小説の棚

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はじめに

もう30年以上も前のこと、その頃まだ大学生であった僕には、小説家を目指して執筆活動に勤しんでいた時期があったんですけども、大学を卒業後、サラリーマンになって働き始めると、仕事が激務過ぎて休みの日はただひたすら眠るという生活になってしまい、いつしか小説を書く気力など消え失せていました。ところが、月日が流れてあっという間に50歳を過ぎてしまったある日「自分の人生、あと残りどれくらいなんだろう?」という思いがふと脳裏を過り、その瞬間「そうだ、書き残しておかなければならないことがまだ山ほどある」という焦りにも似た衝動に突き動かされた僕が決意したのは、残りの人生はできるだけ働かずに自由な時間を優先し、年収100万円で生きていこうということでした。

以来、その決意を実行に移し、増えた自由な時間を使って作品を書いては、世の文学賞と呼ばれるものに応募を続けてきましたが、いくら働く日数を少なくして執筆時間を増やしても、筆の遅い僕は長編だと1年に1作程度しか仕上げられませんし、その大事な1作も応募作品の下読みを担当している芸術のゲの字も理解できない白痴同然の連中に最初にハネられてしまえば「はい、それでお終い」です。そんなこんなで、だんだんと賞へ投稿することが馬鹿らしくなってきていた時、耳にしたのがトップページで紹介したドナルド・トランプの言葉でした。書き続けてきた自分の作品が机の引き出しの中で眠ったままでは、誰の目にも触れぬままで一生が終わってしまいますが、今の時代、こうやって自らで公開すれば一人や二人、作品を読んでくれる人が出てくるかも知れないこと、そして、別に賞が欲しいのではなく、誰かに読んで欲しくて作品を書き続けている僕にとって、それこそが自らの本懐を遂げる最良の手段であることに、今更ながらに気付いたのです。

トップページでも触れたとおり、ここに掲載している作品の中には文学賞の受賞作品や予選通過作品が多数含まれていますが、どの作品がどれだということは記していません。作品の価値が、賞を受賞したか否かや予選を通過したか否かで決まることなどないからです。皆さんが読んで良かったと思えば良い作品、つまらないと思えばつまらない作品。それ以外に他はありません。ですが、少なくとも読書好きの一般の皆さんの方が出版業界に巣食う無能な奴らよりはよほど見る目があると信じていますから、できるだけ多くの方々に読んでもらって感想を聞かせていただきたいと思っています。作品はPDFファイルにて添付してありますので(リンクをクリックしていただけば、PDFのファイルにジャンプします)、印刷して読んでいただくのがお薦め。印刷枚数の目安も記しておきましたので参考にしてください。いきなりプリンターが何百枚もの用紙の印刷を始めたら驚かれるでしょうからね(笑)。

それと、最後になりましたが、河内レオンからひとつお願いです。できるだけバイトの時間を減らして執筆活動に充てていますが、それでもまったく時間が足りず、書きたくても書けていないことが山ほどあります。ですが、バイトをしないと生活ができませんし、何でも値上がりの昨今ですので、逆にバイトの時間を増やさなければいけないような状況です。そこで、ここに掲載中の作品を読んでくださった方の中で「河内レオンを応援したい」と思ってくださった方がもしいらっしゃれば、100円でも200円でも構いませんので、本を1冊買ったと思ってカンパしていただけましたら幸いです。カンパが集まれば集まるほど、バイトの時間を減らして執筆活動にもっと時間を費やすことができますので、どうか河内レオンを助けると思ってカンパに協力してやってください。尚、1万円以上のカンパをしてくださった方には、いつの日か河内レオンの作品が出版されるようなことがあれば必ずやサイン本を贈呈いたしますので「お問い合わせ」のページにあるフォームを使ってお名前と住所をお知らせください(勿論、永遠に出版とは無縁の場合もありますので悪しからず・汗)。

【カンパにご協力いただける際は下記口座へお願いします】
 銀行名:ゆうちょ銀行 普通預金
 支店名:四一八支店(読み方はヨンイチハチ) 店番の場合は418
 口座番号:1309494
 口座名義:ナカノ タカシ

【作品の長さの目安】
 A4用紙10枚前後:短編作品。原稿用紙換算で30~40枚前後に相当。
 A4用紙50枚前後:中編作品。原稿用紙換算で150~200枚前後に相当。
 A4用紙90枚以上:長編作品。単行本で1冊として刊行可能な文章量に相当。

