wrong time, stop a traffic line
Your future dream is a shopping scheme
英国の為になる無秩序な世界、それはいつかやって来るし、多分
俺は間が悪い時に、車の行き来くらいは止めてるかもだ
おまえらの夢ってウインドウ・ショッピングくらいだもん
‘Cause I, I wanna be anarchy
In the city
だってな、俺は無秩序でいてえのさ
この街でさ
How many ways to get what you want
I use the best, I use the rest
I use the enemy
I use anarchy
望みのものを手に入れる方法って幾つあるんだ
俺は最善の策を取って、残りの策も利用して
敵も利用して
無秩序も利用する
‘Cause I wanna be anarchy
It’s the only way to be
だってさ、俺は無秩序でいてえんだよ
それが唯一の方法なんだよ
Is this the M.P.L.A.?
Or is this the U.D.A.?
Or is this the I.R.A.?
I thought it was the U.K.
Or just another country
Another council tenancy
それって、アンゴラ人民解放運動のことかい?
それとも、アルスター防衛同盟のことかい?
それとも、アイルランド共和国軍のことかい?
俺は英国のことだって思ってたね
それとも、他の国か
どこかの公営住宅のことかもな
I wanna be anarchy
And I wanna be anarchy
Know what I mean?
And I wanna be anarchist
I get pissed, destroy
俺は無秩序でいてえんだ
そう、無秩序でいてえんだ
俺が何のことを言ってるか分かるかい?
アナーキストになりてえってことさ
頭にくるから、ぶちのめしてやるのさ
Anarchy In The UK Lyrics as written by John Lydon, Steve Jones, Glen Matlock, Paul Cook
Lyrics © WB Music Corp, Warner/Chappell Music Ltd, BMG Ruby Songs, Universal Music Careers
【解説】
デーモン閣下のような不気味な笑い声と、単調なギターのコードだけで構成されているのになかなかイケてる印象的なイントロで始まるAnarchy In The UK。まあ、こんな歌詞の曲を歌うバンドをよくもテレビの生放送に出演させたものだと思いますね(笑)。それでは早速、いつものように歌詞を見ていきましょう、と言いたいところですが、Anarchy In The UK が世に出た1970年代前半のイギリスがどのような状況にあったのかを知っておいてもらうことがこの曲の歌詞の理解には欠かせませんので、少しだけつまらない話にお付き合いください。
当時のイギリスは、長らく政権を担っていた労働党の政策によって基幹産業の国営化が進められた結果、それらの産業の競争力が著しく低下していました。企業が国営になると、労働者は倒産の心配が無くなるだけでなく、利益が出ずに赤字の垂れ流しであろうが自らの給料は保証されるので、徐々に真面目に働かなくなって生産性が落ち、競争力も失われていくのが世の常なのです。かつての共産主義国の企業がそうであったのと同じですね。それだけでなく、イギリス政府は労働者に対する手厚い社会保証政策も推し進めていた為、経済の状態は右肩下がりなのに社会保障にかかる費用は鰻上り。国家の財政は破綻寸前でした。そこに中東戦争の余波による急激な石油価格の上昇(オイルショック)が加わったことで、企業の倒産が増加。街には失業者(特に若者層)が溢れ、政治に対する不信感と無気力がイギリス全土を覆っていたのです。そんな最中に生まれた曲がこのAnarchy In The UK でした。この曲を書いたJohnny Rotten(本名John Lydon)は歌詞についてこう語っています。「I hit on the right note and tone of a country on that was on the verge of political collapse. 俺は政治的崩壊の縁にあった国の状況を的確に捉えたんだ」と。余談ですが、1979年にマーガレット・サッチャーが英国の首相となり、80年代に入るとイギリス経済は徐々に回復していきますが、それはサッチャーの政策が功を奏したのではなく、イギリスが北海で開発を続けていた油田の石油を80年代に入ってようやく輸出できるようになったからでした(オイルマネーで潤い始めた訳です)。
これで、皆さんには当時のイギリスの状況を頭に叩き込んでいただけたと思いますので、歌詞の解説に入るとしましょう。先ずは第1節、聞き慣れぬ言葉がいきなり出てきます。1行目のAntichrist は反キリストと辞書には記されてありますけども、元々はキリスト教の終末論において、イエス・キリストに反対して自らを救世主と名乗る者(偽救世主)のことを指していました。そこから転じて「人を惑わす者」という意味でも使われます。2行目のanarchist は、anarchism 無政府主義(国家や宗教など権威、権力を一切否定し、権力者や法の支配を受けない個人を主体とする一種の共同体社会を築こうとする思想)を信奉する者のことですが、この歌詞の主人公がその思想を理解した上でI am an Antichrist と言っているとは思えませんね(笑)。4行目のI wanna destroy passersby にはテロ攻撃を示唆しているような不穏さがあり、実際、この曲の歌詞を知ったイギリスの情報機関MI5 はSex Pistols を監視対象にしていた時期があったようです(←真偽は不明)。2節目のdog’s body はdogsbody とも綴られ「こき使われる人、下っ端」の意味で主としてイギリス使われる単語。元々は人がやりたがらない重労働に就かざるを得ない人々のことを指していました。次の第3節はちょっと難解というか意味不明。1行目のmaybe をボーカルのJohnny Rotten がマイビと発音しているのは、この歌詞の主人公が労働者階級であることを強調する為かも知れませんし、Johnny Rotten がロンドンの下町育ちなので普段からそう発音しているのかも知れませんが、どちらなのかは分かりません(因みに、彼の両親はロンドンの下町生まれではなくアイルランド人です)。ワケワカメなのがI give a wrong time, stop a traffic line で、普通はI give a wrong time なんて表現はしませんから何を言いたいのか良く分かりませんが、感覚的には悪いタイミングで何かのアクションを起こすようなイメージで、何をしようとしているのかと言えばstop a traffic line です。こちらも奇妙な表現でして、道路を走っている車列を止めるといった風にしか理解できません(stop at traffic line ではないかという説もありますが、at であったとしても意味が良く分かりません・汗)。恐らく、なぜそんなことをするのかの理由が3行目のYour future dream is a shopping scheme で、僕はa shopping scheme をウインドウ・ショッピングの言い換えであると理解しました。当時のイギリスの多くの若者は失業中につき金が無かったので、街の商店やショッピングモールでshow-window の中の商品を眺めるくらいしかできなかったからです。そう考えると、2行目のstop a traffic line は公共の交通手段(金が無いので無賃乗車の可能性もあり)で街の商店やショッピングモールへ暇つぶしに向かう若者たちへの妨害行為とも思えてくるのですが、若者たちのささやかな楽しみをなぜそんな風に邪魔するのか意味不明です。ひょっとすると、そんなつまらないことをしている前に、国家、政府に立ち向かえというメッセージなのかもですが(←いつものように考え過ぎ?)こんな下手くそな比喩では誰も理解できません。なので、第3節がいったい何を言おうとしているのかは理解不能というのが正直なところです(汗)。第4節から第6節までは特に解説が必要な個所はないですね。第7節はAbbreviation のオン・パレードですので、先にそれらの略語を整理しておきます。
MPLA:Movimento Popular de Libertação de Angola
アフリカ南部にあるアンゴラは当時、ポルトガルの植民地で、ポルトガルからの独立を目指して武力闘争を行っていた組織。MPLA はポルトガル語のAbbreviation です。Johnny Rotten がなぜにここでMPLA を引き合いに出しているのかは良く分かりませんが、彼の中ではIRA やUDA と同列の組織だったのでしょう。
IRA:Irish Republican Army
北アイルランドの地を英国から取り戻し、アイルランドとの統合を目指した武装組織。数多くの爆弾テロ、要人暗殺などを繰り広げたことで名を馳せました。
UDA:Ulster Defence Association
IRA に対抗する為に組織された北アイルランド在住英国人の武装集団。
第7節でポイントとなるのは、Is thisのthisがいったい何を指しているのかで、4行目で主人公がI thought it was the U.K.と言っているように、このthis は人々を苦しめる権威、権力という糞みたいな存在のことであると僕は理解しました(IRA やUDA も理想の為に戦っているように見えて、その実は権威を笠に着て恐喝まがいの行為で一般市民から活動資金を巻き上げる)。6行目のcouncil tenancy は普通「公営住宅」を意味する言葉で、そんな公営住宅のような狭い世界にさえも、権威、権力を振りかざす者がいると言っているのではないでしょうか。そして、いよいよ最後の第7節。第1節でI am an anarchist と言っていたのに、ここではなぜかI wanna be anarchist と矛盾したことを言っています。理由はよく分かりませんが、いずれにせよ、前述のとおり、歌詞の主人公はanarchism が何であるのかを理解しておらず「糞みたいな国家、政府は、あるより無い方がまし。その為にもすべてを無秩序にぶち壊してやる。それがアナーキストだ」的な幼稚な発想しか持っていないような気がします。だからこそ最後にI get pissed, destroy と言っているのではないでしょうか(get pissed は小便をひっかけられるという意味から転じて「頭にくる、腹が立つ」という意味を表すようになったスラングです)。
さて、70年代後半に一世風靡したイギリスのパンク・ムーブメント、その後どうなったのでしょう?実のところ、音楽シーンではあっという間に飽きられてしまいました。だって、素人でも直ぐに演奏ができるような単調なコードの組み合わせの曲ばかりですから、やはり、聴いてても退屈してくるんですよね。そして、音楽シーンからパンクが消えて行くと、それに合わせてパンク・ファッションも下火に。僕は1985年から86年にかけて暫くロンドンに滞在していたことがあるのですけど、その頃には街中でpunks を見かけることはもうほとんど無かったです。世の流行なんてものはすべてがそうだと思いますが、パンクもまた、所詮は「銭ゲバ・ムーブメント」だったということでしょう(笑)。
【第70回】Video Killed the Radio Star / The Buggles (1979)
1970年代も末に近づいてくると、イギリスの音楽業界にはパンクブームに端を発した単調な楽曲が溢れ、停滞したままの英国社会に漂うのと同じような閉塞感が音楽の世界をも飲み込み始めていたのですが、その息苦しさを打ち破ろうとするかのように、シンセサイザーの音色を駆使した新種のサウンドが出現しました(その頃に名機Prophet-5 が登場したように、シンセサイザーの性能が著しく進歩したことも要因)。その音楽性の斬新さからnew wave と呼ばれるようになったジャンルで先陣を切った曲のひとつが、本日紹介するThe BugglesのVideo Killed the Radio Starです。The BugglesはTrevor Horn、Geoff Downes、Bruce Woolley の三人が1977年にロンドンで結成したロック・バンド。程なくしてWoolley が脱退し、デュオになった残りの二人は、1979年にこの曲でデビューしていきなり全英週間チャートの1位に輝いた後、バンドの解散を経て、さらなる活動の場を求めアメリカへ。Geoff Downes はAsia を結成してHeat of the Moment(本コーナーの第13回で紹介)を、Trevor Horn はYes の再結成に加わってOwner Of A Lonely Heart を、それぞれアメリカで大ヒットさせました。Video Killed the Radio Star というこの曲(例によって「ラジオ・スターの悲劇」なんてヘンテコな邦題が付けられていますが・汗)、タイトルからして奇抜というかセンセーショナルですよね。でも、意表をつかれるのはタイトルだけでなく、メロディーラインも歌詞も非常に独創的。Video Killed the Radio Star の歌詞は久し振りに手強い相手ですので、心して取り掛かるとしましょう。先ずは日本語訳を見ないようにして英語の歌詞に耳を澄ましてみてください。I heard you on the wireless back in ’52
Lying awake, intently tuning in on you
If I was young, it didn’t stop you coming through
Oh-a oh-a
They took the credit for your second symphony
Rewritten by machine on new technology
And now I understand the problems you could see
遡ればあんたの声をラジオの放送で聞いたのは1952年だったな
ベッドで横になって眠らないまま、夢中でラジオのダイヤルを合わせてた
俺があんたと張り合う歳になってたとしても、あんたの活躍には敵わなかったろうね
うわぁーうわぁー
ところが奴らはあんたの次の出番を横取りしやがったんだ
新たな技術を使った機械によって出番が消されちまったんだ
俺も今となっちゃあ、あんたがどんな目に遭ったのかが分かるね
Oh-a oh-a
I met your children
Oh-a oh-a
What did you tell them?
うわぁーうわぁー
あんたの子供たちに会ったよ
うわぁーうわぁー
あんた、子供たちに何を話したんだい?
Video killed the radio star
Video killed the radio star
Pictures came and broke your heart
Oh-a-a-a-oh
テレビがラジオの人気者を殺しちまったのさ
テレビがラジオの人気者を殺しちまったのさ
テレビの映像が目に飛び込んで来て意気消沈だ
うわわわわぁー
And now we meet in an abandoned studio
We hear the playback and it seems so long ago
And you remember the jingles used to go
そして今、俺たちは打ち捨てられたスタジオに集い
あの頃の録音を聞いてる、随分と昔のような感じがするよね
あんたは思い出すよ、CMで流れてた歌なんかをね
Oh-a oh-a
You were the first one
Oh-a oh-a
You were the last one
うわぁーうわぁー
ここに最初にいたのはあんただ
うわぁーうわぁー
ここに最後にいたのもあんただ
Video killed the radio star
Video killed the radio star
In my mind and in my car
We can’t rewind, we’ve gone too far
Oh-a-a-a-oh
Oh-a-a-a-oh
テレビがラジオの人気者を殺しちまったのさ
テレビがラジオの人気者を殺しちまったのさ
俺の心の中でも、車の中でもさ
もう昔には戻れないんだ、遠くに来過ぎちまったからさ
うわわわわぁー
うわわわわぁー
Video killed the radio star
Video killed the radio star
In my mind and in my car
We can’t rewind, we’ve gone too far
Pictures came and broke your heart
Put the blame on VCR
テレビがラジオの人気者を殺しちまったのさ
テレビがラジオの人気者を殺しちまったのさ
俺の心の中でも、車の中でもさ
もう昔には戻れないんだ、遠くに来過ぎちまったからさ
テレビの映像が目に飛び込んで来て意気消沈
今度はビデオ録画機のせいにしちまおう
*このあとはアウトロでYou are a radio star とVideo killed the radio star をくどいくらいに連呼して曲は終了します
Video Killed the Radio Star Lyrics as written by Trevor Horn, Geoff Downes, Bruce Woolley
Lyrics © Round Hill Compositions, Universal-Songs of Polygrm Island Music Ltd.
【解説】
Video Killed the Radio Star の歌詞、如何でしたか?軽く聞き流しているだけでは、何を言いたいのか、いまいち良くわかりませんね(汗)。パンク・バンドの演奏能力では絶対に為し得ない計算し尽された電子ピアノのイントロとその後に続くシンセサイザーでエフェクトされたロボット風のボーカルの声(ロボットではなくradio voice と呼ばれていますが)。「名イントロに名曲あり」のセオリーどおりのこの曲ですけども、歌詞に関してはセオリーどおりで書かれているとは言い難い迷曲なので、気合を入れて歌詞を紐解いていきたいと思います。
第1節の1行目。こちらは迷曲のセオリーどおり、最初からぶちかましてくれています(笑)。I heard you on the wireless は直訳すれば「無線であなたの声を聞いた」となり、何がなんやらさっぱりですが、タイトルにRadio Star という言葉が入っていることや、2行目にtune in on~(~にラジオの周波数を合わせる)という句動詞が使われていることから考えると、このthe wireless が「ラジオ放送」の言い換えであることに疑いの余地はありません。1、2行目を聴いて頭に浮かのは、この歌詞の主人公が深夜にベッドの上に横になってお気に入りのラジオ番組を夢中になって聴いている情景であり、実際、この歌詞を書いたTrevor Horn は「Aged three or four, I used to lie in bed listening to Radio Luxembourg」と語っています。3、4歳で既にラジオに耳を傾けていたというのはちょっと眉唾物ですけども(Trevorは1949年生まれなので、確かに52年だと彼は3歳だったんですが…)、彼が少年だった頃の想い出がこの部分の歌詞に反映されているのは間違いないでしょう。彼が聞いていたというRadio Luxembourgはヨーロッパ大陸側のルクセンブルグから英国に向けて強力な電波を使って商業放送を行っていた放送局で、当時のイギリス政府は国営のBBC以外のラジオ放送を国内で認めていなかった為にCMを流す放送自体がイギリスに存在せず、Radio Luxembourg はそこに目を付けていた訳です。
この放送局は電波の感度が上がる夜間にしか放送をしていなかったので、1行目にLying awake という文が入っているのはそれが故ですね。3行目のIf I was young, it didn’t stop you coming throughは相当に難解。come through は文脈によっていろいろな意味に変わりますが、ここでは、頭角を現す(即ち、活躍)とか何かを成し遂げるという意味で使われているとしか考えられません。では「If I was youngであったとしてもそのことがあなたの活躍を止められなかった」っていうのはいったいどういう意味なのでしょう?僕が重要な鍵と考えたのは前述したTrevor の「3、4歳の頃からラジオを聞いていた」という言葉で、そこから「52年の時点で幼児であった自分が、その時、たとえ青年になっていた歳であったとしても、(才能ある)あなたと張り合うことなんてできなかった」という意味なのであろうと推論しました。つまり、この歌詞に出てくるyou(Radio Star)は主人公が尊敬と憧れを抱く人物なのであり、主人公はその後、成人してyou と同業者になっているということです。じゃあ、このyou という人物と主人公はいったい何の仕事をしているのでしょう?この曲の歌詞を聴く限り、ラジオ放送局のDJが一番当てはまるように僕は思ったのですが、Trevor は「the inspiration for the song was a Ballard story called ‘Sound Sweep’ in which a boy goes around old buildings with a vacuum cleaner that sucks up sound. I had a feeling that we were reflecting an age in the same way that he was」とも語っていて、歌詞の主人公である一人称I に彼が自分を重ね合わせていることから考えてみても、you と主人公の職業は歌手であるという結論に達しました(特にyou は、ラジオ放送を活躍の場としていた歌手なのでしょう)。Sound Sweep(正確にはTheSound-Sweep)というのはイギリスの作家J.G.Ballard の短編小説の題名で「最新技術によるultrasonic music 超音波音楽というものの新たな出現により、これまでの音楽はすべて時代遅れとなった世界で、漂う音を掃除機で吸い取る聾唖の主人公の青年が、仕事を失って生活に困窮した末に廃墟となったレコーディング・スタジオで暮らすオペラ歌手と出会って友達になる」という内容の話です。「J.G.Ballard?誰なんだよそいつは?」と思った方は、スピルバーグが映画化したEmpire of the Sun(邦題「太陽の帝国」)の原作者がこの作家だと聞けば「へえー、そうだったんだ」と頷くかもですね。
ふぅー、第1節の解説、かなり長くなってきましたが、まだまだ続きますよぉー(汗)。4行目は、日本では「泡、泡」として有名になったDebi Doss とLinda Jardim によるコーラスの声です(日本人にはそうにしか聞こえませんね・笑)。こんな感嘆詞を口にしているネイティブ話者を見たことはないですけども、驚きとか失望を表している感じでしょうか。5行目と6行目もこれまた難解。They took the credit for your second symphony. Rewritten by machine on new technology は直訳すれば「彼らはあなたの第2交響曲を横取りした(自らの手柄にした)。あなたの第2交響曲は新しい技術を用いた機械によって書き直された」ですが、これだと何がなんだかワケワカメですよね。そもそも、They が誰なのかも分かりません。そこで、この2行を読み解く鍵となってくるのが、この曲のタイトルでもあり第3節に出てくるVideo Killed the Radio Star というフレーズです。こちらも直訳ならば「ビデオがラジオのスターを殺した」となりますが、そこにはいったいどういう意味が込められているのでしょう?手掛かりは、第1節の最初の3行で語られているラジオ放送で活躍していたスター(人気歌手)の存在と、前述したThe Sound-Sweep の「新しい技術の出現によって仕事を奪われる歌手」というストーリー。ここで言うvideo とはテレビの映像のことを指していて(テレビ放送に限らず、テレビゲームや録画機による再生など、テレビを通じて流れてくる映像も含むでしょう)、Video Killed the Radio Star は「ラジオに代わって娯楽の代表格となったテレビが、ラジオの世界で活躍していた人気者の仕事を奪った」ということの比喩なのです。つまり、5行目のthey はテレビで活躍を始めた新参者たちのことであり、second symphony は、テレビが登場してこなければ失うことのなかったRadio Star の活躍の機会の暗喩だと理解しました。なので、They took the credit for your second symphony. Rewritten by machine on new technologyはVideo Killed the Radio Starと同じ意味であるというのが僕の結論です。7行目のI understand the problems you could see も脈絡がなく唐突感が否めませんが、The Buggles は結成後、しばらくはラジオ放送用のjingle を作る仕事で食いつないでいたそうなので(jingleというのはCMソングのことです。関西圏で例を挙げるとすればキダタローさんの名曲「♪とーれとーれぴーちぴーちかにりょおーりぃー♪」みたいなやつですね・笑)、彼らもまた、そんな仕事をしながらラジオがオワコンであることを実感していたのでしょう。その気持ちを表しているのがこの7行目ではないかと思います。これにてやっと第1節の解説が終了(汗)。
第2節もいきなり子供が出てきてなんか唐突過ぎますが、この曲の歌詞の解釈を試みてきた先人たちの間では「The lyrics express disappointment that children of the current generation would not appreciate the past」という解釈が定説になっています。まあ、若者たちが過去を顧みないというのは古今東西同じで、ラジオが一時代を築いていたことに彼らが何の興味も持たないことに失望しているということでしょうね。第3節は特に解説の必要なし。第4節1行目のwe meet in an abandoned studio は、The Sound-Sweep に出てくるワンシーンそのもの。abandoned studio という言葉から目に浮かぶのは、ラジオ人気の凋落によって誰も使わなくなったスタジオの姿です。3行目のjingles は前述のとおり。you remember になってますが、本当はI remember という気持ちもあったのではないでしょうか。第5節も和訳のとおり。you は最初から最後までラジオの時代と共にあった人だということですね。次に第6節3行目、ここのIn my mind は分かるとしても、in my car って何なんだ?なんでここでcar が出てくるんだと思いませんか?その答えとなるのは、この時代になるとカーステレオの普及が進み、人々は車内でカーラジオよりもカセットテープを聴くことの方が多くなっていたという事実でしょう。そのことから、もはや車の中でさえラジオは聴かないという意味でin my car になっていると僕は理解しました(今の若い人の中には、カセットテープが何であるのかも分からない人がいるかもですが・汗)。4行目のWe can’t rewind, we’ve gone too far は「技術の進歩と共に時代はどんどん進んでいる、もう後には戻れない(ラジオの時代に戻ることはない)」という気持ちを表しているんでしょうね。そして、最後の7節目のVCR。VCRはカセット式ビデオ録画機video cassette recorder のことで、1980年頃なら、家庭用でも1台30万円くらいはしていたと記憶していますが、Put the blame on VCR は、テレビがラジオの座を奪ったように、今後はビデオ録画機(自分の好きな時に好きな映像を記録し、好きな時に好きな録画を見ることができるし、見せることもできる)も価格が下がって普及が進み、やがてテレビの座(放送の一方的な押し付けしかしない)を奪う時代が来るであろうことを預言しているように僕には思えましたし、実際にもそういう時代が来ました。この曲を作詞したTrevor Horn という人は、なかなか時代の先を見通す力があったようです。
と、第1節の解説に時間がかかったので、どうなることやらと思いましたけど、それ以降の節はあっという間に終わってしまいましたね!テレビの登場によってラジオの時代が終わったと嘆くVideo Killed the Radio Star というこの曲、実は1981年にアメリカのニューヨークのケーブルテレビ局でMTVの放送が開始された際、一番最初にテレビの画面から流れたのがこの曲のミュージック・ビデオで、その後もMTVで頻繁に流されました。その結果、米国ビルボード社の週間チャートでも40位が最高位、年間チャートでは100位圏外であったこの曲が(イギリス本国では大ヒットしましたが)アメリカでも広く知られることになったのですが、それがテレビのおかげであったというのはなんとも皮肉な話じゃあーりませんか(笑)。
【第71回】Don’t You Want Me / The Human League (1981)
今回も引き続きBritish New Wave の名曲をご紹介。年間チャートの圏外だったVideo Killed the Radio Star とは違い、1982年の米国ビルボード社のそれで堂々の6位に輝いたThe Human League のDon’t You Want Me という曲です(例によってこの曲もまた「愛の残り火」なんていう超ヘンテコな邦題が付けられていますが・汗)。ボーカルのPhilip Oakey が化粧をして演じた中性的な主人公が登場するこの曲の短編映画風のミュージック・ビデオも一世を風靡しました。The Human League は、1977年にコンピューター技師であったMartyn Ware とIan Craig Marsh が中心になってイギリスのシェフィールドで結成したシンセサイザー演奏中心のテクノ・バンドで、その後、ボーカルが必要だと考えた二人がバンドに誘ったのが、Ware の友人で音楽活動の経験がほとんど無かったものの、後にこの曲を歌うことになったPhilip Oakey でした。ところが、The Human League 結成の張本人であったWare とMarsh は1980年にバンドから脱退してしまい、残されたPhilip Oakey がディスコで偶々見つけた歌の上手い女子高生Joanne Catherall とSusan Ann Sulley(二人もまた音楽活動未経験)をバックコーラスとしてメンバーに加え、翌年に大ヒットさせたのがこのDon’t You Want Me です。メンバーの多くが音楽活動の未経験者だったなんて話を耳にすると、時に本人でさえもが気付いていない人間の隠れた才能というものは、ほんと、どこで開花するのか分からないものだと思いますね。You were workin’ as a waitress in a cocktail bar
When I met you
I picked you out, I shook you up, and turned you around
Turned you into someone new
Now five years later on, you’ve got the world at your feet
Success has been so easy for you
But don’t forget, it’s me who put you where you are now
And I can put you back down too
君はカクテルバーでウエイトレスをしてた
君に最初に会った時のことだよ
僕は君を誘って、君の心を揺さぶって、君を振り向かせたよね
君を別人に変えたのさ
あれから5年経って、君は多くの人から賞賛されてる
君にとって成功なんて簡単なことだったんだよね
だけど忘れないでくれよ、君が今あるのは僕のおかげだってことをさ
君を元に戻すこともできるんだから
Don’t, don’t you want me?
You know I can’t believe it when I hear that you won’t see me
Don’t, don’t you want me?
You know I don’t believe you when you say that you don’t need me
It’s much too late to find
You think you’ve changed your mind
You’d better change it back or we will both be sorry
僕のことが欲しくないのかい?
君が僕と会おうとしないなんて、信じられないよ
僕のことが欲しくないのかい?
君が僕のことが必要ないって言ったって、そんなこと僕は信じないよ
気が付くのが遅過ぎたんだな
君は自分が心変わりしたと思ってんだろうけど
考え直しなよ、じゃないと僕たち二人とも後悔することになるから
Don’t you want me, baby?
Don’t you want me? Oh
Don’t you want me, baby?
Don’t you want me? Oh
ああ、愛しの人よ、僕のことが欲しくないのかい?
僕のことが欲しくないのかい?ねえ
愛しの人よ、僕のことが欲しくないのかい?
僕のことが欲しくないのかい?
I was working as a waitress in a cocktail bar
That much is true
But even then, I knew I’d find a much better place
Either with or without you
The five years we have had have been such good times
I still love you
But now I think it’s time I live my life on my own
I guess it’s just what I must do
ええ、あたしはカクテルバーでウエイトレスをしてた
それは間違いないわ
だけどそうだとしても、あたしはもっといい居場所を見つけたのよ
あなたがいようがいまいがね
この5年間、あたしたちはとてもうまくやってきたし
あなたのことは今も愛してる
でも今は思うの、あたし自身の道を歩む時が来たってね
それがあたしのしないといけない事だって思うもの
Don’t, don’t you want me?
You know I can’t believe it when I hear that you won’t see me
Don’t, don’t you want me?
You know I don’t believe you when you say that you don’t need me
It’s much too late to find
You think you’ve changed your mind
You’d better change it back or we will both be sorry
僕のことが欲しくないのかい?
君が僕と会おうとしないなんて、信じられないよ
僕のことが欲しくないのかい?
君が僕のことが必要ないって言ったって、そんなこと僕は信じないよ
気が付くのが遅過ぎたんだな
君は自分が心変わりしたと思ってんだろうけど
考え直しなよ、じゃないと僕たち二人とも後悔することになるから
Don’t you want me, baby?
Don’t you want me? Oh
Don’t you want me, baby?
Don’t you want me? Oh
ああ、愛しの人よ、僕のことが欲しくないのかい?
僕のことが欲しくないのかい?ねえ
愛しの人よ、僕のことが欲しくないのかい?
僕のことが欲しくないのかい?
*このあと間奏が入り、最後にDon’t you want me?を狂ったようにコーラスで連呼して曲は終了します。
Don’t You Want Me Lyrics as written by John Williams Callis, Adrian Wright, Philip Oakey
Lyrics © Domino Pub Company of America and BMG Rights Management
【解説】
シンセサイザーの音色が全開のイントロに続きPhilip Oakey とSusan Ann Sulley の掛け合いのような歌が続くこの曲、前回のVideo Killed the Radio Star とは違って非常にシンプルで分かり易い歌詞となっていますので、今回の解説は瞬く間に終わりそうですよ!(嬉)。
第1節に特に難しい部分や解説の必要な部分は見当たりません。英語の教科書に出てくるような文で、洋楽歌詞の和訳初心者にはうってつけの練習材料になると思いまのすで、是非一度、ご自身でも和訳に挑戦してみてください。7行目以降のBut don’t forget, it’s me who put you where you are now. And I can put you back down too は、なんか上から目線の言動ですね。嫌味な野郎です(笑)。因みにPhilip Oakey は、最初の1行目の部分に関して次のように語っていますのでご参考まで。
「The first verse came more or less wholesale from a photo romance magazine I was reading. The first line was “You were working as a waitress in a cocktail bar」
第2節も和訳のとおりで解説不要ですが、少しだけ補足しておきましょう。まず、タイトルにもなっているDon’t you want me?というフレーズですが、この言葉には性的なニュアンスが含まれていて、ここでは「僕のことが欲しくないのかい?」という直訳の言葉を当てはめておきましたが、この歌詞の中での真意は「今までと同じように僕と寝たくないのかい?(sex したくないのかい)」ということです。7行目のYou’d better は「~した方がいいよ」という感じに日本人は受け止めがちですが、ネイティブ話者がYou’d betterと言った時は強い命令です。この節でも男は上から目線全開ですよねー。ほんと嫌味な野郎です(←クドいぞ・笑)。第3節も解説不要。第4節は、歌詞の主人公が男性から女性に変わり、ボーカルもPhilip Oakey からSusan Ann Sulley に変わります。この節も和訳のとおりで、特に解説は必要ないですね。この第3節では、主人公の女性が、第1節の歌詞の主人公が声をかけた人物であり、その後、彼の恋人になったことが分かります。それにしても、あんな風に上から目線でものを言う男に対してI still love you って、そんなことあり得ますかね?(汗)。よほどのドM女なのか、男の言うとおり、相当彼の世話になったかですよね(←あくまでも個人の勝手な想像です・笑)。第4節と5節は、第2節と3節の繰り返し。最後はDon’t you want me? を上から目線で連呼して曲は終了。おやおや、ほんとにあっという間に解説が終わってしまいました!
以上のように、誰が聴いてもこの曲、男女間の恋物語にしか思えないのですが、Philip Oakey は雑誌のインタビューに対して「This is not a love song but about power politics between two people」と答えています。この歌詞の主人公の男と同様、Philip Oakey もちょっとヘンな人なのかも知れませんね(笑)。
【第72回】West End Girls / Pet Shop Boys (1985)
もう1曲、音楽関係者の間では未だ評価の高い英国シンセ・ポップの名曲(迷曲でもあります)を紹介しておきましょう。イギリス、アメリカ両国の週間ヒットチャートで1位を獲得し、米国ビルボード社の1986年の年間チャートでも見事15位に食い込んだPet Shop Boys のWest End Girls という曲です。Pet Shop Boys は若者向けの音楽雑誌「Smash Hits」の記者兼編集者であったNeil Tennant とリバプール大学の建築学科の学生だったChris Lowe が1981年にロンドンで結成したデュオで、結成時は「West End」というグループ名でしたが「Pet Shop Boys」に改名して1984年にこの曲West End Girls でプロとしてレコードデビューしました。ところがレコードはまったく売れずじまいで、翌年、アレンジを徹底的に変えて売り出したところ爆発的にヒットしたというエピソードを持つこの曲、確かに、84年のオリジナル版を聴けば「これは売れんわぁー」と納得できます(笑)。とは言え、85年の新バージョンは全く違う別の曲としか言いようがない仕上がりで、イントロも名曲になる予感を感じさせる響きに大変身。何よりも曲中のほとんどすべての音がシンセサイザーで作られたものであるという事実に驚かされます(バックバンドが要らないということですね・汗)。そんな計算され尽くした音作りに対し、歌詞の方は難解というよりも支離滅裂、意味不明レベル。ですが、解説を書く為の下調べをしている中で歌詞を紐解く際に参考になるであろう幾つかの手掛かりを見つけることができましたので、そのことも含めて重要なポイントを解説に入る前にまとめておきましょう。① ロンドンのWest End は、行政、商業、文化施設などが集中している地区で、劇場が多く建ち並ぶことからイギリスのブロードウェイとも呼ばれる繁華街。一方のEast end は、正式な境界線が存在する訳ではないのですが、ロンドンの中心部の金融街The City より東側、且つテムズ河の北側にある地域がそれにあたり、19世紀後半にロシアや東欧から迫害を逃れるために渡英してきたユダヤ人が大量に住みつき、彼らが給与の安い単純労働の担い手となった為、長らくのあいだ生活水準の低い地区でした(つまりは貧民街。ロンドンの下町と言えばこのEast end のこと)。現在でもAdams Family などの地元ギャングや新興勢力の移民系ギャングが多く暮らしていて治安の良くない地区ですが、再開発によって徐々に変わりつつはあるようです。
② West End Girls の歌詞を書いたNeil Tennant は、曲の歌詞がアメリカ生まれで後にイギリスに移住した作家T.S. Eliot の長編詩The Waste Land(邦題:荒地)にインスパイアーされたものだと語っており、そのThe Waste Land について彼は「What I like about it is, it’s the different voices, almost a sort of collage. All the different voices and languages coming in and I’ve always found that very powerful. So on ‘West End Girls’ it’s different voices」と述べています。つまり、この曲の歌詞のVerse は様々な人々の声なのであり、それぞれのVerse に連続性や関連性は無いと考えて良さそうです。
③ Neil Tennant はこの曲の歌詞について当初「The song’s lyrics are about class, and inner-city pressure」と発言していましたが、後に「Some listeners thought the song was about prostitutes, but was actually, about rough boys getting a bit of posh」とやや違うニュアンスで語り、最近では、新聞社のインタビューに対し「It’s about the city at night. It’s about boys and girls meeting to have fun and presumably to bond. It’s about sex.It’s paranoid」と答えています。
このように作者の発言のブレが大きい場合、勝手ながら僕は、元から歌詞には大した意味がなかったと考えるようにしています(歌詞に何か深い意味があるように見せかけているものの、その実はできていないから、作者は一貫性や整合性のある説明ができない)。例えば、英国訛りのままで歌われたこの曲が、ロンドンのWest End やEast End がどのような場所かも想像できないアメリカ人に受け容れられたことがその証ではないでしょうか。アメリカ人はシンセ・ポップという新しい音の響きを評価したのであって、彼らにとってこの曲の歌詞は意味があろうがなかろうがどうでも良かったのではないでしょうか。英語で歌われているのにアメリカ人には外国語のようにしか聞こえていなかったから、意味不明な歌詞でも受け容れられたというような気がします(普通はその逆で、アメリカ人は歌詞の意味に結構こだわる人が多いのですが)。と、なんだか話がややこしい&小難しくなってきてスミマセン。ではでは、以上のことを頭に入れて歌詞を紐解いていくとしましょうか。
Sometimes you’re better off dead
There’s a gun in your hand, and it’s pointing at your head
You think you’re mad, too unstable
Kicking in chairs and knocking down tables
In a restaurant in a West End town
Call the police, there’s a madman around
Running down underground to a dive bar
In a West End town
死んだ方がましな時ってあるよね、人にはさ
拳銃を手に、頭に銃口を向けるのさ
頭がイカれて、情緒も不安定になってるって自分でも思うよね
椅子を蹴り壊し、テーブルを叩き壊すなんてこと
ウエスト・エンド街のレストランでだよ
警察が呼ばれ、あたりにいるのはイカれた男が一人
で、そいつは地下の安酒場に駆け下りるんだ
ウエスト・エンド街のね
In a West End town, a dead end world
The East End boys and West End girls
In a West End town, a dead end world
The East End boys and West End girls
West End girls
ウエスト・エンド街、行き止まりの世界で
イースト・エンドの少年たちとウエスト・エンドの少女たちが
ウエスト・エンド街、行き止まりの世界で
イースト・エンドの少年たちとウエスト・エンドの少女たちが
そう、ウエスト・エンドの少女たちさ
Too many shadows, whispering voices
Faces on posters, too many choices
If, when, why, what?
How much have you got?
Have you got it, do you get it, if so, how often?
And which do you choose, a hard or soft option?
(How much do you need?)
多すぎる影、囁く声
ポスターに写る顔、多すぎる選択肢
もし、いつ、なぜ、どこ?
いくら持ってるんだい?
買ったの?それとも買うの?そうだとして、頻度は?
それで、どっちを選ぶ?ハードそれともソフト?
(いくらかかるんだい?)
In a West End town, a dead end world
The East End boys and West End girls
In a West End town, a dead end world
The East End boys and West End girls
West End girls
West End girls
(How much do you need?)
ウエスト・エンド街、行き止まりの世界で
イースト・エンドの少年たちとウエスト・エンドの少女たちが
ウエスト・エンド街、行き止まりの世界で
イースト・エンドの少年たちとウエスト・エンドの少女たちが
そう、ウエスト・エンドの少女たちさ
ウエスト・エンドの少女たちだよ
(いくらかかるんだい?)
In a West End town, a dead end world
The East End boys and West End girls
Ooh, West End town, a dead end world
East End boys, West End Girls
West End girls
ウエスト・エンド街、行き止まりの世界で
イースト・エンドの少年たちとウエスト・エンドの少女たちが
ああ、ウエスト・エンド街、行き止まりの世界で
イースト・エンドの少年たちとウエスト・エンドの少女たちが
そう、ウエスト・エンドの少女たちさ
You’ve got a heart of glass or a heart of stone
Just you wait ‘til I get you home
We’ve got no future, we’ve got no past
Here today, built to last
In every city, in every nation
From Lake Geneva to the Finland station
(How far have you been?)
君はか弱い人か、それとも冷たい人かな
家まで送るからそれまで待っててよ
僕たちに未来はないし、過去もないのさ
そして、今日という日は永遠に続くようになってるのさ
どの街でもどの国でもね
ジュネーブ湖からフィンランド駅まででもね
(どこまで行ったことある?)
