本ホームぺージ内の『洋楽の棚』をようやく10分割できましたので、その記念として(←何の記念だよ?笑)『洋楽の棚』で解説した曲の中から、自分でも「なかなか良く書けたなぁ」と思える曲を10曲選び、傑作選としてこのブログで毎週日曜日に紹介していくことにしました。傑作選なんてものは「この回は良かったですよ」と第三者が評価して選ぶものだとは思いますが、何分、まだまだ本ホームページの読者数はお寒い状況ですので、自らで選ぶことをお許し願います(汗)。今回お届けするのは、第3回で取り上げたイーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア」です。
【第3回】Hotel California / Eagles (1976)
8つのギターコードが反復進行(ゼクエンツ)する印象的なイントロで始まるどこか刹那いギターの音色、そして終盤に披露される圧巻のギターソロ。毎日聴いても飽きることのないこのこの名曲のメロディーラインを作り上げたDon Felder は天才としか言いようがなく、Hotel California は1970年代にアメリカ西海岸で興隆したウエスト・コースト・サウンドにおける金字塔です(アルバムHotel California は全世界で3千万枚以上売れたんだそう)。耳にした者の多くをしびれさせたこの哀愁漂うメロディーを同時に盛り上げているのがその謎めいた歌詞で、この曲を聴いた者が増えれば増えるほどに、ある意味難解と言うか、分かりにくい歌詞が様々な解釈を生み出すことになったという興味深いエピソードを持つ曲でもあります。ということで、先ずはその歌詞をどうぞ。
On a dark desert highway
Cool wind in my hair
Warm smell of colitas
Rising up through the air
Up ahead in the distance
I saw a shimmering light
My head grew heavy and my sight grew dim
I had to stop for the night
暗い砂漠の上のハイウェイで
髪を撫でる涼しい風
煙るマリワナの芳香が
辺りに漂う中
前方の遠く向こうに見えたのは
チラチラと光る灯りだった
頭は重くなるばかりだし、目も霞んでくるしで
俺はその夜、ホテルで休むことにしたんだ
There she stood in the doorway
I heard the mission bell
And I was thinkin’ to myself
“This could be Heaven or this could be Hell”
Then she lit up a candle
And she showed me the way
There were voices down the corridor
I thought I heard them say
ホテルに着くと入口に女が立っててね
修道院の鐘の音が聞こえてきたもんだから
どうしようかなって考えたよ
「泊まるべきか、引き返すべきか」って
そのあと、女が蝋燭に火を灯したからさ
結局、彼女の後について行っちまったんだ
そしたら、廊下の向こうで声が響いてた
こんな風に言ってたかな
“Welcome to the Hotel California
Such a lovely place (Such a lovely place)
Such a lovely face
Plenty of room at the Hotel California
Any time of year (Any time of year)
You can find it here”
「ようこそホテル・カリフォルニアへ
お泊りになるならここは最良の場所
見た目もイケてますしね
お部屋もたくさんございますから
年中いつでも
空き部屋を見つけられますよ」
Her mind is Tiffany-twisted
She got the Mercedes Bends, uh
She got a lot of pretty, pretty boys
That she calls friends
How they dance in the courtyard
Sweet summer sweat
Some dance to remember
Some dance to forget
彼女が考えてるのは贅沢品のことばかり
メルセデス・ベンツだって手に入れたし
恋人にする男だって選び放題だったさ
まあ、彼女にとっては単なる遊び友達だったんだけどね
なんだろう、中庭では宿泊客たちがダンスを踊ってる
甘美な夏に汗をかきながら
ある者は何かを思い出そうとして
またある者は何かを忘れようとして
So I called up the Captain
“Please bring me my wine”
He said, “We haven’t had that spirit here
Since 1969″
And still those voices are callin’
From far away
Wake you up in the middle of the night
Just to hear them say