風と娼婦

「風と娼婦」を執筆してからもう30年以上の月日が経ちますが、僕が小説を書き続けてきたのは、新人賞作家として大手出版社からデビューすることによって、この作品を絶対に世に送り出すと心に誓っていたからでした。昔は自分の小説を誰かに読んでもらうにはそうするしか他に手段が無かったのです。しかし、時は流れ、技術革新のおかげで書店に並ぶ本にならなくとも自らの思いを実現できる時代となりました。このような自作のホームページに掲載という形ではありますが、見知らぬ誰かに自分の小説を読んでもらえるかも知れないと思うと、今は心が震える思いです。ですが、これで区切りがついたという訳ではなく、僕の中ではいつの日かこの作品を映画化し、タイで上映することが最終目標なので(日本はどうでもいいです)、この小説の映画化に興味を持ってくれる映像製作関係者、特にタイ人の方が現れてくれることを切に願っています。また、この作品をタイ語に翻訳してくださる方も募集中です(但し、大変申し訳なく思いますが、金銭的余裕がないので謝礼は出せません・汗)。

【あらすじ】
インターネットなんて言葉は存在すらせず、個人向けの携帯電話でさえまだまだ夢物語であった1991年、通っていた大学を休学し、蜃気楼のような好景気に湧いていた日本を離れてユーラシア大陸横断の旅に出ていた主人公の「俺(タカ)」は、旅の終焉に立ち寄ったタイ北部の古都チェンマイでユピンという名の女性に出会う。ただ、その出会いが普通のそれと違っていたのは、二人が出会うことになったその場所が我が身を切り売りする娼婦と男の欲望が交差する娼家だったからであった。

日本への帰国が目前に迫った3月の暑い日、トゥクトゥクと飛ばれる3輪タクシーの運転手に半ば強引に連れて行かれた娼家でユピンを一目見た瞬間に心を奪われたタカは、娼家の下男から事を娼家で済ませるのではなく宿泊先の部屋へ女を連れて帰るように言われ、戸惑いつつも二人で娼家を後にする。思いがけずチェンマイの街で一日を一緒に過ごすことになった彼はユピンと打ち解けようと懸命になり、つたない会話を続ける中で彼女が家族を養う為にタイとビルマの国境を越えてチェンマイへ出稼ぎにやって来てたタイヤイ(シャン族)の娘であることを知る。そんな厳しい境遇の中でも美しい笑顔を見せる彼女に徐々に惹かれていくタカだったが、その夜、その気持ちを確かなものに変える光景を目にすることになる。それは二人が夜店の連なるチェンマイ名物のナイト・バザールをそぞろ歩いていた時のこと、通りで物乞いをしていた不具の男の前で立ち止まり、自分の財布の中から取り出した一枚の紙幣をその男にそっと握らせたユピンの姿であった。そんな振る舞いを目の当たりにしたタカは、社会の底辺で暮らす彼女が心の余裕を失っていないことに驚愕し、彼女を自分の手で幸せにしたいという強い思いが芽生える。翌朝、ユピンとの別れを前にして心の昂ぶりを抑えきれなくなったタカは「愛している」という言葉を思わず口にしてしまうが、彼女が去り際に残したのは「あたしは夜の商売女。あなたはあたしの上をただ通り過ぎていく風なのよ」という言葉だった。

後ろ髪を引かれる思いで日本へ帰国したものの、ユピンのことが忘れられず、自分は風で終わらないと決意したタカは再びチェンマイを訪れて彼女との再会を果たすが、二人の運命の前に立ちはだかっていたのは、個人の力では変えようのない厳しい現実であった。(本作品は実際にあった出来事に基づいて描かれた小説です)

【印刷枚数の目安】A4用紙で107枚
「風と娼婦」を読みたい方は下記のリンクをクリックしてください。
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エカチェリーナのイコン

僕が昭和三部作と勝手に名付けている長編小説の中の戦前編です。戦前に「満州国」と呼ばれていた中国東北部で、日本人が本土よりも遥かに豊かで文化的な暮らしを営んでいたことはあまり知られていません(勿論、その豊かな暮らしは中国人や満州人の犠牲の上に成り立っていたのですが)。戦前のそんな満州国における日本人の暮らしぶりと、満州鉄道の華であった特急「あじあ」のことを一度描いてみたかったので、この作品を書きました。読書好きの方だけでなく、鉄道ファンや鉄道好きな方にも是非とも読んでもらい、感想を聞かせていただきたいです。

