『洋楽の棚』で紹介した曲の中から解説が力作であると思える10曲を著者自身が勝手に選んで毎週日曜日にお送りしてきた傑作選特集、早くも今回で最終回となりました!傑作選でも大トリはこの曲に登場願いましょう。第100回で取り上げたボブ・ディランの最高傑作とされている「Like A Rolling Stone」です。
【第100回】Like A Rolling Stone / Bob Dylan (1965)
Oh, my, my, my, listen man…yeah, I finally made it! 古い洋楽のファンが増えることを願って始めたこのコーナー、遂に100回目となりました!我ながら一人黙々と良く書き続けられたものだと思います。誰も褒めてくれないので自分に拍手!パチ、パチ、パチィー(←ああ、虚しい・笑)。で、100回目の記念すべき回に何の曲を取り上げようかといろいろ考えましたが、最終的にこの曲、ボブ・ディランのLike A Rolling Stone を選びました。別に僕はボブ・ディランのファンでもなんでもないんですけども、この曲がフォークソングと決別したディランによって生み出されたアメリカン・ロックの原点という歴史的評価を得ていることから、ちょうどいいんじゃないかと思って選んでみました(←なんだよ、その安直な理由・笑)。1941年にミネソタ州の小さな地方都市ダルースで生まれたディランの本名はロバート・アレン・ジマーマン。その苗字のとおりユダヤ系です。少年期、ラジオから流れてきたHank Williams の歌声を聞いて感動し歌手を志した彼は、二十歳の時にその夢を叶えるべくニューヨーク市に移住、フォーク歌手として本格的な音楽活動を開始しました。折からの公民権運動やベトナム反戦運動の波に乗ってフォーク歌手として徐々に知られるようになり順風満帆だった彼でしたが、やがてカウンターカルチャーを背負うことが重荷となり、自分のやりたいことをやりたいようにやろうとアコースティック・ギターをエレキ・ギターに持ち替えて発表したのがこのLike A Rolling Stone という曲。結果、フォークのファン層からは裏切者扱いされて総スカンを食らったものの、社会に対して求めているのと同様、すべての面において変革を求めていた層には受け容れられて大ヒットし、その名を歴史に刻み込みました。それがどんな曲だったのか、先ずは歌詞を見ながら聴いてみてください。
Once upon a time you dressed so fine
Threw the bums a dime in your prime, didn’t you?
People call, say “Beware, doll, you’re bound to fall”
You thought they were all a-kiddin’ you
You used to laugh about
Everybody that was hangin’ out
Now you don’t talk so loud
Now you don’t seem so proud
About having to be scrounging your next meal
昔さ、君は着飾って
意気盛んに10セント硬貨を浮浪者に恵んでた、違うかい?
皆が君に言ったよね「お嬢さん、気を付けな、人生を転げ落ちてるぜ」って
君は連中が冗談を言ってるんだと思って
笑ってたものさ
その辺でたむろしてる皆のことをさ
だけど、今は昔と違って目立ったりはしていない
今は誇りがあるようにも見えない
人にたかって施しを受けることなんかしてんだから
How does it feel?
How does it feel
To be without a home
Like a complete unknown
Like a rolling stone?
それってどんな気分なんだい?
それってどんな気分なんだい
帰る場所が無いままでいるってことがだよ
まったく知られることがないかの如く
転がる石ころみたいにさ
Aw, you’ve gone to the finest school all right, Miss Lonely
But ya know ya only used to get juiced in it
Nobody’s ever taught ya how to live out on the street
And now you’re gonna have to get used to it
You say you never compromise
With the mystery tramp, but now you realize
He’s not selling any alibis
As you stare into the vacuum of his eyes
And say, “Do you want to make a deal?”
あぁー、ロンリー嬢、君は確かに最高の学校に通ってた
けど、君は単にそこで浮かれてただけだってことが分かってるんだ
誰も君に現実の社会でどう生きるのかを教えなかったし
今はそれに慣れなくっちゃいけなくなってんだ
君は絶対に妥協しないって言ってたよね
謎めいた放浪者に対してはさ、でも君は分かったんだね
彼は言い訳を売ってはいないって
君は彼の空虚な瞳をじっと見つめ
こう言うのさ「取引しない?」ってね
How does it feel?