In a West End town, a dead end world
The East End boys and West End girls
A West End town, a dead end world
East End Boys, West End girls
West End girls
West End girls
ウエスト・エンド街、行き止まりの世界で
イースト・エンドの少年たちとウエスト・エンドの少女たちが
ウエスト・エンド街、行き止まりの世界
イースト・エンドの少年たちとウエスト・エンドの少女たちが
そう、ウエスト・エンドの少女たちさ
ウエスト・エンドの少女たちだよ
*このあとはWest End girls やEast End boys を連呼するだけなので省略します。
West End Girls Lyrics as written by Neil Tennant
Lyrics © Sony/ATV Tunes LLC, Cage Music Limited
【解説】
イントロのドラムの音色が印象的ですが、これは米国Oberheim 社のDMX というデジタル・ドラムマシンで作られた音だそうです。そのあとに続くNeil Tennant の歌声は、歌っているというよりもラップ風ですね。それでは、早速歌詞へ進みましょう。第1節目の最初に出てくるSometimes you’re better off dead. There’s a gun in your hand, and it’s pointing at your head という不穏なフレーズは(ここでのyou は総称人称としてのyou です)、Neil Tennant が親戚の家に宿泊した際、テレビでJames Cagney がギャングを演じる戦前の古いアメリカ映画を見た時に思いついたものであると本人が語っています。だけども、Cagney は多数のギャング映画に出演している為、彼の記憶の曖昧さもあって、どの映画だったのかは特定されていません。Be better off dead は「死んだ方がまし、役立たずの人間だ」といった意味で、耐えがたい苦痛を感じている時などに用いられる表現。警察に追い詰められているギャングが、捕まるくらいならその前に自ら死んでやるみたいな映画ではなかったかと想像しますが、この歌詞の主人公は、拳銃の銃口を自らの頭に突き付けるのではなく、レストランの椅子とテーブルをぶっ壊すことでその思いを馳せたようです(笑)。6、7行目のCall the police, there’s a madman around. Running down underground to a dive bar からは、当然、店は警察を呼び、周りから人がさっと離れて一人になったa madman(暴れた本人のことでしょう)が、我に返って地下の酒場に駆け込んでいくような情景が思い浮かびました。dive bar というのは一般的には安酒場、大衆酒場のことを意味していますが、Neil Tennant の話によると、West End のSoho 地区に「King’s Head and Dive Bar」という名前の店が実際にあり(今は閉店して中華レストランに変わってます)、1階がKing’s Head という普通のパブ、地下階がDive Bar という音楽がずっとかかっているクラブ風のバーだったそう。Neil やChris Lowe が足繁く通っていたその店がこの曲の歌詞に出てくるa dive bar のモデルだったという訳です。
第2節のコーラス部分は軽く聞き流してしまいがちですが、ちゃんと耳を傾けるとなんだか良く分からない内容。West End town がなぜにa dead end world なのかも不明ですし、The East End boys and West End girls と唐突に連呼しているのも意味不明です(汗)。なので、The East End boys and West End girls は、and の部分をmeet かcome across に入れ替えて考えました。In a West End でEast End boys とWest End girls が出会うということですね。冒頭のまとめで記したように、East End boys は下町のちょっとガラの悪いお兄ちゃんたち。一方のWest End girls は山の手の育ちのいいお嬢さんたちの総称として使われていると考えて間違いないでしょう。では、先程も述べたとおり、West End town がなぜにa dead end world であるのかですが、East End boys とWest End girls がWest End town で出会って恋に落ちても、その関係はいつか破綻する。なぜならそこには階級の壁(生まれた世界が違う)が存在するからで、その越えられない壁のある世界(West End)のことをa dead end world という言葉で表現しているのだと僕は理解しました。第3節も意味不明、ワケワカメ。男性ならこの節を聴いて一番最初に頭に浮かんでくるのは性風俗店ではないでしょうか。山の手とされるWest End ですが、実はその中のSoho 地区はかつて売春宿が建ち並ぶ風俗街だったんです(1980年代の再開発によって消滅しましたが)。6行目のwhich do you choose, a hard or soft option?は、SMクラブの受付でハードにするかソフトにするかを訊いているようにも聞こえますし、風俗店でsex の相手を男にするか女にするかを尋ねているようにも聞こえます(Neil Tennant は自らがゲイであることを1992年に公表しています)。最後のHow much do you need?は店側の言葉ではなく、訪問者側の言葉でしょう。そのサービスを受ける(遊ぶ)にはいくら必要なんだと店側に訊いているのだと理解しました。僕には第3節がSoho の風俗街の描写としか思えなかったですが、ネイティブ話者の中には麻薬取引の描写と捉える人も多いようです(←懲りない連中です・笑)。
第4節は第2節のコーラスの繰り返し。ここでも最後にHow much do you need?が入ってますが、ウエスト・エンドの少女たちと付き合う(遊ぶ)にはどれくらいの金がかかるんだろうかというくらいの意味ではないかと思います。第5節もほぼ同じコーラスの繰り返しなので解説不要。第6節もこれまた意味不明の言葉のオン・パレード。1行目のheart of stone は、石のように固い(強い)心という意味ではなくcold hearted を意味します。2行目のJust you wait ‘til I get you home から目に浮かぶのは、East End boy がWest End girl を連れてどこかへしけこむ情景。そのあとのWe’ve got no future, we’ve got no past. Here today, built to last は、第2節で述べたように、そんな両者の間に階級の壁が横たわっているという状況の暗喩であると僕は理解しました。そうすれば5行目も、その壁はevery city、every nation にあるときれいにつながります。じゃあ、6行目のFrom Lake Geneva to the Finland station は何なんだということになりますが、ここの部分は、スイスのチューリッヒで亡命生活を送っていたレーニンが列車でドイツ、スウェーデン、フィンランドを経由してサンクトペテルブルグへ向かい、市内のフィンランド駅(フィンリャンツキー駅)で下車して帰国を果たしたことを指していることが先人たちによって解明されていて、全世界で階級の壁を無くそうとした人物こそ、ロシア革命を成功させたこのレーニンであることを考えれば、この最後のフレーズの唐突感は消えますね。と、自分なりにこの曲の歌詞を解釈してみましたが、あくまでも僕個人の解釈ですので、悪しからず。
さて、このPet Shop Boys というデュオ、実のところ、現在も解散することなく活動中。とは言え、2024年の時点でNeil Tennant は既に70歳を超え、Chris Lowe も65歳。West End Girls のミュージックビデオに出演していた頃のすらっとした二人の青年の面影はもうどこにも見当たりません。Pet Shop Boys という名は、友人がペットショップで働いていたという安直な理由から付けたそうなんですが、ヨボヨボの爺さんたちがBoys を名乗るなんて、かなりハズいです。名前というものはちゃんと先のことも考えて付けなければなりませんね。まあ、日本でも、いい歳こいたおっさんが「少年隊」だとか「変態kids」とかを名乗っていた例がありましたけども(笑)。
【第73回】Mony Mony / Billy Idol (1987)
前回に紹介したPet Shop BoysのWest End Girlsがヒットした翌年の1987年、Billy IdolのMony Monyという曲が米国ビルボード社年間チャートの19位にチャートインしていたことを記憶している人はいらっしゃるでしょうか?そもそもからして「Billy Idol?誰ですかそれ?」って感じかも知れませんが、Billy Idolは元々はイギリスのパンクロック界でアイドル的存在であったバンドGeneration X でボーカルとして活動していたミュージシャン。パンクロックの衰退と共に目敏くソロ活動を始め、その後、渡米してこの曲をヒットさせました。ヒットさせたと言っても彼のオリジナル曲ではなく、Tommy James and the Shondellsというアメリカのバンドが1968年にリリースした同名のヒット曲のカバーです(81年にJoan Jett がカバーしてヒットしたCrimson and Clover もこのバンドの曲ですね)。因みにBilly Idol の本名はWilliam Michael Albert Broad。芸名のIdol という名は、スターを意味するidolではなく、彼が高校に通っていた際、彼の成績表の化学の欄にいつも先生が「idle(怠けている)」と書き込んでいたことに由来するそう。それと、彼のトレードマークでもある金髪の頭髪は染めたものであって、本物の金髪ではありません。名前も見た目もすべてニセモノです(笑)。Here she come now sayin’, "Mony, Mony"
Shoot ‘em down, turn around, come on, Mony
Hey, she give me love, and I feel all right now
Yeah! You gotta toss and turn
And feel all right, yeah, I feel all right
ほら、今彼女が来て言ってるよ「モニー、モニー」ってね
連中なんてほっといてさ、踵を返して、こっちに来てよ、モニー
さあ、彼女が愛してくれるから、僕はもう大丈夫さ
そう!君は寝返りを打たなきゃならなくなるよ
ああ、大丈夫、そうさ、僕は大丈夫さ
I said, yeah (Yeah), yeah (Yeah)
Yeah (Yeah), yeah (Yeah), yeah (Yeah, yeah)
僕は言ったんだ、いい感じってね(そうさ)、いい感じってね(そうさ)
いい感じってね(そうさ)、いい感じってね(そうさ)、いい感じってね(そう、そう)
‘Cause you make me feel (Ride the pony)
So good (Ride the pony)
So good (Ride the pony)
So good (Mony, Mony)
So fine (Mony, Mony)
So fine (Mony, Mony)
It’s all mine (Mony, Mony)
Well, I feel all right (Mony, Mony)
だってさ、君は僕を導いてくれるんだもの(やっちゃえ)
すごくいい気持ちにね(やっちゃえ)
すごくいい気持ちにさ(やっちゃえ)
すごくいい気持ちにだよ(モニー、モニー)
すごくいい感じにね(モニー、モニー)
すごくいい感じにだよ(モニー、モニー)
気持ちいいのは僕の方さ(モニー、モニー)
ああ、僕は大丈夫(モニー、モニー)
Wake it, shake it, Mony, Mony
Ah, shotgun dead, and I’ll come on, Mony
Don’t stop cookin’, ‘cause I feel all right now
Hey, don’t stop now, come on, Mony, come on, yeah
起たせて、振ってくれよ、モニー、モニー
あー、ショットガンで撃たれて、逝っちまうみたいさ、モニー
止めないでくれよ、僕は大丈夫だから
頼むよ、止めないでくれ、さあ、モニー、さあ、そうだ
‘Cause you make me feel (Ride the pony)
So good (Ride the pony)
So good (Ride the pony)
Well, I feel all right (Mony, Mony)
It’s all mine (Mony, Mony)
It’s all mine (Mony, Mony)
It’s all mine (Mony, Mony)
And I feel all right (Mony, Mony)
だってさ、君は僕を導いてくれるんだもの(やっちゃえ)
すごくいい気持ちにね(やっちゃえ)
すごくいい気持ちにさ(やっちゃえ)
そう、僕は大丈夫さ(モニー、モニー)
気持ちいいのは僕の方(モニー、モニー)
気持ちいいのは僕の方さ(モニー、モニー)
気持ちいいのは僕の方なんだ(モニー、モニー)
ああ、僕は大丈夫(モニー、モニー)
Ooo, I love you Mony, Mo-mo-mony
Ooo, I love you Mony, Mo-mo-mony, said I do
あぁー、君を愛してる、モニー、モ・モ・モニー
あぁー、君を愛してる、モニー、モ・モ・モニー、そう誓ったんだ
Come on, come on, come on, come on
Come on, come on, come on, feel all right
さあ、さあ、さあ、さあ
さあ、さあ、さあ、僕は大丈夫だから
Wake it, shake it, Mony, Mony
Up, down, turn around, come on, Mony
Hey, she give me love, and I feel all right now – hah!
I said, don’t stop now, come on, Mony
Come on, Mony
起たせて、振ってくれよ、モニー、モニー
上へ下へ、ぐりぐり回して、そうだ、モニー
彼女は僕を愛してくれるし、僕は大丈夫さ、へへっ!
言ったろ、止めないでくれって、そうさ、モニー
その調子だ、モニー
‘Cause you make me feel (Ride the pony)
So good (Ride the pony)
So good (Ride the pony)
So good (Ride the pony)
I feel all right (Mony, Mony)
All right (Mony, Mony)
You’re so fine (Mony, Mony)
Well, I feel all right (Mony, Mony)
だってさ、君は僕を導いてくれるんだもの(やっちゃえ)
すごくいい気持にね(やっちゃえ)
すごくいい気持にさ(やっちゃえ)
すごくいい気持にだよ(やっちゃえ)
僕は大丈夫(モニー、モニー)
大丈夫さ(モニー、モニー)
君って最高(モニー、モニー)
ああ、僕は大丈夫さ(モニー、モニー)
I want to
Ride the pony, ride the pony, ride the pony
Come on, come on (Come on)
Mony, Mony (Mony, Mony)
Feel all right (Mony, Mony)
(Mony, Mony)
僕はさ
やりたい、やりたい、やりたいんだ
さあ、さあ(さあ)
モニー、モニー(モニー、モニー)
大丈夫さ(モニー、モニー)
(モニー、モニー)
‘Cause you make me feel (Ride the pony)
So good! (Ride the pony)
So good! (Ride the pony)
So good!
Come on (Mony, Mony)
Yeah (Mony, Mony)
All right (Mony, Mony)
Well, we feel so good (Mony, Mony)
だってさ、君は僕を導いてくれるんだもの(やっちゃえ)
いい気持にね(やっちゃえ)
いい気持ちにさ(やっちゃえ)
いい気持ちにだよ
さあ(モニー、モニー)
そうだ(モニー、モニー)
大丈夫だから(モニー、モニー)
ああ、僕たちとても感じてるよね(モニー、モニー)
*リフレーンのI said, yeah の部分は最初の1回を除き、すべて歌詞から省略してあります(歌詞が長くなるので)。
Mony Mony Lyrics as written by Bobby Bloom, Ritchie Cordell, Bo Gentry, Tommy James
Lyrics © EMI Longitude Music
【解説】
やたらと歌詞が長い割には使われている語彙が少なく、なんだか訳の分からぬことをだらだらと繰り返し言ってるだけの歌というのが正直な印象ですね。タイトルにもなっているこのMony という言葉、僕はずっとmoney だと思っていましたが、今回改めてこの曲を聴いてみて「なんか違うぞ」という気がしてきました。それに、タイトルを良く見てみると「なんじゃーこれぇー!」です。e が一文字抜けてるじゃないですか!(←今更かよ・笑)。そこで、Mony について調べてみたところ、この曲のオリジナル版の作詞者であるTommy James の発言が直ぐに見つかったので紹介しておきます。
「Ritchie Cordell and I were writing it in New York City, and we were about to throw in the towel when I went out onto the terrace, looked up and saw the Mutual of New York building which has its initials illuminated in red at its top. I said, "That’s gotta be it! Ritchie, come here, you’ve gotta see this!" It’s almost as if God Himself had said, "Here’s the title." I’ve always thought that if I had looked the other way, it might have been called "Hotel Taft"」
つまり、Mony とはThe Mutual Life Insurance Company of New York という生命保険会社が本社として使用していたニューヨーク市マンハッタンの高層ビル、通称「The MONY building」の屋上付近にあった赤いネオンサインにヒントを得た言葉だったんですね。Tommy たちが目にしたinitials illuminated in red というのは、ビルの壁面に取り付けられていたMONY という巨大な文字で、O の中で$マークが輝いていたそうなんですが、この看板文字は2007年に撤去され、ビルの名前も「1740 Broadway」に変わっています。また、彼が言及している「Hotel Taft(現The Michelangelo)はMONY ビルから3ブロックほど離れており、目を横に逸らしたくらいで本当に見えたのかどうかはちょっと疑わしいですね。オリジナル版の歌詞ではドラッグを暗喩する言葉としてどうもこのMony が使われているようなのですが、Billy Idol のカバー版と聴き比べてみると、カバー版は歌詞が少し変えられていて、オリジナル版とは違った意味で使われているとしか僕には思えませんでした。それでは、それがどういうことなのか、詳しく歌詞を見ていくことにしましょう。
第1節目1行目、いきなりMony, Mony という言葉が出てきますが、ここでは呼びかけの言葉くらいにしか聞こえませんね(余談ですがThe Mutual Life Insurance Company of New York は、MONY をモニーではなくマネーと発音させていたそう)。2行目のshoot someone down には「someone の提案にノーを突き付ける」という意味があるので、このように訳しました。4、5行目は、オリジナル版ではYou got me tossin’ turnin’ in the night, and I feel alright. Let me feel alright となっているので、寝返りを打つ人が真逆です(toss and turn は寝返りを打つという意味)。なぜにtoss and turn なんて言葉がここで使われているのか良く分かりませんが、僕の頭には、ことが終わってベッドで二人が眠っている中、女が何度も寝返りを打つのを男が「いいよ、いいよ、大丈夫」と微笑ましく見守っているような姿が思い浮かびました。第2節のリフレーンのyeah は、いい感じ(気持ち)だから止めないでくれといったニュアンスでしょうか。このリフレーンはここを含めて曲中で10回も繰り返されます(←そんなに気持ちいいのかよ・笑)。第3節のコーラス部分の1行目にはRide the pony という表現が出てきますが、オリジナル版の歌詞にはこの表現はありません。では、一体これは何を意味しているのでしょうか?直訳すれば「ポニーに乗る」ですけども、その訳ではこの曲の歌詞においてはまったく意味を為しません。実はRide the pony、スラングでは「(麻薬の)ヘロインをやる」とか「sex しまくる」という意味がありまして(性的な意味で使う場合、ride the pink pony とかride the wild pony と言ったりもします)、この歌詞のRide the pony はどちらかと言うと、後者の意味だと僕は思います。なぜなら、Billy Idol が、自分が童貞を捨てた時にバックでかかっていたのがオリジナル版の方のこの曲だったと語っているからで、彼はその時の気分をこの曲の歌詞に重ね合わせて歌詞の一部に手を加えたのでしょう。アメリカでBilly Idol 版を聴いた多くの若者(男性)たちも同じように思うらしく、その証拠かどうかは分かりませんが、この曲がアメリカの高校のダンスパーティー等で演奏される場合、歌の出だし部分で下記の( )内のような下品な合いの手を入れることが恒例になっていました。
Here she come now sayin’, "Mony, Mony"
(Hey, motherfucker! Get laid, Get fucked!)
Shoot ‘em down, turn around, come on, Mony
(Hey, motherfucker! Get laid, Get fucked!)
合いの手には幾つかのバージョンがありますが、どれも共通して同じような卑猥な内容(笑)。なので、これらのことから考えると、Billy Idol はMony, Mony をsex を仄めかす言葉として使っているのではないかというのが僕の結論です。敢えて日本語に置き換えるとすれば「チョメチョメ」が妥当ではないかという気がします(笑)。チョメチョメなんて言っても若い方々には分からないかもですが、チョメチョメは故山城新伍さんが、テレビのクイズ番組で司会をしていた際「××」と伏字になっている答えの部分をそう読んだことから始まり、そこから転じて直接口にできない卑猥語をごまかす為に使われるようにもなりました。なので、その理解で話を進めると、第4節もエロのオンパレードのように聴こえてきますね。3行目のcookin’はオリジナル版でも使われている言葉で、オリジナル版ではヘロインの摂取(ヘロインを炙る)を意味していると思われますが、Billy Idol 版ではDon’t stop fucking(もしくはsucking)を想像させることを意図しているように僕は感じました(←あくまでもエロ親爺によるエロな推測です・汗)。第5節のコーラス部分、5行目のIt’s all mine は、The pleasure is all mine と言ってるように僕には聴こえたので、このように訳しています。第6節以降も歌詞はだらだらと続いていますが、同じような内容の繰り返しだけなので、解説は省略。最後のコーラスが、オリジナル版には無いWell, we feel so good というフレーズで終わっているのを聴くと「やっぱりそうかー」って感じですかね(笑)。
それでは、最後にBilly Idol のトリビアをひとつ。Billy はアーノルド・シュワルツネガー主演の人気映画「ターミネーター2」でコナー親子を抹殺する為に未来からやって来るアンドロイドT-1000 役として配役が決まっていたのですが、クランクイン前にバイクを運転中、一時停止を無視して通りに飛び出した直後に乗用車と衝突、一時は右足切断かと言われるほどの大怪我を負ってその出演が幻に終わっています。御多分に洩れずBilly も重度の薬物依存者だったので、事故はその悪影響によって引き起こされたんじゃないかという気がするのは僕だけでしょうか?(←あくまでも推測です・汗)。
【第74回】(I Can’t Get No) Satisfaction / The Rolling Stones (1965)
さてさて、そろそろこの辺りでイギリスの大御所の曲も紹介しておくとしましょうか。今日お届けすることにしたのは、ご存知ローリングストーンズが1965年にヒットさせた名曲Satisfaction です。別にストーンズが好きでもないので、僕が聴くのはこのSatisfaction かAngie、Start Me Up、Jumpin’ Jack Flash の4曲くらいですが、強いて一番好きな曲を挙げるとすれば、やはりこのSatisfaction でしょうか。1962年にBrian Jones がMick Jagger やKeith Richards らと共にロンドンで結成したこのグループ、一度も解散することなく今も存続中(Brian Jones は1969年に薬物絡みと思われる事故で早々に死去しています)。2024年の時点でもMick Jagger、Keith Richards、古参メンバーのRon Wood といったよぼよぼの爺さんたちが集って北米ツアーを行っていて、これを凄いと思うのか見苦しいと思うのかは各人の価値観によって違ってきますけども、僕は断然後者ですね。まあ、このグループについては既に語り尽くされていますので、早速歌詞に進みましょう。I can’t get no satisfaction
I can’t get no satisfaction
‘Cause I try and I try and I try and I try
I can’t get no, I can’t get no
俺はこれっぽっちも満足できねえ
これっぽっちも満足できねえんだ
だってさ、やっても、やっても、やっても
駄目なんだ、満足できねえのさ
When I’m driving in my car
And that man comes on the radio
And he’s telling me more and more
About some useless information
Supposed to fire my imagination
I can’t get no, oh no, no, no!
Hey, hey, hey! That’s what I’ll say!
車を運転してるとさ
ラジオの放送にあの男が出てきて
いろいろと言うんだよな
役に立たないくだらないことをね
俺の想像をかき立てようとしてるんだろうが
駄目なんだよ、駄目、駄目、駄目!
おい、おい、おい!って言っちまうね!
I can’t get no satisfaction
I can’t get no satisfaction
‘Cause I try, and I try, and I try, and I try
I can’t get no, I can’t get no
俺はこれっぽっちも満足できねえ
これっぽっちも満足できねえんだ
だってさ、やっても、やっても、やっても
駄目なんだ、満足できねえのさ
When I’m watching my TV
And a man comes on and tells me
How white my shirts can be
Well he can’t be a man ‘cause he doesn’t smoke
The same cigarettes as me
I can’t get no, oh no, no, no
Hey, hey, hey, that’s what I say
テレビを見てるとさ
画面に男が出てきて言うんだよな
俺のシャツがどんなに白くなるかってさ
でもさ、煙草を吸わない奴なんてお呼びじゃねえよ
同じ煙草を俺みたいに吸ってない奴はな
駄目なんだよ、駄目、駄目、駄目
おい、おい、おい!って言っちまうね!
I can’t get no satisfaction
I can’t get no girl reaction
‘Cause I try, and I try, and I try, and I try
I can’t get no, I can’t get no
俺はこれっぽっちも満足できねえ
女の子が感じてるのも見たことねえんだ
だってさ、やっても、やっても、やっても
駄目なんだ、満足できねえのさ
When I’m riding ‘round the world
And I’m doing this and I’m signing that
And I’m trying to make some girl
Who tells me baby, better come back, maybe next week
‘Cause you see, I’m on a losing streak
I can’t get no, oh no, no, no
Hey, hey, hey! That’s what I’ll say!
世界のあちこちを走り回ってるとさ
これをやって、あれにサインして
それでもって、女の子を口説きもするんだ
また来た方がいいわ、多分来週ねなんて言う女の子をね
なんでか分かるだろ、俺の人生、負け続きなのさ
駄目なんだよ、駄目、駄目、駄目
おい、おい、おい!って言っちまうね!
I can’t get no, I can’t get no, I can’t get no
I can’t get no satisfaction
No satisfaction, no satisfaction, no satisfaction
I can’t get no
駄目なんだ、駄目なんだ、駄目なんだ
俺はこれっぽっちも満足できねえ
満足できねえ、満足できねえ、満足できねえんだ
そう、駄目なんだ
(I Can’t Get No) Satisfaction Lyrics as written by Mick Jagger, Keith Richards
Lyrics © Abkco Music Inc
【解説】
歴史にその名を刻んだSatisfaction のギターリフ。その歪んだ音色が響く強烈なイントロは、何度聴いても飽きることがありません(エフェクターを介してわざと音を歪ませているそうです)。一方、歌詞の方はというと、難しい英語は使われていませんが、内容に関しては「なぁーんか、何を言いたいのかいまいち良く分かりませぇーん」といったところ。ですが、歌詞を書いたMick Jagger がこの曲に関して「“Satisfaction” was my view of the world, my frustration with everything…, disgust with America, its advertising syndrome, the constant barrage」と過去に発言しているので、彼のこの証言を参考に歌詞を紐解いていくことにしましょう。
1節目はタイトルともなっているI can’t get no satisfaction というフレーズでいきなり始まりますが、この部分を直訳すると「満足できないことはない」つまり「満足できる」という意味に普通はなります。文法用語で言うところの「二重否定」というやつですね。ところが、このフレーズ、当時の一部の黒人たちの英語では強い否定を表していて「まったく満足できない」の意味で用いられていたようです(難しい話になりますが、こういう用法をenallage と呼びます)。どうしてそうなるのか日本人にはちょっと理解し辛いですけど、こう考えれば分かり易いかと思います。この曲のタイトルのI can’t get no の部分がわざわざ( )で囲われていることに注目してください。この部分だけを直訳すると「ノーが得られない」となりますね。じゃあ、そのノーが何なのかと言うと、後に続くsatisfaction がそれ。なので「satisfaction が得られない」と言っているのと同じになる訳です(この部分を文法的に正しく書くならばI can’t get any satisfaction でしょう)。この第1節からは、前述のMick Jagger の言葉に出てきていたmy frustration with everything という感情が読み取れますが、everything が具体的に何なのかはまだここでは分かりません。第2節では、そのeverything の一端が吐露され始めます。4行目のsome useless information は、これまた前述のMick の言葉を参考にconstant barrage of useless information のことであると僕は推測しました。テレビの番組で無能なコメンテーターがしたり顔でぺらぺら喋っているのを見て「こいつ、馬鹿じゃねえのか」と思うようなことが多々ありますが、第2節にはそれと同じような感情がこもっているように僕には思えました。ですが、この種のフラストレーションの解決策っていうのは実に簡単で、ラジオなんて聞かなければいいだけの話なのです。なので、僕もテレビでは映画か海外ドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ中継以外の番組は一切見ません。
3節目は第1節と同じ内容。第4節の歌詞の趣旨は、前述のMick Jagger の言葉の中のits advertising syndrome についてであることは明白でしょう。僕が子供だった頃には「ほーら、洗濯物がこんなに真っ白に!」みたいなインチキっぽいCMがテレビで良く流れていたもんです。ただ、そんなCMと4、5行目のWell he can’t be a man ‘cause he doesn’t smoke. The same cigarettes as me とがどうつながるのかが僕には良く分かりませんでした。4行目のhe は2行目のa man を指しているとしか考えられませんから何か関係があるはずと思ったのですが、ここの部分は、当時のアメリカのそこら中に立っていた巨大な煙草の看板(例えば「煙草を吸ってこそ男だ」みたいなカウボーイを使ったマルボロの看板)を揶揄しているようです。5節目も第1節と同じフレーズの繰り返し、と思いきや、2行目がしれーっとno girl reaction という言葉に変えられていますね(笑)。この言葉が入っただけで、ここの節の全体の意味が性的なフラストレーションに一気に変化するところがとても面白いと思います(アメリカでも60年代はまだ社会全体がお堅い時代でしたから、当時は当然、ラジオやテレビの関係者から問題視されたようです)。そして、第6節は恐らく自らのことを語っているのでしょう。行く先々でMick たちに殺到するグルーピーの女の子たちの姿が目に浮かびます。3行目のmake some girl は「女の子を口説く」にしておきましたが実際はsex を意味していて(←またsex かよ・笑)、4行目のbetter come back, maybe next week は「今日は生理だから、来週また来て」ということだと理解しました。だからこそ、主人公は5行目でI’m on a losing streak なんてことを言っているのですが、Mick Jagger に限ってはそんなことあり得なかったでしょうね(笑)。
このように、Mick Jagger はこの曲でアメリカの商業主義やアメリカそのものを嫌ってコケにしていた訳なんですけども、その後、そんな彼がそのアメリカを舞台にそのアメリカの商業主義に乗っかって大儲けしたという事実は、あまりにも滑稽だと言わざるを得ません。
【第75回】You Really Got Me / The Kinks (1964)
前回に引き続き今回もイギリスの大御所の曲を紹介しましょう。本日お届けするのはSatisfaction 同様、歴史的名曲と位置づけられているThe Kinks のYou Really Got Me です。日本で偉大なUK4大バンドと呼ばれているのは、The Who, The Rolling Stones, The Beatles とこのThe Kinks ですが、前出の3つのグループに比べるとThe Kinks は知名度においても存在感においてもヒット曲の数においてもかなり弱いですね。若い方なら「そんなバンド名、初めて聞いた」と仰る方さえおられるかも知れません。そんな塩梅ですから「じゃあ、UK4大バンドじゃなくて、3大バンドでも別にいいじゃないか」という話になりがちなんですが、ハードロックの設計図を描いた先駆者であるとか、パンクロックの祖であるという風に形容されるThe Kinks がイギリスの音楽業界に残した功績を考えると、やはり3大バンドではなく4大バンドでないとならぬのです。The Kinks は1962年にRay Davies とDave Davies という労働者階級の家庭に生まれた二人の兄弟によってロンドンで結成されたバンドで、このYou Really Got Me という曲をひっ提げ、ビートルズを追うようにアメリカ進出を果たしましたが、ライブ会場での粗暴な振る舞いなどを理由にAFM(アメリカ音楽家連盟)からアメリカ国内での演奏活動禁止の処分を受けたことで、事実上、アメリカの音楽業界から追放され、その後、活動の軸足をアメリカに戻すことは二度とありませんでした。ですが、そのことは結果的にThe Kinks が自国に再び目を向ける良い機会となり、A Well Respected Man やWaterloo Sunset といった名曲が生まれる原動力ともなりました(曲はロックではなくフォーク調に変化してますが・汗)。Girl, you really got me goin’
You got me so I don’t know what I’m doin’
Yeah, you really got me now
You got me so I can’t sleep at night
Yeah, you really got me now
You got me so I don’t know what I’m doin’, now
Oh yeah, you really got me now
You got me so I can’t sleep at night
You really got me
You really got me
You really got me
君ってほんと、僕のテンションを上げてくれたよ
君に心を掴まれたもんだから、自分でも何してんのか分からないよ
そうさ、君にはもうほんと参った
君に心を掴まれたもんだから、夜も眠れないもの
そうさ、君にはもうほんと参った
君に心を掴まれたもんだから、もう自分でも何してんのか分からないもの
そうさ、君にはもうほんと参った
君に心を掴まれたもんだから、夜も眠れないもの
君にはほんと参った
ほんと参った
ほんと参ったよ
See, don’t ever set me free
I always wanna be by your side
Girl, you really got me now
You got me so I can’t sleep at night
Yeah, you really got me now
You got me so I don’t know what I’m doin’, now
Oh yeah, you really got me now
You got me so I can’t sleep at night
You really got me
You really got me
You really got me, oh no
ねえ、僕をほったらかしにしたら駄目だよ
僕はいつでも君の傍にいたいんだ
君にはもうほんと参った
君に心を掴まれたもんだから、夜も眠れないもの
そうさ、君にはもうほんと参った
君に心を掴まれたもんだから、もう自分でも何してんのか分からないもの
そうさ、君にはもうほんと参った
君に心を掴まれたもんだから、夜も眠れないもの
君にはほんと参った
ほんと参った
ほんと参ったよ、あー駄目だ
*最後に第2節と同じ歌詞を繰り返した後、曲は終了します。
You Really Got Me Lyrics as written by Ray Davies
Lyrics © Sony/ATV Songs LLC, Jay-Boy Music Corp
【解説】
一度聴けば二度と忘れることのないYou Really Got Me のギターリフ、やや単調ですがパンチ力は充分にありますね。この曲のギターの音色もストーンズのSatisfaction 同様にわざと歪みが加えられているのですが、distortion の元祖はこちらです。しかもSatisfaction がエフェクターを使っているのに対し、You Really Got Me はアンプのスピーカーのコーンにナイフで切り込みを入れて音を歪ませるという荒業を使っていたんだそうですよ(汗)。そんな音作りに比べると、歌詞の方は後にRay Davies が書くようになるイギリス社会を内省するような奥の深いものではなく実に単純なもので、同じ人物が書いたものとは思えないくらいです。それでは、そのシンプル過ぎる歌詞を見ていきましょう。
第1節1行目のget me going は、直訳すれば「自分を動かしてくれる」つまり「気分が上がる」という意味です。今風に言うならば「テンション上がるぅー」ってやつですね(余談ですが、英語のtension は緊張や不安を意味する言葉。「気分」の代わりに「テンション」を日本語の中で使うようになっているのは誤用です)。2、3行目のyou got me は、日本人にとってはなかなか手強い表現で、場面に応じて様々な意味に変わります。捕まえられた(あなたは私を捕まえた)、ばれたかぁー、(私が考えてること、私の性格などが)よく分かっているね、痛いところをつかれた、ツボを押さえられた、君には負けたよ、参ったなぁー、降参だ、やられたぁー、引っかけられたぁー、といった具合。英語ではこれらの感情表現をすべてyou got me の一言で片付けることができます。この歌詞の中では2行目には「(心を)捕まえられた(掴まれた)」、3行目には「参ったな」が一番しっくりくるのではないかと感じたので、このように訳しました。第2節は最初の2行は少し違いますが、残りの部分は第1節とほぼ同じですので、解説は必要ないですね。うぉぉぉー、なんてことでしょう!もう解説が終わってしまいましたよー!要するにこの曲、自らの心を女にがっつりと掴まれ、メロメロになってしまっている男の心情を歌っているものだということは誰が聴いても分かりますね。実際、Ray Davies は雑誌のインタビューで次のように語っています。
「I was playing a gig at a club in Piccadilly and there was a young girl in the audience who I really liked. She had beautiful lips. Thin, but not skinny. A bit similar to Françoise Hardy. Not long hair, but down to about there. I wrote ‘You Really Got Me’ for her.・ピカデリーのクラブでギグをやってた時、観客の中に僕の好みにぴったりの若い娘がいてね、唇がきれいだった。細いけどガリガリって訳でもなくてさ、ちょっとフランソワーズ・アルディ(フランスの女性歌手)に似てたんだ。髪は長くはないけどこれくらいの長さでね、僕はYou Really Got Me をその娘の為に書いたのさ」
因みにYou Really Got Me、The Kinks に影響を受けたというVan Halen が1978年にカバー曲を出していて、The Kinks のオリジナルを完全に凌駕する仕上がりになっていますので、興味を持った方は一度聴き比べてみてください(デビューアルバムのVan Halen に収録されています)。
【第76回】Caribbean Queen / Billy Ocean (1984)
本日紹介する1曲は、当時のイギリスの音楽業界では少数派であったソウルフル&ダンサブルなBilly Ocean のCaribbean Queen です。実はこの曲、1984年5月にイギリスでEuropian Queen というタイトルでリリースされたのですが、まったく売れずに在庫の山という結果に終ってしまっていて、途方に暮れたレコード会社の社長がイントロを短くしたり歌詞を少し省いてテンポを良くし、歌詞の中のEuropian Queen の部分をCaribbean Queen に変更。タイトルも同じように変えてその年の夏にアメリカ向けとしてリリースしたところ、急にヒットしたというちょっと面白いエピソードを持つ曲なんです(アフリカ向けとして同じように加工したAfrican Queen という曲も同時にリリースされ、当時はまだアパルトヘイト政策を続けていた南アフリカ共和国でヒットしました)。カリブ海はアメリカ人が大好きなリゾートエリアですし、この曲はアメリカでそこそこヒットした曲なので(1984年のビルボード社年間チャートで51位。週間チャートでは2週連続1位を獲得)、そのモータウン風の歌い方からしても、僕はBilly Ocean のことをアメリカ生まれの黒人だとずっと思っていたのですが、今回この曲のことを調べていた最中に、彼がトリニダード・ドバコ生まれで、イギリスのミュージシャンであることを初めて知りました(汗)。トリニダード・ドバコは南米のベネズエラ沖、カリブ海の東端に浮かぶ日本の福岡県とほぼ同じくらいの面積の大きな島で、Billy Ocean が生まれた1950年当時はイギリス領だったそう。10歳の時、彼は両親と共にイギリス本土へ移住しています。She dashed by me in painted on jeans
And all heads turned ‘cause she was the dream
In the blink of an eye I knew her number and her name, yeah
She said I was the tiger she wanted to tame
ペイントカスタムのジーンズを履いた彼女が僕に駆け寄ると
誰もが振り向いたんだよね、だって彼女は皆の憧れだったもの
そんな彼女の名前と電話番号を、僕は瞬く間に手にしたんだぜ
彼女、僕のことをこう言ったんだ、飼い慣らしたかった虎だってね
Caribbean Queen
Now we’re sharing the same dream
And our hearts they beat as one
No more love on the run
カリブ海の女王
と、僕とは今、同じ夢を分かち合ってる
僕たちの心はひとつになるんだ
恋の火遊びなんてもう御免さ
I lose my cool when she steps in the room
And I get so excited just from her perfume
Electric eyes that you can’t ignore
And passion burns you like never before
彼女が部屋に足を踏み入れてきた時、僕は冷静さを失ったね
彼女から漂う香水の香りにめちゃくちゃ興奮したからさ
彼女の輝く瞳を無視したりなんてできないことだし
情熱がかつてなかったほどに燃え上がったよ
I was in search of a good time
Just running my game
Love was the furthest
Furthest from my mind
かつての僕は楽しい時間だけを探し求めてたんだよね
ゲーム感覚でね
だから愛はほど遠いものだった
僕の心からはほど遠いものだったんだ
Caribbean Queen (can’t give her up)
Now we’re sharing the same dream (don’t wanna stop)
And our hearts they beat as one
No more love on the run
I love ya, I need ya
カリブ海の女王(彼女を諦めることなんてできないよ)
と、僕とは今、同じ夢を分かち合ってる(もう止めたくはないんだ)
僕たちの心はひとつになるんだ
恋の火遊びなんてもう御免さ
だって、君を愛してるんだもの、君が必要なんだもの
Caribbean Queen (can’t give her up)
Now we’re sharing the same dream (don’t wanna stop)
And our hearts they beat as one
No more love on the run
カリブ海の女王(彼女を諦めることなんてできないよ)
と、僕とは今、同じ夢を分かち合ってる(もう止めたくはないんだ)
僕たちの心はひとつになるんだ
恋の火遊びなんてもう御免さ
*このあとサックスのソロが入り、上記と同じコーラスを2回歌って、最後に下記のアウトロで歌は終わります。
She is the queen
My Caribbean Queen
I said she dashed by me in painted jeans…
彼女は女王なのさ
僕のカリブ海の女王なんだ
言ったよね、ペイントカスタムのジーンズを履いた彼女が僕に駆け寄って…
Caribbean Queen Lyrics as written by Leslie Charles(Billy Ocean の本名), Keith Diamond
Lyrics © Universal Music-Z Tunes
【解説】
とてもシンプルで分かり易い歌詞ですね。タイトルと歌詞の一部をEuropian Queen からCaribbean Queen に変えただけで、歌詞全体から醸し出される雰囲気が一気にカリブ海世界に変わってしまうのですから、曲のタイトルというものが如何に重要な役割を果たしているのかを痛感します。だから、映画や洋楽に勝手に付けられたヘンテコな邦題を見る度に絶望的な気分になるんですよね…。と、まあ、そんなことはさておき、この曲の歌詞も詳しい解説は必要なさそうですので、今回も早く終わりそうな気配(嬉)。早速歌詞を見ていきましょう。
先ずイントロ部分ですが、Billy Ocean がShe’s simply awesome(彼女ってとにかくイカしてるんだ)と呟いているのを皆さんは気付かれましたか?ここのsimply は「単に、単純に」といった意味での副詞として用いられているのではなくawesome を強調する為の用法です。第1節1行目のShe dashed by me in painted on jeans を聴いて僕の目に浮かんだのは、ケミカルウォッシュされたデニムに派手なペイントが施されたジーンズ(恐らく、この歌詞が書かれた頃の最新流行だったんでしょう)を穿いた女性の姿であり、She という主語の人物が流行の最先端にいるような華やかな女性であることの暗喩であると理解しました。dash by me は「僕に駆け寄る」という言葉を当てはめましたが、女性から男性にアタックした、モーションをかけたというニュアンスも含まれていると思います。そのことは4行目にもつながっていて、the tiger she wanted to tame というのは、この節に出てくるShe が相手の男性をプレイボーイ、女たらしの類だと分かった上でdash してくるような、かなり気の強い自信に満ちた人物であることを想像させます。第2節、Europian Queen では4節目のI was in search of a good time の部分の歌詞がここに入っていますが、Caribbean Queen では省略されていきなりコーラスに入る構成に変えられています。なので、2節目を聴くと男がCaribbean Queen に夢中になっていることが分かりはしますが、なぜそうなったのかの流れが欠けてしまっているのでやや唐突感がありますね。2行目のthe same dream は、遊びじゃなく互いに心から愛し合うことの言い換え。4行目のlove on the run は直訳すれば「走って逃げる恋」ですが、要は「(気軽な、真剣でない)一時の恋、刹那的な恋」という意味です。the same dream と対になっていると考えていいかと思います。
第3節も和訳のとおりですが、3行目のElectric eyes that you can’t ignore はちょっと難解。ここで言うelectric eyes というのは、恐らくmagic eye tube のことでしょう。大昔のラジオに搭載されていた「同調指示管」と呼ばれるもので、受信する電波の強弱によって瞳のような形をしたネオン管が輝いたり暗くなったりするんです。今の時代に実物を見る機会は無いと思いますが、見れば「あー、なるほど」となるはず。第4節は前述のとおりで、歌詞の主人公の男がずっとlove on the run みたいな恋しかしてこなかったことが分かります。なぜ、男が今回出会った女性に対してlove on the run とは違う結果になったのかの理由が吐露されているのが第5節の5行目。I love ya, I need ya と心の底から思ったからそうなったのです。どうやら男は、彼女のことを真剣に好きになったようですよ。このあと、同じコーラスが2度繰り返され、最後にI said she dashed by me in painted jeans という言葉で曲は終了するのですが、最後のこのフレーズがちょっとクセモノです。この種の言葉によって描写が最初のシーンに戻される場合、考えられるパターンは「ここまでに歌われてきた歌詞の内容が主人公の想像の世界であった、もしくは、実際にあったことの回想であった」なのですが、第1節が過去形で始まっていることから考えても、この曲では後者でしょう。となると、主人公はなぜ回想なんかしていたのでしょうか?僕の結論は、主人公が初めて真剣になった恋もまた、残念ながらいつものように終わってしまった(強気な彼女に捨てられた可能性が大)というものです。最後のフレーズがShe is the queen. My Caribbean Queenと現在形になっているのは、恋の駆け引きではプレイボーイの彼よりも一枚上手であった彼女への未練と尊敬にも似た気持ちを込めてそう言っているからではないでしょうか。カリブ海の女王は男に言い寄っては男を捨てるというドSの女王だったのかも知れません。恐るべし、カリブ海の女王(笑)。
さて、この曲が最初Europian Queen として売り出されたことは冒頭で述べましたが、ヨーロッパでの販売結果が振るわなかったのは、恐らくその響きのせいだったのでしょう。なぜなら、英国を始めヨーロッパには王室を存続させている国がまだ多数ある為、King やQueen と聞くと、どうしても本物の王族をイメージしてしまい、プレイボーイと強気の女が出てくるような歌詞の内容とうまく結びつかないと思うのです。だから、タイトルと歌詞の一部をバシッとCaribbean Queen に変えたのは「なかなかやるじゃないか」って感じですね(←なんで上から目線・笑)。
【第77回】I’m in the Mood for Dancing / The Nolans (1979)
イギリスのミュージシャンとして世に認識されてはいるけども、実はイギリス出身でないというアーティストを今回もご紹介しましょう。I’m in the Mood for Dancing で一世を風靡したノーランズThe Nolans です。The Nolans はその名のとおり、ノーラン・ファミリーの美人5人姉妹(なんだかダイアナ王妃が5人いるような華やかさ・笑)によって構成されていたガールズ・ユニットで、そのルックスと確かな歌唱力によって日本では非常に人気を博したグループですが、彼女たち、実はイギリス人ではなくダブリン郊外のRaheny という小さな町出身のアイルランド人。売れないクラブ歌手であった両親が仕事を求めて1962年に家族を引き連れイギリスのブラックプールへ移住したそうで、後にメンバーに加わる6女のColeen だけがイギリス生まれのイギリス育ちです。最近、長女のAnne Nolan が「The Nolans were so big in Japan selling more records then The Beatles」とツイッターで発信し、久し振りにノーランズが日本の洋楽ファンの間で話題に上りましたが、このビートルズよりレコードが売れたというのは、ビートルズのどのシングルよりも自分たちのシングルは売れたという意味でです。レコードの総販売枚数では日本でもビートルズがノーランズよりぶっちぎりで上であることは言うまでもありません。因みにノーランズはアメリカではまったく売れなかったので、アメリカ人に「Wow! The Nolans! Their songs bring back memories ノーランズだぁー!懐かしいなー」とか言っても「Who’s that?誰それ?」と言われるのがおちですね(笑)。I’m in the mood for dancing, romancing
Ooh I’m giving it all tonight
I’m in the mood for chancing
I feel like dancing
Ooh so come on and hold me tight
あたし、踊りたい気分なの、恋の予感よ
だって、今夜は気合が入ってるもの
恋に賭けてみたい気分なのよね
だから、踊りたい気分なの
ねえ、こっちへ来てあたしをぎゅっと抱きしめてよ
Dancing, (dancing) I’m in the mood, babe
So let the music play
Ooh I’m dancing, (dancing) I’m in the groove, babe
So get on up and let your body sway (body sway)
踊るの(踊るのよ)そういう気分なの
音楽を鳴らしてね
そう、あたしはもう踊ってるわ(踊ってるの)リズムに乗ってね
だから、あなたも立ち上がって体を揺らすのよ(体を揺らすの)
I’m in the mood for dancing, romancing
You know I shan’t ever stop tonight
I’m in the mood for chancing
I feel like dancing
Ooh from head to my toes
Take me again
And heaven who knows
Just where it will end
あたし、踊りたい気分なの、恋の予感よ
分かってるでしょ、今夜は踊るのを止めないわ
恋に賭けてみたい気分なのよね
だから、踊りたい気分なの
あー、頭のてっぺんから足のつま先まで
もう一度恋に浸らせて
誰にも分かることはないけどね
恋の行く末なんて
So dance, yeah let’s dance, come on and dance
Dance, yeah let’s dance, come on and dance
だから、踊ろうよ、こっちに来て踊ってよ
踊るの、そう、踊ろうよ、こっちに来て踊ってよ
Ooh I’m in the mood for dancing, romancing
Ooh I’m giving it all tonight
I’m in the mood for chancing
I feel like dancing
Ooh so come on and hold me tight
あー、あたし、踊りたい気分なの、恋の予感よ
だって、今夜は気合が入ってるもの
恋に賭けてみたい気分なのよね
だから、踊りたい気分なの
ねえ、こっちへ来てあたしと踊ってよ
Dancing, (dancing) just feel the beat, babe
That’s all you’ve gotta do
I can’t stop dancing (dancing)
So move your feet, babe
‘Cos honey when I get up close to you (close to you)
踊るの(踊るのよ)リズムを感じるの
それがあなたのしなくちゃいけないことよ
あたしはもう踊るのを止められないわ(踊るのをね)
だから、足を踏み出してよ
あたしがあなたの傍に行ったらね(あなたの傍にね)
I’m in the mood for dancing, romancing
You know I shan’t ever stop tonight
I’m in the mood, I’m in the mood
I’m in the mood to dance
Yeah let’s dance, come on and dance
I’m in the mood so baby dance
Yeah let’s dance, c’mon and dance
I’m in the mood to take a chance
Yeah let’s dance, c’mon and dance
Get on your feet now baby dance
あたし、踊りたい気分なの、恋の予感よ
分かってるでしょ、今夜は踊るのを止めないわ
気分なの、気分なのよ
踊りたい気分なの
そう、踊ろうよ、こっちに来て踊ってよ
気分なのよ、踊りたいっていうね
そう、踊ろうよ、こっちに来て踊ってよ
恋に賭けたい気分なの
そう、踊ろうよ、こっちに来て踊ってよ
さあ、立ち上がって踊ろうよ
I’m In The Mood For Dancing Lyrics as written by Ben Findon, Mike Myers, Robert Puzey
Lyrics © EMI Blackwood Music Inc, EMI Music Publishing Ltd
【解説】
I’m In The Mood For Dancing のメインボーカルを担当しているBernie Nolan は当時19歳。曲の歌詞はクサいですが、彼女の若くはつらつとした声がクサい歌詞を引き立てていて、逆に「いい歌詞じゃないか」なんて思えてしまいますね(笑)。歌詞をご覧のとおり、そこに描写されているのは、恋の予感を感じたティーンエイジャーの娘が(ティーンエイジャーかどうかは分かりませんが、そういうことにしておきます)、意中の相手を必死にダンスに誘おうとしている姿。分かり易い英語で書かれていて、英語として難しい部分も特に無いので、さっと歌詞を見ていきましょう。
第1節2行目のgive it all は、give it all I’ve got のI’ve got が省略されていると考えれば簡単に理解できます。直訳すれば「自分の持っているものをすべて与える」つまり「全力を尽くす、ベストを尽くす」という意味ですね。第2節3行目のbe in the groove は、上手くいっている、調子がいいといった、何かの事象の波に乗っているというイメージ。sway は体を前後左右に振り動かすという意味の動詞です。第3節2行目のshan’t はshall not の略で、いかにもイギリス英語といった感じ。アメリカ人はwon’t としか言いませんね(そもそもアメリカではshall 自体、ほとんど使いませんが)。shan’t の響きから感じるのは強い否定の意思で、won’t よりもさらに意思が固いような感じがします(←個人の意見です)。3行目のI’m in the mood for chancing のchance は「いちかばちかやってみる、思い切ってやってみる」というニュアンス。何をchance したいのかと言うと、それは目の前にいる意中の男性にアタックする行為(新たな恋)であるとしか考えられません。6行目のTake me againはちょっと難解。その理由は、どこへTake meしてくれと言ってるのか分からないからですが、主人公の少女がI’m in the mood for romancing, I’m in the mood for chancingと言ってることからして「再び恋に導いて」という思いがこもっているのであろうと理解しました。第4節以降は和訳のとおり。第6節の’Cosがbecauseの略であるということ以外、特に解説の必要な部分は無さそうです。
この曲を歌ったBernie Nolan、笑顔がとても素敵な女性でしたが、2013年に癌でお亡くなりになっています。52歳の若さでした。実は彼女の父親も癌で亡くなっていて、姉のLinda も現在、癌と闘病中とのこと。なんとも辛い話です(涙)。
【第78回】Wanted / The Dooleys (1979)
今日ご紹介するのは、前回のノーランズと同じく家族ぐるみで音楽活動をしていたThe Dooleys がイギリス、アイルランドと日本でヒットさせたWanted という曲です(ノーランズ同様、アメリカでは無名の存在)。The Dooleys はイギリス、ロンドン郊外に位置するイルフォード出身のドゥーリー一家によって結成されたグループで、この曲をリリースした時のメンバーは男女混合の8人(そのうち6人が兄弟姉妹)でしたが、ノーランズと決定的に違っていたのは、ボーカルのMarie Dooley とKathy Dooley 以外はギター、ドラム、キーボードといった楽器の演奏を担当していた点。つまり、ボーカル・ユニットではなくThe Dooleysはバンドだったということですね。日本では大手レコード会社であったEpic ソニーが彼らのプロモーションに力を入れていたせいなのか、Wanted が当時、ラジオで頻繁に流れていた記憶があります。You’re the kind of guy that I gotta keep away
But it’s all right
You know you can’t deny
It’s the price I’ve gotta pay
But it’s all right
‘Cause though your lips are sweet as honey
Your heart is made of solid stone
One look and boy you got me runnin’
I bet you saw me comin’ after you alone
あなたって遠ざけておかなくっちゃいけない類の男よね
でも、構いやしないわ
あなたは違うって言えないでしょうしね
あたし、報いを受けなくちゃならないのよね
でも、構いやしないわ
だって、あなたの唇って蜜のように甘いんだもの
あなたって非情な心の持ち主よ
一目であたしをときめかせるんだから
あたしが好きなのはあなた一人だったってこと、分かってるはずよ
Wanted
Boy, you’re everything I ever wanted
Now all I’ve got’s a memory, I’m haunted
Livin’ in the shadow of your love
Boy, you know you’ve got me
‘Cause you’re wanted
Boy, you’re everything I ever needed
But now you’re gone and let me down
And cheated
Livin’ in the shadow of your love
愛しいあなた
あなたはあたしが求めてたすべてだったわ
なのに今あるのは想い出だけ、悪夢に憑りつかれてるわ
あなたと愛し合った辛い想い出の中であたしは時を過ごしてるの
あぁ、あなたがあたしをモノにできたのは
あなたがあたしの求めていた人だったから
あなたはあたしが必要としてたすべてだったわ
でも、あなたはもういない、あたしは傷付けられ
欺かれた
あなたと愛し合った辛い想い出の中であたしは時を過ごしてるの
I’m the kind of girl that’ll swallow every line
But it’s all right
You only gotta call
And I’ll be there any time
And it’s all right
And now the flames are getting higher
I’m losin’ all my self control
So come on boy and feed the fire
I’m burning with desire
Don’t you leave me cold
あたしは何でも信じてしまうような類の娘
でも、構いやしないわ
電話してくれればいいの
あたしはいつでも電話に出るわ
そうよ、構いやしないわ
あたしの恋の炎が燃え上がり
もう自分を見失ってるの
だからここへ来て、もっと燃え上がらせてよ
あなたが欲しくてあたしの体が熱くなってきてるのよ
あたしを冷えたままにはしないで
Wanted
Boy, you’re everything I ever wanted
Now all I’ve got’s a memory, I’m haunted
Livin’ in the shadow of your love
Boy, you know you’ve got me
‘Cause you’re wanted
Boy, you’re everything I ever needed
But now you’re gone and let me down
And cheated
Livin’in the shadow of your love
愛しいあなた
あなたはあたしが求めてたすべてだったわ
なのに今あるのは想い出だけ、悪夢に憑りつかれてるわ
あなたと愛し合った辛い想い出の中であたしは時を過ごしてるの
あぁ、あなたがあたしをモノにできたのは
あなたがあたしの求めていた人だったから
あなたはあたしが必要としてたすべてだったわ
でも、あなたはもういない、あたしは傷付けられ
欺かれた
あなたと愛し合った辛い想い出の中であたしは時を過ごしてるの
Boy, you know you’ve got me
‘Cause you’re wanted
Boy, you’re everything I ever wanted
Now all I’ve got’s a memory, I’m haunted
Livin’ in the shadow of your love
Boy, you know you’ve got me
‘Cause you’re wanted
Boy, you’re everything I ever needed
But now you’re gone and let me down
And cheated
Livin’ in the shadow of your love
Boy, you know you’ve got me…
あぁ、あなたがあたしをモノにできたのは
あなたがあたしの求めていた人だったから
あなたはあたしが求めてたすべてだったわ
なのに今あるのは想い出だけ、悪夢に憑りつかれてるわ
あなたと愛し合った辛い想い出の中であたしは時を過ごしてるの
あぁ、あなたがあたしをモノにできたのは
あなたがあたしの求めていた人だったから
あなたはあたしが必要としてたすべてだったわ
でも、あなたはもういない、あたしは傷付けられ
欺かれた
あなたと愛し合った辛い想い出の中であたしは時を過ごしてるの
あぁ、あなたがあたしをモノにできたのは…
Wanted Lyrics as written by Robert Puzey, Michael Myers, Ben Findon
Lyrics © Songs of Windswept Pacific, BMG Rights Management Limited
【解説】
うーん、出だしのYou’re the kind of guy that I gotta の部分がなかなか聞き取れませんね(汗)。久し振りにこの曲を聴いてみて、最初はクサい歌詞だなと感じたんですが、何度か聴いているうちに「ちょっと待てよ、なんだか良く出来てる歌じゃないか」と思うようになってきました(←またかよ・笑)。実はこの曲の歌詞を書いたPuzey、Myers、Findon の3人はノーランズのI’m in the Mood for Dancing の作詞作曲をしたメンバーと同じでして、どうりで歌詞がクサいのも納得(笑)。ですが、少なくとも虫の名前が付いた大御所バンドのクサい歌詞よりはずっといいです。この曲の歌詞も分かり易い英語で書かれていて、解説が必要な部分はあまり無いので、さっと見て行きましょう。
第1節1行目のYou’re the kind of guy that I gotta keep away は、その男がプレイボーイや女たらしといった類の男であることの比喩。4行目のthe price I’ve gotta pay は、直訳すれば「私が支払わなくてはならない価格」つまり「代償を払う、報いを受ける」といった意味になります。自分は報いを受けないといけないとなぜ彼女が思っているのかと言うと、近づいてはいけない種の男に自分が近づき、付き合ってしまったからですね。7行目のYour heart is made of solid stone は、要するにその男がiron-hearted ということ。8行目のOne look and boy you got me runnin’のrunning は、何をrun させたのかと考えれば、この歌詞の主人公の女性のheart であるとしか考えられません。因みにこの曲の歌詞にはこの行のようにboy がやたら出てきますが、単なる呼びかけなので和訳する時は無視しても大丈夫です。9行目のyou saw me comin’ after you alone も、直訳すれば「あなたは私があなた一人を追いかけているのを見てた」になりますが、これは言い換えれば「ずっとあなた一人だけが好きだった」ということなのでこのように訳しました。この行のI bet は、確信していることを言いたい時や、後に続く内容を断言したい時に文の頭に付けて用いられます。
第2節の最初にあるWanted は、西部劇によく出てくるWanted(お尋ね者)や、求人広告のWanted(募集中)の張り紙を思い浮かべてしまう人も多いかもですが、ここのWanted は、2行目を見ても分かるとおりYou’re the one that I wanted のことでしょう。なので「愛しいあなた」という言葉に置き換えました。2行目のbe haunted は、何かに憑りつかれている状態のイメージ。3行目のLivin’ in the shadow of your loveは、直訳すれば「あたしはあなたの愛の影の中で時を過ごしている」ですから、要するに「(喧嘩別れしたとか男に捨てられたみたいな理由で)もう会えなくなった男との想い出にすがって生きている」ということ であると理解。その想い出がshadow という言葉を使って表現されていることから、思い出すだけで辛くな る(暗くなる)ことを想像させます。第3節1行目のswallow every line は、line をstory に置き換えれば分かり易いです。人の話を鵜呑みにするということですね。この歌詞の主人公は同じ行で自分のことをgirl と言っていますので、恐らく彼女はティーンエイジャーなのでしょうけど、前回に紹介したノーランズのI’m in the Mood for Dancing の主人公よりはずっと大人の女といった感じ。8行目のfeed the fire もignite に置き換えれば簡単に理解できます。そのあとのI’m burning with desire. Don’t you leave me cold は、文字どおりの意味(←要するにsex したいということ←またsex かよ!(笑)←どうもイギリス人は歌詞の中でsex を暗喩するのが好きなような気がするのですが…汗)。この節から僕が感じたのは「言い訳でもなんでも聞くから、あたしの所へ戻ってきてあたしを抱いて」という、主人公の切なくも激しい女心です。第4節以降は、ほとんど同じ歌詞の繰り返しなので、以上で解説は終了。
さて、冒頭で紹介したこの曲を作詞作曲したBen Findon、彼の本職はプロデューサーで、The Nolans やThe Dooleysのほとんどの曲の作詞作曲に絡んでいる他、Billy Oceanの曲も多数手掛けています。恐らくFindon は、スウェーデンのABBAや西ドイツのArabesqueがディスコソングで成功しているのを見て、The Nolans とThe Dooleys を使って同じことを仕掛けようとしたのではないでしょうか。陰の功労者であるFindonがいなければThe NolansやThe Dooleysの日本でのヒットも無かったのかも知れませんね(←個人の推測です)。
【第79回】Higher Love / Steve Winwood (1986)
いよいよ英国特集も今回が最終回。そのトリを飾る人物として、知る人ぞ知るイギリスの隠れた大御所Steve Winwood に登場願いましょう。1965年にThe Spencer Davis Group のボーカルとしてバーミンガムでデビューしたのを皮切りにTraffic やBlind Faith のメンバーとして活躍し、その後のソロ活動も含めると音楽活動を約60年も続けているベテラン・アーティストで、歌も上手いですが、ハモンド・オルガンやギター、ベースも弾きこなす他、サックスを吹いたりドラムも叩けるというマルチな才能の持ち主でもあります。本日ご紹介する曲は、彼が1986年に発表したアルバムBack in the High Life からシングル・カットされて大ヒットしたHigher Love。同年のビルボード社年間ヒットチャートで20位に食い込む大健闘でした。因みに、ゴスペル風のバックコーラスで曲を盛り上げているのはChaka Khan。彼女の声にも耳を澄ましてみてください。Think about it, there must be higher love
Down in the heart or hidden in the stars above
Without it, life is wasted time
Look inside your heart, I’ll look inside mine
考えてみて、もっと尊い愛があるってね
心の奥底や天上の星に隠れたね
それなしじゃ、人生なんて無駄な時間なのさ
自分と向き合ってみてよ、僕も自分と向き合ってみるから
Things look so bad everywhere
In this whole world, what is fair?