【あらすじ】
北京近郊の盧溝橋で日中両国軍が全面衝突した昭和十二年、師走の近づいた京都の生神女福音聖堂で行われていた読書会に参加していた秋山寛二というロシア語を学ぶ生真面目な学生が、会で顔見知りになった京都帝大の法学部に通う奥野義雄に酒を飲もうと誘われ、向かった先の奥野のアパートの部屋で一人の男と出会う。男の名は小林陽之助。日本で壊滅状態にあった共産党再建の命を受けてソ連から密かに帰国していた筋金入りの左翼活動家で、秋山はその小林から奇妙な仕事を頼まれる。その仕事とは一通の手紙を至急且つ極秘裏にモスクワへ届けるというものであった。

同じ頃、海の向こうの大連では、南満州鉄道本社の経理部に勤める北中正敏が前夜に火災で焼失して大きな被害を受けた大連港にある自社倉庫の損害額の見積に当たっていたが、エリート社員である彼には別の顔があった。ソ連の工作員という顔である。その数日後、大連の憲兵隊は港の倉庫火災が反日分子の放火であったと罪を捏ち上げて港で働く数名の中国人労働者を逮捕するが、倉庫火災の裏に巧妙な謀略が潜んでいることを憲兵隊が嗅ぎ付けることはなかった。なぜなら、謀略を指揮したのが憲兵隊より数枚上手の大連特務機関を率いる軍人、安井大佐だったからで、その目的はシンガポールから大連港に到着した阿片の荷を誰にも気付かれることなく奪い取ることであった。

一方、小林の依頼を引き受け、満州経由でモスクワへ向かう為に神戸港から貨客船で日本を後にして十二月五日の早朝に大連港に到着した秋山は、哈爾濱行きの特急あじあに乗り継ぐ為に大連駅へと向かう。奇しくもそこには出張で大連を発つ北中正敏の姿もあったが、その日、満鉄が誇る特急あじあに乗り込もうとしていたのは胸に秘密を抱えるそんな二人だけではなかった。北中と同じ満鉄の社員で中国共産党の協力者、彼を追う大連の特高警察の刑事、満州国の高級官僚、大財閥の総裁の縁者、満州の取材でやって来た英国人記者と監視役の満州国広報官、阿片密売を生業とする中国人の無頼漢と愛人、その二人を尾行中の憲兵、上海在住のドイツ人技術者、陸軍病院の軍医、安井大佐を訪ねていた哈爾濱暮らしのユダヤ人、地元民の恨みを買っている満州拓殖公社の職員、そして、母親の見舞いの為に大連を訪れていた首都警察庁の刑事である本郷和馬。そんな様々な事情を抱えた乗客たちを乗せて特急あじあは大連駅を後にするが、数時間後、車内で北中の射殺体が発見される。たまたま列車に乗り合わせていたことから事件に遭遇することになった本郷が、直ちに乗客乗員への聴取を開始するのだが…。

【印刷枚数の目安】A4用紙で173枚
「エカチェリーナのイコン」を読みたい方は下記のリンクをクリックしてください。
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英雄の蹉跌

昭和三部作の戦中編にあたる作品です。敗戦間近の昭和二〇年六月、大阪上空で対空砲火を浴びた米軍の大型爆撃機B29が大峰山麓に墜落し、その寸前にパラシュートで機外に脱出して大峰山中に降り立った四名の米兵が逃走を続けたという実際にあった事件をベースに描きました。結核持ちであることを理由に村八分にしていた若者を、ある日突然、敵を殺したという理由で急に英雄として持ち上げる村の住民、そして、人を殺して英雄に祭り上げられる主人公。そこに存在するのは善悪ではなく狂気だけです。その狂気が戦争によってもたらされたものなのか、人が根源的に備えているものなのか?答えはひとつしかありません。