How does it feel
To be on your own
With no direction home
A complete unknown
Like a rolling stone?
それってどんな気分なんだい?
それってどんな気分なんだい
帰る場所が無いままに
一人でいることがさ
まったく知られることがないままに
転がる石ころみたいにさ
Aw, you never turned around to see the frowns
On the jugglers and the clowns when they all did tricks for you
Never understood that it ain’t no good
You shouldn’t let other people get your kicks for you
You used to ride on a chrome horse with your diplomat
Who carried on his shoulder a Siamese cat
Ain’t it hard when you discover that
He really wasn’t where it’s at
After he took from you everything he could steal?
あぁー、君は決して振り向かなかった
曲芸師やピエロが芸を披露する時に浮かべる顰め面を見ようとさ
それが良くないことだって君が理解することはなかった
君は他人に君のことを楽しませるようにさせてはいけなかったのさ
君はクロム鍍金の馬に乗ってたものだよね
シャム猫を肩に乗せてる外交官と一緒にね
それって辛くなかったのかな
彼が大した奴じゃなかったって分かった時のことだよ
彼が盗めるものすべてを君から奪った後でね
How does it feel?
How does it feel?
To hang on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone?
それってどんな気分なんだい?
それってどんな気分なんだい
帰る場所が無いままに
一人で耐えることがさ
まったく知られることがないかのように
転がる石ころみたいにさ
Aw, princess on the steeple and all the pretty people
They’re all drinkin’, thinkin’ that they got it made
Exchangin’ all precious gifts
But you’d better take your diamond ring, ya better pawn it, babe
You used to be so amused
At Napoleon in rags, and the language that he used
Go to him now, he calls ya, ya can’t refuse
When ya ain’t got nothin’, you got nothin’ to lose
You’re invisible now, ya got no secrets to conceal
あぁー、尖塔の上の王女も愛らしい人々も
みんなが酒を飲みつつ、うまくやったって思ってる
貴重な贈り物を交換しながらさ
でも、君は君のダイヤの指輪を持って行って質に入れなよ
君は面白がってたもんだよね
襤褸をまとったナポレオンと彼が語っていた言葉をね
彼の所へ行きなよ、君を呼んでるんだ、断ることなんてできないさ
何も持ってない時ってのは、失うものも何も無いのさ
今の君は見えない存在、隠す秘密なんて無いんだよ
How does it feel?
Aw, how does it feel
To be on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone?
それってどんな気分なんだい?
それってどんな気分なんだい
帰る場所が無いままに
一人でいることがさ
まったく知られることがないかのように
転がる石ころみたいにさ
Like a Rolling Stone Lyrics as written by Bob Dylan
Lyrics © Special Rider Music
【解説】
歴史的名曲とされているこのLike a Rolling Stone、歌詞の量に反して演奏時間が長いですよね(笑)。聴いていただいて分かるとおり、その理由はとてもスローなテンポで歌っているから。曲の終了まで6分以上あり、こんなに長い曲を1965年当時のラジオ局がばんばんオンエアーしたというのは異例のこと。この曲の響きが如何に当時の世間に衝撃を与えるものであったかの裏返しとも言えるでしょう。とは言え、エレキギターとハモンドオルガンが響く独創的なイントロはフォークソングとの決別を示すには十分ですが、ロックと呼べるものではありませんね(←個人の見解です・汗)。ぱっと聴いた限りでは、何か小難しいことを言ってはいるものの、結局のところたいした意味はないという多くの迷曲と同じ匂いを感じますが、果たしてどうなのか?ゆっくりと歌詞を見て行く前に、歌詞を理解する上で役立ちそうな情報を先にまとめておきます。