でさ、俺は給仕長を呼んで丁寧に頼んだんだ
「ワインを持ってきてくれないかな」ってね
ところが「1969年以降、ここにはお酒を置いておりません」
なんてことを彼は言うんだよね
そして、またあの声が
遠くから聞こえてきたんだ
真夜中に叩き起こされて
その声を聞けと言われてるかのように
“Welcome to the Hotel California
Such a lovely place (Such a lovely place)
Such a lovely face
They livin’ it up at the Hotel California
What a nice surprise (What a nice surprise)
Bring your alibis”
「ようこそホテル・カリフォルニアへ
お泊りになるならここは最良の場所
見た目もイケてますしね
皆様、ここで大いに楽しまれてるんですよ
そりゃいいねって思うでしょ
あなたもここに住まれてみてはどうです」
Mirrors on the ceiling
The pink champagne on ice, and she said
“We are all just prisoners here
Of our own device”
And in the master’s chambers
They gathered for the feast
They stab it with their steely knives
But they just can’t kill the beast
鏡張りの天井のある部屋で
氷で冷やしたピンク色のシャンパンを手に女が言ったんだ
「あたしたちはみんなここの囚人なのよ
自ら望んでそうなったんだけどさ」と
そのあと、宴をする為に
みんなで看守の部屋に集まってさ
鉄のナイフでケダモノ同然の自分に止めを刺そうってするんだけど
連中ったら、誰もできないんだよね
Last thing I remember, I was
Running for the door
I had to find the passage back
To the place I was before
“Relax,” said the night man
“We are programmed to receive
You can check out any time you like
But you can never leave”
最後に俺が思い出せるのは、俺が
ドアに向かって駆け出してたってことかな
元の居場所に戻りたきゃあ
こんな所から早く逃げ出さなくっちゃと思ってね
すると、夜勤の男が「もっとくつろいだらどうです」って俺に言ったんだ
そして、こうも言ったのさ
「私どもはあなた方を受け入れる為にここにいるんです
まあ、出て行きたければいつでも好きにしてもらっていいんですが
そんなこと、決してできやしませんよ」ってね
Hotel California Lyrics as written by Don Henley, Glenn Frey, Don Felder
Lyrics © Red Cloud Music, Cass County Music
【解説】
あぁぁー、ほんと何回聴いてもHotel California はしびれますね。素晴らしいです。そんな名曲の歌詞にはさまざまな解釈が存在すると冒頭で述べましたが、なぜそんなことになったのかを早速紐解いていくとしましょう。第1節は構文もシンプルで文法的に難解な部分もなく、一見すれば日本の高校生でも訳せそうですが、この歌詞を訳そうとした日本人の多くはこの最初の節でいきなり挫折することになります。その原因はすべて3行目のcolitas という単語のせいで、このcolitas という言葉がどんな辞書のどこを探しても見当らないからです。それはネイティブにとっても同様で、多くの人が「colitas って何なんだろう?」と悩み、その意味を探ってきました。それらの先人たちの努力のおかげで、今ではcolitas がマリワナの意味で使われていることが定説になっています。ここでは先人がもたらしてくれたそんな知識が無いものと仮定して、自分なりに一度考えてみましょう。colitas が英語の辞書に存在しない単語だと分かると普通は、その語が外国語であるか造語のどちらかであるという結論に達しますけども、スペイン語話者であればcolitas がcola(しっぽ、尾)の指小辞ではないかとすぐにピンとくることでしょう。指小辞というのは英語にはないスペイン語特有の文法用語で、語尾を–ito や-ita に変化させて単語に小ささや可愛さの意味合いを加える用法です。なのでcolita は「かわいいしっぽとか、ちっちゃなしっぽ、しっぽちゃん」といった意味合いになります(語尾のs は英語同様、複数形を表しています)。ですが、それが分かったとしても、まったく意味が通りません。「しっぽちゃんの生温かい匂い?なんじゃそりゃ?」となります。すると、今度はこんなことが思い浮かびます。「スペイン語は中南米のほとんどの国で話されているから、国によっては本国での単語の意味と乖離した意味で使用されている単語が数多くあるはずだ」と。そこでカリフォルニアがメキシコと国境を接する地であることにあたりを付けて、メキシコでcolita がどういった意味で用いられているのかを調べてみると、次のような解説にたどりつきました。