【あらすじ】
昭和二〇年六月一日、大阪の港湾施設を焼夷弾で火の海にしたB29の大編隊の中の一機が、対空砲火の直撃弾を浴びて奈良県の大峰山麓に墜落。墜落寸前に四名の搭乗員がパラシュートで脱出した。その光景を目撃した地元の住人たちは「敵機撃墜!」と歓声を上げたが、同じように空を眺めていた一人の青年、石橋武雄だけは違っていた。親が作った借金の返済期限が月末に迫っていることで頭が一杯であった彼にとって、敵の爆撃機が墜落したことなどどうでも良いことだったのだ。結核に罹患した両親を相次いで失くした武雄は、吉野の最上村で家業の林家を継いだばかりの駆け出しの山守で、若い彼が徴兵されて戦地へ向かうことがなかったのは、徴兵検査で軍医から肺に影があると診断されて兵役免除となった為であった。家族の中から二人もの肺病の死者を出したばかりか、その後継ぎは兵隊にもなれぬ役立たずと見做す村人たちにとって、武雄は村の厄介者である。

武雄が借金返済のことで切羽詰まっていた理由は、B29が山中に墜落する三日前に家を訪ねてきた村で金貸しをする菊谷源太郎から、最高級の吉野杉が育つ石橋家の山を担保に武雄の父が生前に借りていた金の返済を唐突に迫られていたからで、焼け野原になった都市部で材木の需要が戦後急増することを見越していた菊谷の目的は、戦争が終わる前に石橋家の山を我がものにすることであった。山の杉を切れば借金は返済できるものの、戦時下の木材統制法のせいで直ぐにそれができない武雄は、戦争が終わるまで借金の返済を猶予して欲しいと菊谷に懇願するも海千山千の菊谷に鼻であしらわれてしまい、何もできることのない無力な青年にできたことと言えば、ただ項垂れることだけであった。ところが、B29の墜落から五日後、狩猟を副業にしている武雄がいつものように猟銃を担いで山に入ると、そこで出くわしたのは対空砲火の火災で火傷を負い既に虫の息となっていた米兵で、敵の脇に吊るされたホルスターに拳銃が収まっているのを見つけた武雄の脳裏にある悍ましい考えが過る。それは、米兵の拳銃で菊谷源太郎を殺害し、犯行を敵の手によるものと見せかけるだけでなく、その敵を山で見つけた自分が猟銃で撃ち殺したことにするという完全犯罪であった。

【印刷枚数の目安】A4用紙で92枚
「英雄の蹉跌」を読みたい方は下記のリンクをクリックしてください。
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闇に消された女

昭和三部作の戦後編にあたる作品です。大日本帝国の無能で無責任な連中に殺された数百万の兵士たちへの鎮魂と在日米軍基地の存在に苦しむ地域の人々、特に沖縄の方々への連帯を示したくてこの作品を書きました。この作品を読んだ一人でも多くの方々が、在日米軍基地問題を自分のこととして考え、目を向けるようになってくださるようになるのであれば、この作品の存在意義はあると思います。

【あらすじ】
昭和二十一年の春先、輸送船で数日前に浦賀へ帰国したばかりの一人の日本人青年が、国電有楽町駅のガード下で通りがかりの米陸軍将校ヘンリー・クラークに声をかけた。青年の名は鹿沼康則。兵站を無視した大本営の無謀な作戦によって飢餓地獄となったニューギニア戦線で餓死寸前のところを敵軍の衛生兵に助けられ、オーストラリアの収容所で長らく捕虜生活を送っていた復員兵である。焼け野原となった戦後の東京で一財産を築くという野望を抱き、軍の物資の横流しを唆そうと米軍将校に近付いた鹿沼であったが、軍医であるクラークから自分の仕事を手伝わないかと逆に誘いを受ける。その仕事とは、街に出て性病持ちの売春婦を探し出すという思いもよらぬものであった。

それから一年半後、東京の小金井で乳房と女性器が削ぎ落された女性の無残な絞殺死体が見つかる。事件の特異性から警視庁捜査第一課の刑事、堀田善行が本庁より田無署へ派遣され、所轄の刑事、長谷川勝秀らと共に殺人事件として捜査を開始。地道な聞き込みの結果、殺された女が新宿の街娼、阿部暢子であったことが判明する。被害者の周辺捜査を精力的に行った堀田たちはやがて、女が新宿の街角から消えた夜に京王電車ビル前でAナンバーの車に男と仲睦まじく乗り込んでいたことやその男が新宿の闇市で洋モクを売り捌いているノリーと名乗る日本人、鹿沼康則であることを突き止め、重要参考人としてその行方を追うが、鹿沼は身柄を拘束される寸前に行方をくらましてしまう。事件の物証が欲しい堀田は鹿沼の常宿である旭町の富士屋旅館にガサ入れをかけ、暢子の源氏名であるYaeの名が書き込まれた奇妙な英語の書類を部屋で押収、書類が事件に関係しているのではないかと直感するものの、それが何であるかが分からなかった。そこで堀田は、長谷川の従兄で築地の米軍憲兵隊へ派遣されている警察官、富永弘毅に頼んで書類の内容を調べさせ、押収した書類がコンタクト・トレーシングと呼ばれる性病に罹患した売春婦を探し出す為に使われているGHQの公衆衛生福祉局の手配書であることを知る。