① ディランはマスゴミのインタビューにしばしば応じていますが、この曲の歌詞の意味に関して直接言及したことは一度もありません。いつものパターンですが、歌詞に込められた真の意味は、本人が自ら語らない限り永遠に分からないままで終わりますね。1970年にディランがリリースしたアルバム「Self Portrait」にギターリストとして参加したRon Cornelius は、彼に歌詞の意味を尋ねたところで「He is not going to tell you anyway ・どうせ教えてくれない」と語っています。
② ディランは雑誌のインタビューで、この曲の歌詞は吐しゃ物vomit として書き連ねたものであり(つまりは、心の中に溜まっていたものを吐き出すように書いたということでしょう)、当初はもっと長い詩であったと発言していたそう(10ページ分あったとも20ページ分あったとも言われています)。そんなにも長い詩だったというのは眉唾ですがね(10ページだなんて、詩と言うよりも、もはや短編小説・笑)。
③ 彼は別のインタビューで、Like a Rolling Stoneの歌詞はHank Williamsが1949年にリリースしたLost Highway という曲の歌詞がヒントになったということを認めていまして、こちらの方はなるほどなと思わせるものがありました。その歌詞がこちらです。
I’m a rolling stone, all alone and lost
For a life of sin, I have paid the cost
When I pass by, all the people say
“Just another boy down the lost highway”
俺は転がる石ころさ、独りぼっちで迷っちまった
俺は罪な生き様の代償を払った
俺が傍を通り過ぎる時、皆が言うのさ
「迷い道を行く少年がまた一人」ってさ
Just a deck of cards and a jug of wine
And a woman’s lies make a life like mine
Oh, the day we met, I went astray
I started rollin’ down that lost highway
トランプ一箱とワインの入った水差しがさ
そして女の嘘がさ、人の生き様を作り出す、俺のみたいなさ
あー、俺たちが会った日、俺は道を踏み外したんだ
俺はこの迷い道を転がり落ち始めたんだ
I was just a lad, nearly twenty-two
Neither good nor bad, just a kid like you
And now I’m lost, too late to pray
Lord, I’ve paid the cost on the lost highway
俺は若かったんだよな、22かそこらだ
善人でも悪人でもなかった、君みたいな子供だったんだ
そして今、俺は迷っちまった、祈るには遅すぎるさ
あー、俺は迷い道の代償を払ったのさ
Now, boys, don’t start your ramblin’ round
On this road of sin or you’re sorrow bound
Take my advice or you’ll curse the day
You started rollin’ down that lost highway
さあ、ガキども、当てもなくぶらぶらし始めるなんてしちゃいけねえ
この罪な道でな、じゃないと悲しみや苦しみから抜け出せねえ
俺の助言を聞くこった、じゃないと後悔することになるんだ
だって、おまえは迷い道を転がり落ち始めてんだ
この歌詞のa rolling stone という言葉のコンセプトとディランのLike a Rolling Stone の歌詞の中のa rolling stone のそれとは完全に一致してますね(笑)。どちらの曲でもa rolling stone という言葉が、人がまっとうな人生から転がり落ちていく姿の比喩として用いられていることに間違いはなさそうです。このLost Highway という曲、実はHank Williams が作詞したのではなく、Leon Payne というカントリーソングを歌う盲目の白人歌手が1948年に書いたもので、Payne の妻は、病床の母親を見舞おうとLeon がカリフォルニアからテキサスへヒッチハイクで向かった際、途中で次の車が見つからずに行き詰まってしまい、最後は救世軍(Salvation Army と名乗っているキリスト教系の宗教団体)に助けられた経験をもとに彼はこの曲を作ったと証言しています。そこから推測するに、誰も車に乗せてくれずその先への道が断たれたことによって生じた絶望感にインスパイアーされてPayne はこのような詩を書いたのかも知れませんね。何はともあれ、自らの浅はかさによって人生を転げ落ちていくというLost Highway のストーリー展開が、ディランのLike a Rolling Stoneの歌詞の基盤と重なっていることに疑いの余地はありません(←基盤に重なっていると言うか、一歩間違えればパクリですよね・笑)。それでは、そんなディランの書いた歌詞を細かく見ていきましょう。