We walk blind and we try to see
Falling behind in what could be
物事ってのはどこででも悪く見えるもんだよね
この世では、何が公平なんだろうね?
僕たちは目を閉じて歩きつつも見ようとする
遅れをとることになろうともね
Bring me a higher love
Bring me a higher love, ohoh
Bring me a higher love
Where’s that higher love I keep thinking of?
僕はもっと尊い愛を求めてる
もっと尊い愛を求めてる
もっと尊い愛を求めてるんだけど
僕が思い続けてる至高の愛ってどこにあるんだろうね?
Worlds are turning, and we’re just hanging on
Facing our fear and standing out there alone
A yearning and it’s real to me
There must be someone who’s feeling for me
世界は回っていて、僕たちはそこにしがみついてるだけ
恐怖と向き合い、一人立ちすくんでる
切なる思い、それは僕にとって本物なんだよ
僕に共感してくれる者がいるはずなんだよ
Things look so bad everywhere
In this whole world, what is fair?
We walk blind and we try to see
Falling behind in what could be
物事ってのはどこででも悪く見えるもんだよね
この世では、何が公平なんだろうね?
僕たちは目を閉じて歩きつつも見ようとする
遅れをとることになろうともね
Bring me a higher love
Bring me a higher love, ohoh
Bring me a higher love
Where’s that higher love I keep thinking of?
僕はもっと尊い愛を求めてる
もっと尊い愛を求めてる
もっと尊い愛を求めてるんだけど
僕が思い続けてる至高の愛ってどこにあるんだろうね?
Bring me a higher love
Bring me a higher love, ohoh
Bring me a higher love
I could rise above on a higher love
僕はもっと尊い愛を求めてる
もっと尊い愛を求めてる
もっと尊い愛をね
至高の愛で僕は高みへ行けるんだ
I will wait for it
I’m not too late for it
Until then, I’ll sing my song
To cheer the night along
Bring it
僕は待つよ
遅過ぎるってことはないよ
それまで、僕は自分の歌を歌うさ
闇を照らす為にさ
だから、与えてくれないか
I could light the night up with my soul on fire
I could make the sun shine from pure desire
Let me feel that love come over me
Let me feel how strong it could be
魂を燃やして夜を照らすことができるかもしれない
純粋な思いで太陽を輝かせることができるかもしれない
愛が僕を包み込むのを感じさせてよ
それがどれほど強いものなのかを感じさせてよ
Bring me a higher love
Bring me a higher love, ohoh
Bring me a higher love
Where’s that higher love I keep thinking of?
僕はもっと尊い愛を求めてる
もっと尊い愛を求めてる
もっと尊い愛を求めてるんだけど
僕が思い続けてる至高の愛ってどこにあるんだろうね?
*このあと、Chaka Khan とSteve Winwood がBring me a higher love というフレーズを大合唱して曲は終わります。
Higher Love Lyrics as written by Stevie Winwood, Will Jennings
Lyrics © Irving Music, Inc, Blue Sky Rider Songs and Kobalt Music Pub America
【解説】
なんか、カリブ海のリゾートのビーチ沿いにあるオープンエアーのバーで夜風に当たりながら席に腰掛けていると流れてきそうなメロディーライン。この曲のシングル・レコードのジャケットの表紙も男女が今にもキスを交わそうとしているシーンなので、タイトルのHigher Love は男女間のlove に関係する何かであり、それについて歌っているものだとずっと思っていたのですが、今回改めて真剣に曲をよぉーく聴いてみると、どうも違うように感じました(←またかよ・汗)。そこで、いつものように手掛かりを求めてインターネットで検索してみると、出てきたのがSteve Winwood の次のような談。
「When I write a song, I don’t like to have to explain it afterwards. To me, it’s like telling a joke, then having to explain it. The explanation doesn’t add to the song at all」
Winwood は「歌詞についてあとからあれこれ語りたくはない」という姿勢のようですね(汗)。「こりゃ駄目だぁー、手掛かり無しで訳してみるか」と思った矢先、運よく見つけたのが、歌詞の共著者であるWill Jenningsへのインタビュー。JenningsはWinwoodと違ってお喋りが好きな人のようで、この曲の歌詞についてこう答えています。
「My earliest memories are of the music in church and of my aunts and uncles singing the beautiful old hymns.’Higher Love’ is a generation past that, when things were not so much taken for granted that one has to plea,’Bring me a higher love’ and the lines are all trying to explain why there must be higher love. A modern hymn, you might call it」
この「…Bring me a higher love の歌詞はすべて、なぜhigher love が存在するに違いないのかを説明しようとしてるんだ。現代の讃美歌と呼んでいいんじゃないかな」の最後の部分、modern hymn 現代の讃美歌という言葉から考えれば、この曲で歌われているlove は男女間の「love」ではなく、キリスト教的な博愛に近い「love」であるようです。なので、それをヒントにして歌詞を紐解いてみることにしてみましょう。歌詞に使われている英語にはこれといって難しい部分は見当たりませんけども、歌詞の解釈に関してはかなり手こずりそうな予感です(汗)。
第1節、いきなり最初から恐ろしく難しい問いかけです。こんなことを訊かれて直ぐに答えられる人なんているんでしょうか。この問いかけは、あくまでもキリスト教などの信仰心がある人たちに対してのみ通じるものであって、僕のような無神論者には無意味な問いかけですね(笑)。2行目のthe stars above は、恐らく天国の言い換え。神が与え給うであろうhigher love は自分の心の中か天国にしかないということでしょうか。3行目のWithout it のit はhigher love のことであるとしか考えられませんが、同時に神への信仰も意味しているのではないかと思います。4行目のLook inside your heart は直訳すれば「自分の心の中を見る」つまり「自分と向き合う」ということですね。Look inside your heart, I’ll look inside mineはまさしく、higher love を見つける(得る)にはそうすることが先ず必要だということであると理解しました。第2節も相当に難解です。行が前後しますが、3行目からのWe walk blind and we try to see falling behind in what could be を聴いて僕の頭を過ったのは、讃美歌Amazing Grace の「I once was lost but now I am found. Was blind, but now I see かつては迷ったが、今は自分の居場所があり、かつては盲目であったが、今は見える」の一節です(ここでの盲目という言葉は、悪行などに手を染めていても気にも留めない、自分が見えていないという意味で使われています)。なので、僕にはここの部分が「遅れをとっても良いから、盲目になるよりは正しい道を歩みなさい」と言っているように聴こえました。そう考えると、1、2行目のThings look so bad everywhere in this whole world, what is fair?は、Amazing Grace の作詞者で、奴隷貿易で暴利を得ていたJohn Newton が「自分はこんな人間のままで良いのだろうか?正しい道へ戻る時が来ているのではないか?」と自問している姿に重なるようにも思えてきます。自分と向き合ったNewton は、前 述のとおりI once was lost but now I am found. Was blind, but now I see という状態になるに至った訳ですからね。
第3節目は、higher love が自らの人生に現れることを求めている主人公の嘆願であることは分かりますが、いったい誰に対してbring me してくれと言っているのでしょう?その相手は神しかありませんね。ここのbring me はそれを求めている気持ちの表明であって神に命令している訳ではないので、このように訳しました。最後に主人公はWhere’s that higher love I keep thinking of?と自問していますが、そこから考えると、この人はこの世でhigher love なんてものを得ることは結局できないんじゃないかという諦めの気持ちも同時に持っているように思います。なぜ主人公がそのように感じてしまうのかの理由が、第4節で述べられているというのが僕の解釈で、「世間のあれこれにしがみついてるだけのちっぽけな自分(人生にしがみついていて、誰にもいつかは必ず訪れる死を恐れている自分)は神の前に出るのに相応しくない存在であり、それ故に神と直接向き合うことはできない(神に直接会うと自分に死が訪れるのではないかという恐怖)」そういう思いに至った主人公が「だから自分がhigher love を得ることはないだろうけども、同じような思い(現実)を抱えている人間は他にもいるはずだ」と自分を納得させているように僕には思えました。
第5節、6節は第2節、3節と同じフレーズの繰り返し。第7節は最後の1行だけI could rise above on a higher love に変えられています。なんだかんだ言っても、やはり主人公はhigher love を諦めていないようで、その思いが吐露されているのが第8節。彼の下した結論は結局「higher love を得る日が来ることを待つ」みたいですよ(笑)。3行目のUntil then, I’ll sing my song to cheer the night along は、何を歌うつもりなのかが分かりませんが、恐らくはAmazing Grace のような讃美歌なのでしょう。ここを直訳すれば「夜をずっと盛り上げる為、それまで自分の歌を歌うだろう」ですが、僕は「正しい道を見つける(闇を照らす)為に讃美歌を歌い続けるだろう」という風に理解しました。最後に主人公がBring it と言っているように、やはりこの人はhigher love が欲しくて仕方ないようで、その熱い気持ちを次の節で語っています(笑)。
第9節1行目のI could light the night up with my soul on fire は、前節と同じく正しい道を見つける(闇を照らす)ことができるということでしょう。2行目のI could make the sun shine from pure desire は、自らの強固な意思があれば、higher love を得ることができるような変化を生み出すことができるということを示唆しているのではないかと思いました。次のLet me feel that love come over me は、愛に憑りつかれるような状態を感じたいといった感じでしょうかね。ここの最後の2行を聴いて分かるとおり、主人公はそれほどまでにhigher love を求めているようです。では、結局のところ、この曲の歌詞に出てくるhigher love とはいったい何なのでしょう?僕は無神論者であり神とか宗教に対する感性は備わっていないのでうまく捉えることが難しいですが、精神的なレベルで人生を高め、豊かにする為の神の導きのようなものではないかという気がします。
以上、ちょっと小難しくなってしまったHigher Love の解説でした(笑)。
【第80回】No Woman, No Cry / Bob Marley & The Wailers (1974)
本コーナーを書き始めてほぼ一年、気付けばもう80回目じゃないですか!さてさて、そんな今回は、カリブ海の真ん中に浮かぶ美しい島で、かつては英国の植民地であったジャマイカが生んだ英雄、ボブ・マーリーのNo Woman, No Cry を紹介しましょう。皆さんもご存知のとおり、ボブ・マーリーは、ジャマイカという狭い世界の中でしか知られていなかった「レゲエ」というオリジナリティ溢れる音楽を世界に認めさせたアーティスト。No Woman, No Cry は1974年にリリースされた曲ですが、この曲の歌詞をより深く理解する為には、ボブの生い立ちと1970年代前半のジャマイカの政治状況を知っておくことが必要だと感じましたので、少し簡単に触れておきましょう。先ずは彼の生い立ちですが、ボブ・マーリーことRobert Nesta Marley は1945年、ジャマイカ北部のNine Mile という密林に囲まれた小さな村で生を受けました。母親はジャマイカ人、父親はイギリスの元軍人で実業家の白人でしたが、彼が生まれて直ぐに母子を捨てた為、ボブは白人の父親を激しく憎むようになったと言われています(その割には、彼が父親の姓であるMarley を死ぬまで名乗っていたことが僕には解せませんが)。そのことが影響しているかどうかは分かりませんけども、首都キングストン郊外のスラム街Trenchtown に政府が建てたGovernment Yard と呼ばれる公営住宅(高層住宅ではなく、トイレ、キッチン共同の長屋のような平屋の建物です)に12歳の時に母親と共に引越した彼は、政府の無策によって貧困が渦巻くその街で成長するにつれ、ラスタファリ運動や汎アフリカ主義に傾倒していきます。ラスタファリ運動Rastafarianism というのは、植民地に蔓延っていた肌の色による身分の固定化や差別への反感とエチオピアのキリスト教的思想が結びついて1930年代のジャマイカの労働者階級と農民の中に生まれた思想運動のことですが、詳しく説明すると長くなるので興味を持った方は各自にて勉強してください。また、ボブ・マーリーは、この曲の作詞作曲をしたことになっているTata ことVincent Ford にこのGovernment Yardで出会っています。車椅子生活を送りつつもTrenchtown の生活困窮者の為に無料の炊き出しを行っていたVincent はスラムの有名人物だった人で、彼が脚を失って車椅子生活になったのは、幼い頃にその貧しさから糖尿病の治療を受けられなかったからだそうです。No Woman, No Cry がボブによって作詞作曲されたものに間違いないことは研究者の手によって明らかにされていますけど、なぜクレジットがVincent Ford になったのかは、税金対策だったとかなんだとか色々と説があってはっきりしたことは分かっていませんし、2009年に死去したVincent がこの件に関して語ることもありませんでした。とは言え、僕としては、貧民街で苦しむ仲間たちを助けていたVincent の功労に対するボブからの一種の寄付でありオマージュであったと信じたいですね。
そしてもう一方の70年代前半のジャマイカの政治状況ですが、ジャマイカがイギリスの植民地状態から脱して独立したのは1962年のこと。支配者が去って行くと、ジャマイカ人自らによって議会選挙が行われ、人民国家党とジャマイカ労働党という二大政党が政権を争うようになりましたが、彼らは政争に明け暮れるだけで、独立を果たしたジャマイカの最大の課題であった貧困対策は遅々として進みませんでした。ボブ・マーリーは政治的には中立を表明していたものの、そんな政治家たちに怒りを感じていたのは間違いなく、1976年に「二大政党の対立により混迷するジャマイカに微笑みを」というスローガンの下でコンサートを開催しようとしたのですけども、そのコンサートの2日前に自宅で正体不明の武装集団の銃撃を受け、胸と腕を撃たれました。家にはコンサートのリハーサルの為に集まっていた多数の人々がいましたが、幸いにも銃撃による死者は出ず、ボブは気丈にも2日後のコンサートに出演して「人々の愛のためだけに僕は演奏したかったんだ」と聴衆に語りかけ、その目的を遂げています。事件は、既に国民的スターとなっていたボブの暗殺を、キューバに接近しジャマイカの社会主義化を進めようとする人民国家党の仕業にして、国民の怒りが人民国家党に向かうようにする為に、ジャマイカ労働党と結託したアメリカのCIA が裏で関与した疑いが持たれていますが、アメリカが中南米で行ってきた数々の悪行のパターンに照らし合わせば、恐らくそれが真実でしょう。ボブの暗殺には失敗しましたが、その後もアメリカ政府はジャマイカへの干渉を陰で続けて親キューバ派を排除し、1980年には望みどおりの親米政権をジャマイカに誕生させています。
それでは、これらのことを予備知識として頭に入れた上で、一度曲を聴いてみてください。No Woman, No Cry の歌詞は、74年にジャマイカで初リリースされた時の歌詞と、翌年にロンドンのライシーアム劇場でアルバム「Live!」の為に録音された際の歌詞との間に若干の差異がありますので、ここでは後者の歌詞を取り上げます。
No woman, no cry
No woman, no cry
No woman, no cry
No woman, no cry
駄目だよ、女が泣いちゃ
駄目だよ、女が泣いちゃ
駄目だよ、女が泣いちゃ
駄目なんだよ、女が泣いちゃあ
I remember when we used to sit
In the government yard in Trenchtown
Oba, observing the hypocrites
As they would mingle with the good people we meet
Good friends we have had, oh, good friends we’ve lost along the way
In this great future you can’t forget your past
So dry your tears I say, and
よく腰掛けてたあの頃のことを思い出すよ
トレンチタウンの貧乏長屋の前でさ
ははっ、偽善者たちに気をつけながらね
連中、僕たちの知る良き人たちとうまくやろうとしてたからさ
僕たちには良き友人たちがいたよね、もういなくなっちゃった良き友人たちがね
素晴らしい未来の為には、忘れちゃいけない過去があるもんなんだ
だから僕は言ってるんだよ、涙を拭いてってね、そうさ
No woman, no cry
No woman, no cry
Here, little darling don’t shed no tears
No woman, no cry
駄目なんだよ、女が泣いちゃ
駄目なんだ、女が泣いちゃ
さあ、愛しの君、涙を流さないでおくれ
駄目なんだよ、女が泣いちゃ
I remember when we used to sit
In the government yard in Trenchtown
And then Georgie would make the firelight
As it was log wood burning through the night
Then we would cook corn meal porridge
Of which I’ll share with you
My feet is my only carriage
And so I’ve got to push on through
But while I’m gone, I mean a…
よく腰掛けてたあの頃のことを思い出すよ
トレンチタウンの貧乏長屋の前でさ
でもって、ジョージは焚火をするんだよね
夜通し薪をくべながらね
で、そのあと僕たちはトウモロコシの粥を作るのさ
皆で分け合う粥をね
僕の足は歩く為にあるのさ
だから、僕は前に向かって進まなくちゃいけないんだ
でも、僕がいなくたってその間は、なんてのかな
Everything’s gonna be alright
Everything’s gonna be alright
Everything’s gonna be alright
Everything’s gonna be alright, I say
Everything’s gonna be alright
Everything’s gonna be alright
Everything’s gonna be alright
Everything’s gonna be alright
So woman, no cry
No no woman, no woman no cry
Oh,my little sister, don’t shed no tears
No woman, no cry
なんとかなるから大丈夫さ
なんとかなるから大丈夫
なんとかなるから大丈夫
なんとかなるから大丈夫だ、何度でも言うよ
なんとかなるから大丈夫
なんとかなるから大丈夫
なんとかなるから大丈夫さ
だから、駄目だよ、女が泣いちゃ
駄目なんだよ、女が泣いちゃあ
あー、妹よ、涙は流さないで
駄目なんだよ、女は泣いちゃね
Little darling, don’t shed no tears
No, woman, no cry
Little sister, don’t shed no tears
No, woman, no cry
愛しの君、涙を流さないでおくれ
駄目なんだよ、女が泣いちゃ
妹よ、涙を流さないでおくれ
駄目なんだよ、女は泣いちゃね
No Woman, No Cry Lyrics as written by Vincent Ford
Lyrics © Kobalt Music Pub America
【解説】
のっけからタイトルのNo woman, no cry の連呼で始まってますが、このフレーズを初めて聞くと、ネイティブ話者も含めて多くの人が「No money, No honey 金が無ければ、楽しいこともない」と同じように「女がいなければ、泣くこともない」というニュアンスで捉えてしまいますね。もちろん僕も最初はそのように理解してしまっていましたが、ボブ・マーリーを愛する先人たちによって、このフレーズは「No! Woman, Don’t cry!」と言っているのだと解釈されていて、インドや東南アジアなどのイギリス植民地であった地域でも禁止や否定の構文をNo と動詞を組み合わせて一言で片付けることが普通に行われていることを考えてみても、この先人たちの説明は「なるほどな」と納得です。
次の第2節1行目、I remember の前には、say, said, ‘cause, you see など、ライブでのノリによって様々な言葉が付け加えられる場合が多く、2行目のgovernment yard とTrenchtown の意味は冒頭で述べたとおりです。ここの部分は予備知識がないと、何のことを言ってるのかチンプンカンプンですね(笑)。この1、2行目を聴いて目に浮かぶのはまさしく、昔は日本でも良く見かけた長屋の住人たちが井戸端会議をする情景。3行目のOba の意味は良く分かりませんが、僕はブラジルなどで使われているポルトガル語のOba(軽い驚きや感嘆を表す語)と同じようなものではないかと感じました(カリブ海地域では、スペイン語やポルトガル語の影響を受けた語彙も多いのです)。ライブではこのOba をボブは省略して歌っていることも多々ありますので、いずれにせよ大した意味は無いと考えていいでしょう。ここのhypocrites は勿論、偽善者と言うよりも為政者たちのことを指していてobserve は、彼らの動きに目を光らせるという感じですかね。なので、4行目のmingle with も本来の「付き合う、交流する」という意味よりかは「接近してうまく言いくるめる」ということの暗喩のように感じました。そう考えると、5行目のGood friends we have had, oh, good friends we’ve lost は、良き友人だった多くの人が為政者たちに懐柔されてしまったと言っているように聴こえてきませんか?だからこそ6行目ではIn this great future you can’t forget your past と続けているのではないかと思います。ここのpast とは、為政者たちに懐柔される前の正しい姿、行い、言動といったものであるというのが僕の理解。7行目の「dry your tears 涙を乾かせ」というのも面白い表現ですが、要は涙を拭けということですね。第2節から僕に伝わってきたのは「政治家や為政者の偽善にたとえ絶望しようとも、泣いてはいけない」ということです。
第3節のlittle darling のlittle は、特に大小を表しているのではなく、little darling でhoney と同じ意味。第4節の3行目には唐突にGeorgie という男が登場しますが、これは冒頭で紹介したVincent Ford のことかと思われます。ボブ・マーリーの曲の歌詞は、基本的にはジャマイカ人に向けてのメッセージですので、ジャマイカ人が3行目から6行目までを聴いて「これはTrenchtown で炊き出しをしているTata のことだ」と分かれば、名前なんて何でも良かったのではないでしょうか。7行目My feet is my only carriage とそれ以降のフレーズはちょっと唐突感が否めませんが、炊き出しのトウモロコシ粥を分け合うようなスラム街から抜け出して新しい人生へと踏み出そうとうする主人公の決意のようなものを感じます。ひょっとすると、車椅子生活のVincent がこれだけのことをやってのけているのだから、自らの足で歩ける自分は、尚更、前へ向かって進まなければならないという思いが込められているのかも知れません。そして、主人公はスラム街に残していく恋人や家族に向かってこう言うのです。僕はここを出て君たちを幸せにする為に新しい道を切り開く。道が開けば必ず迎えに来るから何も心配することはない。Everything’s gonna be alright だと。だから泣かないでと。このように、No Woman, No Cry という曲は、為政者たちへの批判が若干入ってはいるものの、本筋はTrenchtown で暮らし愛し合う人々が離れ離れになることとなり、その別れの辛さに涙している女たちを旅立つ側の人間が慰めているという歌のようにしか僕には聴こえなかったのですが、皆さんはどう感じられましたか?
因みにこの名曲、アメリカのヒットチャートでは年間チャートはもとより週間チャートでも圏外でした。本コーナーでは度々、米国ビルボード社のチャートを引き合いに出していますが、それはどれくらいその曲が売れたか、あくまでも商業的に成功したか否か、の目安として紹介しているだけで、ヒットチャートというものが作品の良し悪しを示すインジゲーターでないことは、このNo Woman, No Cry のチャート圏外という事実が証明しています。まあ、世の中の賞とかそういったものもすべて同じことが言えるんですけどね。
【第81回】Who Can It Be Now? / Men at Work (1981)
前回はカリブ海に浮かぶジャマイカ出身のミュージシャンを取り上げましたので、今回は久し振りに南半球のオーストラリアへ飛んでみましょう(←何の脈絡もありませんが・笑)。今日お届けするのは、1983年にアルバム「Business as Usual」とシングル「Down Under」が米国ビルボード社の週間ヒットチャートでアルバムとシングル部門で同時に1位となり(オーストラリアのミュージシャンでは初の快挙)、アメリカだけでなく世界中で一世を風靡することになったロックバンドMen at Work がその前年、アメリカ進出後に初めてヒットさせたWho Can It Be Now?という曲です(1982年のビルボード社年間チャートで30位)。思い返せば、Down Under という単語が特にオーストラリアを指す言葉としてアメリカでも使われるようになったのはその頃からでしょうかね。Down Under は、オーストラリアやニュージーランドがイギリスから見て地球の裏側にある地The Land Down Under であることからこの地域の総称として大英帝国時代に英国人がそう名付けたらしく、Men at Work がDown Under をヒットさせて以来、オーストラリア人は自国を指す意味でDown Under という言葉を逆に誇りを持って使っているようですが、大都市で暮らすアメリカ人なんかがオーストラリアをこの言葉で呼ぶ時は「地球の果ての田舎者の暮らす地だ」みたいな感じのちょっと小馬鹿にしているニュアンスが含まれているような気がしないでもありません(←個人の意見です・汗)。Men at Work はそのDown Under の第2の都市メルボルンで父親が営む楽器店の息子であったColin James Hay が中心となって1978年に結成したバンドで『MEN AT WORK ・工事中(Men working at workの略)』を意味する印象的なバンド名は、出演が決まった演奏会でバンド名を決めなければならなくなった際、公演会場となったホテルの傍の駐車場の工事現場に掲げられていた看板を見て、バンド名をMen at Work にしようと提案したところ、メンバーに受け容れられてそうなったとColin 本人が語っています。さてさて、そんな安直なバンド名を持つMen at Work のWho Can It Be Now?という曲、いったいどんな歌なのか、先ずは歌詞をどうぞ!Who can it be knocking at my door?
Go away, don’t come ‘round here no more
Can’t you see that it’s late at night?
I’m very tired and I’m not feeling right
All I wish is to be alone
Stay away, don’t you invade my home
Best off if you hang outside
Don’t come in, I’ll only run and hide
僕の部屋のドアをノックするなんて誰なんだ?
失せやがれってんだ、二度とこの辺りには来ないでくれ
あんたさ、夜も遅い時間だって分からねえのかよ?
僕は疲れてるし、調子も良くないんだ
僕は一人でいたいだけなんだから
近付かないでくれ、僕の家に侵入しないでくれ
あんたは外でぶらぶらしてるのが一番いいんじゃないかな
中に入って来たって駄目さ、僕は逃げて隠れるだけだからな
Who can it be now?
Who can it be now?
Who can it be now?
Who can it be now?
今頃、誰なんだ?
今頃、誰なんだ?
今頃、誰なんだ?
今頃、誰だってんだ?
Who can it be knockin’ at my door?
Make no sound, tip-toe across the floor
If he hears, he’ll knock all day
I’ll be trapped, and here I’ll have to stay
I’ve done no harm, I keep to myself
There’s nothin’ wrong with my state of mental health
I like it here with my childhood friend
Here they come, those feelings again
僕の部屋のドアをノックするなんて誰なんだ?
僕は音も立てず、床の上をつま先立ちで歩く
だって、もし奴が物音を聞けば、一日中ドアをノックしやがるし
僕は閉じ込められ、ここにずっといなくちゃいけなくなっちまう
僕は何も悪いことなんてしてないよ、人付き合いが無いんだから
僕の精神状態に問題なんて何も無いさ
僕は幼馴染みたちといられるここが気に入ってるんだ
ほら来た、あの感じがまた
Who can it be now?
Who can it be now?
Who can it be now?
Who can it be now?
今頃、誰なんだ?
今頃、誰なんだ?
今頃、誰なんだ?
今頃、誰だってんだ?
Is it the man come to take me away?
Why do they follow me?
It’s not the future that I can see
It’s just my fantasy
Yeah
その男って、僕を連れ出しに来たのかな?
どうして連中は僕の後をつけるんだ?
僕に見えるのは未来じゃない
単なる空想の世界なんだよ
そうなのさ
*このあとリズミカルなサックスのソロが入り、アウトロでWho can it be now?を連呼して曲は終了します。
Who Can It Be Now? Lyrics as written by Colin James Hay
Lyrics © EMI Blackwood Music Inc., EMI Songs Australia
【解説】
イントロで流れるサックスのリフ、コードが単調ではありますが、パンチが効いていて一度耳にすれば二度と忘れることのない響きですね。イントロと後半のソロの部分に入るこのサックスの音色がWho Can It Be Now?を名曲にしたと言っても過言ではないでしょう。サックスを演奏しているのはバンド結成初期からのメンバーであるGreg Ham。冒頭で紹介したDown Under の曲中でフルート演奏を披露しているのもGreg ですが、そのメロディーラインが盗用であると後に訴えられ、原告の訴えを裁判所が認めたことから精神状態が不安定となった彼はヘロインに手を出して麻薬中毒となり、2012年、失意のうちに亡くなりっています(直接の死因は心臓発作でしたが、ヘロインを過剰に摂取する生活がその死の遠因であったことは想像に難くありません)。まあ、そんなことはさておき、この曲の歌詞、聴いてみて如何でしたか?特に難しい英語は使われていませんし、日本語に訳すのが難しいという訳でもないのですが、その割にはなんだか良く分からない内容です(笑)。なので、今回も気合を入れて取り組むとしましょう。
第1節は和訳のとおり。補足するならば、1行目の文はcan が入っているので推量ですね。4行目のnot feel right は「なんかしっくりこない、なんか変な感じがする」という意味で使われることが多いですが、ここでは単に体調や気分を現しています。6行目のdon’t you invade の部分はdon’t invade と言うのと同じですが、you が入ればより口語的。7行目は文頭にIt would be を補足すれば分かり易いでしょう。第1節の歌詞から推測できるのは、この歌詞の主人公が暮らす部屋には(歌詞からだけでは主人公が男性か女性かが分かりませんが、男性が歌っているので男性ということにして主語を「僕」にしました)歓迎せざる人々がよくやって来る(ドアをノックする)のであろうということで、この日はたまたま夜中だったようです。それが故なのか、この曲のレコードが日本で発売された際に「ノックは夜中に」なんていうとんでもない邦題が付けられていましたからびっくりですね(汗)。幸運にも、この第1節の歌詞がどういう経緯から生まれたのかを知る手掛かりをこの曲を作詞したColin Hay が雑誌のインタビューを受けた際にずばり語っていますので先に紹介しておきます。
① I was living in a place called St. Kilda, which is a great part of Melbourne. It’s as close to a red-light district as you could get in Melbourne at that time. There was a great rock’n’roll community, and the nightlife was quite alive. There was a big Jewish population as well. I was in an apartment, and there were lot of police sirens and drug dealers. It was a fantastic place to live.
② There were some people living next door who were moving a bit of product. Mistakes were made, and people would knock on our door looking for some kind of stimulant, and we didn’t have it. You were always hearing people banging on other people’s doors. We had one of those little spy holes, and I was always creeping toward the door when someone was knocking, to see who it was. I was never sure I wanted to open the door.