さらに捜査を進めていくと、酔った鹿沼が代々木の米軍住宅で男に人肉を食わされたと口にしていたという重要証言が現れ、その男が公衆衛生福祉局の軍医ヘンリー・クラークであることを知った堀田は、事件の真犯人が米兵ではないかと疑い始める。が、その矢先、行方を追っていた鹿沼が芝の米軍倉庫で不法侵入したとして射殺され、鹿沼をホンボシとして送検するという警視庁上層部の意向で捜査本部も解散することとなってしまう。しかし、殺しの犯人がクラークであると確信した堀田は事件が闇に葬られることを阻止すべく、富永に紹介されたCIDと呼ばれる陸軍犯罪捜査局に出向いて捜査の継続を要請。依頼を引き受けたCID捜査官パトリック・オライリーが事件を解決すべく動き始めるのだが…。

【印刷枚数の目安】A4用紙で149枚
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マノーロ

僕は18歳の時に日本を飛び出し、5年に渡って海外で放浪生活を送った経験があるのですけど、そのうちの2年間を当時はまだ物価がとても安かったスペインで過ごし、その間にスペイン人の「大切なのは過去でも未来でもなく、今という瞬間である」という生き方に魅了されました。なので、いつかはスペインを舞台にした小説を書いてみたいという思いがずっとあって、それを実現させたのがこの作品です。僕はこの小説を『読む映画』と名付けていますが、それは、バラの花束を持って墓場に女性が現れる冒頭のシーンを読んだ時、バラの花束だけが赤色に染まっているモノクロの画像がぱっと頭に浮かぶような感性の持ち主だけがこの作品を楽しめると思うからです。当然、金儲けのことしか頭になく、芸術に対する感性ゼロの日本の出版業界の屑どもはこの作品を理解できませんから、昔であれば永遠に日の目をみないところですが、技術の進歩がそんな状況を変えてくれました。技術革新によって世の中があまりにも便利になり過ぎることには賛成できませんが、こうして自らの作品を不特定多数の人々に向けて公開できることができる時代になったことには感謝したいと思います。

【あらすじ】
スペインを長らく支配していた独裁者フランコ将軍が死去し、徐々に民主化が進む中でスペイン国民が自由を謳歌し始めていた1981年、スペイン南部アンダルシア地方の古都グラナダ郊外にある麻薬の売人ホセ・カラドゥーラの家で一組の男女が出会う。男の名はマノーロ、そして、女の名はエンカルナ。マノーロはグラナダの街中で大麻などを売りさばくちんけな売人、エンカルナはヘロインを求めてホセのもとへやって来る麻薬常習者だ。その日、ホセの家からエンカルナをグラナダの街へ送ることになったマノーロは、途中、彼女が何か深い悩みを抱えて麻薬に依存していることに気付くが、それが何であるのかはっきりとしたことは分からず、彼の脳裏を過ったのは、このままでは目の前の女が確実に人生から転がり落ちて奈落の底へ向かって行くということだけだった。数ヶ月後、その予感どおり、麻薬を買う金欲しさにグラナダの通りで身体を売り始めていたエンカルナを見つけたマノーロは、なぜだか彼女のことを放っておくことができず、何かと手を差し伸べるようになるが、エンカルナのヘロイン依存は進むばかりで一向に改善の兆しは見えず、そんな彼女を立ち直らせる為にマノーロが思い立ったのは、二人でバレンシアの火祭りを訪れることであった。

【印刷枚数の目安】A4用紙で47枚
「マノーロ」を読みたい方は下記のリンクをクリックしてください。
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将軍のソブリン金貨

スペイン北部のガリシア地方とポルトガルを舞台にして描いた小説です。社会主義的な政策を推し進める共和国政府の打倒を目指してスペイン軍部が1936年に蜂起した直後(世で言うところのスペイン内戦)、ポルトガルのエストリルに亡命中であった反共和国派の重鎮サンフルホ将軍が、蜂起した部隊に合流すべく小型飛行機でエストリルを飛び立ったものの、見送りに来ていた皆の目前でその機が墜落し、死亡してしまったという史実をベースに、ミステリー小説風に仕上げました。