1節目、英語としての難解な部分は見当たりません。2行目のin one’s prime は人の最も充実している時期、活躍している時期、最良の時期といったニュアンス。a dime は以前も解説しましたが、米国では10セント硬貨のこと。3行目のdoll は(美しい)女性に対する呼びかけの言葉です。you’re bound to fall の部分は明らかにPayne の歌詞のrollin’ down にインスパイアーされたものでしょう。4行目のa-kiddin’はat kidding のこと。現在進行形の古い使い方で、Like a Rolling Stone の歌詞には、この曲が作られた頃には普通に使われていたのかも知れないけども今はあまり耳にしないという表現が多く使われています。5、6行目はYou used to laugh about everybody that was hangin’ out でひとつの文。7行目のtalk so loud は直訳すれば「大声で話す」ですが、1、2行目のような彼女が全盛だった頃の振る舞いを考えると「目立つ行い」の比喩のように僕は思いましたのでこう訳しました。8、9行目もNow you don’t seem so proud about having to be scrounging your next meal でひとつの文を構成しています。調子よく浮浪者に小銭を恵んでいた女性が、今は人にたかって施しを受けることを恥ずかしくも思っていないとは穏やかではありませんね。そのことがはっきりするのが2節目のコーラス。Payne の歌詞と決定的に違うのはあまりにも有名になったここの部分で、Payne の歌詞は歌詞の主人公が自分を自分で責めることで終わっていますが、ディランの歌詞では歌詞の主人公に対し第三者の問いかけが入るのです。これはそれぞれの節をしめていく上で非常に効果的な手法ですね。そして、How does it feel?の主語が人でないのはどうしてなんだろうと思った方はスルドいですよ。ここがit であるのは「(人が)感じる」という意味で使われているのではなく「(物事が)~の感じを与える」という意味で使われているからなんです。3行目のa home は普通なら「家」のことですが、ここはホームレスになった状態というよりも自分が帰ることのできる場所、自分の居場所が無い状態、つまり、誰からも見向きもされず、転がる石ころのように自分の居場所さえ失ってしまった(根無し草のように生きている)ということであると僕は理解しました。How does it feel?は、それがどんな気分なのかと尋ねている訳です。どうやら彼女はyou’re bound to fallの言葉どおり、落ちぶれた人間になってしまっているようですね(汗)。
第3節も英語的に難解な部分はありませんが、その歌詞の意味となると訳ワカメ(笑)。1、2行目は(A) all right, but (B) 構文です。「確かにA であるけども(その実は)B である(A と反対の事柄)」という表現方法。Miss Lonely は勿論、Lonely という名の女性に呼びかけているのではなく、孤独な女性に対する例えです。get juiced も今なら「(果物などを)ジュースにする」くらいにしか思いませんが、古いスラングではget drunk と同じ意味。(毎日パーティーなどで)酔っ払うということから転じて「浮かれ気分になる」という意味でも使われていたようです。3行目のthe street は「通り」の意味ですが、ここでは実社会や世間の意味で使われていると考えて良いかと思います。5、6行目はYou say you never compromise with the mystery tramp, but now you realize でひとつの文章。そして、ここでネイティブ話者も含めて誰しもが思うのが「はあ?The mystery tramp?誰ですか、それ?」ってことですね(笑)。the misery trump なら「ああ、あのアホ大統領か」と直ぐに分かりますが「謎めいた放浪者」ではまったく想像がつきません。そこで注目したいのが9行目のDo you want to make a deal?という文(あのアホ大統領もdeal が口癖ですが・笑)。ここから浮かび上がってくるのは「洋楽あるある」のひとつであるゲーテの「ファウスト」の引用である可能性です。「ドクトル・ファウストが悪魔メフィストと契約を交わし、自身の魂と引き換えに現世での幸福を得る」というやつですね。The mystery tramp をその悪魔メフィストだと考えれば、すべての辻褄が合います。つまり、主人公は自らの居場所を失っても尚、悪魔に魂など売らないと踏ん張ってはいたものの(その意味ではまともな人間だった訳で、最初の4行は主人公のその初心さを示していると僕は考えます)、you realize that he’s not selling any alibis(自分が今の自分のように落ちぶれてしまったことに対する言い訳は存在しない)と気付き、その言い訳が欲しいが故に結局は悪魔と妥協する(自ら取引を持ちかける)というのが、この節に関する僕の結論。