長ったらしいので簡単にまとめますと、嘗てColin が暮らしていたのは麻薬の売人が集い、警察沙汰の絶えなかったメルボルン郊外の売春街セント・キルダで(それが故に芸術家肌の人々には居心地が良い場所でもあった)、麻薬を求めてやって来た輩が、売人の家と間違えて彼の家のドアを叩くことも多々あったとのこと。彼はその都度、ドアにこっそり近付いて覗き穴から誰がドアをノックしているのか確かめたけども、ドアを開けようと思ったことは一度も無かったそうです(恐らく、その理由は危なそうな奴らばかりだったので・笑)。ということで、そんな経験がそのままWho Can It Be Now?の歌詞の第1節になっていることに疑いの余地はありません。なので、そのことを頭に入れて以降の節を見ていきましょう。
第2節はWho can it be now?のコーラスを繰り返して終了。第1節の1行目から考えて、knocking at my door が省略されていると考えて良いですね。第3節も和訳のとおりで、3行目までは第1節と同様、Colinが過去に経験したのであろうことが羅列されていますが、4行目から突然、どこか人間の内面に踏み込むような内容にトーンが変わります。僕にはこの4行目以降の歌詞がいったい何を言わんとしているのか未だに理解できませんが、敢えてその答えを探してみるならば、この曲の歌詞が書かれた頃(1981年にこの曲がリリースされる直前の頃)のColin が置かれていた状況が参考になるのではないかと思います。なぜなら、その頃の自らの状況を彼は次のように語っているからです。
「I was trying to get out of the situation I was in, which is that I didn’t really have any money. It seemed at that particular time everyone who knocked on my door wanted something from me that I either didn’t have or didn’t want to give them. That could be money, or it could simply be time that I didn’t want to give them」
この発言から僕が得た結論は、Colinn はメジャーなレコード会社から声をかけられ「これで金の無い貧乏生活から抜け出せる」という思いと同時に「果たして自分は彼らの期待に応えられるのだろうか?」という不安と恐怖にも襲われていたのではないかということであり、この歌詞に出てくるmy door というのはColin の心のドアではなかったのかという気が僕にはしました。Colin の才能に気付き始めた色々な人が色々なことを言ってくる中で、彼は「うまく行くかどうかなんて先のことは分かる訳ないじゃないか。あー、今度は誰が何を言いに来たんだ?頼むから今は僕のことをそってしておいてくれよ」という気分だったのかも知れませんね。そのことが第5節のIt’s not the future that I can see. It’s just my fantasy につながっているのだと考えれば納得もできます。なので、7行目からのI like it here with my childhood friend. Here they come, those feelings again は、成功という名のプレッシャーの前で彼が必要としていたのは気心の知れた仲間たちと一緒にいることでありthose feelings は、そのような仲間たちから無条件に感じることのできる安心感であると僕は理解しました。余談ですがI like it here(私はここが気に入っています)はとても英語らしい表現。I like here と言ってもネイティブ話者は勿論理解してくれますが、I like here が間違った表現であってそこにit が必要な理由はいたってシンプル。here は副詞なので何か目的語を入れないといけないからで、特に意味は無いけどもit の助けを借りているという訳ですね。
それでは最後にもうひとつ余談と言うか、オーストラリア出身であると世間一般で認知されていても、実のところオーストラリア生まれではないというミュージシャンは意外に多いというトリビアを紹介してこの回を終えることにしましょう。実例で言えば、今回紹介したMen at Work のColin James Hay もスコットランドのAyrshire 出身でしたし、AC/DC を結成したYoung 兄弟も同じくスコットランドのGlasgow 出身。1980年に急死したAC/DC の元ボーカルBon Scott もスコットランドのForfar 生まれでした。Air Supply のGraham Russell も出身はイングランドのNottingham ですし、オーストラリアでデビューしたBee Gees も英国のマン島出身であることは以前にも紹介したとおり。Olivia Newton-John もイングランドのCambridge 出身ですね(僕は長らくのあいだ、彼女がオーストラリア生まれだと信じて疑っていなかったですけども・汗)。世界進出を果たしたオーストラリアのミュージシャンに英国生まれが多かったという事実は果たして偶然だったのでしょうか?僕には必然だったように思えるのですけども…。
【第82回】Highway to Hell / AC/DC (1979)
今日も前回に引き続きオーストラリアのミュージシャンの曲を紹介しましょう。南半球のロックの実力を世界に知らしめたAC/DC が1979年にリリースしたHighway to Hell という名曲です。1976年、アメリカの大手レコード会社Atlantic と契約し、オーストラリアを離れて世界に打って出た彼らは3年後、この曲を含む同名のアルバムでブレイクを果たし、シングルカットはビルボード週間チャートで最高47位止まりだったものの、アルバムの完成度の高さから全米で一気にその名を高めました。その後もBack In BlackやFor Those About To Rock といった曲を次々とヒットさせ、ダウンアンダーの重鎮となったAC/DC。ですが、オーストラリアのシドニーで結成されたバンドとは言え、結成当時のメンバー5人のうちオーストラリア出身なのはドラム担当のColin Burgess だけだったというのは興味深いところですね(他の4人はイギリス生まれと米国生まれ)。因みにAC/DC(交流/直流)という風変わりなバンド名は、バンド結成の中心となったYoung 兄弟の談によると、彼らの姉妹が使っていた電動ミシンの電源アダプターに「AC/DC」という表示があったことにヒントを得たんだそうで、Men at Work と同様、実に安直な名前の付け方であるのが笑えます。オージー(オーストラリア人)はこのバンドのことを、エーシーディーシーではなく親しみを込めてAcca Dacca (アーカァダッカ)と呼ぶことが多々ありますけども、それはオーストラリア人がハンバーガーショップのマクドナルドをMaccas と呼ぶのと同じようなオーストラリア独自の名前の愛称化によるもののようです。このHighway to Hell という曲を独特の歌声で歌っているのは、この曲の作詞も担当したAC/DC の伝説のボーカルBon Scott。Bon は1946年にイギリスのスコットランドで生まれ、6歳の時にパン屋を営んでいた両親と共にオーストラリアへ移住。子供の頃より悪童として名を馳せ、15歳で学校を中退、以降は職を転々とし、ガソリン窃盗などの罪で少年院に入っていた経験もあります。そんなすさんだ生活の中で唯一の彼の楽しみであったのは音楽で、1964年に自らバンドを結成して歌い始め、2年後に結成したThe Valentines というバンドでリリースしたJuliette は、オーストラリア国内の週間ヒットチャートで28位を獲得しました。ところが、音楽シーンで着実に成功の階段を上っていくその一方、私生活においてのBonは「いつ見かけても酔ってる」と言われるほどに酒浸りで、AC/DC に加入する直前の1974年にはバイクで飲酒運転をして大事故を起こし、生死の間をさ迷いました(病院で3日間昏睡状態)。AC/DC がAtlanticと契約した際には、囚人のような入れ墨を腕に入れたアルコール中毒のBon を問題視したAtlantic が彼をクビにしようとしたというエピソードも有名です。そんなハチャメチャな人生を送っていたBon Scott。やはりと言うのか、なるべくしてそうなったと言うべきなのか、この曲をヒットさせた翌年の1980年、滞在先のイギリスのロンドンで、路上駐車されていた車の中で死体となって発見されました。享年33歳。警察の検視結果による死因は、急性アルコール中毒だったそうです。その死因を麻薬の過剰摂取とする説などもあり、未だに彼の死の真相についての論議が続いていますが、もう随分と昔に亡くなった方なのだからそっとしておいてあげればいいのではと思うのは僕だけでしょうか?(涙)。
歌詞の解説に入る前になぜBon の人生を少し詳しく紹介したのかと言いますと、Highway to Hel という曲の歌詞はBon の魂の叫びそのものであり、彼は自らの運命を既に予感していたのではないかと感じさせるからで「今という瞬間瞬間が楽しければそれでいい」的なBon Scott の生き様を念頭に置いて、先ずは曲を聴いてみてください。
Livin’ easy, lovin’ free
Season ticket on a one-way ride
Askin’ nothin’, leave me be
Takin’ everything in my stride
Don’t need reason, don’t need rhyme
Ain’t nothin’ I’d rather do
Goin’ down, party time
My friends are gonna be there too, yeah
気楽に生きて、自由を愛する
片道だけの定期券さ
俺には何も求めず、俺のことはほっておいてくれ
俺はどんな困難だって乗り越えるさ
理由も脚韻もいらねえんだ
やりたいことはむしろねえ
あそこへ行ってパーティーを楽しむだけだ
俺のダチどもも来てるだろうしな、ああそうさ
I’m on the highway to Hell
On the highway to Hell
Highway to Hell
I’m on the highway to Hell
俺がいるのは地獄へのハイウェイだ
地獄へのハイウェイにいるんだ
地獄へのハイウェイだ
俺がいるのは地獄へのハイウェイなんだ
No stop signs, speed limit
Nobody’s gonna slow me down
Like a wheel, gonna spin it
Nobody’s gonna mess me around
Hey, Satan, payin’ my dues
Playin’ in a rockin’ band
Hey, mama, look at me
I’m on the way to the promised land, wow
停止標識も無けりゃ、速度制限も無いぜ
誰も俺を減速なんてさせられねえ
車輪みたいにブンブンと回してやるぜ
誰にも邪魔させやしねえさ
なあ、サタン、俺は報いを受けてるよ
ロックバンドで演奏しながらさ
なあ、ママ、俺を見てくれ
俺は約束の地へ向かう途中なのさ、すげえだろ
I’m on the highway to Hell
Highway to Hell
I’m on the highway to Hell
Highway to Hell
俺がいるのは地獄へのハイウェイだ
地獄へのハイウェイにいるんだ
地獄へのハイウェイだ
俺がいるのは地獄へのハイウェイなんだ
Mmm
Don’t stop me
Hey, hey, ooh
うーん
俺を止めるんじゃねえ
なあ、なあ、おぉー
I’m on the highway to Hell
On the highway to Hell
I’m on the highway to Hell
On the highway to Hell
(Highway to Hell) I’m on the highway to Hell
(Highway to Hell) Highway to Hell
(Highway to Hell) I’m on the highway to Hell
(Highway to Hell)
俺がいるのは地獄へのハイウェイだ
地獄へのハイウェイにいるんだ
地獄へのハイウェイだ
俺がいるのは地獄へのハイウェイなんだ
(地獄へのハイウェイだ)俺がいるのは地獄へのハイウェイだ
(地獄へのハイウェイだ)地獄へのハイウェイだ
(地獄へのハイウェイだ)俺がいるのは地獄へのハイウェイだ
(地獄へのハイウェイ)
And I’m goin’ down
All the way, woah!
I’m on the highway to Hell
俺は堕ちて行くんだ
最後までな、すげえだろ!
俺がいるのは地獄へのハイウェイなのさ
Highway to Hell Lyrics as written by Ronald Scott, Angus Young, Malcolm Young
Lyrics © Sony/ATV Tunes LLC, Australian Music Corporation Pty Ltd
【解説】
Highway to Hell(地獄へのハイウェイ)という曲のタイトルからして、かなりのインパクトがありますよねー(笑)。Hell にはthe が付かないという理由が僕には未だに良く分かりませんが(汗)、普通、Heaven、God、Devil やSpring などの季節の名、January などの月の名、Monday などの曜日名といった固有名詞化している単語には定冠詞が付きません(以前に紹介したツェッぺリンのStairway to Heaven もそうでしたね)。「いや、ちょって待って!ネイティブ話者は『What the hell~』とか良く言いますよね?」と仰る方もおられるかもですが、その場合のthe hell は~以降の内容を単に強調する為の用法ですので、What the hell ~の構文のthe hell に意味はないと覚えておいてください。
それでは、歌詞の解説です。どこかしらローリングストーンズの曲を彷彿とさせるイントロに続く第1節、主語がやたらと省略されていて少し分かり辛いかもしれませんが、英語として難解な部分は特に見当たりませんね。2行目のSeason ticket は定期券の意味で、定期券というのは期間内なら何度でも繰り返し使えるものなのに、それを敢えてon a one-way ride、つまりは片道1回分しか使わないと言ってるところが面白いです。「俺の人生にやり直しなんてものは無い」みたいなこの歌詞の主人公の覚悟のようなものを僕は感じました。3行目のleave me be は、leave me alone の言い換え。4行目のTake something in one’s strideは、元々は乗馬の際に「歩幅を崩さずに馬を走らせる」という意味で使われていたフレーズで、直訳すれば「自分の歩幅の中に~を取り入れる」ですが、そこから転じて「~に動じない、~を受け流す、~を難なく切り抜ける」といった意味が生まれました。5行目のDon’t need reason, don’t need rhyme のrhyme はこの曲の歌詞の中で一番難解な部分。日常会話では先ず耳にすることはないrhyme という単語、これはこのコラムでもしばしば言及している「韻を踏む」という行為を指しているのですが(詩や歌詞において、同じ音や韻を踏むこと)、Bon は「詩を作るのに韻を踏む必要なんか無い、自由にやればいいんだ」と言わんばかりに、不必要な型にはまった規則、堅苦しい規則といった意味としてdon’t need rhyme という言葉をつむいだのであろうと僕は理解しました。Livin’ easy, lovin’ free をする為にreason やrhyme は要らないという訳です(その割にこの曲の歌詞は、まあまあ韻を踏んでいるので矛盾してはいるんですけども・汗)。6行目は文頭にThere を補えば分かり易いと思います。7行目のGoin’ down, party time もI’m going down there to enjoy party time と考えれば良いでしょう。ここのgo down は道を下って目的地へ向かっているというイメージ。なぜそこへ向かうのかと言うと、8行目にあるとおり、仲間たちに会えるからです。この主人公は気の置けない仲間たちとパーティーを開いては皆で盛り上がることが生きがいのようですよ。今で言うところの「パリピ」ってやつですね(笑)。
コーラスが続く第2節はHighway to Hell の連呼。この曲の歌詞に出てくるthe highway にはモデルがあって(定冠詞が付いているのでBon 本人の頭の中には特定のhighway が浮かんでいたということです)、オーストラリア西部のパース郊外からBon が少年期を過ごした港町のフリーマントルを結ぶ全長約16キロのCanning Highway がそれだとされています。フリーマントルからCanning Highway を走って行くと、途中、カニング川に架かる橋の袂に1896年創業のRaffles Hotel(創業時の名はCanning Bridge Hotel)という名のホテルがあり、そこの中にあるパブはBon が足繁く通うお気に入りの飲み屋であったそうで、第1節のGoin’ down, party time の歌詞部分はこのパブへと向かう様子を連想させます。加えて、当時のCanning Highway は死亡事故の多い危険な道路としても知られていて、地元住民からこの曲のタイトルと同じ「Highway to Hell」の名で呼ばれていたことからも、この曲に出てくるthe highway to Hell がCanning Highway にインスパイアーされていることに疑念の余地はありません。とは言え、Bon がこの曲の名をHighway to Hell にした最大の理由はその事実によってではなく、第1節で歌っているような自由気ままに生き、勝手し放題をするような人生の最後に待ち受けているのは破滅しかないであろうことを彼自身が認識していたからだと僕は考えます。自らのハチャメチャな生き方の行く末に明るい未来があると彼が自らポジティブに考えていたならば、きっと曲のタイトルをHighway to Heaven にしていた筈だと思いますし、そのことは3節目を見れば明らかですね。
第3節の1行目から4行目は、ハイウェイ上での様子の描写にしか聞こえてきませんが、実のところ、ここには別の意味が含まれていると考えて良いでしょう。言い換えるならば「俺は権威や権力といったものには従わねえ。誰も俺を支配することなんてできねえんだ。俺はそんな風に全力で生きていく。俺の生き方を誰にも邪魔はさせねえぜ」といったところでしょうか(←あくまでも個人の見解です・汗)。mess someone around は「ちょっかいを出す」といった意味で使われますので、Nobody’s gonna mess me around は直訳すれば「私にちょっかいを出す者は誰もいないであろう」ですが、ここでは「邪魔をしない」の方がしっくりきますのでそのように訳しました。5行目で呼びかけている相手が天国にいるAngel ではなく、地獄にいるSatan であるのは前述した理由のとおり。Pay one’s dues は、本来の意味は「会費などの料金を払う、義務を果たす」といったものですが、スラングでは「過ちの報いを受ける」といった意味でも使われます。つまり「好き勝手にやりたい放題で生きている報いとしてロックバンドで演奏してる」ということであり、Bon は自分自身でもそう思っていたのでしょうね。7行目で呼びかけている相手のmama は、大抵の場合、母親の意味で使われますが(と言うか、母親をmama と呼ぶネイティブ話者をあまり見たことはないですけども)、自らの妻や、バー、パブといった飲み屋の女主人に対する呼びかけとして使う人もいます。第1節の流れから考えれば、この歌詞のmama は飲み屋の女主人を指している可能性が高いと思います。8行目のI’m on the way to the promised land, wow もこれまた面白い部分。普通、the promised land(約束の地)と言う言葉が使われる時、それは旧約聖書にも記されてあるとおり天国Heaven のことなんですが、Bonの中でのthe promised land はHell なのであり、最後に付け加えられているwow を見ると、Bon はそのことをむしろ楽しんでいるようにも思えます。
4節目、5節目は特に解説の必要なし。5節目のあとにギターソロが入り(Angus Young のギター演奏、テクニックを駆使するというものではないですけど、とても上手いですし独特の味があります)、6節目は再びhighway to Hell を連呼するコーラス。そしてアウトロへ続きますが、アウトロの1行目のAnd I’m goin’ down は第1節に出てきたGoin’ down, party time のgoin’ down とは違い、ここではまさしく「堕ちる」の意味で使われていると僕は理解しました。だからこそ、この歌詞の主人公は自分の置かれた状態がI’m on the highway to Hell であり、All the way と地獄へ行く覚悟も既に十分できていると言っているのです。実際、Bon はそうなってしまいましたが、この曲の歌詞からも分かるとおり、彼に後悔はなかったと僕は思っています。好き放題をやるだけやって最後にあのような形で人生を終えたことをBon は地獄で逆に誇っているかも知れませんね(←個人の勝手な推測です・汗)。
Bon の死後、AC/DC に請われて加入し、ボーカルのいなくなったAC/DC を見事に復活させたBrian Johnson は、この曲の歌詞について雑誌のインタビューで「It was written about being on the bus on the road where it takes forever to get from Melbourne or Sydney to Perth across the Nullarbor Plain. When the Sun’s setting in the west and you’re driving across it, it is like a fire ball. There is nothing to do, except have a quick one off the wrist or a game of cards, so that’s where Bon came up with the lyrics」と語っていますし(Brian がBon とツアーでオーストラリア国内を回ったという事実は存在しませんが、Brian はAC/DC のメンバーとなる以前よりBon と顔見知りだったようですのでBon からそういった類の話を聞かされたことがあったのかも知れません)、Angus Young も「Our life on the road as a “highway to hell” due to the constant travel, lack of breaks, and the overall taxing nature of our lifestyle」と同じようなことを述べていることから、一般的にこの曲はオーストラリアのような広大な国土を持つ国の人気ロックバンドがツアーの際にしなければならない過酷な移動をhighway to hell に見立てて歌ったロードソングであると理解されることが多いですけども、僕にはやはり「今という瞬間瞬間が楽しければそれでいい。俺は自由に好き勝手にやりたいように生きる。その報いに死んで地獄に堕ちても本望だ」というBon Scott の魂の叫びにしか聞こえません。さてさて、この曲を聴かれた皆さんの耳には果たしてどう聞こえたでしょうか?
【第83回】Shining Star / The Manhattans (1980)
オーストラリア勢の曲の解説が意外にも長くなってしまいましたので(汗)、今回は解説に労を要さず、尚且つご機嫌な一曲をご紹介(決して手抜きではありません・笑)。The Manhattans が1980年にリリースしたバラードの名曲Shining Star です(同年の米国ビルボード社年間チャート22位、翌年にはグラミー賞を受賞)。Shining Star というタイトルが付けられている曲は他にも多く存在しますが(1975年にEarth, Wind & Fire がリリースした同名の曲なんかもそうですね)、それぞれの曲は歌詞も曲調も異なるまったく別個のものです。但し、1999年にMaurício Manieri というブラジル人歌手がブラジルとポルトガルでヒットさせたPensando em Você(あなたを想ってる)はThe Manhattans のこの曲のカバー。Manieri の手によるこのポルトガル語バージョン(歌詞はオリジナル)、英語とは異なる言語でのカバーとしては、珍しく違和感のない良い仕上がりになっているので、興味のある方は一度聴いてみてください。Honey, you are my shining star
Don’t you go away, oh, baby
Wanna be right here where you are
Until my dying day, yeah, baby
愛しの君は輝く星さ
僕のもとから去らないでおくれよ、ベイビー
僕はずっと君の傍にいたいのさ
人生最後の日までね、そうさ、ベイビー
So many have tried
Tried to find a love like yours and mine, mmm, hmm-mmm
Girl, don’t you realize how you hypnotize
Make me love you more each time, yeah, baby
多くの人が挑んできたんだよ
僕と君との愛みたいなものを探そうと挑んできたんだ、あー、そうさ
君はさ、僕を虜にしてることに気付いてないよね
会うたびに僕はもっと君のことが好きになるんだよ、そうさ、ベイビー
Honey, I’ll never leave you lonely
Give my love to you only
To you only, to you only
愛しの君、僕は君をひとりぼっちになんてしないさ
僕の愛は君だけに注がれるのさ
君だけに、君だけにさ
Honey, you are my shining star
Don’t you go away, no, baby
Wanna be right here where you are
Until my dying day, yeah, baby
愛しの君は輝く星さ
僕のもとから去らないでおくれよ、ベイビー
僕はずっと君の傍にいたいのさ
人生最後の日までね、そうさ、ベイビー
Feels so good when we’re lying here
Next to each other lost in love, yeah, baby
Baby, when we touch, love you so much
You’re all I’ve ever dreamed of, yeah, baby
ここで二人寝転がってると最高だよね
二人で添い寝してると恋に夢中になっちまうんだ、そうさ、ベイビー
互いの体が触れ合うだけで、僕は君の虜なんだ
君は僕が恋焦がれてきた人なのさ、そうなんだよ、ベイビー
Honey, I’ll never leave you lonely
Give my love to you only
To you only, to you only
愛しの君、僕は君をひとりぼっちになんてしないさ
僕の愛は君だけに注がれるのさ
君だけに、君だけにさ
*このあとコーラスとアウトロでHoney, you are my shining star やDon’t you go away, girl, no, baby を連呼して曲は終了。
Shining Star Lyrics as written by Leo Graham, Paul Richmond
Lyrics © Songs of Universal, Inc
【解説】
初夏の星空の下、どこかのビーチに聞こえてきそうなメランコリックなイントロの響きとそれに続く一糸乱れぬグループ・コーラス、そしてGerald Alston の澄み切った歌声。素晴らしいとしか言いようがありません。和訳をご覧のとおり、歌詞自体は純粋なラブソングで、種も仕掛けもありませんね(笑)。この曲の歌詞に使われている英語のほとんどは日本の中学校で習うレベルの初歩的なものなんですが、主語の省略が多く若干分かりにくい部分がありますので、ざっと簡単に見て行きましょう。
第1節の1行目はHoney you で区切って、そのあとare my shining star と続けて歌うところがとてもユニーク。2行目のDon’t you go away は、Don’t go away と言うよりもより口語的ですね。3行目の主語はIであり、直訳すれば「私はあなたがまさしくいるこの場所にいたい」ですが、要は「ずっとあなたの傍にいたい」ということ。4行目のmy dying day は、文字どおり「私の死ぬ日」ですが、その表現だとちょっと直接的過ぎるので「人生最後の日」という言葉に置き換えました。第2節の1行目は、So many people のpeople が省略されていると考えればすぐに理解できます。多くの人々が僕と君との間にあるような愛を探し求めてきたと言っているのですが、その言葉の裏に「その中の大部分の人々は結局、探し求めていた愛を見つけられないでいるが、僕たち二人は違う」という気持ちが込められているように僕は感じました。3行目のhypnotize は、この曲の歌詞の中で唯一の難しい単語ですね。hypnotize は「催眠術をかける」という動詞で、そこから「催眠術をかけたように動けなくする」という意味が派生し、転じて「うっとりさせる」という意味でも使われるようになりました。3行目はDon’t you realize how you hypnotize, do you?と文末に補足を入れれば分かり易いでしょう。4行目も主語のYou とeach time I see you のI see you が省略されていると考えればすぐに理解できます。3節目は特に解説が必要な部分なし。強いて言えば2行目のGive my love to you only は、主語のI が省略されていて、要は「君だけを愛します」ということなんですが、それだとto you only のto が生きてこないので「僕の愛は君だけに注がれる」と訳しました。4節目も1節目と同じ歌詞の繰り返しなので解説不要。次に第5節1行目。ここも主語のIt が省略されています。Lying here からだけでは断定できませんが、まあ、普通に考えればベッドの上ですね(←普通かよ?笑)。なので、2行目もWhen we sleep next to each other, I’m lost in love with you のことであると僕は理解しました。4行目のI’ve ever dreamed of は「夢見ていた」ですが、主人公の彼女に対する熱い思いを考慮して「恋焦がれてきた」と敢えて訳しています。と、瞬く間に解説終了!やはり、分かり易い歌詞の曲ってのはいいですね!(笑)
余りにもあっけなく終わってしまいましたので、最後にThe Manhattans のトリビアをひとつご紹介。The Manhattans は1962年に5人の黒人メンバーで結成された合唱グループで、マンハッタンの名を冠しているからにはメンバーがニューヨーカーだったのかと思いきや、全員が対岸のニュージャージー州のジャージーシティー出身、グループが結成されたのもニューヨークシティーではなくジャージーシティーだったそうです(笑)。因みに、結成時のオリジナル・メンバーは既に全員が鬼籍に入られているもののThe Manhattans 自体は解散しておらず、結成より60年以上を経た現在も尚、1970年にグループに加わったGerald Alston が「The Manhattans featuring Gerald Alston」として仲間たちを率いて活動を続けています。
【第84回】All Night Long(All Night) / Lionel Richie (1983)
僕は黒人ミュージシャンの音楽をあまり聴くことがないと当コーナーで以前書いたと思いますが、それは黒人の音楽だから聴かないというのではなく、単に僕の好みの音楽であるロックという分野に黒人のロックバンドが皆無であるから自ずとそうなるというのがその理由です(Bad Brains やLiving Color といった例外が存在してはいますが極少数ですし、Prince やJimi Hendrix は黒人であってもそのバンドメンバーはほとんどが白人)。なぜそんな状況になっているのかと言うと、R&B やロックンロールといった黒人音楽に憧れ続けた白人がそれらをロックに昇華させていく過程でロックが白人に独占されてしまった為で、それはロックを商業主義と結びつけて一儲けをたくらんだ当時の資本家たち(音楽業界の支配層)の大部分が白人であったということが大いに関係していた筈だと僕は考えています。資本家たちはロックを白人にやらせて白人層(当時はまだ米国の人口の主流派で中間所得層の中心)の中に新マーケットを確立したかったのです。そのような状況下では、黒人側にもロックは白人がやる音楽であるという認識が広がり、黒人で敢えてロックをやる者はいなくなりました。黒人社会の中でそんなことをしようものなら「おまえ、なんで白人みたいなことやってんだ?ブラザーならR&B だろ!」みたいな感じで周囲の黒人から軽蔑されるのが落ちだったんですね。とは言え、前回に紹介したThe Manhattans のShining Star 同様、ロックでなくともヒットチャートを賑した黒人アーティストの曲は数知れずで、今日ご紹介する曲もそんな名曲のひとつ、1984年のビルボード社年間チャートで堂々12位にランクインしたLionel Richie のAll Night Long です。Lionel の作詞作曲の才能は彼が黒人合唱グループのCommodores に在籍していた時代(Lionel は当初、サックス奏者として加入)から誰もが認めるものでしたが(音楽の才能だけでなく、そもそもからして育ちも良いし、頭のいい人ですね)グループを離れてソロに転向後もEndless Love(ダイアナ・ロスとデュエットした映画の主題歌)やYou Are、My Love、Truly、All Night Long、Hello、Say You, Say Me と誰もが口ずさむことのできるヒット曲を次々と世に送りだし、その名声を不動のものにしました。ビルボード社の週間ヒットチャートで8曲以上の曲を1位に送り込んだ作詞作曲家は現在までに二人しかいませんが、その一人がこのLionel Richieなのです(因みにもう一人はDiane Warren ですが、彼女は自らは歌いません)。
Well, my friends, the time has come
To raise the roof and have some fun
Throw away the work to be done
Let the music play on
Everybody sing, everybody dance
Lose yourself in wild romance
さあ、友たちよ、今がその時さ
大騒ぎして楽しもうよ
やらなきゃならない仕事なんか放りだして
音楽をかけるのさ
みんなで歌って、みんなで踊る
やばいくらいのロマンスに我を忘れてね
We’re going to party, Karamu, fiesta, forever
Come on and sing along
We’re going to party, Karamu, fiesta, forever
Come on and sing along
僕たち、パーティーに出掛けるところなんだ、カラムさ、フィエスタだよ、永遠のね
さあ、みんなで一緒に歌おうよ
僕たち、パーティーに出掛けるところなんだ、カラムさ、フィエスタだよ、永遠のね
さあ、みんなで一緒に歌おうよ
All night long (All night, all night, all night)
All night long (All night, all night, all night)
All night long (All night, all night, all night)
All night long (All night)
Oh, yeah (All night)
夜通しずっとね(一晩中、一晩中、一晩中)
夜通しずっとね(一晩中、一晩中、一晩中)
夜通しずっとね(一晩中、一晩中、一晩中)
夜通しずっとね(一晩中)
ああ、そうさ(一晩中さ)
People dancing all in the street
See the rhythm all in their feet
Life is good, wild and sweet
Let the music play on
Feel it in your heart and feel it in your soul
Let the music take control
We’re going to party, liming, fiesta, forever
Come on and sing my song
通りでみんな一緒になって踊ってる人々のさ
足元を見てよ、みんなの刻んでるリズムをさ
人生は良きもの、素晴らしくて楽しいものなのさ
音楽をかけるんだ
心で感じ、魂で感じようよ
音楽に身を任せようよ
僕たち、パーティーに出掛けるところなんだ、ライミングさ、フィエスタだよ、永遠のね
さあ、みんなで僕の歌を歌おう
All night long, oh (All night, all night)
All night long, yeah (All night, all night)
All night long, yeah (All night, all night)
All night long, ah (All night, all night)
夜通しずっとね(一晩中、一晩中)
夜通しずっと、そうさ(一晩中、一晩中)
夜通しずっと、そうさ(一晩中、一晩中)
夜通しずっとだよ(一晩中、一晩中)
Yeah, once you get started, you can’t sit down
Come join the fun, it’s a merry-go-round
Everyone’s dancing their troubles away
Come join our party, see how we play
そうさ、一度始めたら、もう座ってはいられない
一緒に楽しもう、メリーゴーランドに乗るみたいにさ
みんなで踊って悩みなんか吹き飛ばすんだよ
僕たちのパーティーに来て、僕たちがどう踊るのか見てみてよ
Tam bo li de say de moi ya
Yeah, Jambo, Jambo
Way to parti, o we goin’
Oh, jambali
Tam bo li de say de moi ya
Yeah, Jambo, Jambo
Oh, yes
We’re gonna have a party, yeah, uh
タンボリデセイデモイヤ
イエー、ジャンボ、ジャンボ
パーティーへ行くところさ
オー、ジャンバリ
タンボリデセイデモイヤ
イエー、ジャンボ、ジャンボ
ああ、そうさ
僕たちはパーティーを開くんだ、そうなのさ
All night long (All night, all night, all night)
All night long, yeah (All night, all night)
All night long (All night, all night, all night)
All night long, oh (All night, all night)
夜通しずっとね(一晩中、一晩中、一晩中)
夜通しずっと、そうさ(一晩中、一晩中)
夜通しずっとね(一晩中、一晩中、一晩中)
夜通しずっとだよ(一晩中、一晩中)
Everyone you meet (All night)
They’re jamming in the street (All night)
All night long (All night)
Yeah, I said (All night)
Everyone you meet (All night)
They’re jamming in the street (All night)
All night long (All night, all night)
Feel good, feel good
会う人みんなが(一晩中)
通りで楽しく踊ってる(一晩中)
夜通しずっとね(一晩中)
そうさ、言ったよね(一晩中)
会う人みんなが(一晩中)
通りで楽しく踊ってるって(一晩中)
夜通しずっとね(一晩中、一晩中)
君も楽しんで、楽しんでよね
*このあとAll night という言葉を狂ったように連呼し続けて曲はフェードアウト。
All Night Long(All Night) Lyrics as written by Lionel Richie
Lyrics © Brenda Richie Publishing and Brockman Music
【解説】
どこか熱帯の国のジャングルに流れてきそうなリズムにDa, da, Woah, oh というLionel Richie ののんびりとした声がクロスオーバーするイントロ、聴いているだけで「これから何か楽しいことが起こりそうだ」となんだかワクワクしてきます(←しないですか?笑)。今「どこか熱帯の国」と書きましたが、Lionel 自身がこの曲の成り立ちに関して「I had a eureka moment when dining with my friend Lloyd Greig, a Jamaican born physician(僕の友人でジャマイカ生まれの医師と食事をしてた時、ビビっときたんだ」と語っていますし、明らかにジャマイカ訛り風の英語を敢えて使ってこの曲を歌っていますから(他の曲でのLionel はこんな発音で歌いません)All Night Longの舞台がカリブ海地域であることに間違いはないですね。
それでは早速、歌詞の解説に進みましょう(この曲の歌詞には短いバージョンや長いバージョンなどいくつかありますが、ここでは4分台版の歌詞を取り上げます)。前回に紹介したShining Star と同様、このAll Night Long という曲の歌詞もシンプルな構文、かつ簡単な英単語しか使われていないのでとても分かり易いもの。ですが、部分的に意味不明な単語が出てくるので、簡単に解説しておきます。第1節、特に難しい表現はありませんが2行目のraise the roof は要注意。直訳すれば「屋根を持ち上げる」ですが、元々は「屋根を持ち上げるくらいに怒る」という意味で使われていた語句で、現在では「喜び(場合によっては怒り)で大騒ぎする」という意味で使用されます。例えばLet’s raise the roof!と言えば「屋根を持ち上げよう!」ではなく「盛り上がろうぜ!」なんですね(笑)。とこんな解説を偉そうに書いていながら、僕の耳には長らくのあいだここのフレーズがLazy women have some foolと聞こえていたのだからお恥ずかしい限り(汗)。第2節、ここでは最初の変な単語が出てきますね。Karamu とfiesta です。この節ではWe’re going to と歌い、そこで一端切ってからparty, Karamu, fiesta と続けて歌うことや、スペイン語を勉強したことがある人ならfiesta がパーティーや祭りを意味することは直ぐに分かりますので、party, Karamu, fiesta は同じ意味の単語なのであろうと想像がつきます。そこでKaramu について調べてみたところ、やはり、スワヒリ語で祭りや宴を意味する単語でした。つまり、party, Karamu, fiestaは、partyを連呼してるだけなんです(笑)。
3節目のコーラスは解説不要。第4節も同じく特に難しい部分はありませんが、7行目に再びliming という聞き慣れない単語が出てきます。これも、第2節と同じ理論で調べてみましたら、トリニダード・ドバコなどのカリブ海地域で「友人と外をぶらついて楽しむ」という意味でした。つまり、楽しく時を過ごすという意味ではparty と同意です。5節目もこれまた解説不要。6節目最後のsee how we play はsee how we dance の方が分かり易いですが、前のtroubles away と韻を踏む為にplay にしてますね。次の第7節はこの曲の歌詞で一番難解、と言うか、明らかに英語ではないです(笑)。この部分の歌詞を聴いてみると、その響きはアフリカの言語風ですし、Jambo がスワヒリ語で「こんにちは」を意味することを知っていれば(実際にはこの一語だけでは挨拶の言葉にならないそうですけども)当然、Tam bo li de say de moi ya もスワヒリ語なのだろうと思う訳ですが、ここの歌詞に関してLionel はこう語っています。
「I had called a friend at the United Nations to get some African phrases. The guy said ”Lionel, there’s 101 African dialects” When I asked for just a few words, he was told it would take a few weeks, but I needed them immediately, so I churned out my own dialect」
つまり、ここの部分にアフリカの言語の響きを使いたかったLionel は(カリブ海地域で暮らす住民の多くは、アフリカから奴隷として連れてこられた人々の子孫)、国連で働く友人に助言を求めたものの「アフリカには101の言語があるんだぞ」とあしらわれ、仕事の締め切りの関係で時間が押していたので自分でそれ風の響きを作ったということなんです。なので、Tam bo li de say de moi ya は彼による造語であり意味は無いというのが真相ということ。Lionel、恐るべしですね(汗&笑)。そして、第8節は再びコーラスに入って同じフレーズ。第9節も特に難しい個所はないですが、2行目に出てくるjam という動詞は「詰まる、ひっかっかる」の意味で使われているのではなく、ここではスラングとしての「音楽を演奏したり、音楽に合わせて踊ったりする」という意味です。
と、解説は以上で終了!最後に何かLionel Richieに関するエピソードを紹介して終わろうと思ったのですが、離婚を2回経験していることやスポーツのテニスが上手いといったこと以外、特にネタは見当たりませんでした。浮いた話や酒、麻薬などの問題行動、金銭関係の汚い話(黒人側からは、金を儲ける為に白人に魂を売ったと非難されることもありますが)などとも無縁な彼は、あの顔に似合わず相当いい人のようですよ(笑)。
【第85回】What’s Going On / Marvin Gaye (1971)
今回も引き続き黒人ミュージシャンで行きましょう。黒人は男と女の恋だの愛だのや、踊れる陽気な曲をを歌っていればそれでいいという雰囲気が支配的であった時代に、社会にはびこる種々の問題に目を向け、それらについての自らの思いを実際歌詞に起こして歌い始めたこの人を紹介しておかない訳にはいけません。その人の名はMarvin Gaye。そして、本日紹介するのは、彼が1971年にリリースしたWhat’s Going On という名曲です。黒人が歌ったプロテスト・ソングとして、古くはビリー・ホリデイのStrange Fruit(作詞したのは彼女ではない)、Marvin と同じ世代でもニーナ・シモンのMississippi Goddam やサム・クックのA Change Is Gonna Come など先に世に出た有名な曲がいくつかあり、Marvin がその分野の先駆者という訳ではないのですが、彼が偉大であるとされているのは、警察の横暴やベトナム戦争への反対、麻薬問題、貧困やそれに伴う子供の養育放棄など、アメリカ社会が抱える問題を歌った様々な曲を「What’s Going On」という同名のタイトルのアルバムに収録し、コンセプト・アルバムとして発売したからです。Marvin が当時所属していたレコード会社「モータウン」の名物社長(元ボクサーで気性が荒い)Berry Gordy は、前述したような「黒人は踊れる陽気な曲を歌っていればいい」という考えを地で行く人でしたから(その方が儲かるので)、今までとは全く異なる路線のそのようなアルバムをMarvin から出したいと言われた際には「気でも狂ったのか?」と激怒し、発売には大反対だったそうです。それでもMarvin は「これを発売できなければモータウンでは二度と歌わない」と社長に強く反発し、モータウンの幹部社員Barney Ales を説得して発売を強行、その初回プレスの販売が好調だったことで最終的には社長が折れました。Hey, hey-hey
Hey, what’s happenin’?
Hey, brother, what’s happenin’?
Boy, this is a groovy party (Hey, how you doin’?)
Man, I can dig it
Yeah, brother, solid, right on
What’s happenin’?
Hey, man, what’s happening?
Woo
Everything is everything
We’re gonna do a get down today, boy, I’ll tell ya
おい、おいおい
おい、何が起こってんだ?
なあ、兄弟、何が起こってんだよ?
イカしたパーティーさ(なあ、あんたの調子は?)
マジ、イカしてんな
ああ、兄弟、最高さ、いいじゃんか
何が起こってんだ?
なあ、何が起こってんだよ?
そうさな
万事良しってとこさ
俺たち、今日は楽しむんだ、教えてやるよ
Mother, mother
There’s too many of you crying
Brother, brother, brother
There’s far too many of you dying
You know we’ve got to find a way
To bring some loving here today, yeah
ねえ、母さんさ
泣いてることが多すぎるよね
ねえ、ねえ、兄弟さ
死にいくことがすごく多すぎるよね
だから僕たち、見つけなくっちゃならないのさ
今日ここへ愛をもたらす方法をさ、そうなのさ
Father, father
We don’t need to escalate
You see, war is not the answer
For only love can conquer hate
You know we’ve got to find a way
To bring some loving here today, oh (Oh)
ねえ、父さんさ
僕たち、事を荒立てる必要なんてないよね
分かってるもの、争いは答えじゃないし
愛だけが憎しみに打ち勝つってことを
だから僕たち、見つけなくっちゃならないのさ
今日ここへ愛をもたらす方法をさ、そうさ(そうさ)
Picket lines and picket signs (Sister)
Don’t punish me with brutality (Sister)
Talk to me, so you can see (Sister)
Oh, what’s going on (What’s going on)
What’s going on (What’s going on)
Yeah, what’s going on (What’s going on)
Oh, what’s going on
抗議の列と抗議のプラカード(シスター)
僕を残忍に罰するのはやめて欲しいんだ(シスター)
僕と話そうよ、そしたら分かってもらえるから(シスター)
そう、何が起こってるのかをね(何が起こってるのかを)
何が起こってるのかをね(何が起こってるのかを)
そうさ、何が起こってるのかをね(何が起こってるのかを)
そう、何が起こってるのかをね
Ah-ah-ah-ah (In the meantime, right on, baby)
Woo (Right on, baby), woo
Ah-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya
Woo (Right on, baby, right on), woo
Ah-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya
Ba-da-bee-doo, bee-bee-bee-doo, bee-bee-bee
Ba-da-bee-bee-bee-doo, bee-bee-bee-ba-ba-do
アァ、アアアァ
ウー(いいじゃんか、ベイビー)、ウー
ア、ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ
ウゥー(いいじゃん、ベイビー、いいじゃん)、ウー
ア、ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ
バダビッドュ、ビッビビドュ、ビッビビ
バダビッビビドュ、ビッビビッババドュ
Mother, mother
Everybody thinks we’re wrong
Oh, but who are they to judge us
Simply ‘cause our hair is long?
Oh, you know we’ve got to find a way
To bring some understanding here today, oh-oh
ねえ、母さん
皆が僕たちのことを間違ってるって考えてるよね
でも、僕らをそう決めつけてる連中って誰?
単に髪を伸ばしてるってだけの理由でね
だから僕たち、見つけなくっちゃならないのさ
今日ここへ愛をもたらす方法をさ、ああ、そうなのさ
Picket lines and picket signs (Brother)
Don’t punish me with brutality (Brother)
Come on, talk to me, so you can see (Brother)
Oh, what’s going on (What’s going on)
Yeah, what’s going on (What’s going on)
Tell me what’s going on (What’s going on)
I’ll tell you what’s going on (What’s going on)
抗議の列と抗議のプラカード(ブラザー)
僕を残忍に罰するのはやめて欲しいんだ(ブラザー)
さあ、僕と話そうよ、そしたら分かってもらえるから(ブラザー)
そう、何が起こってるのかをね(何が起こってるのかを)
何が起こってるのかをね(何が起こってるのかを)
何が起こってるのかを教えてよ(何が起こってるのかを)
ああ、何が起こってるのかを教えてあげるよ(何が起こってるのかを)
*このあと、ポスト・コーラスとアウトロで第4節と同じようなコーラスが続いて曲はフェードアウト。
What’s Going On Lyrics as written by Al Cleveland, Renaldo Benson, Marvin Gaye
Lyrics © Mgiii Music, Nmg Music, Fcg Music, Stone Agate Music Corp, Jobete Music Co Inc.