【あらすじ】
1994年4月25日、長らく続いた独裁体制を打倒して民主主義体制を打ち立てたポルトガルの民主革命の20周年を盛大に祝っていた首都リスボン。同じ日、そのリスボン郊外にある大西洋に面した保養地エストリルで、老朽化の為に建て替えが決まり、解体作業中であった警察署の壁の中から大量の金貨が見つかった。
「なぜ、そのような場所に金貨が隠されていたのか?」
金貨が発見されるずっと以前の1980年に、そんな疑問を解決する真相に既にたどり着いていた学校教師がスペイン北部の田舎町ラ・コルーニャにいたことを知るものはほとんどいない。その教師の名はハビエル・カルバージョ。1936年にエストリルでサンフルホ将軍が墜落事故死した際、将軍の従卒をしていたという顔馴染みの近所の老人が亡くなった際、老人の遺品の中にソブリン金貨と呼ばれる英国の古い金貨があったことから、その出所に関して推理ゲームを始めたハビエルとその仲間たち。果たして彼らが知ることになった真相とは?

【印刷枚数の目安】A4用紙で62枚
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ヤバニー(第1話・ヤバニー参上)

おこがましくも「ゴルゴ13」のような作品に対抗できるような劇画の原作が書けないものかと思って仕上げたのがこの作品です。シリーズ化することで、日々世界で起こっている血なまぐさい出来事を劇画で分かり易く伝えていければいいなと考えています。最近の世界情勢だけを見回してみても、ウクライナでの戦争やアメリカでのトランプ支持者による議事堂襲撃、ミャンマー内戦と特殊詐欺グループの暗躍、ハマスのイスラエル攻撃、イスラエルによる無差別な民間人殺戮、シリアのアサド政権崩壊などネタには事欠きません。第1話以降の続編として幾つかのあらすじだけは考えてあるのですが、時間に余裕が無くてまったく書けていないのが悩みの種。

【あらすじ】
アラブの春の影響を受けてシリアの独裁者アサドの支配に立ち上がった民衆とアサドから離反することのないシリア国軍、そしてその両者の武力衝突の隙に乗じてイラク国境を越えてきたイスラム国がシリアの古都アレッポで激しい戦闘を繰り広げていた2014年の夏、奇しくも3人の日本人がアレッポに現れた。一人目の男の名は井川泰男。独裁者に対して立ち上がった民衆を支援するという目的でやって来たという「自称傭兵」だったが、アレッポ到着後、時も経ないうちに郊外の村でイスラム国の襲撃を受けて捕虜となってしまう。二人目の男は進藤譲二。井川が師匠と仰ぐフリーランスのジャーナリストで、井川の解放をイスラム国と交渉すべく現地入りしたが、敢えなくイスラム国の手に落ちて捕虜に。そして3人目の男は、二人の日本人を捕虜にしたそのイスラム国に雇われたフランス外人部隊出身の「ヤバニー」と呼ばれる日本人傭兵であった。思想信条ではなく報酬のみでしか動かない冷徹なヤバニーは、捕虜にされた日本人がイスラム国によって次々と処刑されてもお構いなしで、そればかりか隣国トルコに滞在中の日本人観光客に対する襲撃作戦にも加担するのだが…。

【印刷枚数の目安】A4用紙で64枚
「ヤバニー」を読みたい方は下記のリンクをクリックしてください。
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因みに続編のあらすじは以下のようなもので考えています。

【第2話・ジュバの悲劇】
南スーダンの首都ジュバへPKO部隊として日本国政府によって派遣されていた陸上自衛隊の部隊が駐屯地で現地の反政府勢力と対峙を続けていた。そして、その緊張が頂点に達した時、自衛隊の駐屯地側から放たれた銃弾が切っ掛けとなって激しい銃撃戦が始まり、2名の自衛隊員が死亡する。切っ掛けとなった銃弾は、反政府勢力に雇われたヤバニーが放ったもので、その目的は自衛隊に死者が出るように仕向け、日本政府が自衛隊を即座に撤退させることを狙ったものであったが、翌日、日本へ向けて空輸された隊員の棺桶に添えられていたのは、交通事故による事故死という検視報告書であった。