第4節は再びコーラスに入りますが、2節目のコーラスの歌詞とは微妙に違っています。第5節はまたまた訳ワカメで理解不能なフレーズのオンパレード。ここの1、2行目もYou never turned around to see the frowns on the jugglers and the clowns when they all did tricks for you がひとつの文で、4行目までの文がひとつの詩節を構成しています。ここでポイントになってくるのは、3行目のit が何を指しているのかであり、このit はnever turned around to see the frowns のことであると僕は理解しました。となると「曲芸師やピエロが芸を披露する時に浮かべる顰め面を見ようと振り向かなかったことは良くないことであった」ということになりますが、それでも尚、何を言わんとしているのかさっぱり分かりません(汗)。なので、第3節のthe mystery tramp 同様、the jugglers and the clowns がいったい誰のことなのかが鍵となってくるのですが、僕の頭に浮かんだのは、彼女を取り巻いていた人々(彼女にへつらい、ご機嫌取りばかりしているような種の人間)の姿であり、そこから、この第5節の前半は「取り巻きからちやほやされることでいい気になって彼らの本性を見よう(考えよう)ともしなかったことは間違いであり、そもそも、他人に自分のことをちやほやさせたり媚びさせたりしてはいけない」という意味が浮かび上がってきて僕の中では一気にクリアーになりました(←あくまでも個人の見解です)。
これでようやく第5節の前半が理解できたと思いきや、それに続く後半は意味不明を通り越していて絶望的な気分になります。Your diplomat who carried on his shoulder a Siamese cat っていったい何者なんですかね。そんな人がバイクに乗ってたらコワいです(笑)。今、バイクと言ったとおり、5行目のa chrome horse はバイクの比喩であることは想像がつきますが(実際、ディランはバイク好きで、1966年に愛車のトライアンフT400 に乗っていた際に転倒、大怪我を負っています)、シャム猫を肩に乗せてる外交官というのはさっぱり分かりません。そこで、先人の皆様の知恵をお借りすべくインターネットで調べてみたところ、これは芸術家のアンディ・ウォーホールのことであるという見解が多勢を占めていました。なぜそんなことになっているのかをさらに調べてみると、アンディ・ウォーホールがこの曲のYour diplomat who carried on his shoulder a Siamese cat の部分を聴いた際「これって僕のことだ」と自ら発言した(自伝に記した)ということがその始まりであったと分かりました。なぜ彼がそう思ったのかと言うと、これにもストーリーがあって、Like a Rolling Stone が世に出る前、ウォーホールはEdie Sedgwick(カリフォルニアの名家に生まれ、ニューヨークで社交界デビューした美しいモデルで、1971年、薬物の過剰摂取で死去。享年28歳)という女性と恋仲にあって、その後、彼女はウォーホールのもとを去ってディランと付き合っていたとされています(ディランはEdie と交際していたことを否定していて、彼女のことは記憶にもないと発言していますが、それが真実なのかどうかは当の二人以外、誰にも分かりません)。当時、ウォーホールは自分の母親と十匹だかのシャム猫と暮らしていて、恐らく彼はHe really wasn’t where it’s at after he took from you everything he could stealとSiamese catの部分を聴いて自分への当て付けだと思ったのでしょう。ここで重要と思えるのは、ウォーホールのこの思い込みが「シャム猫を肩に乗せてる外交官=アンディ・ウォーホール」説の原点となっているという事実であり、ディランがそう言った訳ではないということです。実際のところ、何度この曲を聴いても僕にはシャム猫を肩に乗せてる外交官がウォーホールのことだけを指しているとは思えないし、むしろ僕が感じたのは、ここのバイクに乗っているyou とdiplomat who carried on his shoulder a Siamese cat は、前半に出てきたthe jugglers and the clowns と同じ種の人々のことではないのかということでした。ディランはEdie と交際している途中で、彼の恋人であったモデルのSara Lownds と結婚していて、ディラン自身もHe really wasn’t where it’s at after he took from you everything he could steal に該当する男であった訳ですから(要はウォーホールと同じ穴の貉)、ここのyou はまさしく彼自身のことであり、僕にはこの第5節の後半はディランが自らに向けた自己批判ではないかという気がします。じゃないと、この後半部分が単なるウォーホールに対する嘲笑であるのなら、ディランは自分のことは棚に上げて他人を腐すケツの穴の小さい糞野郎だということになってしまいますからね(笑)。