【解説】
この名曲「What’s Going On」に関しては、作詞作曲に関わった関係者たちの証言によって、どのような経緯で曲が生まれたのかがはっきりしており、彼らが語ったそれらの事実はこの曲の歌詞を理解する上でとても重要なので先に記しておきたいと思います。実はこの曲の歌詞、最初のオリジナルを書いた人物はMarvin Gaye ではなく、1960年代にヒット曲を多く出した黒人歌唱グループ「Four Tops」の一員だったRenaldo Benson でして、Renaldo は1969年5月、ツアーでカリフォルニア州のバークレーに滞在中にベトナム戦争反対を叫ぶ若者たちのデモ拠点を警察が襲撃する現場(後にBloody Thursday と呼ばれるようになった事件)を目の当たりにし、そのことにインスパイアーされて歌詞を書いたと語っています。その後、西海岸での滞在を終えてデトロイトに戻ったRenaldo は早速歌詞を起こして自宅の2階に住んでいたAl Cleveland に作曲を依頼、完成した曲をFour Tops からリリースしようとしましたが、メンバーからプロテスト・ソングは歌わないと拒絶された為に実現できず、最終的にその役を引き受けることになったのがRenaldo の友人であったMarvin Gaye でした。Marvin は歌詞や曲調の一部に手を加えてさらに曲の完成度を高め、曲をリリースすべく録音も済ませましたが、その後に起こった彼とモータウンの社長との間の擦った揉んだは冒頭で述べたとおりです。
ではでは、それらのことを頭に入れて歌詞の意味を探っていきましょう。先ず曲のイントロですが、サックスのゆったりとしたテンポの音色が響き始める前に何か会話が聞こえてきますね。会話の声は明らかに黒人訛りの英語ですけども、これらの声はMarvin 本人の他、この曲の録音時に彼がスタジオに招いていたとされる当時プロ・フットボール選手(NFL)のMel Farr やLem Barney たちのものだとされています。さて、その会話、難解な単語は見当たらないものの、当時の黒人が好んで使ったスラングが多用されていて日本人にはかなり分かりにくいので、説明が必要な個所をピックアップして見ていきましょう。先ず4行目のgroovy、これは現在でも使われることが多い単語ですが「楽しい、素晴らしい、かっこいい」といった意味ですね。5行目のI can dig it は状況によって意味が変わるとても難しい表現。直訳だと「私はそれを掘ります」ですけど、それでは何のことだかまったく分かりましぇーん(笑)。基本的にdig はunderstand やagreeと同じ意味で使われることが多いですが、ここではそれらの意味とはまったく異なる「Wow, That’s awesome!」といった感じでしょうか。6行目のsolid、これもスラングでは「素晴らしい」という意味、right on も日本語なら「いいねー、いいじゃん」みたいな言い回しですね。7行目以降はサックスの音と重なっていて、何を言っているのかほぼ聞き取り不可能。僕も紙に印刷されたLyric を見て「なるほど、そんな風に言ってたのか」とようやく分かった次第です(汗)。10行目のEverything is everything はAll is well とかAll is going according to plan といった意味。最後のdo a get down もちょっと理解が難しいですね。普通、get down という言葉の響きにはネガティブな要素しかないですが、アメリカではスラングとして使う場合、to party, to dance, to have good time といった意味になるようです。日本語でも「すげえなー、ぶっ倒れちまいそう」みたいに言った時にはポジティブな感情を表現しているのと同じようなイメージでしょうか(余談ですが、最後の2行のほとんど聞こえないこの声の主はMarvinの友人のElgie Stover だとされています)。11行目のI’ll tell ya のya はyou のことで、ここでは省略されていますけども、このあとにwhat’s going onと続くと考えて間違いありません。この曲のタイトルを見て「どうしてクエスチョン・マークが文尾に付いていないのかな?」と思った方はおられませんか?(そう思った方はスルどいですよ!)その答えがこの最後のI’ll tell ya にあるのです。つまり、この曲は「What’s going on?何かあったの?」と尋ねているのではなく「I’ll tell you what’s going on 何が起こっているのか教えてあげる」が本筋だということなんですね。このイントロの会話部分、どういう意図で入れられたのかは分かりませんが、何かの事件現場に野次馬たちが集まってきて傍観してるような雰囲気が出ていて僕は好きです。
おっと、イントロの会話の解説が思いのほか長引いてしまいましたので、歌詞本文の解説は巻きでいきましょう(汗)。第1節は会話部分とは打って変わって分かり易い英語で、英語に関しての説明が必要な部分は無さそうですが、歌詞全体の意味に関しては少し解説しておかなければなりません。皆さんはこの第1節を聴いてどう受け止められましたか?先程に話したこの曲が出来た経緯を思い出した方ならピンときたのではないでしょうか?そうなんです、第1節はベトナムの戦場へ送られた若者たちが次々に戦死し、その度に母親たちが涙しているという当時のアメリカ社会の描写なんです。5行目のwe’ve got to find a way は「そんなことに何の意味があるんだ?早く終わらせないと」と言っているのと同じであり、反戦の意思を明確にしてますね(残念ながらこの曲がリリースされてから半世紀以上が経った今もパレスチナやミャンマー、ロシア、ウクライナなど世界各地で未だ同じことが繰り返されていますが…)。実際、この歌詞を書いたRenaldo Bensonは、バークレイでBloody Thursdayを目撃したあと「What is happening here? Why are they sending kids so far away from their families overseas? Why are they attacking their own children in the streets?」と自問したと語っていますし、Marvin 自身もベトナムで従軍して帰国した弟のFrankie Gaye から戦場の悲惨さを聞いて衝撃を受け、反戦意識に目覚めたと話しています。
2節目も英語として難しい部分はないですね。ここの歌詞に関しては、反戦デモをする市民側、それを力で抑えようとする権力者側の双方に自制を促しているように僕には聞こえました。第2節では呼びかける相手が母親から父親に変わっていますが、これはMarvin が、教会の牧師であるにも拘らず家庭内では暴力的であった父親に「これって間違ってないよね?」と問いかけたかったのではないかという気がします(3行目と5行目のYou は一見、総称人称のYou に思えますが、Marvin の中でのこのYou は自分の父親だったのではないでしょうか)。第3節も英語として難しい部分は無し。1行目のPicket は、労働組合がストライキをする際、スト破りが出ないように配置した見張り役のことを元々は意味していましたが、ここでは「デモ参加者」の意味で使われていて、2行目のbrutality は、反戦デモを暴力的に抑えるという権力者側のそのやり方を指しています。つまり、この節の歌詞は反戦デモの描写ですね。第4節のコーラス部分は「ア、ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ、バダビッドュ、ビッビビドュ、ビッビビ」とかが並んでいて、なんじゃこれ状態ですが、日本語表記にするとこういう風にしか書きようがないのでどうかお許しを(笑)。5節目も同じく反戦デモの描写で、Renaldo Benson がバークレイで見たまんまという感じです(西海岸での反戦デモの中心は長髪のヒッピーでしたので)。この節の主旨は、長髪は駄目だと決めつけている連中が、反戦デモも駄目だと同じように決めつけているが、間違っているのは、そんな風に決めつける連中の方ではないのかということですね。第6節は3節目の歌詞の繰り返しですが、最後の2行が違っています。イントロの会話の最後の部分はほぼ聞こえませんので、大抵の人はここの部分を聴いて、タイトルのWhat’s Going On のwhat が疑問詞ではなく接続詞としてのそれであることに気付くのではないでしょうか。このように、What’s Going On というこの曲は「今この国でどんな問題が起こっているのか(自分が目にしたことを)教えてあげるから、一緒に解決していこうよ」という歌詞であり、一般的には反戦ソングやプロテスト・ソングとして受け止められがちですが、僕には反戦やプロテストという何か怒りを帯びたものではなく、平和(愛)を真摯に求める静かな祈りのように聞こえました(←あくまでも個人の感性に基づいた感想です)。
さて、今回はいつものような笑えるエピソードではなく、この才能に溢れたアーティストMarvin Gayeを襲った悲劇を紹介して締め括りとしましょう。1984年4月1日、両親の家を訪れていたMarvin は、保険証書を紛失した母親をしつこく非難する父親と口論になり、長々と言い合いを続けた末にMarvin が父親を足で蹴ったことで、そのことに激昂した父親がスミス&ウエッソン社製の38口径回転式拳銃(一説によれば、その拳銃はMarvin が父親にプレゼントしたものらしいです)を持ち出しMarvin に発砲、Marvinは胸など数カ所を撃たれて帰らぬ人となりました(ほぼ即死状態)。この父親は前述のとおりキリスト教の牧師で、教徒に対する説教は抜群に上手かったものの家庭内では暴力的で、Marvin が幼少の頃から家の中でも拳銃をふりかざすようなこともしばしばだったようです(←真偽は不明)。そんな家庭環境の中、牧師としての父親は尊敬できるが、家庭での父に対しては嫌悪しか感じないし、何よりも自分は父から愛されていないという複雑な思いを抱えて育ったMarvin はいつしか自殺願望を持つに至り、20代の頃には拳銃で自殺を図ろうとしてその際にモータウンの社長Berry Gordyの父親にすんでのところで阻止されたということもあったそう。そんなこともあってか、この父親による息子の射殺事件も限りなく自殺に近かいものだったのではないかという説が存在し、僕も以下のような理由からその可能性は捨てきれないという気がしています(←あくまでも個人の推測)。
① 父親を怒らせたら、彼がどのような行動を取る可能性があるのかMarvin には経験値から分かっていたであろうし、その上で、父親が彼に銃口を向けた時、彼は父親が拳銃の引き金を引くようにわざと何か激しい言葉を吐いたのではないか。その理由は、父親を息子殺しを犯した「永遠の罪人」にしたかったから。
② 翌日の4月2日はMarvin の誕生日であり、死ぬことになった日がその前日であったことも父親への当て 付け、もしくは何らかのメッセージではなかったのか。
息子に向けて拳銃を発砲するような人間がそもそも牧師なんてよくできていたものだと思いますけども、そんなこの父親、事件後、1級殺人で逮捕されたものの最終的には判事が司法取引を認め、結局、執行猶予付きの判決になったおかげで刑務所暮らしをすることはなく、事件から14年後の1998年に他界しました。彼が死の間際まで自分が犯した永遠の罪に苛まれ続けていたのかどうかは神のみぞ知るです。
【第86回】What’s Love Got to Do with It / Tina Turner (1984)
3回連続でアメリカの黒人男性ミュージシャンの曲をお届けしましたが、もう1曲、今度は黒人女性歌手の大ヒット曲を紹介しておきましょう。1984年の米国ビルボード社年間チャートで堂々の第2位に輝いたTina Turner のWhat’s Love Got to Do with It です(因みに1984年は、年間チャートのトップ10のうち半数が黒人ミュージシャンという黒人勢大活躍の年でした)。1956年にデビューし、女性ロックンローラーとして活躍した彼女、1970年代半ば以降はヒット曲に恵まれず、What’s Love Got to Do with Itをリリースした時は44歳というおばちゃんになっていたものの、この曲が大ヒットしたことで翌年にはグラミー賞も受賞し、見事なカムバックを果たしました(但し、ロックンローラーではなく、それまでとは打って変わったポップス歌手としてでしたけども・汗)。米国テネシー州のど田舎Brownsville で生まれたTina の本名はAnna Mae Bullock。Tina Turner という名は、彼女の元夫であるIke Turner が彼女に付けたステージネームです。ロックンロールの先駆者でもあったIke はTina が音楽の世界に飛び込む切っ掛けを作った人物でもあり、後にTina と結婚して1960年に夫婦デュオの「Ike & Tina Turner」を結成、数多くのヒット曲を世に送り出しました。しかし、重度のコカイン中毒だった彼はTinaに対して家庭内暴力を繰り返し、その生活に耐えきれなくなったTinaは1978年、彼から逃げるように裁判所に離婚を申請しています。そんな経緯があるからか、Tina とIke の二人の関係とこの曲を結びつけて考えるネイティブ話者も少なからずいるのですが、果たして真実は如何に?ということで、先ずは歌詞をどうぞ。You must understand, oh, the touch of your hand
Makes my pulse react
That it’s only the thrill of boy meetin’ girl
Opposites attract
分かってくれなくちゃね、あー、あんたの手の感触がね
あたしの鼓動を脈を波打たせるのよ
男女が出会う時のどきどき感だけがそうさせるね
男と女って惹き合うものなのよ
It’s physical
Only logical
You must try to ignore that it means more than that
Oh
肉体的に
だけど感情抜きに
そのことにそれ以上の意味があるだなんて考えたら駄目よ
あー
What’s love got to do, got to do with it?
What’s love but a second-hand emotion?
What’s love got to do, got to do with it?
Who needs a heart when a heart can be broken?
男と女の関係に愛なんて関係あるの?
愛って何なの、受け売りの感情?
男と女の関係に愛なんて関係あるの?
心ってのは傷付くことがあるんだから心なんて誰が必要?
It may seem to you that I’m acting confused
When you’re close to me
If I tend to look dazed, I’ve read it someplace
I’ve got cause to be
あんたにはあたしに迷いがあるように思えるかもね
あんたがあたしの傍にいる時
あたしに迷いがあるように見えがちなら、どこかで読んだことがあるわ
そうなる理由があたしにあるって
There’s a name for it
There’s a phrase that fits
But whatever the reason, you do it for me
Oh
それには名前があるの
ぴったりの言葉があるの
理由なんてなんであれ、あんたはあたしの為にそれをしてくれる
あー
What’s love got to do, got to do with it?
What’s love but a second-hand emotion?
What’s love got to do, got to do with it?
Who needs a heart when a heart can be broken?
Ooh
男と女の関係に愛なんて関係あるの?
愛って何なの、受け売りの感情?
男と女の関係に愛なんて関係あるの?
心ってのは傷付くことがあるんだから心なんて誰が必要?
あぁー
I’ve been takin’ on a new direction
But I have to say
I’ve been thinking about my own protection
It scares me to feel this way
Oh
あたしは新たな世界へと足を踏み出してきた
でも言っとかなくっちゃ
それは自分自身を守ることでもあったとね
だってこんな風に感じるのが怖いんだもの
あー
What’s love got to do, got to do with it?
What’s love but a second-hand emotion?
What’s love got to do, got to do with it?
Who needs a heart when a heart can be broken?
(What’s love?) Got to do, got to do with it
What’s love but a sweet old-fashioned notion?
What’s love got to do, got to do with it?
Who needs a heart when a heart can be broken?
男と女の関係に愛なんて関係あるの?
愛って何なの、受け売りの感情?
男と女の関係に愛なんて関係あるの?
心ってのは傷付くことがあるんだから心なんて誰が必要?
(愛って何?)男と女の関係にに愛なんて関係あるの?
愛って何なの、昔ながらの甘美な感情?
男と女の関係に愛なんて関係あるの?
心は傷付くことがあるんだから心なんて誰が必要?
*このあとアウトロで第3節と同じコーラスを繰り返し、最後はWhat’s love? But a second-hand emotion のフレーズでフェードアウトします。
What’s Love Got to Do with It Lyrics as written by Terry Britten, Graham Lyle
Lyrics © WB Music Corp. and Kobalt Music Pub America Inc. Goodsingle Limited
【解説】
うーん、聞き流すのではなく、あらためて歌詞に真剣に耳を傾けてみましたが、それほど難しい英単語は使用されていないものの、この曲、歌詞の意味を理解して和訳するのはそう簡単な仕事ではなさそうです(汗)。なので、今回は気合を入れてこの歌詞に向き合うとしましょう。先ず、冒頭で触れたTina とIkeの二人の関係がこの曲の下地になっているのかという問いの答えですが、答えはNO!確かにこの曲の歌詞は二人の関係を暗示しているように聞こえなくもないですが、What’s Love Got to Do with It?の歌詞はTinaが作詞したのではなく、曲がヒットする10年前の1974年にイギリス人ミュージシャンのTerry BrittenとGraham Lyle によって書かれたもので、その頃のTerry とGraham はTina とIke との交流も皆無でしたから、この曲の歌詞とTina とIke の二人はまったく関係ないと断言できます。それに加え、歌詞を書いたTerry は、自分の妻に「I love you」と言った時、その妻が「What’s love got to do with it?」と訊き返してきたことにインスパイアーされてこの歌詞を書いたと自身で語っていますしね。では、その歌詞を見ていきましょう。
先ず第1節、ここには難解な部分は見当たりません。3行目ですが、前述のとおりこの歌詞を書いたのは男性であり男性の目線から描かれたものなので、女性であるTina がthe thrill of boy meetin’ girl と歌うと若干の違和感を感じます。4行目のOpposites attract は「反対同士は惹かれる」つまり「好みや考え方がまったく正反対であったりする人同士は惹かれあう」という意味の諺で、この歌詞でのOpposites は文脈からして男女を指しているのは明らかです。つまり、第1節で描写されているのは、互いに惹かれ合っている男女二人ですね。二人は恋人同士であるということですね。次に2節目ですが、ここで歌詞がいきなり難解となります。なぜなら、この節に出てくるit が何を指しているのかが漠然としていて、それを特定しないと意味がまったく分からないからです。先ずIt’s physical, Only logical のIt ですが、このフレーズの前にOpposites attract という文がありますから、僕は「男女が惹き合うこと」と考えます。要するに、男女が惹き合うという行為は、肉体的なものであっても、感情は必要ない(ここでのlogical は「合理的」つまり、It のことを合理的に考える、いちいち感情など差し挟まない、という意味で使われているのでしょう)ということです。となると、もうこのIt が何を指しているのか皆さん、お分かりですね!そうなんです、sex しかないんです(前にも書きましたが、イギリス人って歌詞にsex をからめるのが好きなんですよ・笑)。そう考えると、3行目のYou must try to ignore that it means more than that も何を言わんとしてるのかすぐ理解できますね。男女がsex をする時、そこに愛があるだのなんだのと考えてはいけない(そんなことは無視しないといけない)という訳です。
第3節も同じようにWhat’s love got to do, got to do with it?のit が何を指しているのかを考えれば、理解が進みますね。What have (A) got to do with (B)?の構文は「A とB に何の関係があるのか?」という意味で、ここで使われているit もsex です!が、それでは露骨ですし「それ」という言葉を記すだけでは意味不明な文章にしかならないので、和訳では「男と女の関係」という言葉に置き換えました(汗)。2行目のa second-hand emotion という表現も難解ですが、僕は「sex=love といったような根拠のない感情、思い込み」であると理解しました。4行目のWho needs a heart when a heart can be broken?も興味深いです。この節のフレーズがすべて疑問形であることや、この4行目の意味から考えると、この歌詞の主人公は自分が傷付きたくないが故に恋人(もしくは同じような存在)と愛を介在させないsex を実践してはいるものの、ほんとにそれでいいのかと自問しているようにも思えます。4節目はさらに訳ワカメですね(←久し振りに「死語」登場・笑)。この節でひとつだけ確かなことは、confused やdazed といった言葉が使われていることから、歌詞の主人公は何かに対して何らかの衝撃や驚き、恐怖を持っているということで、それが何なのかと考えてみた場合、前の節と同じく、男女の関係において愛を介在させないsex をするということに対する迷いのようなものではないかと僕は理解しました。その流れで、第5節1行目のThere’s a name for it のit と3行目のyou do it for me のit を「愛を介在させないsex」に置き換えると、But whatever the reason, you do it for me は、主人公が迷いを持ってようが持っていまいが、主人公のパートナーは主人公とsex をする(パートナーはそう考えていなくとも、結果的に愛を介在させないsex に付き合っていることになる)となり、話の筋が通るような気がするのです。
第6節は3節目のコーラスと同じフレーズの繰り返し。で、第7節ですが、ここも相当に難解ですね。1行目のI’ve been takin’ on a new direction のa new direction は、愛のある恋愛をしてそれが嘗て破局した際に辛い思いをした主人公が、今後はsex しても愛は介在させないと誓ったのだと僕は理解しました。だから、3行目でI’ve been thinking about my own protection と言っているのです。そして4行目のIt scares me to feel this way。これは「そんな風にしてきたけども、今また再び、パートナーを心でも愛してしまうかもという自分が出てきた。そのことが怖い。なぜなら、また破局して辛い思いをするかも知れないから」ということではないかというのが僕の結論です(←あくまでも僕個人の感性による結論)。このあと、再び第3節のコーラスに戻って自問を繰り返し、アウトロに入ってフェードアウト。最後のフレーズがWhat’s love? But a second-hand emotion であるのが、なんか意味ありげです。と、以上、What’s love got to do, got to do with it?の解説でした!歌詞は難解でしたが、歌詞自体は短いので、解説がそれほど長くならなかったので良かったです(笑)。
歌詞はともあれ、シンセサウンドをバックにTina の力強い声が響き渡るこの曲、まさしく「これぞポップ」という感じで悪くないですし、大ヒットしたのも納得ですが、Tina 自身はこの曲を歌わないかというオファーを受けた際、ロックンローラーとしてのプライドからか「こんなポップな曲は歌いたくない」と当初は拒絶していたそう。でも、結局は歌うことにしたので大正解でしたね。そんな波乱万丈の人生を送ったTina姉さん、2023年に移住先のスイスで永眠されました(享年83歳)。
【第87回】The One I Love / R.E.M (1987)
暫く黒人ミュージシャンの曲が続いたので、そろそろ白人ロックへ戻るとしましょう。今日紹介するのは、当時、オルターナティブ・ロックとして一世風靡したR.E.M のThe One I Love という曲です。と、書いておきながら、僕自身、本コーナーを書き始める前は「alternative rock?何ですかそれ?」状態で、そんな用語を聞いたこともなかったし興味もなかったんですが、今回、調べてみましたところ、オルターナティブ・ロックという分野の定義は「大手レコード会社に支配された商業主義的ロックに迎合しない反骨の精神を持つ自主製作的なロック」ということらしいです。その割にはこのR.E.M というバンド、人気が上昇すると共に、結局最後は大手レコード会社から曲をリリースしてますから「なんだかなぁー」って感じですけどね(鼻で笑)。では、なぜそんなクサいバンドの曲を紹介しておきたく思ったのかと言うと、このThe One I Love という曲にはひとつだけ尊敬すべきすごい点があるから。その歌詞がこれです!This one goes out to the one I love
This one goes out to the one I’ve left behind
A simple prop to occupy my time
This one goes out to the one I love
この炎は消えるものなんだ、恋人であってもね
この炎が消えてあの娘を見捨てたのと同じさ
時間潰しの単なるお相手ってやつかな
この炎は消えるものなんだ、恋人であってもね
Fire
Fire
そう、炎さ
炎なのさ
This one goes out to the one I love
This one goes out to the one I’ve left behind
A simple prop to occupy my time
This one goes out to the one I love
この炎は消えるものなんだ、恋人であってもね
この炎が消えてあの娘を見捨てたのと同じさ
時間潰しの単なるお相手ってやつかな
この炎は消えるものなんだ、恋人であってもね
Fire (She’s comin’ down on her own, now)
Fire (She’s comin’ down on her own)
そう、炎さ(彼女は自責の念に駆られてるよ、今頃は)
炎なのさ(彼女は自責の念に駆られてるよ)
This one goes out to the one I love
This one goes out to the one I’ve left behind
Another prop has occupied my time
This one goes out to the one I love
この炎は消えるものなんだ、恋人であってもね
この炎が消えてあの娘を見捨てたのと同じさ
それに、新たなお相手のことでもう手が一杯
この炎は消えるものなんだよ、恋人であってもね
Fire (She’s comin’ down on her own, now)
Fire (She’s comin’ down on her own)
Fire (She’s comin’ down on her own, now)
Fire (She’s comin’ down on her own)
そう、炎さ(彼女は自責の念に駆られてるよ、今頃は)
炎なのさ(彼女は自責の念に駆られてるよ)
そう、炎さ(彼女は自責の念に駆られてるよ、今頃は)
炎なのさ(彼女は自責の念に駆られてるよ)
The One I Love Lyrics as written by Michael Stipe, Peter Buck, Mike Mills, William Berry
Lyrics © Warner-Tamerlane Pub Corp.
【解説】
The One I Love、如何でしたか?たったこれだけの歌詞で見事にロックしてますよね!実質、歌っているのは4行の歌詞とFire というコーラスの組み合わせのみ。それでいて、単調さをまったく感じさせないのだから尊敬に値すると言わざるを得ません。こんな短い歌詞なんだから解説なんて必要ないんじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもですが、R.E.Mのボーカル担当でありこの曲の作詞を担当したMichael StipeはThe One I Love でメジャーになる前から「歌詞が意味不明、何を歌ってるのか良く分からない」という評判がつきまとっていた人なので、歌詞は短くとも、その内容を理解するとなると一筋縄ではいかなさそうですよ…(汗)。
では早速、その問題の歌詞の解説に入りましょう。ネイティブ話者がこのThe One I Love を聴くと、多くの人はラブソングだと受け止めるようなのですが、この曲の歌詞を書いたMichael Stipe は2016年にThe One I Love について雑誌のインタビューを受けた際、こう答えています。
「I didn’t like the song to begin with. I felt it was too brutal. I thought the sentiment was too difficult to put out into the world. But people misunderstood it, so it was fine. Now it’s a love song, so that’s fine ・僕は最初からこの曲が好きじゃなかったね。残酷過ぎるって感じてたんだ。こんな感情(歌詞)を世に出すってのは難し過ぎるってね。ところが(曲を聴いた)人々はそう受け止めなかったから良かったよ。だから、この曲は今はラブソングさ。それでいいんだ」
つまり、この曲の歌詞はラブソングではなく、その内容はMichael がこの曲を世に送り出すことを躊躇していたほどに残酷なものであるということなんです。なので、このことを頭に叩き込んで歌詞を見ていきましょう。先ず第1節の1行目。いきなりThis one goes out to the one I love という曖昧というか漠然とした表現で歌が始まりますが、This one のone は何かのモノか人を指しており(This one という表現をネイティブ話者が使う場合、通常は手元にあるモノ、またはすぐに指し示せるモノ)、the one のone は人を指していることは分かります。なので、恐らく多くの人はThis one をThis guy と考えてしまい、この1行目の意味を「この人は愛する人のもとへ出掛ける」と受け止めてラブソングと誤認してしまうのでしょう(曲のタイトルも「The One I Love ・愛する人」ですしね)。そこで、先程引用したMichael Stipe の証言を参考にこのThis one が何なのかと考えたてみたところ、go out という表現との関連性からしても、僕には2節目に出てくるFire 以外、頭に浮かんでくるものはありませんでした。英文法に詳しい方なら「This one という表現を使う場合、このone に当てはまる単語は可算名詞でなければならないのでは?」と指摘されるでしょうが、確かに「火、炎」といった意味でのFire は不可算名詞であり、このThis one のone に使うことはできないですけども「火災、火力、かがり火」といった意味で使う場合は可算名詞扱いになるから可能なのです(まあ、そうでなくとも、ミュージシャンは往々にして文法を無視しますが・笑)。この考えをベースに1行目のThis one goes out to the one I love を直訳すると「この火は愛する人に対しても消える」となりますが、ここのI love は「愛する」というよりは、男女が恋人同士になっているという単なる状態と理解して良さそうです。そして、ここから「この火がいったい何であるのか?」と考えた僕は、これが「人の心を弄ぶ(特に男女間の)火遊びの火」つまり「心を通わせない遊びの恋」という意味で使われているのではないかという結論に達しました。なので、1、2行目をこのように訳しています。これなら、3行目のA simple prop to occupy my time というフレーズとも整合性があると思いませんか?prop は映画や芝居で使う小道具の意味の他にも「人を支える存在、支えとなる人」といった意味もありますから、前述のとおり、炎が「心を通わせない遊びの恋」である以上、その相手は当然、単なる時間潰しの為のそれでしかないという訳です。
第2節のコーラスはFire という言葉を2回繰り返すだけ。やはりこの曲、恐るべしですね(笑)。この節で「ファイアァァー、ハァァハァーハァー」と歌うMichael Stipe の声は、どこか憂いを帯びていると言うか、諦めと言うか、迷いと言うか、僕には「それが僕の宿命なんだぁー」みたいに叫んでいるかのように聞こえます。恐らく、この歌手の主人公は、自分が人の心を弄ぶ最低の人間だと分かっていつつも、自分の思いのままに相手を動かすという快感が忘れられずにそこから抜け出すことができないのでしょうね。典型的なナルシストです(←あくまでも個人の勝手な推測)。3節目は第1節とまったく同じ歌詞。そのあと、4節目では再びFire のコーラスが入りますが、ここでは、Fire のあとに別人のぼそぼそとした声で何か長いフレーズが続いています。何を言っているのか良く聞き取れなかったので、何度か繰り返して聴いてみると、徐々にShe’s comin’ down on her own と言っていることが分かってきました。ここで使われているこのcome down は、上から下へ降りるといった意味ではなく、何か自分のことを自分自身で責め立てているといった状態のイメージ。なので、僕は「最低な男に弄ばれた彼女は今頃は後悔の念に苛まれてるだろう」といった感じに受け止めました。因みにShe’s comin’ down on her own とハモっている声の主はベース担当のMike Mills のようです。そして、第5節は再び第1節の歌詞を繰り返しますが、3行目だけAnother prop has occupied my time に変わっているのがミソ。歌詞の主人公は、付き合っていた恋人を捨てて次の彼女に手を出しているようです。やはりと言うか、この歌詞の主人公、相当ヤバイ奴ですね(笑)。ふーぅ、実質4行の歌詞だというのに、こんなに長くなってしまいましたが(汗)The One I Love の解説はこれにて終了!
では、今回もいつものようにトリビア(即ち、どうでもいい話)をひとつ紹介して締めにしましょう。この曲をリリースしたR.E.M は、1980年に米国のジョージア州アセンズで4人の大学生が結成したロックバンドで、バンドの名は「レム」ではなく「アール・イー・エム」と読みます。この風変わりなバンド名はMichael Stipe が辞書の中から無作為に選んだものだそうで、実際に辞書をペラペラとめくってみるとremark の略としてのREM やrare-earth metal(希土類金属)、roentgen equivalent man(放射線量の単位)、rapid eye movement(所謂REM 睡眠のレム)といった用語のアクロニムとしてのREM、人の名前としてのREM などが出てきますが、辞書の中のどの言葉が元になったのかは明らかにされていません。以上、まさにどうでもいい話でした!(笑)。
【第88回】Smells Like Teen Spirit / Nirvana (1991)
前の回でオルターナティブ・ロックなる分野の曲を紹介しましたが、そのムーブメントの初期、嵐の如く登場し、パンクとハードロックを融合させたような斬新な音造りを武器に成功の階段を瞬く間に駆け上がったものの、バンドの顔であるフロントマンの自殺という悲劇に見舞われて解散の道を選んだロックバンドがあります。そのバンドの名はNirvana。今日紹介するのは、そんな彼らが1991年にリリースし、その後のアメリカのロック界の音楽性(グランジと名付けられました)を形作った歴史的名曲と位置付けられているSmells Like Teen Spirit です。Nirvana は米国西海岸に面したワシントン州の田舎町アバディーン(シアトルから車で2時間ほどの場所)でボーカル兼ギター担当のKurt Cobain(世界中で1千万枚以上のシングル・レコード販売を記録したこの曲の歌詞を書いた人であり、後に自殺する当人です)とベース担当のKrist Novoselic が中心となって1987年に結成したロックバンド。結成当初からNirvana というバンド名だった訳ではなく、最初の1年ほどの間はSkid Row やPen Cap Chew、Bliss、Ted Ed Fred といった風にバンド名を次々と変えていたそうで、最終的にNirvana の名前に落ち着きました。その理由についてKurt Cobainは「I wanted a name that was kind of beautiful or nice and pretty instead of a mean, raunchy punk name like the Angry Samoans ・『アングリー・サモアンズ』みたいなパンク風の下品な名前じゃなくって、美しいっていうかちょっとイイ感じの名前に俺はしたかったんだ」と語っているのですけども、Nirvana は元々、仏教用語の「涅槃」を意味するサンスクリット語で、涅槃は「一切の悩みや束縛から脱した安楽の境地」のことですから、実のところKurt は「Nirvana」にそういった意味があることを知って選んだのかも知れませんね。斯くしてバンドはNirvana の名で精力的に活動を始めたのですが、彼らが無名な存在であった間は良かったものの、その名が世界中に知れ渡ると、1966年に同じ名前のバンドがイギリスで結成されていてレコードも発売されていたことが発覚。しかもそのバンドは1985年に再結成されていて、後にこの元祖Nirvana がKurt Cobain の新Nirvana を名前の利用差し止めを求めて訴訟を起こすという事態に発展しました(結局、両者は裁判で決着がつく前に和解。和解の条件や内容は公開されていないので詳細は不明なんですが、恐らく新Nirvana が元祖Nirvana にそれ相応の金銭を支払ったのであろうと推察されます)。おっと、いつものように話が横道に逸れてしまいましたので、本題の歌詞の話に戻りましょう。このSmells Like Teen Spirit という曲のタイトル、日本語に直訳すれば「10代の若者の熱情みたいな匂いがする」といった感じになり、なんだか意味深長に聞こえますが、実はこのタイトル、当時、パンクバンドBikini Kill でボーカルを担当していたKathleen Hanna が、Bikini Kill のメンバーの一人Tobi Vail がKurt と付き合っていることを冷やかして、Kurt が暮らすアパートの壁に落書きした「Kurt smells teen spirit」という文言がベースとなっていて、その落書きにあったteen spirit は米国のMennen という会社が当時発売していた香料入りの女性用制汗剤(商品名TEEN Spirit)のことで、落書きの文はその意味で使われていたのです(汗←TEEN Spirit を使え!)要するに「TEEN Spirit を使っているTobi と寝ているKurt からは同じTEEN Spiritの匂いがする」とからかっている訳ですね(笑)。ところが、そうとも知らないKurt はその落書きを見て「何か革命のスローガンのようなものだ」と勘違いしただけでなく、曲のタイトルに使ってしまいました。Kurt 本人は後に「teen spirit がデオドラントの商品名であることを知ったのは、曲のシングルレコードが世に出たあとのことだった」と語っています。当初、彼は曲名をAnthem にしたかったようですが、Bikini Killの持ち歌の中に同名の曲が既にあったので諦めたみたいです。確かにこの曲のMV を見ると「Anthem か、なるほどな」とは思いますが、Smells Like Teen Spirit の方が百倍のパンチ力がありますから、このタイトルにして正
解だったというのは間違いないですね。
さてさて、曲のタイトルだけでもそんなバックグラウンドを持つこの曲、果たして歌詞の方はどんなものになってるんでしょうか?先ずは歌詞をどうぞ。
Load up on guns, bring your friends
It’s fun to lose and to pretend
She’s over-bored and self-assured
Oh no, I know a dirty word
銃に弾を込めて、ダチどもを連れてきなよ
夢中になるのは楽しいし、ごっこをするのも楽しいもんさ
彼女ってめちゃくちゃ退屈してて自信家だよね
あー、駄目だ、罵倒したくなっちまうよ
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ
With the lights out, it’s less dangerous
Here we are now, entertain us
I feel stupid and contagious
Here we are now, entertain us
A mulatto, an albino
A mosquito, my libido, yeah
灯りを消せば、もっと安全さ
俺たちのお出ましなんだから、楽しませてくれよ
俺は自分が馬鹿みたいに思えてその馬鹿さを移しちまいそうさ
俺たちのお出ましなんだから、楽しませてくれよ
ムラート、アルビノ
モスキートに俺のリビドー、あーそうさ
I’m worse at what I do best
And for this gift, I feel blessed
Our little group has always been
And always will until the end
俺がずっと劣っているのは全力を尽くすってこと
この天に与えられた才能に祝福されてる気分さ
俺たちの小さなグループはいつも居たし
最後までずっとそうさ
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ
With the lights out, it’s less dangerous
Here we are now, entertain us
I feel stupid and contagious
Here we are now, entertain us
A mulatto, an albino
A mosquito, my libido, yeah
灯りを消せば、もっと安全さ
俺たちのお出ましなんだから、楽しませてくれよ
俺は自分が馬鹿みたいに思えてその馬鹿さを移しちまいそうさ
俺たちのお出ましなんだから、楽しませてくれよ
ムラート、アルビノ
モスキートに俺のリビドー、あーそうさ
And I forget just why I taste
Oh yeah, I guess it makes me smile
I found it hard, it’s hard to find
Oh well, whatever, never mind
でさ、なんでこんなことすんのか俺は忘れかけてる
あー、そうだった、なんか楽しくさせてくれるからだ
難しいってのは分かったよ、道は険しいってさ
あー、でもさ、どうでもいいんだ、構いやしないさ
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello, how low
Hello, hello, hello
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ、やってくれるなあ
やあ、やあ、やあ
With the lights out, it’s less dangerous
Here we are now, entertain us
I feel stupid and contagious
Here we are now, entertain us
A mulatto, an albino
A mosquito, my libido
灯りを消せば、もっと安全さ
俺たちのお出ましなんだから、楽しませてくれよ
俺は自分が馬鹿みたいに思えてその馬鹿さを移しちまいそうさ
俺たちのお出ましなんだから、楽しませてくれよ
ムラート、アルビノ
モスキートに俺のリビドー、あーそうさ
A denial, a denial
A denial, a denial
A denial, a denial
A denial, a denial
A denial
拒絶さ、拒絶
拒絶さ、拒絶
拒絶さ、拒絶
拒絶さ、拒絶
拒絶なんだ
Smells Like Teen Spirit Lyrics as written by Kurt Cobain, David Grohl, Krist Novoselic
Lyrics © BMG Silver Songs, Murky Slough Music, Dave Grohl dba Mj Twelve Music
【解説】
4つのパワーコードで構成されたギターリフで始まるSmells Like Teen Spirit、イントロを聴いただけで既にもう名曲の予感が漂ってますね。この曲、イントロのコードがそのまま最後まで繰り返されるだけでなく、不気味さというかサイケデリック感の漂う静かな演奏とコーラスでの音の爆発も交互に繰り返されるという印象的な曲作りになっていて極めて斬新ですが、歌詞の方はと言うと、織田裕二さん風に叫ぶならば「キタァァァー!」です。この曲の歌詞はもう最強級の訳ワカメだとしか言いようがありません(汗&涙)。そこで、いつものように歌詞の理解の手助けになりそうな材料を探してみたところ、Kurt Cobain がこの曲に関するインタビューにしばしば応じていることが分かったのですが、この人もStairway to Heaven の歌詞を書いたRobert Plant 同様、毎回発言がころころ変わっているので、あまり参考にならなさそうなんです(涙)。そこで今回は、ネット検索で掘り出した大量の情報の中から絞り込んだ下記の3つの点を参考にして、そこから歌詞の意味を紐解いてみようと思います。
① Kurt Cobain は音楽で最も重要なものは音そのものであると考えるミュージシャンであり、歌詞なんてものはどうでもいいものだとまでは言わないものの、重視することはなかった。
② Kathleen Hanna がKurt が暮らすアパートの壁に「Kurt smells teen spirit」と落書きした頃、Hanna とKurt はしばしばアナーキズムや革命について論議していた。
③ Kurt は雑誌のインタビューでこの曲の歌詞について尋ねられた際「The entire song is made up of contradictory ideas ・曲全体が矛盾した考えで出来てるよね」とか「It’s just making fun of the thought of having a revolution. But it’s a nice thought ・革命をするなんて考えをからかってるんだけど、いい思い付きだったね」と答えていたことがある。
それでは、問題の歌詞を見ていきましょう(汗←TEEN Spirit を使え!←まだ言うか!)。先ず1節目、難解な単語は見当たりませんが、歌詞の内容は訳ワカメです(笑)。2行目のlose はoneself in を補って考えました。子供は「It’s fun to pretend」とよく言ったりしますが、その時のpretend は、お医者さんごっことか何かになったつもりで遊ぶことを意味する「ごっこ」の意味になります。3行目は唐突にShe が出てきて?マークが頭の中で旋回。このShe はKurt の恋人で、彼がこの歌詞を書いた時には破局して別れていたTobi Vail のことだと考える人が多いようなのですが、僕は前述の②の理由からKathleen Hanna のことをイメージしていたのではないかと推測します。そう考えれば、4行目とも整合性が出てきませんか?4行目は直訳すれば「汚い言葉を知っている」ですが(a dirty word というのは、fuck などの所謂four- letter wordと同じ意味です)、僕には「そんな言葉を使うくらいに罵ってやるぞ」と言ってるように聞こえました。すると、同じく前述の③のKurt の発言も納得できます。「革命(世の中を変える)なんてことができると考えてるおまえたちはバカだ」という訳です。恐らく、Kathleen Hanna はKurt の前でアナーキズムや革命について熱く語っていたのではないでしょうか。つまり、1、2行目はHanna の目線からの歌詞、3、4行目はそれに対するKurt の反応と僕は理解しました。なので、第1節は基本的にKurt がIt’s just making fun of the thought of having a revolution と語っていた線に沿った内容であると思います。
と、ここまではいいのですが、次の第2節のプリ・コーラスがなぜにHello の連呼なのかが良く分かりません。文尾をhow low にしているのはhello の音の響きに合わせた言葉遊びで、how low 自体に特に意味はないと考えて良いのではないかと思います。因みに、自分に対して何か不公平な扱いを受けたり不公平なことが起こったりした時によく口にする言葉が「How low!」。そのあとの3節目はもう完全にお手上げですね。1行目は、要するに「灯りを消した真っ暗な状態であれば危険も減る」という意味になりますが、真っ暗になれば前後左右、足元も見えないし普通は危険が増しますよね。このあたりがKurt が③で言っていたところのThe entire song is made up of contradictory ideas なのでしょう。暗闇から「頭を暗闇にする」を連想して「何も考えないでいるほうが安全だ」と言いたいのかなとも考えましたが、たとえその理解が正しかったとしても2行目の歌詞にまったくつながりません。2行目のHere we are now, entertain us は、Kurtがパーティーに現れた際に良く口にしていた台詞らしいです。3行目のcontagious は「病気が伝染する」という意味で主に使われる形容詞ですが、人の感情や態度にも使えますので、ここではstupidが前にあるのでmy stupidity is contagious ということですね。5行目以降の聞き慣れない単語の羅列は、これで何を表現しようとしているのかまったくもって理解不能。mulatto は中南米がスペインの植民地であった時代、スペイン人が造語した人種(血統)を現す言葉からの借用語で、現代のアメリカではnigger などと同じく差別用語です(スペイン人は白人と黒人との間に生まれた子供ならmulato(a)、白人とインディオとの間に生まれた子供ならmestizo(a)、黒人とインディオとの間に生まれた子供ならsambo という風に細かく分類していました)。albino も日本語で言うところの所謂「白子(皮膚などの色素が著しく欠けた人)」のことで、最近の日本では「白子」ではなくそのまま「アルビノ」と呼ぶことが多いですけども、アメリカでは「アルバイノゥ」と発音します。libido は精神科医のフロイトが使い始めた精神医学用語で、彼は主に「性衝動」という意味で使用していましたが、現在では「人間の行動のベースとなる根源的な欲望や欲求」という意味で理解されるようになってきています。とは言え、アメリカ人の一般的な教養レベルでは、これらの言葉が何を意味しているのかを理解できる人は先ずいないですから(恐らく、分かるのはmosquito だけでしょう・笑)ネイティブ話者にとってもちんぷんかんぷんであることは間違いありませんが、ネイティブ話者ではない僕がこの最後の2行の不思議な名詞の羅列を聴いて脳裏に浮かんだのは、mulatto→社会の中で差別されている存在、albino→社会の中での異質な存在、mosquito→伝染病を媒介する害虫ですから、社会に害を与えると見做されている存在(もしくは、蚊のようにすぐに叩き潰されるちっぽけな存在)、my libido→自分の行動のベースとなる根源的な欲望や欲求という連想で、mulatto, albino, mosquito に不定冠詞がついていることやlibido の所有格がmy であることから、僕はI am が省略されているのではないかと考えました。つまり、ここで並べ立てられている言葉はすべて自分という存在の比喩であり「俺自身も俺の生き方(my libido)も社会の中では糞扱いだ(疎外されている)」という主張だというのが僕の結論(←あくまでも個人の意見・汗)。ですが、この節全体で何を言いたいのかはまったく理解不能というのが正直なところです。
第4節も英語として難しい部分はありませんが、歌詞の解釈となると難解。1行目のI’m worse at what I do best からして意味不明ですが、これもcontradictory ideas の影響でしょうか。2行目は、1行目で述べられている自らの能力を誇りに思っているということ。3行目は個人からOur little group と集団に変わっていますが、このgroup というのはそういった能力を持つ人々たちのことを指していると僕は理解しました。4行目はwill のあとにbe かexsist を補えば分かり易いです。つまり、この第4節は「世の中には才能に溢れていても、その見た目や思想、生き方などによって社会から疎外されている者たちがいるが、そんな状況はこれからもずっと続いていく」ということなのではないかと僕は感じました。第5節と6節は2、3節目と同じフレーズの繰り返し。そのあとギターソロが入って、それに続く7節目、ここも英語の難易度という観点だけで見れば、中学生で習う英語のレベルで和訳できると思いますが、簡単に補足しておきます。1行目のI taste はI try かI do に入れ替えれば分かり易いでしょう。4行目のwhateverは使う場面によって意味が変わってきますが、ここでは「どうでもいいさ」の意味。「はい、この会話はもう終了」って感じの時によく耳にする言葉です。never mind も「気にしないで」の意味として使われることが多いですが「もういいよ、どうでもいいよ」の意味で使われることもありますね。余談ですが、このSmells Like Teen Spirit を収録しているアルバムのタイトルが「Nevermind」でした。第7節の歌詞も、ここまでの歌詞の内容との関連性が稀有で何を伝えたいのか良く分かりませんが(汗)「自分たちのような人間が存在していることを知らしめるべく社会や体制に反抗してみてはいるが、道は険しい」と冷静に自己分析した上で「whatever, never mind もうどうでもよくなってきた」とちょっと投げやりというか諦めの境地のような感情を吐露しているように思います。第8節と9節は再び2、3節目と同じフレーズの繰り返し。そして最後にアウトロでA denial を連呼して曲は終了するのですけども、このdenial は「自分のような種類の人間は社会に否定されている、これからも否定され続ける」とも受け取れますし、その反対に「もう聞く耳は持たず、自分が逆にこの社会を否定してやる」とも受け止めることができますね。いずれにせよ、ここのdenial の響きにはある種の重さが感じられます。
「うーん、なんだかなー」ってな感じの解説しかできませんでしたが、以前に紹介したツェッぺリンのStairway to Heaven 同様、このSmells Like Teen Spirit の歌詞には取り立てて深い意味などないというのが僕の結論。Robert Plant がStairway to Heaven の歌詞について何種類もの解釈を語っていたのと同じで(元々大した意味がないから説明が一定しない)この曲の歌詞に関するKurt Cobain のコメントがころころ変わるのもそれ故ではないかと僕は思っています。ただ、Smells Like Teen Spirit がStairway to Heaven とひとつ決定的に違う点は、この曲をブレイクさせた真の立役者が音と歌詞ではなく映像(MV ミュージック・ビデオ)であったということで、この曲はまさにMTV の開局から始まった音楽シーンにおける映像時代の落とし子だったと言えるでしょう。そのMV、超有名作品なので見たことがある人も多いと思いますが「そんなの見たことない」とおっしゃる方の為に少し簡単に紹介しておきます。舞台はどこかのアメリカの高校のpep rally の会場、pep rally というのは、スポーツの対外試合などがある際、試合前に校内の生徒を講堂などに集めて試合に出る選手を激励するイベントのことで、日本人には馴染みがないですけども、アメリカやカナダでは頻繁に行われている行事です。この曲のMV では、講堂に集った生徒たちの前でチアリーダーに囲まれたNirvana が演奏を始め、曲の盛り上がりと共に最初はおとなしく曲に耳を傾けていた生徒たちが徐々に踊り狂い始め、最後は大混乱に陥るというストーリーが描かれていて、このMV を見た多くのアメリカの若者が「すっげえー!こいつら、学校をメチャクチャにしてるじゃねえか!なんてクールなんだ!」と共感してNirvana のファンとなっていったことが、この曲の大ブレイクにつながりました。因みにこのMV で生徒役になっているエキストラは、Nirvana のコンサート会場で募集をかけて集めた若者で、チアリーダーたちは街のストリップ嬢を呼んで演じてもらったと伝えられています。
さて、最後になりましたが、冒頭に書いたとおり、Kurt Cobain は1994年4月(あれからもう30年以上もの月日が流れたんですよね…。信じられません)27歳の若さで猟銃で自ら頭を撃ち抜き亡くなりました。重度のヘロイン中毒であった上に(自殺時は収容されていた薬物中毒のリハビリセンターから逃走中でした)、もともと躁鬱の気質だったようで、自殺に至る1ケ月ほど前から何度も自殺未遂を繰り返していたことが後になって判明しています。現場には遺書も残されており、そこには「It’s better to burn out than to fade away ・消え去るよりも燃え尽きる方がずっといい」と書かれていたそうです(このフレーズは、ニール・ヤングの曲の歌詞の一部です)。なんだか切ない話ですね(涙)。
【第89回】Guns N’ Roses / Sweet Child O’ Mine (1988)
前回、Nirvana がMV 時代の寵児であったと述べましたが、その時期、同じようにMTV が頻繁に放映したMV で大ブレークして世界に羽ばたいたロックバンドがあります。その名はGuns N’ Roses。今日は彼らが1988年にデビューアルバムAppetite for Destruction からシングルカットしてヒットさせ、同年のビルボード社年間チャートで堂々の5位に輝いたSweet Child O’ Mine を紹介しましょう。Guns N’ Roses は1985年カリフォルニア州ロサンゼルスでTracii Guns 率いるL.A. Guns とAxl Rose(アクセル)率いるHollywood Rose が合併したロックバンドで(但し、Tracii Guns らL.A. Guns のメンバーは価値観の不相違で直ぐに脱退しています)、デビューアルバムのジャケットの表紙に、機械のロボットが女性を強姦している挿絵(日本では「レイプ・ジャケット」と呼ばれてるやつです)を使って世間を騒がせました。これ以外にもアクセルは、このアルバムに収録したRocket Queen という曲に自らと恋人との性行為の最中の喘ぎ声を挿入したり、その後も様々な場所で暴言や暴力沙汰を繰り返すといった自己中心的なお騒がせ者であった為、彼のことを嫌っていた者も多く、Nirvana のKurt Cobain なんかもアクセルのことを常にこき下ろしていました。例えば「There’s always going to be an Axl Rose in the music world. There’s always going to be people like him. He represents a certain kind of rock star, and it’s going to be around forever, but I don’t want to be that ・音楽の世界にはいつもアクセル・ローズみたいなのが出てくるし、あいつみたいな連中はいつも出てくる。あいつはロックスターの代表格みたいなもんで、ずっとそうであるんだろうが、俺はあんなのにはなりたくないね」といった発言をKurt はしています。因みにアクセルは西海岸で生まれ育ったのではなく、22歳の時に故郷のインディアナ州の田舎町からヒッチハイクでカリフォルニア州に移住し、Guns N’ Roses で成功するまではホームレス同然の極貧生活を続けていました。カリフォルニアへ移住した理由は、地元で警察の世話にばかりなっていた粗暴な彼が、これ以上問題ばかり起こすようならブタ箱に長期でぶちこむと警察から脅されたからだとされていて、そのこと自体の真偽は不明ですが、デビュー前から既にアクセルが問題の多い人物であったことだけは間違いなさそうです。移住と言うよりはむしろ逃亡ですね(笑)。She’s got a smile that it seems to me
Reminds me of childhood memories
Where everything was as fresh as the bright blue sky (Sky)
Now and then when I see her face
She takes me away to that special place
And if I stared too long, I’d probably break down and cry
彼女の笑顔なんだけどさ、俺は思うんだよ
自分の子供時代のことを思い出させるって
すべてが真っ蒼な空みたいにウブだったね(空みたいに)
たまに彼女の顔を見たらさ
彼女は俺を特別な気持ちにしてくれるんだ
あんまり長く見つめてると、多分、泣き崩れちまうだろうな
Woah, oh, oh
Sweet child o’ mine
Woah, oh, oh, oh
Sweet love of mine
あぁぁー
俺の愛しい人
あぁぁぁー
俺の愛しい人よ
She’s got eyes of the bluest skies
As if they thought of rain
I’d hate to look into those eyes and see an ounce of pain
Her hair reminds me of a warm, safe place
Where, as a child, I’d hide
And pray for the thunder and the rain to quietly pass me by
彼女の目って一番蒼い空みたいなんだよな
雨のことで頭がいっぱいになってるみたいなね
俺はそんな彼女の目に、僅かな傷心さえ浮かんでるのを見るのは嫌だね
だって、彼女の髪は、温かくて誰からも守ってくれる場所を思い出させるから
子供の頃、俺が逃げ込んでた場所さ
雷と雨が静かに通り過ぎるのを祈ってたね
Woah, oh, oh
Sweet child o’ mine
Woah woah, oh, oh, oh
Sweet love of mine
あぁぁー
俺の愛しい人
あぁぁぁー
俺の愛しい人よ
Oh, oh-oh-yeah
Woah, yeah
Woah, oh, h-o
Sweet child of mine
Woah-oh, woah-oh
Sweet love of mine
Woah, oh-oh-oh
Sweet child of mine, ooh, yeah
Ooh-ooh-ooh-ooh
Sweet love of mine
あぁぁー、そうさ
あー、そうなんだ
うぉー
俺の愛しい人
うぉー、うぉー
俺の愛しい人よ
うぉぉぉぉー
俺の愛しい人、あぁ、そうさ
あぁぁぁぁー
君は俺の愛しい人なんだ
Where do we go?