【第3話・青年大将を撃て】
ハノイで米国大統領と会談を行った北朝鮮の指導者「青年大将」を乗せた列車がハノイを出発。途中、中国との国境にあるドンダン駅で、歓迎セレモニーの為に下車した青年大将が再び列車に乗りこもうとした瞬間、2キロ離れた山の頂からヤバニーが狙撃する。ヤバニーに仕事を依頼したのは、米国と北朝鮮の接近に危機感を募らせた韓国の国家情報院であった。狙撃された青年大将は車内に倒れ込み、狙撃は成功したかのように見えたが、列車は何もなかったかのように駅を発ち、数日後、帰国歓迎セレモニーのスタジアムに青年大将が元気な姿を現す。果たしてその真相は?

とは言え、僕は小説を書けても劇画を書く能力はないので、この作品の劇画化を実現する為に『プロジェクト・ヤバニー』を立ち上げることにしました。この作品を読んで興味を持った方で、以下のような技量を備えている方、是非ともプロジェクトに参加いただきたいです。また、僕は劇画のことに関してはまったくの素人ですから、劇画の製作に詳しい方の参加も大歓迎です。勿論、各人の労働に対する対価をお支払いすることはできませんが(つまりは、ボランティア募集ということです)、万が一、完成した劇画が収益を生むような結果になった場合、各人の活躍の度合いに合わせて収入を分配しますので、才能があるのに認められていない者たちの力を結集して夢を追ってみませんか?

① ヤバニーという原作のキャラクター、ストーリーを理解した上で、リアルな劇画を描ける方
② 河内レオンが考えるストーリーのあらすじから、劇画の脚本を起こせる方 

『プロジェクト・ヤバニー』に興味を持った方がもしもいらっしゃれば、トップページの「お問い合わせ」欄にあるフォームを使って連絡をください。但し、本ホームページのチェックは週に1回程度しか行っておらず、返事が遅くなる場合がございますので、予めご承知おきくださいませ。

悪意に満ちた処方箋

原稿用紙30枚という募集要項の文学賞があったので、30枚でいったい何が書けるんだと思いつつ書き始めてみたものの、書いているうちにその3倍の長さになってしまった作品です(汗)。どの文学賞の応募要項にも必ず原稿用紙○○枚以上とか以下とか書いてありますが、ほんと、小説の原稿の枚数制限なんて意味は無いし馬鹿らしいにもほどがあると僕は思っています。芸術とはすべてにおいて「自由」が基本なのであり、枚数制限を設けるなんて芸術とは何かをまったく理解できていない証拠ですね。原稿用紙○○枚以上とか以下とかに縛られているようでは、芸術など生まれてくるはずもありません。枚数を厳守するのがプロのモノ書きだなんてことを平気で口にしている白痴同然の連中が多いですが、金儲けしか頭にない商業出版をしている側の屑どものくだらない言い訳でしかありません。

【あらすじ】
シカゴ市内で精神科の小さなクリニックを開業している医師イーサン・シュレシンジャーが暮らすコンドミニアムで、彼の部屋の1階上の住人で弁護士のセレーナ・エステべスが自室のバルコニーから飛び降りて自殺を図った。事件を担当することになったシカゴ市警のジェファーソン刑事は、自殺の前夜、イーサンの部屋を訪れる彼女の姿を防犯カメラの映像の中に直ぐに見つけ、イーサンに対して事情聴取を行った結果、泥酔した彼女が階を間違えてイーサンの部屋を訪ねていたことを知る。現場検証をした鑑識も彼女の死が自殺であったと断定していたことからジェファーソンも同じ結論に達するが、事情聴取の際にイーサンが口にした言葉に微かな違和感を感じていたジェファーソンが、刑事の勘から念の為にイーサンの身辺を調べてみると、そこに浮かび上がってきたのは彼のクリニックの患者が立て続けに自殺を遂げているという事実であった。刑事は一連の自殺事件が自殺を装った他殺ではなかったのかと疑い始めるのだが…。

【印刷枚数の目安】A4用紙で28枚
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奇蹟のサングレ

サイエンス・フィクション(SF)の文学賞の募集を見つけたので、一度SF小説を書いてみようと仕上げたのがこの作品です。賞に応募しても予選さえ通過しませんでしたけど、下読みの阿呆どもに芸術を理解する能力が無かっただけで、僕自身はなかなか良くかけた作品だと思っています。まあ、そもそもからして、SF小説がいったい何であるのか僕には良く分かりません。本作品に宇宙船とかタイムスリップとかは出てきませんが、河内レオンがSFだと考えて書いた小説だと思って読んでいただければ嬉しいです。