【México】Un término del argot para los cogollos de la planta de cannabis(メキシコでは大麻草のつぼみを意味する隠語である)
ただ、この解説はホテル・カリフォルニアの歌詞が世で有名になってから後付けされたような気がしないでもありません。なぜなら、マリワナのメキシコでの隠語は通常、煙草の吸い殻を意味するcolilla が使われるからです。言語学者でもない僕には、colilla から転じてcolita を使うようになったのかどうかといったことまでは分かりませんがcolitas は、イーグルスのメンバーなど、ごく限られた人々の間だけで通じる隠語だったのかも知れませんね。とは言え、後にローリング・ストーンズ誌のインタビューでcolitas とは何なんですかと尋ねられたDon Henley(この歌を作詞した人で、ホテル・カリフォルニアをドラムを叩きながら歌っています。ある意味凄いです)が「It means little tails, the very top of the plant ・ちっちゃなしっぽって意味さ。植物の先っぽのね」と答えていることや(マリワナのことだとは明言してませんけどね・笑)、当時イーグルスに同行していたメキシコ系アメリカ人スタッフがこの言葉をメンバーに教えたという関係者の証言なども加味すれば、colita がマリワナの代替語であることに疑問の余地はないと思います。因みにDon Felder は同じことを訊かれて「The colitas is a plant that grows in the desert that blooms at night, and it has this kind of pungent, almost funky smell ・コリータスはね、砂漠で夜に花を咲かせる植物のことさ。ツンと鼻にくるようなおかしな匂いがするね」と答えてますが、世界中のどんな植物図鑑にもcolitas なんて植物は載ってませんから、この言葉は彼なりにマリワナを比喩したものであるか、単にジョークで返したと考えるべきでしょう。以上のことを踏まえてこの曲の第1節を聴くと、僕の頭に浮かんでくるのはこんな情景です。
陽が暮れた後、カリフォルニア郊外の砂漠のハイウェイを走る一台の車。車はおんぼろのオープンカーで、運転しているのは長髪のヒッピー風の若者。彼の長髪が砂漠特有の気温の低下で涼しくなった風にたなびいています。銜え煙草で車を運転している若者がふかしているのはマリワナ煙草(smell がwarm なのは、先に火のついていている煙草を口元に銜えているからではないでしょうか。喫煙者なら分かると思いますが、銜え煙草でふかすと口の周りに仄かな熱を感じる時があります)。I saw a shimmering light の部分からは、前方にホテルのネオンサインのようなものが見えてきたと推測できますが、マリワナでラリってきたと言ってるようにも聞こえます(頭の中がチッチラパッパになっている・笑)。My head grew heavy and my sight grew dim はその結果です。と、colitas がマリワナの意味であることが分かると、歌詞のgrew dim とは裏腹に第1節は一気にクリアーになります。出だしのOn a dark desert highway をベトナム戦争が泥沼化していく中、斜陽していくアメリカという国を暗喩しているといったような小難しいことを考える人もいるようですけども、この第1節にそんな深い意味はないと思います(笑)。後になってDon Henley が、この歌詞に込めた思いのひとつに、度を超えたアメリカ文化the excesses of American culture (それが何なのかを彼は詳しく述べていませんが、アメリカ文化と言うよりは、西海岸の若者文化、つまりは、ドラッグ(麻薬)の乱用や男女間の乱れきった性などによって引き起こされている退廃した世界のことを指しているのでしょう)への警鐘があったと語っているとおり、第1節は、今まさにその退廃した世界への入口に立っている若者の姿を単に描写しているのだと僕は考えています。そのことは、第2節を見ても明らかですね。
第2節は、ホテルの入口にたどり着いた若者がmission bellを耳にするところから始まります。mission bell は教会や修道院の鐘の音のことで、鐘の音は時を知らせる役割以外にも、周囲に危険が迫っていることを知らせる際にも使われていました。つまり、鐘の音が若者に「ほんとに泊まるのか?」と警告している訳です。Don Henley の前述の言葉どおり、まさしく警鐘です。その結果、若者は「泊まって天国のようなホテルだったらいいけど、泊まって地獄みたいなホテルだったら嫌だな。どうしよう」と考えるのですが、結局はホテルの中へ足を踏み入れます。若者がなぜホテルに泊まることにしたのかというと、入口にいた女がlit up a candle(マリワナ煙草に火を付けたの暗喩ではないでしょうか)したように、ドラッグの誘惑があったのだと僕は考えています。そして、若者は一度聞けば誰もが忘れることのない「Welcome to the Hotel California」の声を聞くことになります。その後に続くSuch a lovely face には、癖のある面々が集うホテルといった意味も込められているかも知れません。