Where do we go now?
Where do we go?
Mm-mm, oh, where do we go?
Where do we go now?
Oh, where do we go now? (Where do we go?)
Where do we go? (Sweet child of mine)
俺たちってどうなっていくんだろう?
俺たちって今、どうしようとしてるんだ?
俺たちってどうなっていくんだろう?
うーん、俺たちってどうなっていくんだろう?
俺たちって今、どうしようとしてるんだ?(俺たちってどうなっていくんだろう?)
俺たちってどうなっていくんだろう?(俺の愛しい人)
*このあと、ギターが鳴き始めるのと共に間投詞とWhere do we go now?のフレーズがひたすらだらだらと続くだけなので割愛します。
Sweet Child O’ Mine Lyrics as written by Steven Adler, Saul Hudson, Duff Rose McKagan, W. Axl Rose, Izzy Stradlin
Lyrics © Black Frog Music, Universal-Polygram International Pub Inc., Guns N Roses Music
【解説】
あまりにも有名になった弦飛びピッキング(オルタネイトピッキング)で演奏されるギターリフのイントロので始まるSweet Child O’ Mine。この印象的なイントロのギターの響きといい、そのあとに続くアクセルの独特な高い声といい、なんだか爽やかな感じがしますね。もし、アクセルの悪行を知らずにこの曲を聴いて和訳をしていれば、主語は絶対「僕」にしていたところですが、今回は敢えて「俺」にしました(笑)。この曲の歌詞は凡庸な英語で書かれており、歌詞に登場するShe がアクセルの当時の恋人Erin Everly(二人は後に結婚しますが、僅か9ケ月で離婚)であることも本人が認めている為、歌詞の理解は比較的容易ですけども、部分的に分かりにくい個所がありますので、ざっと全体を見ていきましょう。
先ずタイトルのSweet Child O’ Mine ですが、ここのChild を「子供」と考えてしまうと、訳が分からなくなってしまいます。この曲が自らの恋人について歌っているものであることから考えれば、Sweet Childがその恋人を指していることに疑問の余地はありませんね。日本語でも、昔は可愛らしい女性に対して「かわい子ちゃん」なんて言葉を使っていましたから(←オヤジ世代だけが知る死語ですが・汗)それと同じ感じでしょうか。Child の後のO’ はof の省略形です。では、第1節の解説に入りましょう。ここの1行目から3行目は、ちょっと長ったらしいですけどもひとつの文になっています。通常it seems to me という構文は、そのあとにthat が入って「that 以下のように思える」という意味で使われます。3行目のwhere は関係副詞でwhere 以下はchildhood memories がどのようなものであったのかの説明ですね。4行目のShe takes me away to that special place は直訳すれば「彼女は私を特別な場所へ連れ去る」ですけど、ここでは実際にどこか特定の場所へ連れて行ってくという行動を意味しているのではなく心の動きの比喩なので、このように和訳しました。つまり、この第1節の意味は「純真な彼女を見ていると(blue sky は汚れのない純粋さの比喩)昔の自分を思い出し、今の自分の姿(自分も彼女のようだったが今は違う)が悲しく思えて泣きたくなりそうだ」というのが僕の理解です。
第2節のコーラス部分の歌詞はタイトルの解説で述べたとおり。4行目のSweet love も、恋人のことをsweetheart とか言うのと同じパターンですね。第3節は正直なところ、ちょっと難解になります。1行目のsky がskies と複数形になっていることに注目し、そこから感じる空の広がりというイメージを念頭にShe’s got eyes of the bluest skies as if they thought of rain の部分を聴いてみると、僕の脳裏に浮かんだのは「純真な広い心を持つが故にいつもいろいろなことで気を揉んでいる一人の女性の姿」というものでした。3行目で歌詞の主人公が口にしているのは「そんな彼女がそれらの心配事で傷付くような姿は見たくない」ということで、その理由が4行目以降で明かされています。4、5行目のwarm, safe place where, as a child, I’d hide と聴いて僕の頭に浮かんだのはただひとつ。それは「母親の懐」で、その考えを僕の中で補強したのが6行目の歌詞です。アクセルの両親は彼が幼い頃に離婚していて、母親に引き取られた彼は母親が再婚した継父から頻繁に暴力を振るわれ、虐待を受けていたそうで、アクセルと母親の関係が良好なものであったのかどうかは調べてみても分かりませんでしたが、the thunder and the rain to quietly pass me by は「継父に暴力を振るわれる度に、この歌詞の主人公はそれが早く終わるように母親の懐で祈っていた」と理解するのが自然ではないかと思います。つまり、この歌詞の主人公は恋人である彼女の辛そうな姿を見ると、そこに自分の母親の姿が重なり、同時に継父の暴力、虐待が記憶の中に甦ってくる。だから彼女の傷付く姿なんて見たくない、ということではないでしょうか(←個人の見解ですので悪しからず)。
4節目と5節目のコーラスは解説不要。その次にギターソロが入った後の最後の第6節、ここのWhere do we go?は直訳すれば「私たちはどこへ行くのか?」ですが、ここでの意味は主人公と恋人の彼女の二人がどこへ向かおうとしているのか?つまり、二人の関係は今後どうなっていくんだろう?という主人公が持つ不安だと僕は理解しました。この節から推測できるのは、恐らく二人の間には何らかの問題(例えば、彼女のことを愛してはいるが、純真な彼女とそうでない自分とがこれからもうまくやっていけるのだろうかという精神的葛藤)が横たわっているのであろうということです。だからこそ、この歌詞の主人公は二人の関係の将来を不安に思っているような気が僕にはしました。以上でSweet Child O’ Mine の解説は終了!単なるクサいラブソングかと思いきや、意外に奥の深いセンチメンタルな歌詞でしたね(笑)。
【第90回】Dude (Looks Like a Lady) / Aerosmith (1987)
怒涛のアメリカン・ハードロック祭り(←またまた勝手に祭り開催・汗)。今回はアメリカのロック界における大御所中の大御所Aerosmith を紹介したいと思います。21世紀になった今でも尚、大御所として健在のAerosmith ですが、この曲がヒットした僅か数年後の当時、人気という点では彼らのコンサートの前座を務めていたGuns N’ Roses にあっという間に抜かれてその地位が逆転してしまっていたことを懐かしく思い出しました(笑)。Aerosmith はご存知Steven Tyler(若い頃はミック・ジャガーに寄せ過ぎ、歳を取ってからはジャック・スパロー船長に寄せ過ぎの人です・笑)とJoe Perry が中心となって1970年にアメリカ東部のボストンで結成したロックバンドで(Tyler 自身はニューヨーク市のマンハッタン生まれ)、その頃、イギリスで勃興していたハードロックとアメリカの黒人音楽であるブルースを融合させた音作りでアメリカにおけるハードロックの黎明期の中心人物として活躍を開始。メンバーたちの強度の麻薬依存問題やよくある内輪揉めで何度も空中分解しそうになったものの、結成から50年以上が経った現在もほぼ結成時と同じメンバーで活動しているという稀有なバンドでもあります。そんなAerosmith の数多いヒット曲の中から本日紹介するのは、1987年にリリースされたDude(Looks Like a Lady)という曲。Dude というのは日本語に置き換えれば「奴、あいつ」に相当し、親しい間柄の者の間で呼びかけとして使えば「おまえ、あんた」になるといった感じでしょうか(感嘆詞として使う場合はまた別の意味になりますが、話が長くなるのでここでは割愛。まあ、Dude は最近ではちょっと古臭い感じの言葉になっていて、Bro の方がよく使われているような気がしないでもないですが)。( )書きでLooks Like a Lady と付け加えられているのがこのタイトルのミソで、通しで日本語に直訳すると「女みたいに見えるあいつ」となり、そのタイトルどおり、Steven Tyler はブロンドの長髪であったMötley Crüeのボーカル担当Vince Neil を見た時に女性と見間違ってしまった経験とニューヨークでのとある経験にインスパイアーされてこの曲を作ったと語っています。そのニューヨークでの経験というのがこれ。
「We were hailing a taxi in New York one night and these fucks, Mötley Crüe, pulled up in a limo. They called us in and every other word out of their mouths was ‘dude’. You know, ‘Yo dude! Your dude is really dude, dude.’ I hadn’t heard this crazy ‘dude’ shit before ・ある夜、ニューヨークで俺たちがタクシーを拾おうとしてたらさ、モトリークルーの糞どもがリムジンに乗り込んでて、俺たちに乗れって言ったんだよな。その時、奴らが皆、口にしてたのが『デュ―ド』って言葉。『おい、あんた!あんたたちってマジ最高だな、あんただよ』だってよ。『デュ―ド』ってアホみたいな糞言葉をあんなに聞いたことはかつてなかったね」
つまり、この曲はMötley Crüe を馬鹿にしている曲ですね(←いいえ、違います!笑)。
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
Cruise into a bar on the shore
Her picture graced the grime on the door
She’s a long lost love at first bite
Baby, maybe you’re wrong, but you know it’s all right
That’s right
海岸にあるバーに車で乗り付けたら
彼女の写真が埃塗れのドアに花を添えてた
彼女は長いこと忘れてた一目ぼれの恋のお相手さ
ベイビー、間違ってるかも知れないけど、構いやしないさ
それでいいのさ
Backstage, we’re having the time
Of our lives until somebody said
"Forgive me if I seem out of line"
And she whipped out a gun and tried to blow me away
楽屋で、俺たち時を過ごしたんだ
人生の時を、誰かがこう言うまではね
「こんなこと言うのも悪いんだけど」
でさ、彼女、急に銃筒を取り出して俺をぶっ飛ばそうとしたんだ
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
Never judge a book by its cover
Or who you gonna love by your lover
Sayin’ love put me wise to her love in disguise
She had the body of a Venus, Lord, imagine my surprise
人を見かけで判断しちゃいけねえんだ
恋の相手の姿を見て好きになるなんてことは駄目なんだ
愛してるって言葉を言って俺は彼女の本当の姿に気付いたね
彼女、すげえいい体をしてたもの、マジ驚いちまったね
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
That, that dude looks like a lady
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
あの、あの、女みたいに見えるあいつ
So baby, let me follow you down (Let me take a peek, dear)
Baby, let me follow you down (Do me, do me, do me all night)
Baby, let me follow you down (Turn the other cheek, dear)
Baby, let me follow you down (Do me, do me, do me, do me)
だからさ、ベイビー、俺を君の傍にいさせてよ(天に昇らせてくれ、愛しの人)
ベイビー、俺を君の傍にいさせてよ(俺にして、して、して、一晩中)
ベイビー、俺を君の傍にいさせてよ(そっちの頬を向けてさ、愛しの人)
ベイビー、俺を君の傍にいさせてよ(俺にして、して、して、して)
Ooh, what a funky lady
Ooh, she like it, like it, like it, like that
Ooh, he was a lady, yeah
あー、イカした女性さ
あー、彼女は気に入ってるのさ、あの姿でいることを
あー、彼は女性だったんだ、そうなのさ
*このあと、コーラスでThat, that dude looks like a lady が連呼され、アウトロでも同じようなフレーズが長々と続くので割愛します。
Dude (Looks Like a Lady) Lyrics as written by Steven Tyler, Joe Perry, Desmond Child
Lyrics © BMG Gold Songs, Universal-Polygram International Pub Inc, EMI April Music Inc
【解説】
Aerosmith の曲はイントロが長過ぎでダレるものが多いですが、この曲のイントロは直ぐにパンチのあるコーラスが入るので珍しくさくっとしていますね(因みに歌詞にあるThat の部分は単なる叫び声のようにしか聞こえませんので悪しからず)。この第1節のコーラスの歌詞の意味は冒頭で述べたとおりですが、さてさてこの曲、Mötley Crüe のVince Neil をおちょくっている歌詞になっているのでしょうか?それを突き止める為にも、歌詞をじっくりと念入りに見ていきましょう。コーラスのあとの第2節の1行目は主語が省略されていて、ここの主語はI と考えるのが自然。Cruise into~は「車で~へ乗り付ける」といったイメージで、そのあとのa bar は、まだこの時点では普通の飲み屋のbar くらいにしか思えませんが、曲を最後まで聴けば、このbar が普通のbar ではなく、strip bar、所謂strip club であろうことが分かります。strip clubは日本では馴染みのない営業形態ですので、どんな店なのかの想像がつかない方の為に一言説明を付け加えておきますと、バーやクラブのような内装の店内で(店によっては小さなステージも設えられている)ショーツ1枚身に着けただけのほぼ全裸という女性たちがそこら中で踊っているというのがその正体で(笑)、客はそれらの女性を酒を飲みながら眺めたり、自分の目の前で踊らせたりすることができます(勿論、チップを渡さなくてはなりませんが)。なので、Her picture graced the grime on the door から頭に浮かぶのは、店の使い古されたドアにベタベタと貼られた踊り子たちの宣伝写真ですかね。3行目のlove at first bite は、1979年公開のアメリカのコメディー映画「Love at First Bite(邦題はいつもの如く『ドラキュラ都へ行く』というセンスの欠片もないものでした)」の引用ではないかと思われます。この映画のストーリーはドラキュラが最初に血を吸った女性に恋をしてしまうという仕立てでしたので、ここでのlove at first bite は「一目ぼれlove at first sight」の意味で使われていることは間違いないでしょう。つまり、この節の描写は「歌詞の主人公がストリップクラブを訪れた際に入口のドアに貼られていた踊り子の写真を見た瞬間に恋してしまい、そんな水商売の女性に一目ぼれするなんていけないことだとは思うけど、仕方ないよねと自問している」であると僕は理解しました。どうやらこの曲、誕生のきっかけは女性みたいに見えたVince Neilの姿にインスパイアーされたことであっても、歌詞の内容はVince Neil をいじっているものではないみたいですよ(笑)。
第3節目は、そんな二人の交際が深まっている様子が窺えます。1行目のBackstage は日本で言うところの楽屋ですね。普通、一般の客がBackstage に立ち入ることはできませんから、二人の間柄はそこで会えるほどのものであるということでしょう。ところが、そんな歌詞の主人公にForgive me if I seem out of line と耳打ちする者が現れます。直訳すれば「私が線を越えてるようなら許してください」つまり「言い過ぎならごめんなさいね」ということなんですが、なぜそんなことを言われたのかを主人公が理解するのが4行目。ここでのa gun を拳銃などの銃器と考えたらこの歌詞の意味がまったく分からなくなりますよ!ここでのa gun は間違いなく男性のイチモツの比喩なんです。つまり、主人公の恋の相手が彼に男性器を見せつけて驚かせようとしたってこと(笑)。一目ぼれして付き合ってる相手が実は男性であった(僕らオヤジ世代で言うところのオカマですね。今の時代はニューハーフとか言うみたいですが)と主人公はようやく気付いたという訳です(←そんなことってありますかね?・笑)。次の4節目のコーラスで再びThat, that dude looks like a lady のフレーズが連呼されることからも、そのことは明らかでしょう。第5節は、難解な英単語は出てきませんが歌詞の意味はちょっと難しいかもしれません。1行目は直訳すれば「本を表紙で選んではいけない」ですが、これは日本で言うところの「人を見かけで判断してはいけない」という有名な諺。2行目はyour lover をyour lover’s appearance(looks)と考えれば良いかと思います。3行目のput someone wise to~は「誰々に~を知らせる」という意味で、何を知らせたのかというとher love in disguise です。her love in disguise は直訳すれば「彼女の偽りの愛」ですが、disguise には変装の意味もありますので、そこにひっかけているのでしょう。つまり、ここのher love in disguise は彼女が女装して性別を偽っていた事実を指していると僕は理解したので、このような和訳になっています。4行目は、西欧ではミロのヴィーナス像が女性の身体の理想とされていることからも分かるとおり、彼女は世の男性なら誰でも涎を垂らすような素晴らしいボディーをしていたということの比喩。
6節目は再びThat, that dude looks like a lady のコーラスで、7節目に入ると、二人の関係を熟考した歌詞の主人公の意外な心情がここで吐露されます。この節で連呼されているfollow you down という言葉を聞いて頭に浮かぶのは「あなたにどこまでもずっとついて行く」というイメージ。ですから、要はずっとあなたの傍にいたいということですね。つまり、この歌詞の主人公は、彼女が男であることを知ってしまったけれども、それでも尚、彼女を愛し続ける決意をしたということなんです。但し、Steven Tyler が歌う( )内のフレーズ部分はどう聴いても僕には性的な意味合いのものにしか聞こえませんでしたので、主人公が心から彼女に惚れたのか、彼女の体に惚れたのかは良く分かりませんけども(笑)この後に入るギターソロに続く8節目のブリッジ部分のフレーズを聞くと、主人公が恋人の女性としての人格を認めていることだけは確かなようです。
以上、Dude (Looks Like a Lady)の歌詞をざっと解説してみましたが、如何でしたか?この曲の歌詞自体は決して素晴らしい出来というレベルのものではありませんが、全体的にちょっとコミカルな感があって(かと言って、オカマをおちょくっている訳でもなく)僕はなかなか面白い作品だと思っています(←いつものように上から目線で論評・汗)。面白いと言えば、ひとつ紹介しておきたいのがAerosmith の「たい焼き事件」。来日経験が多いAerosmith のメンバーの日本でのお気に入りのアイテムのひとつにお菓子のたい焼きがあるそうで、かつてSteven Tyler がお土産用にたい焼きを大量購入して帰国便に乗り込んだ際、メンバーが機内でそのたい焼きをこっそり全部食べてしまい、そのことを知ったSteven Tyler が激怒してバンドが解散寸前になったという伝説がそう呼ばれているのですが、Steven Tyler がそれくらいのことで激怒するようなキンタマの小さい男とも思えませんので、この思わず笑ってしまう事件は所謂「ネタ」というやつでしょうね(笑)。
【第91回】Alone / Heart (1987)
今日は前回紹介したアメリカのロック界の古顔Aerosmith よりもさらに古い歴史を持ち、尚且つ同じように解散することなく現在も存続しているロックバンドHeart を紹介たいと思います。このバンドの歴史が始まったのはなんと1965年。西海岸のシアトル郊外でRoger Fisher(1979年に脱退)とSteve Fossen(1982年に脱退)が中心になって結成したThe Army というバンドがその礎で、その後White Heart というバンド名を経て1973年にHeart に改名しました。現在のHeart を率いているAnn WilsonとNancy Wilson の姉妹が次々にメンバーとして加入したのも同じ頃のことです。皮肉にもバンドの創始者であるFisher とFossen がグループを去った後の1985年、やり手プロデューサーのRon Nevison を迎えて製作したアルバム「Heart」でバンドは大ブレーク。その勢いが続いていた最中の1987年にリリースし、同年のビルボード社の年間チャートで2位にランクインという快挙を為し遂げて彼らの最大のヒット作となったのが本日お届けするAlone という曲です(因みに、同じ年度のリリースで前回紹介のDude (Looks Like a Lady)は年間チャートで100位圏外でしたから、ヒットチャートというのは曲の良し悪しの指標ではなく、商業的に成功したかどうかの指標なので覚えておいてください)。この曲を素晴らしいものにしている要素のひとつとして挙げられるのが、歌詞を力強く歌い上げるAnn Wilson の渋い歌声でして、その声を聴いていると歌詞の内容が彼女の過去の経験から書かれたものなのだろう等とついつい勘ぐってしまうのですけども、実はこの歌詞を書いたのはBilly Steinberg とTom Kelly という名の男性ミュージシャンの有名コンビ(マドンナのLike a Virgin やシンディー・ローパーのTrue Colorsなど、数多くの名曲をプロデュースした人たちです)。Heart がヒットさせる以前の1983年に、自らが属していたi-Ten というグループから同じタイトルのレコードも出していて、要するにHeart のAlone はi-Ten 版のカバーであり、歌詞の内容とAnn Wilson とは何の関係もないということですね(汗)。因みにi-Ten 版とHeart 版を聴き比べてみると、曲調も歌詞もほぼ同じなものの、誰の耳にも断然Heart 版の方が出来が良いように聞こえますが、i-Ten 版の手直しをしてHeart 版を手掛けたのもBilly Steinberg たちなので、Heart 版はカバーと言うよりはバージョン・アップという言葉が適切なのかも知れません。で、その歌詞の方はと言うと、非常にシンプルな英語で書かれていて、想像力を働かせなくとも文字のとおりに理解できうるものとなっていますから、今回の解説は久し振りに楽なものになりそうですよ(嬉)。
I hear the ticking of the clock
I’m lying here, the room’s pitch dark
I wonder where you are tonight
No answer on the telephone
And the night goes by so very slow
Oh, I hope that it won’t end though
Alone
チクタクって時計が時を刻む音が聞こえる
真っ暗な部屋の中、あたしは寝そべってる
今夜、あなたはどこにいるんだろうって思いながら
電話しても居ないし
ただ夜がゆっくりと更けていく
あぁー、このままで終わって欲しくはない
一人ぼっちになりたくないもの
‘Til now, I always got by on my own
I never really cared until I met you
And now it chills me to the bone
How do I get you alone?
How do I get you alone?
今この時まで、あたしはいつも一人で生きてた
そんなこと気にしたこともなかった、あなたに出会うまでは
でも今は骨身に染みるの
どうすればあなたを独り占めできるの?
どうすればあなたを独り占めできるの?
You don’t know how long I have wanted
To touch your lips and hold you tight, oh
You don’t know how long I have waited
And I was gonna tell you tonight
But the secret is still my own
And my love for you is still unknown
Alone
どれほど望んできたかあなたには分からないわ
あなたの唇に触れ、強く抱きしめることを、あぁー
どれほど待ち焦がれてきたかあなたには分からないわ
今晩、言おうって思ってたけど
あたしの中にまだ留めておくわね
あなたのことを愛してるのかまだ分からないしね
一人ぼっちになりたくはないけど
‘Til now, I always got by on my own
I never really cared until I met you
And now it chills me to the bone
How do I get you alone?
How do I get you alone?
今この時まで、あたしはいつも一人で生きてた
そんなこと気にしたこともなかった、あなたに出会うまでは
でも今は骨身に染みるの
どうすればあなたを独り占めできるの?
どうすればあなたを独り占めできるの?
How do I get you alone?
How do I get you alone?
Alone, alone
どうすればあなたを独り占めできるの?
どうすればあなたを独り占めできるの?
一人ぼっちになりたくないもの
Alone Lyrics as written by Billy Steinberg, Tom Kelly
Lyrics © Sony/ATV Tunes LLC
【解説】
お聴きいただいたとおり、この曲はラブソングであり、パワー・バラードですね(そもそも「パワー・バラード?何ですか、それ?」って話なんですが、An emotional rock song, generally focused on love, delivered with powerful vocals というのがその定義らしいです)。イントロのピアノのメランコリックな響きと共にAnn Wilson がI hear the ticking of the clock と静かに歌い始め、2節目のコーラス’Til now で感情を爆発させるかのように一気にリズムがビートアップするという構成はお見事としか言いようがありません。歌詞の方は冒頭で述べたとおり、中学校の英語の授業で習う単語レベルで構成されていて、英語的に難しい部分もほぼ無いですから、英語初級者の方には是非とも自力で和訳にチャレンジして頂きたいと思います。
それでは、その際の参考にでもなるよう、少しだけ解説を記しておきましょう(歌詞を書いたのは男性ですが、女性が歌っている為、歌詞の主人公は女性とします)。第1節、最後のAlone の部分以外、特に難しい部分は見当たりません。2行目のI’m lying here は、ベッドかソファーの上で横になっているイメージ。pitch dark のpitch はコールタールのことで、コールタールが真っ黒であることからpitch dark が「真っ暗闇」の意味で使われるようになりました。4行目のtelephone は、この時代に携帯電話は普及していませんから、相手の家電に電話をしているということ。で、7行目、先程も述べたAlone ですが、ここはちょっと難解。alone は形容詞であれば「離れた、孤立した、単独の、唯一の」といった意味、副詞であれば「独りで、単独で」といった意味で使われますが、それではこの7行目のAlone が前の行の文とつながってこないので、僕はこのAlone の背後には何らかの感情があってalone 以外の言葉が省略されていると考えました。その結果、僕が達した結論は、ここの行(というか、この曲の歌詞の中のAlone で終わっている部分のすべて)はI don’t wanna be alone という気持ちが背後にあって、I don’t wanna be が省略されているということです。それは次の節の1行目で’Til now, I always got by on my own と言っていることからも確信できます。なぜなら、’Til now, I always got by on my own というフレーズは、裏を返せばI no longer wanna be alone という気持ちだからです(←あくまでも個人の見解)。
2節目3行目のit chills me to the bone は直訳すれば「それが骨まで冷たくする」つまり「骨身に染みる」ということで、it は彼と出会ったという事実ですね。今まで彼と出会ったことをあまり大切に思ってなかったけど、こうして一人でいると彼と出会ったことのありがたさが骨身に染みるという訳です。4行目のHow do I get you alone?のget someone alone は誰かを他から引き離すというイメージ。要するに「独り占めする、二人きりになる」という意味。家に電話しても捕まらないし、誰か他の女とでも会っているのだろうかと嫉妬しつつ、その一方で沸き上がってくる誰にも邪魔されずにあなたを独り占めしたいという思いをこのHow do I get you alone?という言葉で表していると僕は理解しました。第3説は和訳のとおり。特に解説が必要な部分は無いです。この節から窺えるのは、主人公は相手と出会って恋心が芽生えているし、その出会いがかけがいのないものだと分かっているけども、まだ告白はしていないという状況。なぜ告白をためらっているのかと言うと、告白してフラれてしまうことで一人になってしまうのが嫌だからではないでしょうか。そのあとの第4節目は第2節のコーラスの繰り返しで、次いで短いギターソロが入り、最後にアウトロでHow do I get you alone?と再び自問して曲は終わります。ということで、解説もあっという間に終了。万歳!この曲の歌詞は分かり易くて最高でした!短い解説で済みましたので!(←結局そこかよ・笑)
【第92回】Open Arms / Journey (1981)
前回に引き続き、本日もパワー・バラードの名曲を紹介しましょう。1981年にJourney がリリースし、翌年のビルボード社年間チャートで34位にチャートインしたOpen Arms という曲です。このJourneyというバンドもアメリカのロック界では古顔。1973年にサンフランシスコで結成され、創設時のメンバーはもう誰も残ってはいないものの、現在でも活動を継続中です(御多聞に漏れず、このバンドも内紛を繰り返してはいますが)。今回取り上げるOpen Arms という曲は、Steve Perry(1987年に脱退し1995年に出戻るも1998年に再び脱退)がボーカルを務めていた時代のJourney の人気絶頂期にリリースされたもので、アメリカの音楽史上で最高ランクに位置するラブソングのひとつであり、最も美しいバラードのひとつであるとも評価されてもいます。しかもこの曲、Steve Perry が素晴らしい美声で熱唱するその歌詞に使われているのは簡単な英単語ばかりで、スローなテンポで歌っていることもあって英語初級者にも比較的聞き取りやすい曲だと思いますので(一番肝心なWith open arms の部分は少々聞き取り辛いですが・汗)、先ずはじっくりと歌詞に耳を傾けてみてください。Lying beside you
Here in the dark
Feeling your heartbeat with mine
Softly, you whisper
You’re so sincere
How could our love be so blind?
君の傍らに横たわってる
この暗闇の中でね
君と僕との心臓の鼓動を感じながら
君はそっと囁くんだ
あなたって誠実な人ねって
僕たちの愛って何も見えてなかったのかな?
We sailed on together
We drifted apart
And here you are
By my side
僕たちは共に人生を歩み
時には愛情が薄れたけど
今、君はここにいる
僕の傍にね
So now, I come to you
With open arms
Nothing to hide
Believe what I say
So here I am
With open arms
Hoping you’ll see
What your love means to me
Open arms
だから、僕は君を迎えるんだ
心から喜んで
隠すことなんて何もないし
僕の言葉を信じて欲しい
だから僕はここにいるんだもの
心から喜んで
君に分かって欲しいんだ
君の愛が僕にとって大切なことをね
無私無欲の心でさ
Living without you
Living alone
This empty house seems so cold
Wanting to hold you
Wanting you near
How much I wanted you home
君のいない暮らし
一人ぼっちでの暮らし
そんな空っぽの家って寒々しいんだ
君を抱きしめたい
君に傍にいて欲しいんだ
どれだけ君に家へ戻ってきて欲しかったことか
But now that you’ve come back
Turned night into day
I need you to stay
そして今、君は帰ってきてくれた
夜が明けて光が差したんだ
だから君にはずっとここにいて欲しい
So now, I come to you
With open arms
Nothing to hide
Believe what I say
So here I am
With open arms
Hoping you’ll see
What your love means to me
Open arms
だから、僕は君を迎えるんだ
心から喜んで
隠すことなんて何もないし
僕の言葉を信じて欲しい
だから僕はここにいるんだ
心から喜んで
君に分かって欲しいんだ
君の愛が僕にとって大切なことをね
無私無欲の心でさ
Open Arms Lyrics as written by Steve Perry, Jonathan Cain
Lyrics © Lacey Boulevard Music and Hipgnosis Side B, Weed High Nightmare Music
【解説】
シンプルですが心の芯に響いてくるピアノの音色が美しいイントロ、そして、それに続くSteve Perry の澄んだ広がりのある歌声。日本人好みの曲調ですよね。歌詞の方も冒頭で記したように中学校で習うレベルの英単語で構成されていてとてもシンプルなものになっていますが、主語の省略が多くて英語初級者には少し分かりにくいかも知れません。そもそもタイトルのOpen Arms からして、何のことだか良く分からないのではないでしょうか?Open Arms を普通に「両手広げて」という意味で受け取ることもできますが、この歌詞の中ではもう少し奥の深い意味として使われているようですので、それがどういうことなのか歌詞を詳しく見ていきましょう。
先ず1節目、最初にLying とかdark とかの単語が出てきますけども、それってどこかで聞いたような…。そう!そうなんです。前回に紹介したAlone の歌詞にも使われてました!こういった種の言葉ってバラードの歌詞には必須のものなんでしょうかね?僕なんかは「ありきたりでちょっとクサいなぁー」なんて思ってしまうんですが(笑)。まあ、そんなことは置いといて本題に戻るとしましょう。1行目と3行目は文頭にI am を補えば簡単に理解できます。6行目は直訳すれば「私たちの愛が盲目であるなんてことがどうしたらあり得たのか?」ですが、要は「僕たちは愛し合ってたのに(肝心なことが)何も見えてなかった」ということ。この第1節から何かを推測できるとすれば、電気を消した部屋の恐らくベッドであろう上で並んで眠りについているこの男女(男同士って可能性もありますが・笑)は何か訳ありのカップルだということですね。第2節のプリコーラス部分の1行目のsail on は「船が航行する」、2行目のdrift apart は「小舟が離れ離れになる」という意味で、人の人生を船の航海に例える手法は洋楽の歌詞の定番です。ここまでの歌詞を聴いて頭に浮かんでくるのは、夫婦か恋人同士かは分かりませんが人生を共にしていた(sail on together)一組の男女が、なんらかの理由で(恐らくは不仲になって)離れることになり(drift apart)暫く距離を置いていたものの、今再びよりを戻そうとしているという情景。そして、よりを戻すにあたって歌詞の主人公が自らの心情を吐露しているのが第3節です。その1、2行目のI come to you with open arms ですが、1行目のI come to you は「あなたのところへ行く、向かう」というイメージで、2行目のwith open arms は、何かを歓迎すべく両手を広げているイメージ。with open arms にはそこから転じて「心から喜んで」というidiom としての意味もありますので、ここのI come to you with open arms はI welcome you with open arms(あなたを心から喜んで迎える)に置き換えても差支えないかと思いますし、その方がうまく和訳がはまります。そして、この節の最後に曲のタイトルと同じOpen arms という言葉が登場。ここではそれを耳にしても未だ「両手を広げて」というイメージしか湧いてきませんけど、残りの歌詞を聴くとこのOpen arms が何であるのかが見えてきます。第4節は英語的に難しい部分はなく和訳のとおり。それに続くプリコーラスの第5節も同じくイージーですね。このふたつの節から僕に伝わってきたのは、彼女と離れ離れでいた間、一人で暮らしていることの虚しさと彼女の大切さを思い知った主人公の、もう二度と同じことにはならないようにするという決意です。そして、主人公のその決意を支えているのが、過去、二人の間に何があったにせよ、そんなことを蒸し返すことは一切せず、戻ってきてくれた彼女をただ無私無欲の心で受け容れる気持ちなのだと僕は理解しました。なので、この曲においては「彼女に対するその無私無欲の心こそが、歌詞のタイトルにもなっているOpen arms の真の意味である」というのが僕の結論です。
今やパワー・バラードの名曲となったOpen arms、元々はキーボード担当のJonathan Cain がJourneyに加入する前に所属していたイギリスのロックバンドThe Babys にいた時代に作詞作曲したものなんですが、当時、The Babys のリーダー格であったJohn Waite に「クサい曲だ!」とこき下ろされ、ずっとお蔵入りになっていたというエピソードがあります。John Waite が1984年にリリースしたMissing You の方が「ずっとクサい曲じゃないか!」って僕なんかは思いますがね(笑)。
【第93回】Amanda / Boston (1986)
パワー・バラードの名曲を紹介する3回シリーズ(←いつの間にそんなシリーズが始まってたんだよ?)、最終回となる今回は、1986年にBoston がリリースし、同年のビルボード社年間チャートで50位に食い込んだAmanda という曲を紹介します。Boston はその名のとおりマサチューセッツ州のボストンで1975年にTom Scholz が中心となって結成したロックバンドで、細身ですが身長が2メートル近くもある彼は(米国のメジャーリーグで活躍中のあの日本人よりも長身)高校時代にバスケットボールの選手として腕を鳴らしただけでなく、学業も優秀であったことから高校卒業と同時に地元の名門マサチューセッツ工科大学に進学。そして、そこで機械工学の学士号と修士号を取得した後、当時、インスタントカメラの製造販売で興隆していたポラロイド社に入社し、暫くのあいだ技術者として働いていたという変わった経歴を持つ人です。確かにTom Scholz が醸し出している雰囲気はロック・ミュージシャンと言うよりも今で言うところのオタクですね(笑)。そんな彼が率いてきたBoston もAerosmith やHeart と同じく、結成時から現在まで存続している息の長いバンドのひとつですけども、2017年以降は主だった活動をしておらず事実上の休眠状態(Scholz もそろそろ80歳というご老体ですから)。このまま永眠の可能性もあるような気がするのは僕だけでしょうか?(←それを言っちゃあ、お終いだ・汗)。Babe, tomorrow’s so far away
There’s something I just have to say
I don’t think I can hide what I’m feelin’ inside
Another day, knowin’ I love you
And I, I’m getting too close again
I don’t want to see it end
If I tell you tonight would you turn out the light
And walk away knowing I love you?
あのさ、もう用意はできてるんだ
話しておかなきゃいけないことがあるんだ
だって、自分の本心を隠しておけるなんて僕は思えないもの
あの日、君のことを愛してるってことが自分でも分かってさ
僕はまたどんどん君と親密になってきてる
けど、それが終わってしまうのは嫌なんだよ
今晩、僕が君に告白したら、君は灯りを消してくれるかい?
それとも立ち去ってしまうかい?君を愛する僕の気持ちを知ってさ
I’m going to take you by surprise and make you realize
Amanda
I’m going to tell you right away, I can’t wait another day
Amanda
I’m going to say it like a man and make you understand
Amanda
I love you
僕は君に不意打ちをかけて気付かせるつもりさ
アマンダ
僕は今すぐに告白するよ、先延ばしなんてできないもの
アマンダ
僕は男らしく告白して君に分かってもらえるようにするつもりだよ
アマンダ
僕は君を愛してるんだもの
And I feel like today’s the day
I’m lookin’ for the words to say
Do you wanna be free, are you ready for me
To feel this way
I don’t wanna lose you
So, it may be too soon, I know
The feeling takes so long to grow
If I tell you today will you turn me away
And let me go?
I don’t want to lose you
今日がその日だって感じが僕にはする
どう伝えようかって僕は言葉を探してる
このまま自由でいたいかいとか、僕の気持ちを受け止めてくれるかいとかね
感じて欲しいんだ
僕が君のことを失いたくないってことを
早すぎるかも知れないってことは分かってる
愛する気持ちを育むってのは時間がかかることだからね
今日、君に告白したら避けられちゃうかな
それとも受け容れてくれるんだろうか?
僕は君を失いたくないよ
I’m going to take you by surprise and make you realize
Amanda
I’m going to tell you right away, I can’t wait another day
Amanda
I’m going to say it like a man and make you understand
Amanda
Oh girl
僕は君に不意打ちをかけて気付かせるつもりさ
アマンダ
僕は今すぐに告白するよ、先延ばしなんてできないもの
アマンダ
僕は男らしく告白して君に分かってもらえるようにするつもりだよ
アマンダ
あぁー、愛しの君
You and I
I know that we can’t wait
And I swear, I swear it’s not a lie, girl
Tomorrow may be too late
You, you and I, girl
We can share a life together
It’s now or never
And tomorrow may be too late
君と僕
二人がこれ以上待てないってことは分かってる
誓うよ、嘘じゃないって
明日じゃ手遅れになるかも知れないんだ
愛しの君、君と僕
僕たちは共に人生を歩んで行ける
チャンスは今しかないんだ
明日じゃ手遅れになるかも知れないんだから
And, feeling the way I do
I don’t wanna wait my whole life through
To say I’m in love with you
これが僕のやり方なんだ
一生このまま待っていられないもの
君のことを愛してるって伝えることをね
Amanda Lyrics as written by Tom Scholz
Lyrics © Universal-Polygram Intl. Pub.