【あらすじ】
ニューヨークの名門私立病院であるウェスラー総合病院で癌治療の権威として活躍する医師ラッセル・コーエンはある日、ここ最近、院内で治療を受けた二名の患者の治療記録に奇妙な点があることに気付く。末期の肝臓癌を患った男性と急性白血病を発症した少女の身体から癌細胞が瞬く間に消滅して完治したというのである。しかし、その記録内容はコーエンにとってはにわかに信じ難いものであった。

疑問を抱いたコーエンは調査を開始し、調べを進めていくうちに完治した二名の患者に同じ保存血液が輸血されていたという事実を突き止める。コーエンはその輸血した血液に癌細胞を死滅させる何か力のようなものがあるのではないかと考え、保存血液の出所を探り始めた。程なくして、その保存血液の納入業者が民間の血液銀行であるユナイテッド・ブラッド社であることが判明するが、その会社のCEOはコーエンの大学時代の同級生ベンジャミン・エレンバーグであった。コーエンは気のおけない友人であるエレンバーグに謎の血液の話を打ち明け、輸血に使った血液が南米のボリビアで売血同然の献血によって集められているものであることを知る。コーエンは血液学の博士号を持つエレンバーグに問題の血液の分析を依頼するが、特に異常な点は見当たらないという分析結果はコーエンを落胆させた。それでも諦めきれないコーエンは、血液の主がラパスの貧民街で暮らすリカルドという名の少年であることを知ると、すぐさまボリビアへ飛んだ。ラパスでリカルドと面会したコーエンは、学校を中途退学した彼に奨学金を与えてラパス市内の私立学校へ通わせる段取りを整えて帰国する。それは、彼の血液を定期的に入手する為にコーエンが弄した策であった。

その後、コーエンとエレンバーグの二人はリカルドの血液の研究を密かに進めるが、リカルドから採血した血液があらゆる癌細胞を消滅させるという事実のみが目の前で積み重なっていくだけで、それがなぜなのかの解明は一向に進まず、いたずらに時間が過ぎ去るのみの日々が続く。そんな中、エレンバーグは不毛な研究はもう止めて、リカルドの血液をビジネスに利用しようとコーエンに持ちかけるが、それは奇蹟の血を持つ少年が迎えることとなる戦慄の結末の序章であった。

【印刷枚数の目安】A4用紙で43枚
「奇蹟のサングレ」を読みたい方は下記のリンクをクリックしてください。
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過去からやって来た旅人

原稿用紙10枚のエッセイ・コンテスト用に書いた作品に加筆して短編小説に仕上げたものです。元々がエッセイだったものなので、内容はほぼノンフィクションという感じですかね。作中に出てくるデンマーク人と東ベルリンを訪れた話や、ルーマニアの夜行列車内で若い兵隊に囲まれた話、ブカレストで結婚式の招待状をせがまれた話、すべて本当にあった出来事です。僕が東ヨーロッパを訪れたのは1988年の秋から初冬にかけてのこと。ベルリンからポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ユーゴスラビア、ルーマニア、ブルガリア、そしてイスタンブールへと2ケ月かけて旅しました(アルバニアが入っていないのは、当時は鎖国していて入国できなかったから)。東ドイツ以外では、どこの国でも外国人の僕の前で共産主義政権への不満をぶちまける人が多かったので、そのうち共産圏が崩壊するであろうことは容易に想像できましたが、ベルリンの壁が崩壊したのはその1年後のこと。そんなに早くその時が来るとは思いもしなかったというのが正直なところです。

【あらすじ】
観光で日本を訪れる外国人の姿を見かけない日は無くなった大阪の街で、生卵が乗った名物カレーを出すことで有名な老舗の洋食屋を探す若い外国人の二人組に道を尋ねられた主人公。二人を店まで案内することにした主人公が、道すがらどこの国の出身かを尋ねると、返ってきたのは「ルーマニア」という言葉だった。意外な国名を耳にした瞬間、30年以上も前にルーマニアで出会った人々の顔が、走馬灯のようになって主人公の脳裏で甦り始める。

【印刷枚数の目安】A4用紙で13枚
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