第6節は再びコーラスに入り、ここも2節目のコーラスの歌詞とは微妙に違っています。そして7節目、またしても意味不明なフレーズの羅列。奇天烈というのはこのような時に使う言葉なのかも知れません(笑)。最初の3行は恐らく、競争社会の中で成功し富を得た人々の比喩でしょう。They’re all drinkin’, thinkin’ that they got it made exchangin’ all precious gifts は、そんな彼らの価値観は金がすべてであり、それで満足しているということの暗喩であると僕は理解しました。そう考えれば、4行目にBut you’d better take your diamond ring, ya better pawn it という文が来ていることが理解できます。you’d better という表現は、事実上の強い命令であり、「君は君のダイヤの指輪を持って行って質に入れろ」なんてことをなぜ強く言っているのかというと、金がすべてと考えるような世界とは決別しろということなのだろうと僕は考えました。4、5行目もYou used to be so amused at Napoleon in rags, and the language that he used でひとつの文ですが、これまた珍妙な表現ですよね(笑)。なぜにここで唐突にナポレオンが登場するのか良く分かりませんが、Napoleon in rags は、かつては権勢を誇っていたのに最後は落ちぶれた(流刑されて襤褸をまとうことになった)ナポレオンのイメージ、即ち、成功者たちの世界、富を持つ人の世界から転落した人々の比喩だと理解。the language that he used は「真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者のことである」とか「死ぬよりも苦しむほうが勇気を必要とする」といった類の彼が残した格言の数々のことではないかと思います。7行目のGo to him now のhim はナポレオンを指していると考えるのが自然。ナポレオンの所へ行けというのは、落ちぶれたとしても、崇高な精神を失うことのない世界で生きろというではないでしょうか。なぜなら、そんな世界で生きることは、You ain’t got nothin’, you got nothin’ to lose. You’re invisible now, you got no secrets to conceal な人間だけに許されるからです(You’re invisible は何もかも失って裸同然の姿であることの比喩ですね)。そして、最後にもう一度、How does it feel? Aw, how does it feel のコーラスが入りますが、2、4、6節目のコーラスではHow does it feel?が嫌味にしか聞こえなかったのに、最後のここでは「(落ちぶれたって、まともな世界で生きることができるのなら)それもいいもんだろ?」というふうに僕には聞こえました(←あくまでも個人の感想です・汗)。
と、Like a Rolling Stone の歌詞を最後まで一通り追ってみた結果、この曲はかつては成功者たちの世界、富を持つ人々の世界にいたものの自分の浅はかさによってそこから転落し、自らの居場所も失って根無し草のように生きる孤独な女性の物語であることは分かりました。が、それ以上に意味があるものでも、それ以下の意味しかないものでもないというのが僕の結論。それと、この歌詞の主人公のキャラクターはEdie Sedgwick をモデルにしていることは間違いなさそうですが、主人公=Edie Sedgwick という訳ではなく、この曲では主人公が女性になってはいても、そこにはディラン自身の姿が投影されているような気がしたということを付け加えておきます(冒頭に紹介した「この曲の歌詞は僕のvomit だ」という彼の言葉を思い出してみてください)。なぜなら、世間から注目され続ける成功者の座を捨て、何も持たず、すべてを無にして自分本来の姿で生きたいと思っていたのは、他でもないディラン自身だったのであろうことは想像に難くないからです。まあ、いずれにせよ、この曲の歌詞が世間で評価されているほどに優れたものだとは僕には思えませんでしたけどね(←最後まで上から目線かよ・笑)。
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