この世にはホテル・カリフォルニアの歌詞を絶賛されている方が星の数ほどおられます。その本人が最高と思えば、本人の中では最高のものということは揺るぎなき真理ですので、それらの意見を否定はしませんが、僕の中ではこの曲の歌詞はどちらかと言えばできの悪い部類です(←出た!上から目線・汗)。その理由は次の第4節にあります。第4節に出てくるHer やShe は、第2節に出てくるドアの傍に立っていたsheとは別人であると推察できますが、第3節までの流れはとてもいいのに、この第4節の唐突な女の登場がすべてをぶち壊しにしているからです。あまりにも脈略が無さ過ぎて、取ってつけた感が否めません。まあ、それはさておき、4節目の最初の行のTiffany-twisted はティファニー狂い(ティファニーのような高級品ばかり好む)という意味で、2行目のMercedes Bends と対をなしています(Benz であるはずのメルセデス・ベンツの綴りがBends になっているのは、twist にひっかけた言葉遊びだとDon Henley が後に明かしています)。この節の最初の2行は、度を超えたアメリカ文化のひとつである商業主義とそれに翻弄される人々、3行目と4行目は男女間の乱れた性への非難なのでしょう。そのあと、中庭へ目を向けた若者の目に宿泊客たちが踊っているのが見えます(このシーンも唐突感が否めませんけど)。客たちは自らの過去の人生を振り返りながら踊っていますが(Some dance to remember)中には自らの過去の行いを悔いている人もいるようです。Some dance to forget は忘れてしまいたいくらいに後悔しているということでしょう。
第5節では、中庭で踊る宿泊客たちを目にした若者が、酒でも飲みながら自分も人生をよく考えてみようと、給仕長を呼んでワインを頼みますが、給仕長の返事はWe haven’t had that spirit here since 1969 というものでした。このspirit は強い酒を意味するspirits との語呂合わせのようなもので、ここでも言葉遊びが行われています。つまり、Don Henley は「1969年以来、そんな精神はここにはない」と給仕長に言わせている訳ですが、ここでもまた、その精神とはいったい何なのか、そしてなぜに1969年なのかという謎解きが必要となってきます。そこで、多くの人が1969年がどういう年であったかのかを調べる訳ですが、その結果、その年がアメリカのニクソン大統領がベトナム反戦運動の高まりの中でベトナムからの撤兵を決定した年であったことから、そのことと結びつけて考える人が続出します。ですが、僕の目に留まったのは、そんなニクソンの決定ではなく、その年に起こった「シャーク・エピソード」と呼ばれる出来事でした。そのエピソードというのは、アメリカ公演の為に訪米していたレッド・ツェッぺリンが、西海岸のエッジウォーター・ホテル(部屋から釣りができることが売りの高級ホテルです)に滞在した際に起こったとされる事件で(事件を起こしたのがメンバーなのかツアーマネージャーのRichard Cole であったのかや、そもそも本当にそんな事件が起こったのかは定かではありません)、ホテルの部屋でドンチャン騒ぎをしていた彼らが、前日に釣り上げて冷蔵庫に入れてあったred snapper(鯛の一種)をグルーピーの女性の陰部に挿入したとされています(当時は、人気ロックバンドのもとには常にグルーピーが集まり、彼女たちをホテルの部屋に呼んでは酒とドラッグで乱痴気騒ぎをする行為が日常的に行われていました)。そんな堕落を生み出すことになった米国音楽産業の商業主義に背を向けていたFrank Zappa は、後にこの事件のことを歌って批判しています。このことから考えると「1969年以来、そんな精神はここにはない」の精神spirit とは「まともな精神、まともな考え、まともな世界」のことであり、1969年というのは、年を表しているのではなく、この事件を指しているとしか僕には思えません。そして、ロックスターたちのそんな堕落した退廃の世界が繰り広げられる舞台に常になっていたのが各地のホテルであり、だからこそ、この曲の舞台がホテル・カリフォルニアという場所であったのだと考えれば全てのつじつまが合うのです。Don Henley やDon Felder、Glenn Frey といった当時のイーグルスのメンバーは元々は西海岸の歌姫Linda Ronstadt(リンダ・ロンシュタット)のバックバンドのメンバーで、Linda Ronstadt の才能を見出して彼女のマネージャーとなったHerb Cohen(ハーブ・コーエン)は、その前はFrank Zappa のマネージャーをしていた人でしたから、Don HenleyとZappa に直接の付き合いが無かったとしても、Herb Cohen からZappa の話を聞いたりしてDon HenleyがZappa の影響を受けていたとしてもおかしくはありません。Don Henley は自らのプライドから「Zappaにインスパイアーされたことはない」と言うかも知れませんけど…。