【解説】
Tom Scholz が奏でる12弦のアコースティックギターの柔らかな音色のイントロのあと、Brad Delp(この方も2007年に自殺で死去されています・涙)の伸びのある高音域の歌声が響き渡る美しい旋律のこの曲、YouTube などで検索してもMV がまったく見つかりませんが、それもそのはず。なぜならAmanda は、時世がMTV 時代に突入していたというのにMV を製作せずともヒットしたという珍しい曲だからなんです。職人気質であるTom Scholz の性格から考えれば、凝ったMV を製作していてもおかしくはなかったと思うのですが、彼の興味は音だけであって、映像なんてどうでも良かったんでしょうね。よくあるオタクのこだわりというやつでしょうか(笑)。さて、そんなAmanda の歌詞、内容はモテないオタクが書いたとは思えないラブソングで(←おいおい、Scholz はオタクじゃないぞ!)ここ数回、パワー・バラードと呼ばれている曲の歌詞を和訳してみて感じたのは、パワー・バラードというのは概してシンプルな英語で書かれたクサいラブソングであるということです。この曲もまさしくそのとおりで、使われている英単語はすべて中学校の英語の授業で習うレベルのもの。ですが、英語初級者がうまく和訳するには多少のコツが必要のように思えますので、参考になるであろうポイントを記しておきます。
まず第1節。1行目のtomorrow’s so far away は、直訳すれば「明日という日は遥か遠くにある」ですが、その真意は「そんな遠い明日を待っていられない」ということですからI am ready と言っているのと同じですね(何に対してI am ready なのかは第2節の解説で触れます)。4行目のAnother day は普通、現在以降の未来のある時期を表すことが多いですが、5行目の文が現在進行形になっているので、ここに出てくるAnother day は過去のある時期を表すthe other day と同じ意味で用いられると僕は判断しました。7行目のtell は、8行目の文の内容から考えて「恋愛で告白する(今の若者はコクるとか言うようですが・汗)」の意味で使われていることに疑いの余地はありません。今晩、告白して彼女がturn out the light をしてくれたら、告白は成功したという訳です。turn out the light した後に二人が何をするのかと言えばkiss かsex しかないですね(←そうとは限りません・笑)。じゃあ、告白失敗ならどうなるのかと言うと、8行目のwalk away です。「嫌よ、誰があんたみたいなダサい男と付き合うもんですか」と言い放って部屋から出て行くってな感じですかね(←想像が飛躍し過ぎ)。第2節のコーラスは、歌詞の主人公の「今晩、告白するぞ」という並々ならぬ決意で、第1節の1行目が「告白をする決意が僕はできてるんだ」という意味であったことがここではっきりしますね。要は「もうこれ以上、自分の気持ちを秘めておくことはできないから、突然だけど今晩コクって僕がどれだけ君のことが好きかを君に分かってもらうぞ」ってなことを熱く語っている訳です。まあ、ちょっとコワい人と言えばコワい人ですが(汗)。
ところが、そんなに熱くなっている割に第3節では「いや、ちょっと待てよ、告白するのはいいけど、果たして彼女は受け容れてくれるんだろうか?えーい、まあ、いいや、一か八かで告白だ」と少し弱気になっているようです。3行目のDo you wanna be free, are you ready for me は「僕なんかと付き合うよりも気楽な一人でいたいかい?それとも僕を受け容れる用意はできてるかい」ということ。5行目と10行目でI don’t wanna lose you を繰り返しているのはかなりウザいですね。そんなら告白するなって話です(笑)。このあと、ギターソロが入って、残りの4、5、6節でも最後まで同じようなことばかりを熱く語って曲は終了しますが、良く分からないのが、この主人公がなぜに「好きだ。僕の恋人になって欲しい」という告白をそんなに急いでしようとしているのかの理由です。3節目で主人公はSo, it may be too soon, I know. The feeling takes so long to grow と自分でも言ってる訳ですから、そんなに焦らなくてもと思うのですが…。僕の感覚では、この主人公はウブというか女性慣れしているようには思えませんので、恐らくこの告白は失敗に終わりますね(←えっ?そんな結末かよ←個人の勝手な想像です・笑)
【第94回】Jump / Van Halen (1984)
ここのところずっとアメリカの老舗ロックバンドの曲を紹介してきましたが、まだまだ紹介しきれていない大物ミュージシャンたちが幾人も残っています。そこで、誰か忘れてないかと考えていたところ「Van Halen が抜けてるぞ!」という声が聞こえてきたので(←幻聴かよ・汗)、今日は彼らが1984年にビルボード社年間チャートの第6位に送り込んだ名曲Jump をお届けすることにしましょう。Van Halen は1973年、カリフォルニア州のパサデナでその名のとおりVan Halen 兄弟(Eddie とAlex)が結成したロックバンドで、翌年にはこのJump の歌詞を書いたボーカル担当でフロントマンとなるDavid Lee Roth(この人も昔はちょっとミック・ジャガーに寄せ過ぎでしたね・笑)がメンバーとして加入しています。このVan Halen 兄弟、実はオランダのアムステルダム生まれで、両親はオランダ人。オランダはインドネシアを植民地化して過酷な搾取を行っていたという過去を持つ為、自主的にしろ強制的にしろオランダに移住したインドネシア人も少なからずいて、兄弟の母親はインドネシア系だとされています(二人の見た目は完全に白人ですけどね)。つまり、Van Halen 兄弟は(オランダ語でのカタカナ読みではファン・ハーレンだそう)アメリカ生まれのアメリカ育ちではなく、幼少期に両親と共にアメリカへ移住した新移民なんです。因みにVan Halen の才能を彼らのデビュー前から発掘し、プロになる道筋を作ったのはKISS のGene Simmonsだと言われていますが、彼もイスラエルのハイファで生まれてアメリカへ移住した新移民。両者には移住後、英語を必死で習得しなければならなかったという苦労があったこようなので、お互い気が合ったのかも知れませんね(←個人の勝手な推測です)。I get up, and nothing gets me down
You got it tough, I’ve seen the toughest around
And I know, baby, just how you feel
You got to roll with the punches to get to what’s real
俺なら立ち上がるぜ、俺の気を滅入らせるものなんて何もねえもの
君は今苦難に直面してるよな、俺は修羅場をくぐり抜けてきたから
君がどんな気持ちなのかってのは分かるさ
けど、ここはうまく乗りきらなくっちゃ駄目だぜ、現実を知る為にさ
Oh, can’t you see me standing here?
I got my back against the record machine
I ain’t the worst that you’ve seen
Oh, can’t you see what I mean?
あー、あたしがここに立ってるのがあんたには見えないの?
あたし、窮地に立ってんの
あたしって最低ってな訳でもないのにね
あー、あたしの言ってること、あんたは分からないのね?
Ah, might as well jump (Jump!)
Might as well jump
Go ahead and jump (Jump!)
Go ahead and jump
ならさ、ジャンプしてみてもいいんじゃねえかな(ジャンプしなよ!)
ジャンプしてみてもいいんじゃねえかな
やりな、ジャンプするんだ(ジャンプしなよ!)
やりな、ジャンプするんだ
Hello! Hey, you! Who said that?
Baby, how you been?
You say you don’t know
You won’t know until you begin
よお、あんた!いいこと言うね
で、お嬢さんはどうしてたってんだよ?
どうしたらいいか分からないじゃなくて
やってみないと分からないじゃねえか
So can’t you see me standing here?
I’ve got my back against the record machine
I ain’t the worst that you’ve seen
Oh, can’t you see what I mean?
だからさ、あたしがここに立ってるのがあんたには見えないの?
あたし、窮地に立ってんの
あたしって最低ってな訳でもないのにね
あー、あたしの言ってること、あんたは分からないのね?
Ah, might as well jump (Jump!)
Go ahead and jump
Might as well jump (Jump!)
Go ahead and jump
Jump!
ならさ、ジャンプしてみてもいいんじゃねえかな(ジャンプしなよ!)
ジャンプしてみてもいいんじゃねえかな
やりな、ジャンプするんだ(ジャンプしなよ!)
やりな、ジャンプするんだ
ジャンプするのさ!
Might as well jump (Jump!)
Go ahead and jump
Get it and jump (Jump!)
Go ahead and jump
ジャンプしてみてもいいんじゃねえかな(ジャンプしなよ!)
ジャンプしてみてもいいんじゃねえかな
現実を受け容れてジャンプするんだ(ジャンプしなよ!)
やりな、ジャンプするんだ
Jump Lyrics as written by David Lee Roth, Alex Van Halen, Eddie Van Halen
Lyrics © WB Music Corp., Diamond Dave Music, Universal Music Publishing
【解説】
オーバーハイム・エレクトロニクス社製のシンセサイザーが生み出す金管楽器にも似た分厚いブラス音がファンファーレのように力強く鳴り響くイントロ。Europe のThe Final Countdown のそれと並ぶ最強のシンセ・イントロですね。そのイントロの途中、ボーカルのDavid Lee Roth がOwwwwww!と雄叫びを上げていて、これを日本語に置き換えるとすると「痛タタタァァー」という感じなんですが、この叫び声、Jumpの作詞をしたDavid Lee Roth が雑誌のインタビューでこの曲の歌詞の原点について語った証言を知ってしまうと、確かに「ちょっとイタい(人だ)わな」と思ってしまいます(汗)。
「I was watching television one night and it was the five o’clock news and there was a fellow standing on top of the Arco Towers in Los Angeles and he was about to check out early, he was going to do the 33 stories drop, and there was a whole crowd of people in the parking lot downstairs yelling "Don’t jump, don’t jump" and I thought to myself, "Jump"」
長いので簡単にまとめると「ある夜、David Lee Roth がテレビのニュースを見ていたら高層ビルの屋上から飛び降り自殺をしようとしている男(he なので)が映し出されていて(check out early は自殺のことを遠回しに言っています)、階下の駐車場で人々がDon’t jump, don’t jump と叫んでいたが、David は心の中でjump しろと思った」ということ。そして同時に彼はなぜだか「the song is about a stripper」と詳細は述べずに一言そう付け加えています。なので、ビルの屋上に立っていた自殺志願のこのイタい人と謎のストリッパー(stripperは通常strip club等で働くストリップ嬢のことですね。現在ではマッチョが売りの男のstripper も多いようですが)を念頭に置いて歌詞を見ていくことにしましょう。
この曲の歌詞もまた、使われている英単語は中学校の英語の教科書レベル。とは言え、この歌詞の和訳にトライしてみると分かるかと思いますが、中学生が英語として理解し和訳するのはちょいと難しそうですね。第1節1行目のget up からしてそうで、get up は大抵の場合「寝床から起き上がる」という意味で使用されるのですけども、ここでは「立ち上がる」として使われています。なぜそうなのかと言うと、1行目のI get up だけを聞いただけでは分かりませんが、2行目にYou got it tough(get it tough は「苦難に直面している」とか「苦しい立場に立っている」といった意味になります)とあるからです。つまり、苦難に対して立ち上がるということ。1行目はget up とget down を使って言葉遊びをしていますね。2行目のI’ve seen the toughest around は「厄介なことをそこら中で見てきた」ですから、このように和訳しました。3行目にはbaby という呼びかけが入っていて、前述した「この歌詞はストリップ嬢についてのものだ」と語ったDavid Lee Roth の言葉からしても、この歌詞の主人公が語りかけている相手は女性だと考えて良いかと思います(彼がニュースで見たというビルから飛び降りようとしていた人は男性でしたが)。4行目のroll with the punches は元々は「身体をロールさせてパンチをうまくかわす」という意味のボクシング用語。そこから転じて「困難を乗り切る、批判をかわす」といった意味のidiom になりました。そのあとに続いているto get to what’s real は、to know what the real world is と置き換えてみれば分かり易いでしょう。
ということで、第2節は1節目の歌詞の主人公の語りかけに対する相手の女性の返答であるという理解で解説を進めます。2行目のget my back against はagainst のあとに続くものに背中をつけてもたれかかっているというイメージ。ここではthe record machine になってますが、the wall だと「窮地に陥る、追い込まれる」という意味になり、第1節の歌詞の内容から考えてみると、2行目はthe wallとすべきところをthe record machine に変えて言葉遊びをしているのではないかと思います。3行目は、後悔したり自分を情けなく思った時に思わず口にする「あー、私って最低(最悪)」という言葉を英語で言う場合、I am the worst ですから、その逆ということ。順番が前後しますが、1行目のcan’t you see me standing here?は、David Lee Roth がインタビューで語った前述の内容からすれば、まさしくビルの屋上の縁にこのme が立っているという状況。ここまでの歌詞を聴いた限りでは、自殺志願の女がビルの屋上にいて、その傍で男が「気持ちは分かるが、考え直せ」と説得しているという情景が頭に浮かびます。ところが、このあとの第3節のコーラスで連呼されるのがjump という台詞なものですから、この曲の歌詞を自殺を促すものだと受け止めるネイティブ話者も多いようです(前述のDavid Lee Roth が語った証言も影響しているのでしょうけども)。ですが、果たしてそうなんでしょうか?David が唐突に語ったthe song is about a stripper という言葉がどうも引っかかって仕様がなかった僕の脳裏にふと浮かんだのは、まったく別の情景でした。場所は場末のストリップ・クラブ。女(ストリップ嬢)が立っているのはビルの屋上ではなく店内の小さなステージの上です。女の目下の悩みは「別に見た目が悪くなってきたとは思わないが、自分も年増になってきたので、若い踊り子には勝ち目がない」ということで、そのことを愚痴っている彼女を前に馴染み客の男が「まあ、気持ちは分かるけど、やけになっちゃいけないよ。俺なら弱音なんて吐かねえ」と慰めています。そして、男は女に向かって最後にこう言うのです。「もうここでの仕事は辞めて何か新しいことにチャレンジ(jump)してみたら?」と。
このように考えれば、David Lee Roth の「The song is about a stripper」という発言を矛盾なく説明できますし「There was a whole crowd of people in the parking lot downstairs yelling "Don’t jump, don’t jump" and I thought to myself, "Jump"」という言葉にも納得がいくのです。なぜなら僕は、彼のこの発言が「自殺志願者に皆が「やめろ、やめろ」と言っているのに「やれ」と心の中で叫ぶ自分がいた」ということを言いたかったのではなく「人が何か困難に直面してどうしようか迷っている時、誰かがその背中を押してやらないといけない」ということが真意ではなかったのかと思うからです。つまり、Jump という曲の歌詞は、ビルから飛び降りようとしていた男の姿にインスパイアーされて書き始めたとは言え、完成した歌詞にはその事実は反映されておらず、困難に直面して悩んでいる人に対して、その困難に立ち向かえと勇気づけるということがその本意であると考えて間違いないでしょう(←あくまでも個人の意見です・汗)。おっと、結論を先に述べてしまいましたが、残りの歌詞もざっと見ておきましょうね。第3節1行目のmight as well は、主語のyou が省略されています。You might as well~は「~した方が良いのではないかと思いますが」みたいなすごく控え目な提案の仕方なんですが、この話者は段々と熱くなってきたのか3行目以降は命令形になってしまってますね(笑)。ここのGo ahead は「やりなよ」ってな感じで、クリント・イーストウッドが映画「ダーティーハリー」で使った決め台詞「Go ahead, make my day」を思い出します。4節は、男とストリッパー嬢との掛け合いに、唐突に第3の人物が出てきたという印象を拭えませんが、言ってることは同じくストリッパー嬢への励ましです。1行目のWho said that?は文字どおり「誰がそんなことを言ったの?」ですけども、ここでは「そんなイカしたことを言ってるのは誰だ?」つまり「いいこと言ってくれるねー」という意味で使っているような気がします。なので、1行目は女を励ました男に対して、2行目以降は励まされた女に対する言葉であると僕は理解しました。5、6節目は2、3節目のフレーズの繰り返し。そのあと、ギターソロとキーボードのソロが入って、再びコーラス。最後にアウトロでJumpを連呼して曲は終了します。以上がJump という曲の歌詞に対する僕の解釈。先に結論でも述べたとおり、落ち込んだり、悩んだりしている人などに対して『がんばれよ、元気出せよ』と励まそうとする歌詞になっているということです。メロディーラインもそのようにアレンジされていると思いますし、実際、欧米では選手を鼓舞する為の曲としてスポーツの試合でよく使われていますね。
話は変わりますが、この名曲を世に送り出したVan Halen 兄弟の兄の方のEddie Van Halen、彼は「タッピング」と呼ばれる、通常はピッキングを行う右手の指でフレットボード上の弦を直接叩きつけて音を出す速弾き奏法を世に広めて多くの同業者に影響を与えただけでなく、尊敬され、愛された人物でしたが、長年に渡って舌癌と闘病したのち、2020年に咽頭癌で死去されています。享年65歳(涙)。因みにEddieは舌癌の原因をギターの演奏中、予備の金属製ピックを口の中に入れておくという習慣を長年続けていたせいであると主張していたそうですけど、医師の見解によると、Eddie はヘビースモーカーであった為、喫煙によって引き起こされた可能性の方が高いらしいです(喫煙者の咽頭癌の発生率は非喫煙者の5倍。口腔癌 (舌癌を含む)の発生率は非喫煙者の7倍だそう・汗)。
【第95 回】Breakfast in America / Supertramp (1979)
あれれぇー?気付けばこのコーナーも、第100回を迎えるまであと僅かじゃないですか!という訳で、緊急企画を用意することにしました(←こじつけにも程があるぞ・笑)。その名は「何度か耳にしたことがあるけれども、誰の曲なのか名前が出てこない曲を3回連続でお届けするシリーズ」(←やめてくれ、長ったらしい・怒)。その第1回目として本日は、Supertramp が1979年にリリースしたBreakfast in Americaという曲を紹介します(同名のアルバムからシングルカットされたThe Logical Song の方がアメリカではヒットしましたね)。Supertramp は1970年にイギリスのロンドンでRoger Hodgson とRick Daviesが中心となって結成したロックバンドで、欧米では今でも非常に人気がありますけども、日本での知名度はいまいち。なので「ドナルド・トランプが遂にバンドまで結成したのか?そんなグループの名前初めて聞いたぞ」と仰る方もいらっしゃるかも知れません(←そんな奴いねーよ)。来日も1976年の一度きりで、Breakfast in America の日本発売時はバンドのメンバーではなく、黄色のウエイトレスの制服に身を包み、オレンジジュースの入ったグラスを自由の女神のように右手で頭上に掲げてレコードのジャケットにメインで写っていたプロレスラーみたいにごつくてデカいおばちゃん(失礼!Kate Murtagh という女優さんです)が来日して曲のプロモーション活動をしていたことを思い出します(笑)。Take a look at my girlfriend
She’s the only one I got
Not much of a girlfriend
I never seem to get a lot
Take a jumbo across the water
Like to see America
See the girls in California
I’m hoping it’s going to come true
But there’s not a lot I can do
僕のガールフレンドを見てよ
初めてできた彼女なんだ
まあ、大したことない娘なんだけどさ
だって、僕がもてたことなんてないんだもの
ジャンボ・ジェット機で海を越えて
アメリカを見てみたいな
カリフォルニアの女の子たちを見てみたい
それが現実のものとなることを願ってる
けど、僕にできることって多くはないんだよな
Could we have kippers for breakfast
Mummy dear, Mummy dear?
They gotta have ‘em in Texas
‘Cause everyone’s a millionaire
I’m a winner, I’m a sinner
Do you want my autograph?
I’m a loser, what a joker
I’m playing my jokes upon you
While there’s nothing better to do, hey
Ba da da dum
Ba da da dum
Ba da da da dum
朝御飯にキッパーを食べられるのかな
ねえねえ、母さん?
テキサスにキッパーはきっとあるよね
だって、みんな大金持ちなんだからさ
僕は勝者で、罰当たり
僕のサインが欲しいかい?
僕は敗者で、なんて取るに足らない
僕は君をからかってるのさ
それが一番だからね
ジャーン
ジャーン
ジャジャジャ、ジャーン
Don’t you look at my girlfriend (Girlfriend)
She’s the only one I got
Not much of a girlfriend (Girlfriend)
I never seem to get a lot (What she’s got? Not a lot)
Take a jumbo across the water
Like to see America
See the girls in California
I’m hoping it’s going to come true
But there’s not a lot I can do, hey
Ba da da dum
Ba da da dum
Ba da da da dum
僕のガールフレンドを見ないでよ(ガールフレンド)
初めてできた彼女なんだ
まあ、大したことない娘なんだけどさ(ガールフレンド)
だって、僕がもてたことなんてないんだもの(彼女には何がある?多くはないよね)
ジャンボ・ジェット機で海を越えて
アメリカを見てみたいな
カリフォルニアの女の子たちを見てみたい
それが現実のものとなることを願ってる
けど、僕にできることって多くはないんだよな
ジャーン
ジャーン
ジャジャジャ、ジャーン
Breakfast In America Lyrics as written by Rick Davies, Roger Hodgson
Lyrics © Almo Music Corp.
【解説】
スタンウェイのグランドピアノから放たれるどこか哀愁漂う音色と共に始まるイントロが印象的なBreakfast In America。そのあと、ピアノ以外にもリード・オルガンや汽笛オルガン(カリオペ)、クラリネット、チューバ、トロンボーンといった様々な楽器の音色が登場するという洋楽では珍しい曲です。この曲の歌詞はRoger Hodgson がまだ無名のミュージシャンであった10代の頃に書いたもので(その当時はイギリス在住)、彼は雑誌のインタビューでBreakfast In America の歌詞について次のように語っています。
「The line ‘playing my jokes upon you,’ I think that kind of sums up the song. It was just mind chatter. Just writing down ideas as they came, fun thoughts all strung together. And I do remember the Beatles had just gone to America, and I was pretty impressed with that. That definitely stimulated my dream of wanting to go to America. And obviously seeing all those gorgeous California girls on the TV and thinking, Wow. That’s the place I want to go」
この人は話をうまくまとめる才能があるのか、Breakfast In America は上記の言葉がそのまま歌詞になったようなものなので、もはや僕の解説は不要ですね(笑)。という訳で「今日はこれにてお終い!」と言いたいところなんですが、それではこのコーナーの存在意義が無くなってしまいますので、いつものように歌詞を追っていきましょう。
第1節2行目のShe’s the only one I got は直訳すれば「彼女は私が手にしたたった一人の人」ですが、要は「彼にとって初めてできたガールフレンドがその女性である」ということです。3行目はShe is が省略されてますね。be not much of a~は「何かを完全に肯定はしないけども、否定するほどでもない」つまり「大した~ではない」という意味で使われます。5行目も主語のI が省略されており、jumbo というのはjumbo jet の略。the water はThe Atlantic Ocean の言い換えです。なのでTake a jumbo across the water は「ジャンボ・ジェット機に乗って大西洋を越える」ということなのですが、なぜそんなことをしたいのかの理由が6、7行目のI like to see America, I like to see the girls in California です。ここのAmerica は勿論、the United Statets of America ですね。前述のjumbo jet は平均座席数が約500席というボーイング社の超大型機747の愛称。この曲がリリースされた時代、欧州と北米を結ぶ航空路線にはこの機種が次々と導入されていて、その結果何が起こったかというと、需要よりも客席の供給数が大幅に上回って航空運賃が劇的に下がるということでした。なので、この節を深読みするならば「それほど裕福でない若者であってもアメリカへ簡単に渡るチャンスが今の時代には出てきた」という希望が示唆されているのかも知れません(←考え過ぎだろ・汗)。この節の歌詞だけ聴くと、僕の頭に浮かんできたのは「自分の彼女は冴えないなー、まあ、自分はもてないし、彼女がいるだけでも良しとしよう」と考えながら主人公がテレビを見ていると、カリフォルニア州のビーチで寝そべるビキニ姿の華やかなアメリカ娘たちが映し出され「あー、アメリカ娘は開放的でかわい子ちゃんだらけだ、行ってみたいなー、アメリカ」とテレビの画面を羨望の眼差しで見つめているというような情景でしたが、第2節を聴くと、主人公がアメリカへ行きたい理由はそれだけではないということが分かってきます。
第2節1行目のkippers。「なんじゃそれ?、ユダヤ人が被ってるヘンテコな帽子のことか?」って感じですけども、これはニシンの燻製のことです。日本で言うところの魚の干物みたいなもので、イギリスの朝食の定番とされていますが、朝からこんなものを食ってる人を僕はイギリスで見たことはないですね(笑)。1行目のbreakfast の後ろにはin America(in the U.S.A)があって、それが省略されていると考えてください。つまり、曲のタイトルとなっているのまさしくこの部分。3行目のThey gotta have ‘em in Texas のTheyはAmericans、’em(them)はkippers のことですね。この2節目の1行目から4行目は、歌詞の主人公がテキサスへ言ってもイギリスと同じようにkipper を食べられるだろうかと母親に尋ねているのではなく(ここでテキサスが引き合いに出されているのは、テキサスには石油で財を成した大富豪が多いというイメージがHodgson の中にあったのだと思われます)、金持ちになればどこにいようがkipper だって何だって手に入れられるのだという暗喩であり、それを補足するかのように5、6行目に主人公の成功欲が示されています。6行目のDo you want my autograph?は主人公が有名人になりたいという願望の現れであり、彼がアメリカへ渡りたいのは、カリフォルニアのアメリカ娘を見る為だけでなく、アメリカで成功したい(何だって手に入れられるような身分になりたい)からだと僕は理解しました。ですが、一方で彼は現在の自分の置かれたお寒い状況を冷静に見ていて、そのことが吐露されているのが7行目以降。「アメリカへ行って成功者になりたいなんて、冗談ですよ、冗談!」って感じですかね。9行目のthere’s nothing better は「より良いことは何も無い」ですから「それが一番である」と言い換えできます。最後のBa Da Dum は、コメディアンとかがコントの最後にオチを言ったあと使うオノマトペのようなもので、日本でもお笑いのオチを「チャンチャン」とかの効果音と共に終わらせるのと同種のものと言えるでしょう。
第3節は1節目と同じフレーズが連なっていますが、良く聴くと出だしだけ違っていてDon’t you look at my girlfriend になっています。最初は「見てくれ」と言っていたのになぜ今度は「見るなと」言い始めたのかがいまいち良く分からないのですが、夢を追うのも大事だが、今の自分の前から彼女までいなくなってしまえば本当に自分には何もなくなってしまうことに気付いた主人公が、冴えない彼女であっても彼女を誰かに取られるなんてことはあってはならないとばかりに「彼女を見るな、彼女に目を向けるな」と他の男たちに向かって言っているような気が僕にはしました。ということで、冒頭で紹介したRoger Hodgson の言葉どおり、この曲の歌詞がイギリス人少年(もしくは青年)のアメリカへの純粋な憧れを表現していることが分かりましたね。そんな歌詞を書いた当時のHodgson、恐らく自分がアメリカに渡り成功者となる日が来るなどとは思いもしていなかったし、友人を揶揄う為のまさしく冗談のひとつに過ぎないと考えていた可能性が大ですが、その後、Supertramp を結成した彼は1977年、27歳でアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスに移住、Breakfast In America のアルバムの大成功によって億万長者となり、その夢を冗談のまま終わらせずに実現しました(ですが、1982年にSupertramp を脱退した後は、自宅の天井裏から落下して両手骨折をしたり、自らがプロデュースしたアルバムが大ゴケしたりとご難続きで、暫くは音楽業界から姿を消して忘れられた人になっていましたけども、1997年頃より再び業界に戻り、それ以降は細々と活動を続けられています)。
では、最後に久々のトリビアをひとつ。Supertramp という風変わりなバンド名はRick Davies が同姓であることから贔屓にしていたイギリスのウェールズ出身の詩人William Henry Davies が自ら体験を綴った書物のタイトル「The Autobiography of a Super-Tramp(並外れた放浪者の自伝)」から着想を得たそうで(Rick 自身はイングランド生まれですがDavies姓はウェールズに由来する苗字)、trampに放浪者の意味があるとおり、William Henry Daviesは人生の大半をアメリカとイギリスの各地を放浪して過ごしていた人で、tramp と言うよりも所謂「吟遊詩人bard」ですね。
【第96回】Have You Ever Seen the Rain? / Creedence Clearwater Revival(1970)
名前が出てこないシリーズ第2弾。今日紹介するのはHave You Ever Seen the Rain?という名曲です。この曲を聴いて「あっ、知ってるこの曲」と仰る方は多いはずだと思いますが、誰の曲なのかと問われれば「誰だったっけ?」となるのではないでしょうか。この曲を演奏しているミュージシャンの正体、その名はCreedence Clearwater Revival。「なんだよ、その長ったらしいヘンコな名前は!」と思わず叫びたくなるような名前のせいか(ヘンコは関西弁で偏屈(者)のことです)世間ではCCR か、単にCreedence と呼ぶ人が多いみたいですよ(笑)。CCR(←早速使わせてもらいましょう)は1959年にFogerty 兄弟(John とTom)らが中心となって西海岸のサンフランシスコ郊外で結成したBlue Velvets というロックバンドがその前身。その後Golliwogsという名を経て、1967年、Creedence Clearwater Revival に改名しています(CCR はアメリカ南部で隆盛したSouthern Rock の元祖の一人とされていますが、4人のメンバーは全員カリフォルニア州出身・笑)。で、そのヘンコな名前の由来はと言いますと、CreedenceはTom Fogertyの友人の一人であるCredence Newballという人物の名前から、ClearwaterはOlympiaというビール会社のCMで使われていた言葉から拝借したそう。そして、最後のRevivalには50年代のロックンロールへの回帰という意味が込められているらしいです。この名前の付け方からしても、やはりFogerty 兄弟はヘンコですね(笑)。Someone told me long ago
There’s a calm before the storm
I know, it’s been comin’ for some time
When it’s over, so they say
It’ll rain a sunny day
I know, shinin’ down like water
昔、誰かが僕に言ったんだ
嵐の前には静けさがあるってさ
でも、暫く前から嵐は近付いてたのさ
嵐が過ぎれば、皆は言うよね
晴れた日に雨が降るんだってね
ああそうさ、土砂降りになるよ
I wanna know, have you ever seen the rain?
I wanna know, have you ever seen the rain?
Comin’ down on a sunny day
僕は知りたいんだ、君が雨を見たことはあるのかってね
僕は知りたいんだ、君が雨を見たことはあるのかってね
晴れた日に降る雨をね
Yesterday, and days before
Sun is cold and rain is hard
I know, been that way for all my time
‘Til forever, on it goes
Through the circle, fast and slow
I know, it can’t stop, I wonder
昨日とそれより前の何日か
空は曇っていて雨は激しかった
僕にとってはずっとそんな風だったのさ
これからも永遠に、それは続くんだ
時には速く時にはゆっくりと、円を描きながら
それを止めることはできないのさ、だから
I wanna know, have you ever seen the rain?
I wanna know, have you ever seen the rain?
Comin’ down on a sunny day
Yeah!
僕は知りたいんだ、君が雨を見たことはあるのかってね
僕は知りたいんだ、君が雨を見たことはあるのかってね
晴れた日に降る雨をね
雨をだよ!
I wanna know, have you ever seen the rain?
I wanna know, have you ever seen the rain?
Comin’ down on a sunny day
僕は知りたいんだ、君が雨を見たことはあるのかってね
僕は知りたいんだ、君が雨を見たことはあるのかってね
晴れた日に降る雨をね
Have You Ever Seen the Rain? Lyrics as written by John Fogerty
Lyrics © Concord Music Group Inc
【解説】
アコースティック・ギターのシンプルな音色のイントロとそれに続くJohn Fogerty の力強い歌声。なんかロックと言うよりもフォークソングみたいで、節回しと言うのか、John Fogerty の歌い方もちょっと変わってます(←やはりヘンコだからでしょうか?・笑)。この曲がアルバムからシングルカットされてヒットしたのはベトナム戦争真っ只中の1971年。フォーク調であったことも手伝ってか(当時、反戦フォークは世界的ムーブメントでした)、歌詞の中の「雨」という言葉を米軍がベトナムで使用していた残虐非道なナパーム弾(焼夷弾の一種)であると解釈する人もいて、誰が言い出したのかHave You Ever Seen the Rain?はベトナム戦争に対する反戦歌であるとする説が日本では広まっていったようなのですが、その説は根拠の無いまったくの出鱈目。作詞作曲を担当したJohn Fogerty が自ら歌詞について次のように語っていることからも、この曲が反戦歌でないことは明白なのです。
「That song is really about the impending breakup of Creedence. The imagery is, you can have a bright, beautiful, sunny day, and it can be raining at the same time. The band was breaking up. I was reacting, ‘Geez, this is all getting serious right at the time when we should be having a sunny day.’」
この発言の中のthe impending breakup of Creedence が何を指しているのかというと、バンドのメンバーである兄のTom FogertyがCCRからの脱退を表明したことでバンドが解散の危機に瀕しているという状況のことであり、Have You Ever Seen the Rain?はベトナム戦争に対する反戦歌ではなく「バンドは商業的に成功して絶頂期にあるのに(晴れている)なぜ解散みたいなこと(雨が降る)になってしまうのか?」というJohn Fogerty の嘆きなのです。このことを理解して曲を聴けば、歌詞は「ああ、なるほどな」という内容になっていますので、一緒に歌詞を見ていきましょう。この曲も歌詞に使われている英単語はほぼ中学校の英語の授業レベルのものですので、英語的な解説はそれほど必要なさそうです。
第1節、ここの3行目のfor some time は「暫くのあいだ、暫く前から」という意味。主語のit’s は勿論、the stormのこと。つまり、1行目から3行目の歌詞が暗喩しているのは「Tom Fogertyは突然にCCR からの脱退を言い出したのではなく、その芽はそれ以前からあった」ということです。ここでのthe stormは「バンドの内紛」の言い換えですね。4行目のso they say はThat’s what they sayと同義。5行目のIt’ll rain a sunny dayに込められた真意は、先程に述べたとおり。最後のshinin’ down like water は直訳すれば「水のように降り注ぐ」ですが、ここでは雨のことを話しているので「土砂降り」の詩的表現だと僕は理解しました。即ち、このshinin’ down like waterは「大変なことになる」の暗喩であり、冒頭で引用したJohn Fogerty の言葉の中にあった「this is all getting serious」の言い換えだと言えるでしょう。要するにJohn Fogerty は「Tomが脱退すれば大変なことになる(バンドが崩壊して解散につながる)」ということをI know(確信)しているのです。なので、第2節のhave you ever seen the rain?のyou が兄のTom を指していることに疑問の余地は無く、the rain が「バンドの解散」の言い換えと考えれば、John Fogerty がTom に対し「なあ兄貴、俺たちのバンドは今が一番輝いてる時なのに、兄貴が辞めたらバンドが解散することになっちまうって、兄貴は分かってんのかよ?」と嘆いているというか、非難していることが分かります(←そういう弟の態度というか姿勢(こういうことを歌詞にしてしまうデリカシーの無さ)が、常にTom の神経を逆撫でしていたのかも知れませんね←あくまでも個人の推測&見解です・汗)
次に第3節、4行目’Til forever はfrom now until forever のfrom now が省略されています。forever だけだと、永遠という未来へ向かう出発点がどこからなのかが分かりませんが、’Til forever にすると「今から今後は」という出発の地点が明確に強調されます。同じ行のon it goes は「それは続く、進行する」という意味で次の行のthroughと結びついています。つまり、この行で暗喩されているのは「バンド内のいざこざ(Sun is cold and rain is hard)は今日、昨日に始まったことではなく、自分にとってはずっとそうだった。それはこれからもずっと続くし(on it goes through the circle)、終わりもない(it can’t stop)」ということです(円からは、同じところをぐるぐると回るという「堂々巡り」のような状況がイメージできますね)。この節を聴いて僕は「成功の頂点にいる今の時期に解散に追い込まれることは賛成できないが、解散すること自体に反対している訳ではない(なぜなら、自分もTom を含めた他のバンドのメンバーにうんざりしているから)。けれども、内輪揉めを繰り返すくらいなら、このまま解散するのも悪くないな」という思いが実のところJohn Fogerty にはあったのではないかと感じました(←個人の意見です)。だからこそ、Tom が脱退した1971年の翌年、CCR は呆気なく解散したのではないかというような気が僕にはします。
さて、そのTom Fogerty、脱退後はソロで音楽活動を続け、CCR が再結成されることもない中で1990年に48歳の若さで病死しました。洋の東西を問わず、不仲な兄弟というのはどこにでもいて、心理学者は、幼少期に兄弟がライバル関係にあった場合、不仲になりやすいと分析していますが、Fogerty 兄弟が不仲だった原因は、二人ともヘンコだったからなのかも知れませんね(←結局そこに持っていくのかよ・笑)。
【第97回】We’re an American Band / Grand Funk Railroad (1973)
名前が出てこないシリーズ、最終回はWe’re an American Band という曲を紹介します。この曲も「ふーむ、どこかで聞いたことがあるぞ」ってやつですね。で、誰の曲かと言いますと、Grand Funk Railroadというまたまた長ったらしいヘンコな名前のロックバンドの曲です(またヘンコかよ・笑)。Grand Funk Railroad は1967年、既にプロのミュージシャンとして活動していたMark Farner、Don Brewer、Mel Schacher の3人によってミシガン州デトロイト郊外のFlint という町で結成されたバンドで、地元で有名だった鉄道会社「Grand Trunk Western Railroad(現在はカナダの鉄道会社CN の傘下)」にちなんで「Grand Trunk Railroad」の名でデビューを目指しましたが、すぐに鉄道会社からクレームが出た為、仕方なく「Grand Funk Railroad」に変更したのだそう。このバンドもまた、世間ではGFR とかGrand Funk と短縮形で呼ばれることが多いようですよ(笑)。Out on the road for forty days
Last night in Little Rock put me in a haze
Sweet, sweet Connie and doing her act
She had the whole show and that’s a natural fact
40日間の巡業に出てたのさ
そのせいで昨晩はリトルロックでへとへとさ
愛しいコニーちゃんはせっせと励んでたけどね
彼女、場を仕切ってたよ、いつものようにね
Up all night with Freddy King
I got to tell you poker’s his thing
A-booze ‘n ladies keep me right
As long as we can make it to the show tonight
フレディー・キングと徹夜したんだ
奴、ポーカーが得意なんだ
でも、酒と女が俺を正気でいさせてくれるね
今晩、舞台に立つ限りはね
We’re an American band
We’re an American band
We’re coming to your town, we’ll help you party it down
We’re an American band
俺たちはアメリカのバンドなんだ
俺たちはアメリカのバンドなんだ
俺たちがあんたの街へ行って、とことん楽しませてやるさ
俺たちはアメリカのバンドなんだもの
Four young chiquitas in Omaha
Awaitin’ for the band to return from the show
I’m feelin’ good, feelin’ right, it’s Saturday night
The hotel detective, he was outta sight
4人の可愛いこちゃんがオマハにいてさ
バンドが公演から戻るのを待ってたよ
俺はご機嫌で、いい感じだったぜ、だって土曜の夜だぜ
それにホテルの警備係、彼もイカした奴だったぜ
Now, these fine ladies, they had a plan
They was out to meet the boys in the band
They said, "Come on, dudes, let’s get it on,"
And we proceeded to tear that hotel down
でさ、その可愛いこちゃんたちには計画があったんだよな
彼女たち、バンドの連中に会おうとしてて
こう言ったね「ねえ、あんたたち、しようょ」って
だから俺たちはホテルをぶっ壊し始めたのさ
We’re an American band
We’re an American band
We’re coming to your town, we’ll help you party it down
We’re an American band, hey!
We’re an American band
We’re an American band
We’re coming to your town, we’ll help you party it down
We’re an American band, ah, ah, ah down!
俺たちはアメリカのバンドなんだ
俺たちはアメリカのバンドなんだ
俺たちがあんたの街へ行って、とことん楽しませてやるさ
俺たちはアメリカのバンドなんだもの、そう!
俺たちはアメリカのバンドなんだ
俺たちはアメリカのバンドなんだ
俺たちがあんたの街へ行って、とことん楽しませてやるさ
俺たちはアメリカのバンドなんだもの、そう、そう、やってやるさ!
*このあと、ブリッジを挟んで同じコーラスのフレーズを繰り返し、曲は終了します。
We’re an American Band Lyrics as written by Don Brewer
Lyrics © Brew Music Co.