第6節では再びコーラスに入りますが、第3節のコーラスの歌詞とは少し違っています。ここでの難解な部分はBring your alibis で、第1回のCall Me にも出てきたとおりalibi は本来、犯罪の起こった場所にその時間はいなかったということの証明という意味で使用される警察用語ですので「まともな世界にもう自分は身を置かないという決意を持ってこい」つまりは、ここの住人になれと言っているのだと理解してこの訳にしました。第7節も難解な文のオンパレードですが、和訳を読んでいただけば、だいたいの感じは分かってもらえるかと思います。Mirrors on the ceiling から僕が感じたのは、内なる欲望を隠し覆せない宿泊客たちが集っている部屋の情景(鏡は鏡の前にあるものをそのとおりありのままにに映す、つまりは人の内面といった真実までを映す)であり、そんな部屋の中でpink champagne を手にした女が若者に語りかけているのです。The pink champagne on ice と聞いて思い浮かぶイメージはアイスペールの中で冷やされたシャンペンですが、恐らくここではドラッグを暗喩しているのだろうと僕は思いました。We are all just prisoners here of our own device はその台詞どおり、自分たちが堕落したのは誰のせいでもなく自らの責任であるということでありThey stab it with their steely knives but they just can’t kill the beast は、そんな自分たちは、なんとかドラッグをやめようとしているのだけど結局はできないという意味に思えました。なので、最後に出てくるbeast は、麻薬の常用でケダモノみたいになってしまっている自分たちのことなのだと考えながら、このように訳した次第です。steely knives という言葉を使ったのは、その響きからSteely Dan を仄めかしたかったとDon Henley が語っているとおり(Steely Dan のメンバーであったWalter Becker は麻薬中毒者として有名でした)、第7節は麻薬の乱用に対する問いかけだと考えて問題ないでしょう。
最後の第8節は、特に難しい言い回しはないですが、かの有名なYou can check out any time you like but you can never leave というフレーズがここに出てきます。皆さんはこの台詞を聞いてどう感じられましたか?なんだか自分のことを歌っているみたいだと感じた方はおられませんか?例えば、学校の校則や権威をふりかざすセンコーなど糞喰らえですぐにでも退学したいのに、それができない自分。親が厳しすぎてすぐにでも家出したいのにそれができない自分。会社を辞めたくって仕方ないのに、収入が途絶えると思うとそれができない自分。安易に麻薬に手を出してしまったが為に、やめたくてもやめられなくなった自分。恋人と別れたいのに、なんだか情だけで付き合い続けている自分。自分が選んだ訳でも自分の未来を託した訳でもない連中に好き勝手にされている似非民主主義の世界から抜け出したくても抜け出せない自分。糞みたいな日本国が嫌で嫌で、海外へ飛び出したいけどそれができない自分。そんな風にYou can check out any time you like but you can never leave には様々な人々のそれぞれの思いが重なってしまうからこそ、この曲から様々な解釈が生まれてしまったのだと僕は考えています。そしてこの台詞のあと、伝説のギターソロが続いて曲は終了。
以上のように、ホテル・カリフォルニアはDon Henley が自ら語っているとおり、度を超えたアメリカ文化への警鐘であることは間違いなく、同時に、そんな度を超えたアメリカ文化にどっぷりと浸かってしまている自らへの戒めでもあったのではないかと思います。成功で大金を手にしたイーグルスのメンバーも御多分にもれず、酒、女、ドラッグに塗れたクレイジーな日々を送っていて、保守的な気風のテキサスで生まれ育ったDon Henley が「こんなはずではなかった」と自己嫌悪するようになったとしても不思議ではありません(因みに、イーグルスのメンバーに西海岸出身の者は一人もいません)。そこから導かれる結論はただひとつ。ホテル・カリフォルニアという場所が、度を超えたアメリカ文化が生み出してしまった退廃世界の象徴として描かれたということです。それ以外に他はありません。でも、この名曲には残念ながら情けないオチがあります。Don Henley はそんな思いを込めてこの曲を書き、歌ったにも拘らず、その後は反省どころか逆に銭亡者になってしまい、金銭トラブルからこの曲の最大の功労者であるDon Felder をグループから追い出しました。人間というのは所詮そんなものなんですよね(汗)。
難解だとされる歌詞の解説なので、やはりどうしても長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。第1回から第3回までは、僕が人生の中で好きになった洋楽ベスト3を紹介させていただきましたが、如何でしたか?ベスト3の中でどの曲が一番というのは僕の中にはありませんけども、音楽としての完成度の面からだけで評価するなら、この曲が一番優れているかと思います。
本ホームぺージ内の『洋楽の棚』では100曲以上の洋楽の名曲を紹介していますので、興味のある方は覗いてみてください!