【解説】
イントロのドラムの響きが印象的なこの曲、歌詞にはとても簡単な英単語しか使われていませんので、英語としてはすっと耳に入ってきますが、何のことを歌っているのかとなると「?」マークが頭の中で旋回しますね。はっきり言ってWe’re an American band くらいしか理解できません(笑)。ですが、幸いにもこの歌詞を書いたDon Brewer はとてもお喋り好きな人のようで、この曲の歌詞についてたくさんの発言を残していますから、それらの彼の発言を手掛かりにして歌詞の意味を探っていきましょう。Don Brewer はこの曲が生まれた経緯に関してずばりこう語っています。
「We were touring, supporting The Phoenix Album, we were going from town to town, there were lawsuits flying all over the place, it was a very tumultuous time period. I remember lots of discussions in the back of cars going, ‘What are we going to do next?’ Our manager kept saying, ‘Why don’t you just write songs about what you do, you’re out here on the road, you’re going to this hotel, you go to different places, there’s people, you come into town. So the thought came into my mind, ‘We’re coming to your town, we’ll help you party it down.’ That’s really what we were doing, we were coming into town and we were the party. That’s where the line came from, and the next thought I had was, ‘We’re an American band.’ It wasn’t to wave the flag or anything, it was just simply what we were. It was a true description and it kind of rolled off my mind」
ほんと、良く喋る人ですよね、この人は(笑)。長いので簡単にまとめますと、Don Brewer がアルバムPhoenix(1972年リリース)のプロモーションでアメリカ各地を巡業中、仲間内で「次はどんな曲を出すべきか、失敗はできない」という話にしょっちゅうなり、その際、マネージャーが「君たちはツアーに出て、ホテルに行って、いろんな場所に行って、そこに人がいて、その街に行く。そういう君たちがやってることを曲にしてみたらどうだろう?」と言ったことにインスパイアーされ「そうだ、俺たちが街へ行って、パーティーを盛り上げてやる。それがアメリカのバンドがやることなんだ」と思って書いたのがこの曲だということです(←簡単にまとめられませんでした・汗)。
では第1節です。1行目は文頭のI was が省略されていると考えて良いでしょう。そのあとのthe roadは、前述のDon Brewer の発言に照らし合わして、バンドの巡業のことであると容易に理解できます。40日間の公演を終えて、昨夜はリトルロックでバタンキュー寸前だったという訳です(ひょっとしてバタンキューも死語ですかね?笑)。3行目のSweet Connie。Connie は女性の名前だと直ぐ分かりますが、それが誰なのかと言うと、当時、有名人とsex することを目的に追っかけをする女性として有名であったConnie Hamzy の愛称が「Sweet Sweet Connie」であったことや、彼女の故郷がアーカンソー州の州都リトルロックであったことからして、Connie Hamzy のことであると断言して間違いないですね(因みに1972年のツアーでGFR はアーカンソー州でコンサートを催していませんけども)。つまり3、4行目では、Connie Hamzy が自分(Don Brewer)にもアプローチしてきたと匂わせているのです(笑)。第2節も文頭のI was が省略されてます。そのあと、1節目と同じく人名が出てきますが、今度はFreddy King とフルネームですね。この名前を聞いて最初に思い出すのはブルース界の3大キングの一人のFreddy King(あと二人はB.B. King とAlbert King)。そして、この歌詞に出てくるFreddy King についてDon Brewerは次のように語っています。
「Freddie King was the opening act for us, the great Blues guitar player from Texas. It always struck me as funny that he would make his band play poker with him every night. We used to sit in on some of the poker games, and that’s where that line came from. His band, he’d pay them, and then he’d go win all the money back so they were broke and they’d have to keep playing for him, it was a great deal. A lot of people don’t understand the Freddie King part because they don’t know who Freddie King is. Anybody who knows about Freddie King immediately picks it up. People who don’t say, ‘What are you saying, that Focus can’t sing?’」
マジでこの人、良く喋ります(笑)。やはり、この歌詞に出てくるFreddy は3大キングの一人であるFreddy King でしたね。ただ、Don Brewer はA lot of people don’t understand the Freddie King part because they don’t know who Freddie King is と言っていますが、これはちょっと違いますよね。Freddie King が誰であるかを知っている人は多いはずで、人々が知らないのはFreddie King がポーカーの名手ということじゃないでしょうか。それにしても、自分のバンドのメンバーにギャラを払ってはポーカーで全額巻き上げ、また働かせては巻き上げるって、大阪の西成のヤクザのやり口じゃないですか(笑)。Freddie King、恐るべしです。3行目のbooze はスラングで酒のこと。4行目のmake it to~はシチュエーションによって意味が若干変わってきますが大抵は「~に間に合う、~に出席する、~に参加する、~へ到達する」といった感じで使われます。第3節のコーラス部分もDon Brewer が語っていたとおり。3行目はtown とdown で韻を踏んでいますね。Party down と聞くとなんか盛り下げるといった感じがしますが、実はまったくその逆で「とことん楽しむ」という意味になります。第4節、1行目のchiquita はスペイン語のchica(若い女性)の指小辞。つまり、スペイン語での感覚では小学生くらいの子供の女性ですが、アメリカ英語では「若い女友達、かわいらしい女性」の意味で使われているようです。Omaha はLittle Rock の北約800キロに位置するネブラスカ州にある大都市。なので、第4節では舞台がLittle RockからOmahaに変わっているということになります。では、なぜオマハなのか?その理由をDon Brewer は「It came from a situation where we checked into a hotel in Omaha, Nebraska. There were four groupies in the lobby waiting to see the band」と語っています。なので、この節のchiquitasというのはグルーピーのことで確定すね。今では考えられないことですが、有名ミュージシャンたちと彼らを追っかけるグルーピーが各地のホテルで乱痴気騒ぎ(セックスとドラッグ)を繰り返すという光景は70年代当時、あたりまえに見かけられたものでした。4行目のhotel detective は日本では恐らく存在しない職業で、ホテルの宿泊者のマナー違反や不法行為を監視する為に雇われた私服の警備員のこと。最後のbe out of sight は「素晴らしい、ずば抜けている、すごい」といった意味で使われるスラングで、ここではそのhotel detective が「その夜に起こることになる乱痴気騒ぎに目をつぶってくれるいい奴だった」という意味で使っているのではないかと思います。He was a nice guy で良いところを、前行のnight と韻を踏むためにわざわざhe was outta sight という表現にしたのでしょう(←すべて個人の意見です)。5節目は4節目の話の続きですね。3行目のlet’s get it on は「セックスしようよ」と言ってるとしか考えられません(←ほんとかよ?)。その結果、tear that hotel down することになったという訳です。tear downは「破壊する」という意味ですが、ここでは実際にホテルを破壊したのではなく、乱痴気騒ぎを始めたという暗喩でしょう(まあ、東京ヒルトンを破壊したツェッペリンのように、ホテルの部屋や設備を意味もなく壊す馬鹿もいてたことは確かですが)。ここでわざわざtear that hotel down という表現を使っているのは、コーラスのparty it down と韻を踏む為だと考えられます。
以上のように、Don Brewer の発言内容を知らなければいまいち良く分からない歌詞ですが、逆に知っていれば簡単に理解できる歌詞ですね(笑)。このDon Brewerはボーカル兼ドラム担当の人。つまり、ドラムを叩きながらこの曲We’re an American Bandを歌っている訳ですけども、イーグルスのDonHenley同様「ドラムを叩きながら歌うなんて、よくもそんな器用なことができるものだ」といつも感心してしまいます。
【第98回】Keep Your Hands To Yourself / Georgia Satellites (1986)
前々回にSouthern Rock なる音楽用語を紹介しましたが、今日は「これぞSouthern Rock!」という感じの曲を1曲どうぞ。1987年のビルボード社年間チャートで35位に食い込んだGeorgia Satellites のKeep Your Hands To Yourself です。ここでもう一度Southern Rock とは何なのかをおさらいしておきますと、Southern Rock はアメリカ南部でロックンロール、カントリー、R&B が融合しながら発展した音楽とされているロックの一分野。とは言え、特に厳密な定義がある訳でもなく、旧アメリカ南部連邦の州で結成されたバンド(もしくはその雰囲気を持つバンド)の曲であり、尚且つ、聴いた人が「これは南部風だなと(田舎臭いなと・笑)」感じるような曲にその名が冠されることが多いようです。要は、聴いた人がこれはSouthern Rock だと思えばそうであるということですね(←なんだよ、その説明・笑)。Georgia Satellitesはその名のとおり、1980年にジョージア州アトランタでプロのギタリストDan Baird が中心となって結成したロックバンドなんですが、実はこのDan Baird もカリフォルニア州のサンディエゴ生まれなんですよねぇー(笑)。両親の仕事の関係で5歳の頃にアトランタへ移住しているんですが、本人は生粋の南部人として生きることを誓っているようです。I got a little change in my pocket going jing-a-ling-a-ling
Wanna call you on the telephone, baby, I give you a ring
But each time we talk, I get the same old thing
Always, "No huggee, no kissee until I get a wedding ring"
ポケットの中でジャラジャラいってる小銭があるんでさ
君に電話したいんだよね、そう、電話するのさ
でも、君と話す度に俺がもらう返事は同じ事ばかりさ
いつもそう「結婚指輪をもらうまでは、ハグもキスも無しよ」だなんてさ
My honey, my baby
Don’t put my love upon no shelf
She said
"Don’t hand me no lines and keep your hands to yourself"
あー、君、愛しの君
俺の気持ちを宙ぶらりんにしないでくれよ
そしたら彼女
「戯言は聞きたくないの、ちょっかい出さないで」だってよ
Ooh, baby, baby, baby
Why you gonna treat me this way?
You know I’m still your loverboy
I still feel the same way
That’s when she told me a story ‘bout free milk and a cow
And said
"No huggee, no kissee until I get a wedding vow"
あー、君、君、愛しの君よ
どうして君はそんな風に俺をあしらうんだよ?
俺が君の恋人だって分かってんだろうよ
俺の気持ちは変わらないよ
君がミルクと牛の教訓の話をしてもね
すると君はこう言ったんだ
「結婚の誓いをするまでは、ハグもキスも無しよ」ってね
My honey, my baby
Don’t put my love upon no shelf
She said
"Don’t hand me no lines and keep your hands to yourself"
あー、愛しの君
俺の気持ちを宙ぶらりんにしないでくれよ
そしたら彼女
「戯言は聞きたくないの、ちょっかい出さないで」だってよ
Over here
You see, I wanted her real bad and I was about to give in
That’s when she started talking about true love
Started talking about sin
I said
"Honey, I’ll live with you for the rest of my life"
She said
"No huggee, no kissee until you make me a wife"
こっちだよ
あのさ、彼女としたかったしその気持ちに負けそうだった
彼女が本当の愛について話し始めた時はね
で、罪について話し始めた時さ
俺は言ったんだ
「愛しの君、残りの人生、俺は君と共に歩むよ」ってさ
そしたら彼女
「あたしを妻にしてくれるまでは、ハグもキスも無しよ」だってさ
My honey, my baby
Don’t put my love upon no shelf
She said
"Don’t hand me no lines and keep your hands to yourself"
あー、君、愛しの君
俺の気持ちを宙ぶらりんにしないでくれよ
そしたら彼女
「戯言は聞きたくないの、ちょっかい出さないで」だってよ
Keep Your Hands To Yourself Lyrics as written by Daniel Baird
Lyrics © Warner-Tamerlane Pub Corp.
【解説】
シンプルなコードで構成されたご機嫌なギターの音色のイントロに続く特徴的なボーカルの声。歌っているのはKeep Your Hands To Yourself の歌詞を書いたDaniel Baird。この人、独特な歌い方をするので、何を言ってるのかさっぱり聞き取れません。特にNo huggee, no kissee の部分なんかはひどいですね(笑)。なので、印刷された歌詞で意味を再確認したところ、ちょっと笑ってしまいそうな、なかなかユニークな歌詞でしたよ。実際、Daniel Baird もこの曲を書いた理由について「‘Keep Your Hands’ was written to make our drummer, my good friend David Michaelson laugh. That’s all it was written for, and he did laugh ・Keep Your Hands は、俺たちのバンドのドラマーで良き友人でもあるDavid Michaelson を笑わせようと書かれたものなんだ。それが書いた理由のすべてさ。彼も笑ってくれたしね」と語っています。
それでは、そのユニークな歌詞を見ていきましょう。1行目のjing-a-ling-a-ling はjingling のことで、語源は中国語の「玎玲」だそう。2行目の文末のa ring と韻を踏む為にjing-a-ling-a-ling にしたと思われます。jingling は、金属やガラスなどが触れ合って鳴る音を表すオノマトペであり、鍵がジャラジャラと鳴る音、風鈴がリンリンと鳴る音、お金がポケットの中で鳴る音や、ベルが鳴る音などを表現する際に使用されます。2行目は主語のI が省略されていて、最後のI give you a ring は、ここでは電話の話になっているので、普通は「あなたに電話をする」という意味になりますが、4行目にNo huggee, no kissee until I get a wedding ring とあるので、文字通り「あなたにリングをあげる」の意味をひっかけているのでしょう。その4行目(3行目も含む)からも分かるとおり、歌詞の主人公が電話をしようとしている相手は、結婚するまでハグもキスも許さない(つまりはsex させない・汗)というポリシーの女性のようです。因みにhuggee とkisseeはhug とkiss のことだと直ぐに分かりはしますが、日常会話ではあまり聞かないというか、ほとんど聞いたことのない言葉ですね。厳密に言えばkissee はkiss ではなく「kiss される人」の意味なので、huggeeも同じように考えれば、No huggee, no kissee はhug される人もkiss される人もいないということになり、No huggee, no kissee until I get a wedding ring は「結婚するまであたしはあなたにハグもしないしキスもしない、あなたも同様」という意味で女性が言っている可能性も無きにしもあらずです。まあ、いずれにしても「sex させない」と言っているのと同じですが(笑)。
第2節のコーラスは、2行目と4行目になぜか2重否定が使われていてちょっと分かりにくいです。特に4行目のDon’t hand me no lines は、普通はこのような言い方はしませんね。恐らく、大多数の人はDon’t hand me any of your lines と言うのではないかと思います。hand someone a line には「口先でだます、言いくるめる」という意味があり、keep your hands to yourself は、喧嘩になった際なんかに「僕にちょっかいを出すな!」といった感じで子供が良く使うフレーズです。第3節は、英語的に難しい部分はありませんが、5行目は英語の諺を知っていないと、何のことだかチンプンカンプンでしょう。ここのa story about free milk and a cow は諺の「Why buy a cow when you can get milk for free?・ミルクがただで手に入るのに、なぜわざわざ牛を買う必要がある?」もしくは「Why buy a cow when milk is so cheap?・ミルクがこんなに安いのに、なぜわざわざ牛を買う必要がある?」のことで、結婚しなくてもセックスしたり家事(料理や掃除など)をしてもらえるなら、わざわざ結婚なんてする必要はないと考える男性の比喩として良く使われます。つまり、この歌詞に出てくる女性は主人公の男に対し「あんたはそういう男だ。だから、結婚の誓いをするまではやらせない」と言ってる訳です(笑)。第4節は2節目と同じフレーズの繰り返しで、そのあとギターソロが入り第5節へ。1行目のOver hereは、自分の居場所を知らせる時に使う言葉。つまり、ここでは彼女の注意を自分に向けさせているのでしょう。2行目のI wanted her real bad はI wanted her so badly ということであり、I was about to give in その気持ちに負ける寸前だったということでしょう。やはり、主人公の男は彼女とやりたくてしょうがなかったんですね(笑)。ですが、彼女が愛について語り始めた時、その真剣さを知った男は反省したのか一生涯かけて彼女を愛することを決意、そのことを彼女に伝えると、彼女からの返事はNo huggee, no kissee until you make me a wifeだったというオチです。この主人公の男、とことんやらせてもらえないようですね(←下品な表現でスミマセン・笑)。
さて、この曲を大ヒットさせたGeorgia Satellites、その後ヒット曲を出すこともなく結局は一発屋で終わってしまいましたけども、バンド自体は解散やメンバーの入替えと再結成を幾度も繰り返しながら現在も活動中。フロントマンであったDaniel Baird は1990年にバンドから脱退。以降はソロ活動を続けていましたが、発病した白血病と闘病生活を送る為、2017年に事実上、引退しています。
【第99回】We Got the Beat / Go-Go’s (1980)
先日、インターネットで海外のニュースを検索していた際、2021年にGo-Go’s がロックの殿堂入りをしたという記事をたまたま見つけたので(ロックの殿堂に入ることが別にすごいことだとも価値のあることだとも思いませんが)、「これは懐かしいな」と思い、彼女たちが1982年にヒットさせたWe Got the Beat を紹介することにしました(1982年のビルボード社年間チャートで堂々の25位)。今しがた「彼女たち」と書いたとおり、Go-Go’s は1978年にロサンゼルスで結成された女性5人組のガールズバンド。デビューした頃の彼女たちは5人ともパンク風のイモ姉ちゃんという感じでしたが、ロックの殿堂入りのセレモニー会場に現れた彼女たちは全員、見事な熟女になってました。そりゃそうですよね、5人とも還暦を過ぎてるんですから(笑)。See the people walking down the street
Fall in line just watching all their feet
They don’t know where they wanna go
But they’re walking in time
通りを歩いてる人たちを見てよ
みんな足元を見て歩調を合わせてるよ
どこへ行きたいのかも分かんないってのに
みんなが調子を合わせて歩いてる
They got the beat
They got the beat
They got the beat, yeah
They got the beat
みんなノリが分かってんだよ
みんなノリが分かってんの
みんなノリが分かってんだよ、そう
みんなノリが分かってんの
All the kids just getting out of school
They can’t wait to hang out and be cool
Hang around ‘til quarter after twelve
That’s when they fall in line
下校時間になったらガキどもはみんなね
そのまま遊びに出掛けてかっこつけたいんだよね
12時15分までほっつき歩くの
みんなが歩調を合わせるのはその時だよ
They got the beat
They got the beat
Kids got the beat, yeah
Kids got the beat
みんなノリが分かってんだよ
みんなノリが分かってんの
ガキどもはノリが分かってんだよ、そう
ガキどもはノリが分かってんの
Go-go music really makes us dance
Do the pony puts us in a trance
Do the watusi just give us a chance
That’s when we fall in line
ゴーゴーの曲ってほんと踊れるよね
ポニーを踊ったらもう恍惚状態だよね
ワトゥーシを踊ったらチャンスだって到来よね
あたいらが歩調を合わせるのはその時だよ
‘Cause we got the beat
We got the beat
We got the beat, yeah
We got it
だってさ、あたいらはノリが分かってるんだもの
あたいらはノリが分かってんのよ
あたいらはノリが分かってんの、そう
あたいらは分かってんのよ
We got the beat
We got the beat
We got the beat
Everybody get on your feet (We got the beat)
We know you can dance to the beat (We got the beat)
Jumping, get down (We got the beat)
Round and round and round
あたいらはノリが分かってんの
あたいらはノリが分かってんの
あたいらはノリが分かってんのよ
みんな、立ち上がって(あたいらはノリが分かってんだから)
誰だってノリに合わせて踊れるよ(あたいらはノリが分かってんだから)
飛び跳ねて、屈んで(あたいらはノリが分かってんだから)
あちこち、そこら中でね
*このあとWe got the beat というフレーズを13回連呼して曲は終了します。
We Got the Beat Lyrics as written by Charlotte Caffey
Lyrics © Universal Music Mgb Songs
【解説】
ドラマーのGina Schock が叩く単調ですが力強いドラムの音色のイントロ、なかなかいいです。そのあとノリノリで歌い始めるのはBelinda Carlisle(ベリンダ・カーライル・後にGo-Go’s を脱退してソロとなりMad About You やHeaven Is a Place on Earth、I Get Weak といった曲を次々にヒットチャートの上位に送り込みました)。歌は上手いですが、この曲では何を言ってるのか良く分からない発音が不明瞭な部分が多いのが残念。別の言い方をするならば、歌詞は特に重要ではなく、ノリの曲だということでしょうか。因みに、We Got the Beatを作詞したギター担当のCharlotte Caffeyは、曲が出来た経緯についてこう語っています。
「It happened one night, I was in my apartment and the Twilight Zone marathon was on TV, I remember that. Very late at night, an idea came to me. Luckily, I scrambled and found my cassette player and put it on a cassette. And then the whole song kind of came out. It was just one of those moments, you don’t know really where it comes from. But it kind of comes in your head and Boom! It’s out. So that’s how that happened」
この発言を聞いても、何のことかさっぱりですよね。やはり、この曲の歌詞に深い意味はなさそうです(笑)。では、いつものようにその歌詞を見ていきましょう。
第1節目は、英語的にそれほど難しい部分は見当たりません。2行目のFall in line は線の上に人々が整列しているイメージ、そこから転じて「歩調を合わせる」という意味も持つようになりました。4行目のin time も、ここでは「時間内」ではなく「正しいテンポで、調子を合わせて」といった意味で使われています。2節目のThey got the beat は、直訳すれば「彼らはビートを得た」ですが、要は「ノってる」ということなのでこのように訳しました。ここのThey は勿論、第1節に出てきたノリノリで通りを歩いている人たちのことです。第3節1行目には、唐突にkids が出てきますが、このことは明らかにこの曲がティーンエイジャーなどの若者をマーケット対象として作られたことを示しています(通常、kid はハイスクールに入学する前くらいまでの子供のことを意味しますが)。なので、この節を大の大人が聴いても何ら心に響くものはないですね(汗)。3行目のquarter after twelve は、深夜の12時15分のことだと思われますが、なぜに12時15分なのかがまったく分かりません。ひょっとして、その時間にTwilight Zone が放送されてたんでしょうか?(笑)。
第4節は解説不要ですが、第5節はかなり難解。おまけに、Belinda Carlisle がなんて歌ってるのかも聞き取りにくいです(汗)。1行目のGo-go music は、コンガなどの楽器による5拍子と4拍子を組み合わせたGo-go beatと呼ばれるリズムが特徴の音楽の一形態で、1960年代半ば頃からRare EssenceやEU、Trouble Funk、Chuck Brown といった黒人ミュージシャンが全米に広げました。2行目のthe pony は、1960年代にChubby Checker がリリースしたPony Time という曲と共に広まったダンスのこと。3行目のthe watusi も、同じくChubby Checker がリリースしたThe Wah-Watusi という曲と共に広まったアフリカの民俗舞踊風のダンスのことです。watusi を踊ることでどうしてgive us a chance になるのかは僕には良く分かりません(汗)。watusi をwhat you see と理解するネイティブ話者もいるようですが、ちょっとこじつけが過ぎますね(笑)。2行目も3行目もDo になっていますが、文法的に正しく言うならばDoingでしょう。第6、7節も解説不要。第8節のアウトロ部分も特に難しい部分はありませんが、6行目だけはかなり謎です。この部分の歌詞は意見が分かれていて、多くの人が支持しているJumping, get down に一応しておきましたが(この表現も違和感があって、Jump and get down なら分かるのですけども…)、jump back, kick round という説も根強いですし、何度繰り返し聴いても僕にはjump up, keep it round にしか聞こえま
せんでした(汗)。皆さんには何と聞こえますか?
このWe Got the Beat という曲、全米でヒットしたのは1982年ですが、実は最初にリリースされたのはその2年前の1980年のことでした。当時のアメリカでは、キワモノ扱いのガールズバンドが音楽業界で注目を得るのは難しく、ガールズバンドが隆盛していたイギリスでレコードを発売することにし、渡英してツアーも行ったのですが、現地での反応はイマいちでした。ところが、彼女たちがイギリスで発売した曲はアメリカのアングラ・マーケットに伝わり、逆に評価を受けることになったから皮肉なもの。Go-Go’sがアメリカに帰国する頃にはその知名度が高まっていて、今がチャンスとばかりに曲をリメイクしてアメリカで再リリースするや、瞬く間に大ヒット。ビルボード社の週間チャートで第2位に輝くというガールズ・バンドでは初の快挙を成し遂げました。しかし、その人気の陰でメンバー全員が飲酒やドラッグに依存するようになり、1985年、それらの問題が原因でGo-Go’s は解散。Belinda Carlisle なんかは、自分は麻薬中毒から立ち直るまで30年かかったと語っています。ロックバンドに良くある出来事だとはいえ、恐ろしい話ですよね(汗)。
【第100回】Like A Rolling Stone / Bob Dylan (1965)
Oh, my, my, my, listen man…yeah, I finally made it! 古い洋楽のファンが増えることを願って始めたこのコーナー、遂に100回目となりました!我ながら一人黙々と良く書き続けられたものだと思います。誰も褒めてくれないので自分に拍手!パチ、パチ、パチィー(←ああ、虚しい・笑)。で、100回目の記念すべき回に何の曲を取り上げようかといろいろ考えましたが、最終的にこの曲、ボブ・ディランのLike A Rolling Stone を選びました。別に僕はボブ・ディランのファンでもなんでもないんですけども、この曲がフォークソングと決別したディランによって生み出されたアメリカン・ロックの原点という歴史的評価を得ていることから、ちょうどいいんじゃないかと思って選んでみました(←なんだよ、その安直な理由・笑)。1941年にミネソタ州の小さな地方都市ダルースで生まれたディランの本名はロバート・アレン・ジマーマン。その苗字のとおりユダヤ系です。少年期、ラジオから流れてきたHank Williams の歌声を聞いて感動し歌手を志した彼は、二十歳の時にその夢を叶えるべくニューヨーク市に移住、フォーク歌手として本格的な音楽活動を開始しました。折からの公民権運動やベトナム反戦運動の波に乗ってフォーク歌手として徐々に知られるようになり順風満帆だった彼でしたが、やがてカウンターカルチャーを背負うことが重荷となり、自分のやりたいことをやりたいようにやろうとアコースティック・ギターをエレキ・ギターに持ち替えて発表したのがこのLike A Rolling Stone という曲。結果、フォークのファン層からは裏切者扱いされて総スカンを食らったものの、社会に対して求めているのと同様、すべての面において変革を求めていた層には受け容れられて大ヒットし、その名を歴史に刻み込みました。それがどんな曲だったのか、先ずは歌詞を見ながら聴いてみてください。Once upon a time you dressed so fine
Threw the bums a dime in your prime, didn’t you?
People call, say "Beware, doll, you’re bound to fall"
You thought they were all a-kiddin’ you
You used to laugh about
Everybody that was hangin’ out
Now you don’t talk so loud
Now you don’t seem so proud
About having to be scrounging your next meal
昔さ、君は着飾って
意気盛んに10セント硬貨を浮浪者に恵んでた、違うかい?
皆が君に言ったよね「お嬢さん、気を付けな、人生を転げ落ちてるぜ」って
君は連中が冗談を言ってるんだと思って
笑ってたものさ
その辺でたむろしてる皆のことをさ
だけど、今は昔と違って目立ったりはしていない
今は誇りがあるようにも見えない
人にたかって施しを受けることなんかしてんだから
How does it feel?
How does it feel
To be without a home
Like a complete unknown
Like a rolling stone?
それってどんな気分なんだい?
それってどんな気分なんだい
帰る場所が無いままでいるってことがだよ
まったく知られることがないかの如く
転がる石ころみたいにさ
Aw, you’ve gone to the finest school all right, Miss Lonely
But ya know ya only used to get juiced in it
Nobody’s ever taught ya how to live out on the street
And now you’re gonna have to get used to it
You say you never compromise
With the mystery tramp, but now you realize
He’s not selling any alibis
As you stare into the vacuum of his eyes
And say, “Do you want to make a deal?"
あぁー、ロンリー嬢、君は確かに最高の学校に通ってた
けど、君は単にそこで浮かれてただけだってことが分かってるんだ
誰も君に現実の社会でどう生きるのかを教えなかったし
今はそれに慣れなくっちゃいけなくなってんだ
君は絶対に妥協しないって言ってたよね
謎めいた放浪者に対してはさ、でも君は分かったんだね
彼は言い訳を売ってはいないって
君は彼の空虚な瞳をじっと見つめ
こう言うのさ「取引しない?」ってね
How does it feel?
How does it feel
To be on your own
With no direction home
A complete unknown
Like a rolling stone?
それってどんな気分なんだい?
それってどんな気分なんだい
帰る場所が無いままに
一人でいることがさ
まったく知られることがないままに
転がる石ころみたいにさ
Aw, you never turned around to see the frowns
On the jugglers and the clowns when they all did tricks for you
Never understood that it ain’t no good
You shouldn’t let other people get your kicks for you
You used to ride on a chrome horse with your diplomat
Who carried on his shoulder a Siamese cat
Ain’t it hard when you discover that
He really wasn’t where it’s at
After he took from you everything he could steal?
あぁー、君は決して振り向かなかった
曲芸師やピエロが芸を披露する時に浮かべる顰め面を見ようとさ
それが良くないことだって君が理解することはなかった
君は他人に君のことを楽しませるようにさせてはいけなかったのさ
君はクロム鍍金の馬に乗ってたものだよね
シャム猫を肩に乗せてる外交官と一緒にね
それって辛くなかったのかな
彼が大した奴じゃなかったって分かった時のことだよ
彼が盗めるものすべてを君から奪った後でね
How does it feel?
How does it feel?
To hang on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone?
それってどんな気分なんだい?
それってどんな気分なんだい
帰る場所が無いままに
一人で耐えることがさ
まったく知られることがないかのように
転がる石ころみたいにさ
Aw, princess on the steeple and all the pretty people
They’re all drinkin’, thinkin’ that they got it made
Exchangin’ all precious gifts
But you’d better take your diamond ring, ya better pawn it, babe
You used to be so amused
At Napoleon in rags, and the language that he used
Go to him now, he calls ya, ya can’t refuse
When ya ain’t got nothin’, you got nothin’ to lose
You’re invisible now, ya got no secrets to conceal
あぁー、尖塔の上の王女も愛らしい人々も
みんなが酒を飲みつつ、うまくやったって思ってる
貴重な贈り物を交換しながらさ
でも、君は君のダイヤの指輪を持って行って質に入れなよ
君は面白がってたもんだよね
襤褸をまとったナポレオンと彼が語っていた言葉をね
彼の所へ行きなよ、君を呼んでるんだ、断ることなんてできないさ
何も持ってない時ってのは、失うものも何も無いのさ
今の君は見えない存在、隠す秘密なんて無いんだよ
How does it feel?
Aw, how does it feel
To be on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone?
それってどんな気分なんだい?
それってどんな気分なんだい
帰る場所が無いままに
一人でいることがさ
まったく知られることがないかのように
転がる石ころみたいにさ
Like a Rolling Stone Lyrics as written by Bob Dylan
Lyrics © Special Rider Music
【解説】
歴史的名曲とされているこのLike a Rolling Stone、歌詞の長さに反して演奏時間が長いですよね(笑)。聴いていただいて分かるとおり、その理由はとてもスローなテンポで歌っているから。曲の終了まで6分以上あり、こんなに長い曲を1965年当時のラジオ局がばんばんオンエアーしたというのは異例のこと。この曲の響きが如何に当時の世間に衝撃を与えるものであったかの裏返しとも言えるでしょう。とは言え、エレキギターとハモンドオルガンが響く独創的なイントロはフォークソングとの決別を示すには十分ですが、ロックと呼べるものではありませんね(←個人の見解です・汗)。ぱっと聴いた限りでは、何か小難しいことを言ってはいるものの、結局のところたいした意味はないという多くの迷曲と同じ匂いを感じますが、果たしてどうなのか?ゆっくりと歌詞を見て行く前に、歌詞を理解する上で役立ちそうな情報を先にまとめておきます。
① ディランはマスゴミのインタビューにしばしば応じていますが、この曲の歌詞の意味に関して直接言及したことは一度もありません。いつものパターンですが、歌詞に込められた真の意味は、本人が自ら語らない限り永遠に分からないままで終わりますね。1970年にディランがリリースしたアルバム「Self Portrait」にギターリストとして参加したRon Cornelius は、彼に歌詞の意味を尋ねたところで「He is not going to tell you anyway ・どうせ教えてくれない」と語っています。
② ディランは雑誌のインタビューで、この曲の歌詞は吐しゃ物vomit として書き連ねたものであり(つまりは、心の中に溜まっていたものを吐き出すように書いたということでしょう)、当初はもっと長い詩であったと発言していたそう(10ページ分あったとも20ページ分あったとも言われています)。そんなにも長い詩だったというのは眉唾ですがね(10ページだなんて、詩と言うよりも、もはや短編小説・笑)。
③ 彼は別のインタビューで、Like a Rolling Stoneの歌詞はHank Williamsが1949年にリリースしたLost Highway という曲の歌詞がヒントになったということを認めていまして、こちらの方はなるほどなと思わせるものがありました。その歌詞がこちらです。
I’m a rolling stone, all alone and lost
For a life of sin, I have paid the cost
When I pass by, all the people say
"Just another boy down the lost highway"
俺は転がる石ころさ、独りぼっちで迷っちまった
俺は罪な生き様の代償を払った
俺が傍を通り過ぎる時、皆が言うのさ
「迷い道を行く少年がまた一人」ってさ
Just a deck of cards and a jug of wine
And a woman’s lies make a life like mine
Oh, the day we met, I went astray
I started rollin’ down that lost highway
トランプ一箱とワインの入った水差しがさ
そして女の嘘がさ、人の生き様を作り出す、俺のみたいなさ
あー、俺たちが会った日、俺は道を踏み外したんだ
俺はこの迷い道を転がり落ち始めたんだ
I was just a lad, nearly twenty-two
Neither good nor bad, just a kid like you
And now I’m lost, too late to pray
Lord, I’ve paid the cost on the lost highway
俺は若かったんだよな、22かそこらだ
善人でも悪人でもなかった、君みたいな子供だったんだ
そして今、俺は迷っちまった、祈るには遅すぎるさ
あー、俺は迷い道の代償を払ったのさ
Now, boys, don’t start your ramblin’ round
On this road of sin or you’re sorrow bound
Take my advice or you’ll curse the day
You started rollin’ down that lost highway
さあ、ガキども、当てもなくぶらぶらし始めるなんてしちゃいけねえ
この罪な道でな、じゃないと悲しみや苦しみから抜け出せねえ
俺の助言を聞くこった、じゃないと後悔することになるんだ
だって、おまえは迷い道を転がり落ち始めてんだ
この歌詞のa rolling stone という言葉のコンセプトとディランのLike a Rolling Stone の歌詞の中のa rolling stone のそれとは完全に一致してますね(笑)。どちらの曲でもa rolling stone という言葉が、人がまっとうな人生から転がり落ちていく姿の比喩として用いられていることに間違いはなさそうです。このLost Highway という曲、実はHank Williams が作詞したのではなく、Leon Payne というカントリーソングを歌う盲目の白人歌手が1948年に書いたもので、Payne の妻は、病床の母親を見舞おうとLeon がカリフォルニアからテキサスへヒッチハイクで向かった際、途中で次の車が見つからずに行き詰まってしまい、最後は救世軍(Salvation Army と名乗っているキリスト教系の宗教団体)に助けられた経験をもとに彼はこの曲を作ったと証言しています。そこから推測するに、誰も車に乗せてくれずその先への道が断たれたことによって生じた絶望感にインスパイアーされてPayne はこのような詩を書いたのかも知れませんね。何はともあれ、自らの浅はかさによって人生を転げ落ちていくというLost Highway のストーリー展開が、ディランのLike a Rolling Stoneの歌詞の基盤と重なっていることに疑いの余地はありません(←基盤に重なっていると言うか、一歩間違えればパクリですよね・笑)。それでは、そんなディランの書いた歌詞を細かく見ていきましょう。
1節目、英語としての難解な部分は見当たりません。2行目のin one’s prime は人の最も充実している時期、活躍している時期、最良の時期といったニュアンス。a dime は以前も解説しましたが、米国では10セント硬貨のこと。3行目のdoll は(美しい)女性に対する呼びかけの言葉です。you’re bound to fall の部分は明らかにPayne の歌詞のrollin’ down にインスパイアーされたものでしょう。4行目のa-kiddin’はat kidding のこと。現在進行形の古い使い方で、Like a Rolling Stone の歌詞には、この曲が作られた頃には普通に使われていたのかも知れないけども今はあまり耳にしないという表現が多く使われています。5、6行目はYou used to laugh about everybody that was hangin’ out でひとつの文。7行目のtalk so loud は直訳すれば「大声で話す」ですが、1、2行目のような彼女が全盛だった頃の振る舞いを考えると「目立つ行い」の比喩のように僕は思いましたのでこう訳しました。8、9行目もNow you don’t seem so proud about having to be scrounging your next meal でひとつの文を構成しています。調子よく浮浪者に小銭を恵んでいた女性が、今は人にたかって施しを受けることを恥ずかしくも思っていないとは穏やかではありませんね。そのことがはっきりするのが2節目のコーラス。Payne の歌詞と決定的に違うのはあまりにも有名になったここの部分で、Payne の歌詞は歌詞の主人公が自分を自分で責めることで終わっていますが、ディランの歌詞では歌詞の主人公に対し第三者の問いかけが入るのです。これはそれぞれの節をしめていく上で非常に効果的な手法ですね。そして、How does it feel?の主語が人でないのはどうしてなんだろうと思った方はスルドいですよ。ここがit であるのは「(人が)感じる」という意味で使われているのではなく「(物事が)~の感じを与える」という意味で使われているからなんです。3行目のa home は普通なら「家」のことですが、ここはホームレスになった状態というよりも自分が帰ることのできる場所、自分の居場所が無い状態、つまり、誰からも見向きもされず、転がる石ころのように自分の居場所さえ失ってしまった(根無し草のように生きている)ということであると僕は理解しました。How does it feel?は、それがどんな気分なのかと尋ねている訳です。どうやら彼女はyou’re bound to fallの言葉どおり、落ちぶれた人間になってしまっているようですね(汗)。
第3節も英語的に難解な部分はありませんが、その歌詞の意味となると訳ワカメ(笑)。1、2行目は(A) all right, but (B) 構文です。「確かにA であるけども(その実は)B である(A と反対の事柄)」という表現方法。Miss Lonely は勿論、Lonely という名の女性に呼びかけているのではなく、孤独な女性に対する例えです。get juiced も今なら「(果物などを)ジュースにする」くらいにしか思いませんが、古いスラングではget drunk と同じ意味。(毎日パーティーなどで)酔っ払うということから転じて「浮かれ気分になる」という意味でも使われていたようです。3行目のthe street は「通り」の意味ですが、ここでは実社会や世間の意味で使われていると考えて良いかと思います。5、6行目はYou say you never compromise with the mystery tramp, but now you realize でひとつの文章。そして、ここでネイティブ話者も含めて誰しもが思うのが「はあ?The mystery tramp?誰ですか、それ?」ってことですね(笑)。the misery trump なら「ああ、あのアホ大統領か」と直ぐに分かりますが「謎めいた放浪者」ではまったく想像がつきません。そこで注目したいのが9行目のDo you want to make a deal?という文(あのアホ大統領もdeal が口癖ですが・笑)。ここから浮かび上がってくるのは「洋楽あるある」のひとつであるゲーテの「ファウスト」の引用である可能性です。「ドクトル・ファウストが悪魔メフィストと契約を交わし、自身の魂と引き換えに現世での幸福を得る」というやつですね。The mystery tramp をその悪魔メフィストだと考えれば、すべての辻褄が合います。つまり、主人公は自らの居場所を失っても尚、悪魔に魂など売らないと踏ん張ってはいたものの(その意味ではまともな人間だった訳で、最初の4行は主人公のその初心さを示していると僕は考えます)、you realize that he’s not selling any alibis(自分が今の自分のように落ちぶれてしまったことに対する言い訳は存在しない)と気付き、その言い訳が欲しいが故に結局は悪魔と妥協する(自ら取引を持ちかける)というのが、この節に関する僕の結論。
第4節は再びコーラスに入りますが、2節目のコーラスの歌詞とは微妙に違っています。第5節はまたまた訳ワカメで理解不能なフレーズのオンパレード。ここの1、2行目もYou never turned around to see the frowns on the jugglers and the clowns when they all did tricks for you がひとつの文で、4行目までの文がひとつの詩節を構成しています。ここでポイントになってくるのは、3行目のit が何を指しているのかであり、このit はnever turned around to see the frowns のことであると僕は理解しました。となると「曲芸師やピエロが芸を披露する時に浮かべる顰め面を見ようと振り向かなかったことは良くないことであった」ということになりますが、それでも尚、何を言わんとしているのかさっぱり分かりません(汗)。なので、第3節のthe mystery tramp 同様、the jugglers and the clowns がいったい誰のことなのかが鍵となってくるのですが、僕の頭に浮かんだのは、彼女を取り巻いていた人々(彼女にへつらい、ご機嫌取りばかりしているような種の人間)の姿であり、そこから、この第5節の前半は「取り巻きからちやほやされることでいい気になって彼らの本性を見よう(考えよう)ともしなかったことは間違いであり、そもそも、他人に自分のことをちやほやさせたり媚びさせたりしてはいけない」という意味が浮かび上がってきて僕の中では一気にクリアーになりました(←あくまでも個人の見解です)。
これでようやく第5節の前半が理解できたと思いきや、それに続く後半は意味不明を通り越していて絶望的な気分になります。Your diplomat who carried on his shoulder a Siamese cat っていったい何者なんですかね。そんな人がバイクに乗ってたらコワいです(笑)。今、バイクと言ったとおり、5行目のa chrome horse はバイクの比喩であることは想像がつきますが(実際、ディランはバイク好きで、1966年に愛車のトライアンフT400 に乗っていた際に転倒、大怪我を負っています)、シャム猫を肩に乗せてる外交官というのはさっぱり分かりません。そこで、先人の皆様の知恵をお借りすべくインターネットで調べてみたところ、これは芸術家のアンディ・ウォーホールのことであるという見解が多勢を占めていました。なぜそんなことになっているのかをさらに調べてみると、アンディ・ウォーホールがこの曲のYour diplomat who carried on his shoulder a Siamese cat の部分を聴いた際「これって僕のことだ」と自ら発言した(自伝に記した)ということがその始まりであったと分かりました。なぜ彼がそう思ったのかと言うと、これにもストーリーがあって、Like a Rolling Stone が世に出る前、ウォーホールはEdie Sedgwick(カリフォルニアの名家に生まれ、ニューヨークで社交界デビューした美しいモデルで、1971年、薬物の過剰摂取で死去。享年28歳)という女性と恋仲にあって、その後、彼女はウォーホールのもとを去ってディランと付き合っていたとされています(ディランはEdie と交際していたことを否定していて、彼女のことは記憶にもないと発言していますが、それが真実なのかどうかは当の二人以外、誰にも分かりません)。当時、ウォーホールは自分の母親と十匹だかのシャム猫と暮らしていて、恐らく彼はHe really wasn’t where it’s at after he took from you everything he could stealとSiamese catの部分を聴いて自分への当て付けだと思ったのでしょう。ここで重要と思えるのは、ウォーホールのこの思い込みが「シャム猫を肩に乗せてる外交官=アンディ・ウォーホール」説の原点となっているという事実であり、ディランがそう言った訳ではないということです。実際のところ、何度この曲を聴いても僕にはシャム猫を肩に乗せてる外交官がウォーホールのことだけを指しているとは思えないし、むしろ僕が感じたのは、ここのバイクに乗っているyou とdiplomat who carried on his shoulder a Siamese cat は、前半に出てきたthe jugglers and the clowns と同じ種の人々のことではないのかということでした。ディランはEdie と交際している途中で、彼の恋人であったモデルのSara Lownds と結婚していて、ディラン自身もHe really wasn’t where it’s at after he took from you everything he could steal に該当する男であった訳ですから(要はウォーホールと同じ穴の貉)、ここのyou はまさしく彼自身のことであり、僕にはこの第5節の後半はディランが自らに向けた自己批判ではないかという気がします。じゃないと、この後半部分が単なるウォーホールに対する嘲笑であるのなら、ディランは自分のことは棚に上げて他人を腐すケツの穴の小さい糞野郎だということになってしまいますからね(笑)。
第6節は再びコーラスに入り、ここも2節目のコーラスの歌詞とは微妙に違っています。そして7節目、またしても意味不明なフレーズの羅列。奇天烈というのはこのような時に使う言葉なのかも知れません(笑)。最初の3行は恐らく、競争社会の中で成功し富を得た人々の比喩でしょう。They’re all drinkin’, thinkin’ that they got it made exchangin’ all precious gifts は、そんな彼らの価値観は金がすべてであり、それで満足しているということの暗喩であると僕は理解しました。そう考えれば、4行目にBut you’d better take your diamond ring, ya better pawn it という文が来ていることが理解できます。you’d better という表現は、事実上の強い命令であり、「君は君のダイヤの指輪を持って行って質に入れろ」なんてことをなぜ強く言っているのかというと、金がすべてと考えるような世界とは決別しろということなのだろうと僕は考えました。4、5行目もYou used to be so amused at Napoleon in rags, and the language that he used でひとつの文ですが、これまた珍妙な表現ですよね(笑)。なぜにここで唐突にナポレオンが登場するのか良く分かりませんが、Napoleon in rags は、かつては権勢を誇っていたのに最後は落ちぶれた(流刑されて襤褸をまとうことになった)ナポレオンのイメージ、即ち、成功者たちの世界、富を持つ人の世界から転落した人々の比喩だと理解。the language that he used は「真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者のことである」とか「死ぬよりも苦しむほうが勇気を必要とする」といった類の彼が残した格言の数々のことではないかと思います。7行目のGo to him now のhim はナポレオンを指していると考えるのが自然。ナポレオンの所へ行けというのは、落ちぶれたとしても、崇高な精神を失うことのない世界で生きろというではないでしょうか。なぜなら、そんな世界で生きることは、You ain’t got nothin’, you got nothin’ to lose. You’re invisible now, you got no secrets to conceal な人間だけに許されるからです(You’re invisible は何もかも失って裸同然の姿であることの比喩ですね)。そして、最後にもう一度、How does it feel? Aw, how does it feel のコーラスが入りますが、2、4、6節目のコーラスではHow does it feel?が嫌味にしか聞こえなかったのに、最後のここでは「(落ちぶれたって、まともな世界で生きることができるのなら)それもいいもんだろ?」というふうに僕には聞こえました(←あくまでも個人の感想です・汗)。
と、Like a Rolling Stone の歌詞を最後まで一通り追ってみた結果、この曲はかつては成功者たちの世界、富を持つ人々の世界にいたものの自分の浅はかさによってそこから転落し、自らの居場所も失って根無し草のように生きる孤独な女性の物語であることは分かりました。が、それ以上に意味があるものでも、それ以下の意味しかないものでもないというのが僕の結論。それと、この歌詞の主人公のキャラクターはEdie Sedgwick をモデルにしていることは間違いなさそうですが、主人公=Edie Sedgwick という訳ではなく、この曲では主人公が女性になってはいても、そこにはディラン自身の姿が投影されているような気がしたということを付け加えておきます(冒頭に紹介した「この曲の歌詞は僕のvomit だ」という彼の言葉を思い出してみてください)。なぜなら、世間から注目され続ける成功者の座を捨て、何も持たず、すべてを無にして自分本来の姿で生きたいと思っていたのは、他でもないディラン自身だったのであろうことは想像に難くないからです。まあ、いずれにせよ、この曲の歌詞が世間で評価されているほどに優れたものだとは僕には思えませんでしたけどね(←最後まで上から目線かよ・笑)。
『洋楽の棚②』はここまで。続きは『洋楽の棚③』でお楽しみください!と言いたいところなのですが、取り敢えず100回に到達しましたので、ひとまずここで筆を置くことにしました。再開の要望が多く集まるようであれば検討したいですが、それには何よりも書く時間が必要ですので、皆さんからのカンパをお待ちしております。
河内レオン